62 / 96
61
しおりを挟む
さて。
最高のシチュエーションに、最高のお弁当。
これは心してかからねば、ケーラルの自然にも、お弁当を用意してくれたヤズヤの人たちにも、失礼というもの。
手を合わせて、いただきますと唱えれば、そこからはもう、命をいただく戦いである。
まず、初手は綺麗な三角おにぎりに手を出す。
この世界でのおにぎりは、海苔が海沿いの街以外では高級品ということもあり、一般的ではない。
その代わりではないが手にお米がつく対策として、お弁当には笹の葉が数枚入っていて、笹の葉越しに掴んで食べるというのがスタンダードなやり方だったりする。
というわけで、おにぎりを手に持ちパクりと一口。
ーーうっ、ウマい。
崩れないけど、口に入れるとはらはらとバラけていく絶妙な握り加減。
登山後ということもあり気持ち強めな塩っけもうれしい。
そしてなにより、一口目からちゃんと出会えるようにたっぷり入った具。
ひとつ目の具は昆布の佃煮。
昆布も海のものなのだが、こちらは出汁がらの再利用ができるので、海苔よりかはコスパがいいのだとか。出汁をよく使うケーラルでは、定番のご飯のともらしい。
甘辛く炊かれた昆布の旨味が、塩っけのあるお米と口の中で複雑に絡み合う。
さらに隠し味の山椒がいい仕事をして、ピリリとアクセントを与えてくれる。たまらない。
おにぎりの味が舌に残っている間に、マグに入った味噌汁を啜る。
具はないが、とてもホッとする味。
おにぎり食って、味噌汁で流す。
控えめに言って、最高。
さて、お次はおかずにいこう。
おにぎりと味噌汁のあったかさで活性化した胃袋が、濃い味と油分を求め始める。
それに応えるように、ひょいっとから揚げを手に取る。
衣しっかりタイプで大きめ、揚げ色も濃いめの茶色の一番おいしいやつ。それが三つも。
そのままがぶりといくと、口いっぱいにニンニク醤油の味付けとそれに負けないぐらいのトリの味が、二重に広がる。
うっ、ウマい。
個人的にから揚げは、揚げたては酒のツマミ、冷めたやつはメシのおかずだと思ってる。
から揚げとして肉汁溢れるようになればなるほど、案外白飯が進まなかったりしたこと無いかな?
味が濃いから、そりゃあおかずにもなりはするけど、一旦肉が落ち着いて、肉汁が肉に戻って定着した後の方が、個人的には最高に米が進む。
何が言いたいのかというと、つまりは弁当のから揚げって、最高ってこと。
「から揚げうまー」
若いおなごも騒いでおるわ。
さぁ濃い環境の口内は、再び米を欲する。今度はおかずを受け止めるため、三角形の先ほどとは違う辺から責める。わざと頬張りすぎずに、あえて具まではいかない。
プレーンな味がから揚げの余韻を受け止める。
そしてまたから揚げにいく。
単純計算でおにぎりひとつにつき、から揚げが1.5個。
頭の中では様々なプランが浮かぶが、正解はたったひとつ。
から揚げに卵焼き、それも砂糖の効いた甘ーい卵焼きをぶつけていく。
昨日の晩に卵焼きは甘いのとしょっぱいのどちらにしますと聞かれ、ノータイムで答えた。
俺的には、お弁当の卵焼きは甘い派。どっちも好きなんだけどね。
鮮やかな黄色にしっかりと焼き目がついて、なかなか凛々しい佇まいの卵焼き。
一口口に運べば、優しい甘さが脳にまで染みてくるような感覚に陥る。
そうか、身体は甘さを求めていたのか。
から揚げ→卵焼きの黄金リレーで、シャットアウトの完封勝利。
何の言葉もでないとはこのことだね。
怒涛の勢いで一個目のおにぎりをたいらげ、たくわんでインターバル。
甘くない自然色のたくわん。
食感を楽しみつつ、気持ちは次のおにぎりへと。
ひとつ目のおにぎりは昆布。そうすると、お次のやつはきっとおそらくアレだ。
昨日女将さんに聞かれたのだ。アレは大丈夫ですか、と。
俺はそれに「もちろん、大好きです」と答えた。
おにぎりのド定番だし、シチュエーション的にも、つかれた身体にぴったしだ。
そう、それは梅干し。
あぁ想像しただけで、口に唾液がたまってくる。
しんぼうたまらんと、二個目にゴー。
白米の甘みにビリッとくる酸っぱさ。
うぉ~、すっぺー。そして、うめぇ~。
この脳にくる感じの酸っぱさ、そして血圧が心配になりそうな塩味。
ヤズヤの自家製の梅干しは、昔ながらの酸っぱくて塩っ辛いタイプの梅干し。
他の食材と合わせるとかならハチミツ入りのマイルドなのもいいけど、ごはんを食うなら、俺は断然こっち。
塩が強い分、ひとつの大きさは小さめで、おにぎりとジャストサイズ。こういう計算しつくされた仕事がうれしいね。
酸味が残る口内に送り込むは、卵焼き。その優しい甘さで全てを受け止めてくれる。
前半とから揚げとの手順前後というテクニック。
食べる順番で満足度が違ってくる。お弁当というのは、じつに奥が深い。
全てを食べ終え、最後にちょっと残しておいた味噌汁でシメ。
最高にうまかった。
ごちそうさまでした。
最高のシチュエーションに、最高のお弁当。
これは心してかからねば、ケーラルの自然にも、お弁当を用意してくれたヤズヤの人たちにも、失礼というもの。
手を合わせて、いただきますと唱えれば、そこからはもう、命をいただく戦いである。
まず、初手は綺麗な三角おにぎりに手を出す。
この世界でのおにぎりは、海苔が海沿いの街以外では高級品ということもあり、一般的ではない。
その代わりではないが手にお米がつく対策として、お弁当には笹の葉が数枚入っていて、笹の葉越しに掴んで食べるというのがスタンダードなやり方だったりする。
というわけで、おにぎりを手に持ちパクりと一口。
ーーうっ、ウマい。
崩れないけど、口に入れるとはらはらとバラけていく絶妙な握り加減。
登山後ということもあり気持ち強めな塩っけもうれしい。
そしてなにより、一口目からちゃんと出会えるようにたっぷり入った具。
ひとつ目の具は昆布の佃煮。
昆布も海のものなのだが、こちらは出汁がらの再利用ができるので、海苔よりかはコスパがいいのだとか。出汁をよく使うケーラルでは、定番のご飯のともらしい。
甘辛く炊かれた昆布の旨味が、塩っけのあるお米と口の中で複雑に絡み合う。
さらに隠し味の山椒がいい仕事をして、ピリリとアクセントを与えてくれる。たまらない。
おにぎりの味が舌に残っている間に、マグに入った味噌汁を啜る。
具はないが、とてもホッとする味。
おにぎり食って、味噌汁で流す。
控えめに言って、最高。
さて、お次はおかずにいこう。
おにぎりと味噌汁のあったかさで活性化した胃袋が、濃い味と油分を求め始める。
それに応えるように、ひょいっとから揚げを手に取る。
衣しっかりタイプで大きめ、揚げ色も濃いめの茶色の一番おいしいやつ。それが三つも。
そのままがぶりといくと、口いっぱいにニンニク醤油の味付けとそれに負けないぐらいのトリの味が、二重に広がる。
うっ、ウマい。
個人的にから揚げは、揚げたては酒のツマミ、冷めたやつはメシのおかずだと思ってる。
から揚げとして肉汁溢れるようになればなるほど、案外白飯が進まなかったりしたこと無いかな?
味が濃いから、そりゃあおかずにもなりはするけど、一旦肉が落ち着いて、肉汁が肉に戻って定着した後の方が、個人的には最高に米が進む。
何が言いたいのかというと、つまりは弁当のから揚げって、最高ってこと。
「から揚げうまー」
若いおなごも騒いでおるわ。
さぁ濃い環境の口内は、再び米を欲する。今度はおかずを受け止めるため、三角形の先ほどとは違う辺から責める。わざと頬張りすぎずに、あえて具まではいかない。
プレーンな味がから揚げの余韻を受け止める。
そしてまたから揚げにいく。
単純計算でおにぎりひとつにつき、から揚げが1.5個。
頭の中では様々なプランが浮かぶが、正解はたったひとつ。
から揚げに卵焼き、それも砂糖の効いた甘ーい卵焼きをぶつけていく。
昨日の晩に卵焼きは甘いのとしょっぱいのどちらにしますと聞かれ、ノータイムで答えた。
俺的には、お弁当の卵焼きは甘い派。どっちも好きなんだけどね。
鮮やかな黄色にしっかりと焼き目がついて、なかなか凛々しい佇まいの卵焼き。
一口口に運べば、優しい甘さが脳にまで染みてくるような感覚に陥る。
そうか、身体は甘さを求めていたのか。
から揚げ→卵焼きの黄金リレーで、シャットアウトの完封勝利。
何の言葉もでないとはこのことだね。
怒涛の勢いで一個目のおにぎりをたいらげ、たくわんでインターバル。
甘くない自然色のたくわん。
食感を楽しみつつ、気持ちは次のおにぎりへと。
ひとつ目のおにぎりは昆布。そうすると、お次のやつはきっとおそらくアレだ。
昨日女将さんに聞かれたのだ。アレは大丈夫ですか、と。
俺はそれに「もちろん、大好きです」と答えた。
おにぎりのド定番だし、シチュエーション的にも、つかれた身体にぴったしだ。
そう、それは梅干し。
あぁ想像しただけで、口に唾液がたまってくる。
しんぼうたまらんと、二個目にゴー。
白米の甘みにビリッとくる酸っぱさ。
うぉ~、すっぺー。そして、うめぇ~。
この脳にくる感じの酸っぱさ、そして血圧が心配になりそうな塩味。
ヤズヤの自家製の梅干しは、昔ながらの酸っぱくて塩っ辛いタイプの梅干し。
他の食材と合わせるとかならハチミツ入りのマイルドなのもいいけど、ごはんを食うなら、俺は断然こっち。
塩が強い分、ひとつの大きさは小さめで、おにぎりとジャストサイズ。こういう計算しつくされた仕事がうれしいね。
酸味が残る口内に送り込むは、卵焼き。その優しい甘さで全てを受け止めてくれる。
前半とから揚げとの手順前後というテクニック。
食べる順番で満足度が違ってくる。お弁当というのは、じつに奥が深い。
全てを食べ終え、最後にちょっと残しておいた味噌汁でシメ。
最高にうまかった。
ごちそうさまでした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる