まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

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翌朝、気持ちよく目覚めたときには、すでに日は高く登っていた。
馬車旅というのは、慣れていても多少は気が張るもので、こうして目的地に着いた日の夜は、ついつい深く寝入ってしまう。
さらに今回は、寝心地にもこだわった最高の寝具を纏い、穏やかな畳の香りに包まれての最高の睡眠環境、なおさら仕方の無いことだろう。
今日は端から遅くまで寝てるつもりだったので、朝食の準備は遠慮しといた。
こういう旅館の朝食こそ旅の醍醐味なので、明日からは絶対に食べるつもりだが。
朝から温泉に浸かり、身だしなみを整えたら宿を出る。
今日はのんびりと奥町を散策するつもりなのだ。

本館ロビーで外出してくると言いにいくと、よろしかったらどうぞと何か渡された。
外に出て中身を確認すると、なんと竹皮に包まれたおにぎり(!)と小さめの水筒に入った温かいお茶。
ひかえめに言って、さいこーじゃん。
さっそく、公園みたいなとこがあったので、そこのベンチでいただこう。
公園には子供用遊具の他に無料の足湯など温泉地らしい設備が置いてある。
そして、残暑を過ぎて色づきはじめた木々が、来訪者の目を楽しませてくれる。
もう少ししたら、紅葉のシーズンに入る。
その時期になると観光地であるケーラルも、多くの人で賑わうようになるだろう。
今回長期で予約がとれたのも、繁忙期の前ののんびりとした時期だからというところもあった。
いちばんの稼ぎどきにムリいって邪魔するのも野暮だし、俺自身静かな方が好きだしね。

さて、おにぎりをいただこうかな。

日のあたるベンチで、竹皮をひろげる。
持たせてくれたおにぎりはウメとサンショウミソの二種類で海苔は無いタイプ。ここに白タクワンがさりげなく添えられているのがうれしい。
前世ほど流通事情がいいわけではないので、内陸部の地では、海のものは比較的高級品の地扱いになる。

ケーラルの米は、ほんとに美味しい。
普段はたまに食べるローカルフードみたいな扱いだったけど、やっぱり本場のは違うな。
米どころと言われる土地は、ケーラル以外にもまた別にあるのだが、実はそこもケーラルと同じ一族が領主で、その土地を治めている。
異世界で成り上がって、元の世界の文化を再現するというムーブの結果だね、これは。
まぁそのお陰で、わりと生きやすい世界になってるのだから、過去の偉人に感謝です。

おにぎり2個は、あっという間に腹の中に収まった。
最後にお茶を飲んで、ほっと一息。
あぁ、堪能した。

その後は足湯に移動して、ぼーっと食休み。
こういう贅沢な時間の使い方は、普段はなかなか出来ない。
前世でも今世でも、やっぱり人は働かないと食べていけないことには変わりはない。
今世ではわりと恵まれていて、仕事とそれに見合う能力があり困るということはないが、それでもなんだかんだと忙しい日々を送っている。
たぶんそれは、俺が異世界での観光を願ったからだろう。
観光とは結局、非日常の娯楽であり、それには普段の日常がしっかりあってはじめて成り立つものなのだから。
観光の合間に労働、労働の合間に観光。
たぶんそれが俺の生き方なのだろう。
足湯でじんわりと汗をかきながら、そんなことを考えていた。
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