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さて。
最高のシチュエーションに、最高のお弁当。
これは心してかからねば、ケーラルの自然にも、お弁当を用意してくれたヤズヤの人たちにも、失礼というもの。
手を合わせて、いただきますと唱えれば、そこからはもう、命をいただく戦いである。
まず、初手は綺麗な三角おにぎりに手を出す。
この世界でのおにぎりは、海苔が海沿いの街以外では高級品ということもあり、一般的ではない。
その代わりではないが手にお米がつく対策として、お弁当には笹の葉が数枚入っていて、笹の葉越しに掴んで食べるというのがスタンダードなやり方だったりする。
というわけで、おにぎりを手に持ちパクりと一口。
ーーうっ、ウマい。
崩れないけど、口に入れるとはらはらとバラけていく絶妙な握り加減。
登山後ということもあり気持ち強めな塩っけもうれしい。
そしてなにより、一口目からちゃんと出会えるようにたっぷり入った具。
ひとつ目の具は昆布の佃煮。
昆布も海のものなのだが、こちらは出汁がらの再利用ができるので、海苔よりかはコスパがいいのだとか。出汁をよく使うケーラルでは、定番のご飯のともらしい。
甘辛く炊かれた昆布の旨味が、塩っけのあるお米と口の中で複雑に絡み合う。
さらに隠し味の山椒がいい仕事をして、ピリリとアクセントを与えてくれる。たまらない。
おにぎりの味が舌に残っている間に、マグに入った味噌汁を啜る。
具はないが、とてもホッとする味。
おにぎり食って、味噌汁で流す。
控えめに言って、最高。
さて、お次はおかずにいこう。
おにぎりと味噌汁のあったかさで活性化した胃袋が、濃い味と油分を求め始める。
それに応えるように、ひょいっとから揚げを手に取る。
衣しっかりタイプで大きめ、揚げ色も濃いめの茶色の一番おいしいやつ。それが三つも。
そのままがぶりといくと、口いっぱいにニンニク醤油の味付けとそれに負けないぐらいのトリの味が、二重に広がる。
うっ、ウマい。
個人的にから揚げは、揚げたては酒のツマミ、冷めたやつはメシのおかずだと思ってる。
から揚げとして肉汁溢れるようになればなるほど、案外白飯が進まなかったりしたこと無いかな?
味が濃いから、そりゃあおかずにもなりはするけど、一旦肉が落ち着いて、肉汁が肉に戻って定着した後の方が、個人的には最高に米が進む。
何が言いたいのかというと、つまりは弁当のから揚げって、最高ってこと。
「から揚げうまー」
若いおなごも騒いでおるわ。
さぁ濃い環境の口内は、再び米を欲する。今度はおかずを受け止めるため、三角形の先ほどとは違う辺から責める。わざと頬張りすぎずに、あえて具まではいかない。
プレーンな味がから揚げの余韻を受け止める。
そしてまたから揚げにいく。
単純計算でおにぎりひとつにつき、から揚げが1.5個。
頭の中では様々なプランが浮かぶが、正解はたったひとつ。
から揚げに卵焼き、それも砂糖の効いた甘ーい卵焼きをぶつけていく。
昨日の晩に卵焼きは甘いのとしょっぱいのどちらにしますと聞かれ、ノータイムで答えた。
俺的には、お弁当の卵焼きは甘い派。どっちも好きなんだけどね。
鮮やかな黄色にしっかりと焼き目がついて、なかなか凛々しい佇まいの卵焼き。
一口口に運べば、優しい甘さが脳にまで染みてくるような感覚に陥る。
そうか、身体は甘さを求めていたのか。
から揚げ→卵焼きの黄金リレーで、シャットアウトの完封勝利。
何の言葉もでないとはこのことだね。
怒涛の勢いで一個目のおにぎりをたいらげ、たくわんでインターバル。
甘くない自然色のたくわん。
食感を楽しみつつ、気持ちは次のおにぎりへと。
ひとつ目のおにぎりは昆布。そうすると、お次のやつはきっとおそらくアレだ。
昨日女将さんに聞かれたのだ。アレは大丈夫ですか、と。
俺はそれに「もちろん、大好きです」と答えた。
おにぎりのド定番だし、シチュエーション的にも、つかれた身体にぴったしだ。
そう、それは梅干し。
あぁ想像しただけで、口に唾液がたまってくる。
しんぼうたまらんと、二個目にゴー。
白米の甘みにビリッとくる酸っぱさ。
うぉ~、すっぺー。そして、うめぇ~。
この脳にくる感じの酸っぱさ、そして血圧が心配になりそうな塩味。
ヤズヤの自家製の梅干しは、昔ながらの酸っぱくて塩っ辛いタイプの梅干し。
他の食材と合わせるとかならハチミツ入りのマイルドなのもいいけど、ごはんを食うなら、俺は断然こっち。
塩が強い分、ひとつの大きさは小さめで、おにぎりとジャストサイズ。こういう計算しつくされた仕事がうれしいね。
酸味が残る口内に送り込むは、卵焼き。その優しい甘さで全てを受け止めてくれる。
前半とから揚げとの手順前後というテクニック。
食べる順番で満足度が違ってくる。お弁当というのは、じつに奥が深い。
全てを食べ終え、最後にちょっと残しておいた味噌汁でシメ。
最高にうまかった。
ごちそうさまでした。
最高のシチュエーションに、最高のお弁当。
これは心してかからねば、ケーラルの自然にも、お弁当を用意してくれたヤズヤの人たちにも、失礼というもの。
手を合わせて、いただきますと唱えれば、そこからはもう、命をいただく戦いである。
まず、初手は綺麗な三角おにぎりに手を出す。
この世界でのおにぎりは、海苔が海沿いの街以外では高級品ということもあり、一般的ではない。
その代わりではないが手にお米がつく対策として、お弁当には笹の葉が数枚入っていて、笹の葉越しに掴んで食べるというのがスタンダードなやり方だったりする。
というわけで、おにぎりを手に持ちパクりと一口。
ーーうっ、ウマい。
崩れないけど、口に入れるとはらはらとバラけていく絶妙な握り加減。
登山後ということもあり気持ち強めな塩っけもうれしい。
そしてなにより、一口目からちゃんと出会えるようにたっぷり入った具。
ひとつ目の具は昆布の佃煮。
昆布も海のものなのだが、こちらは出汁がらの再利用ができるので、海苔よりかはコスパがいいのだとか。出汁をよく使うケーラルでは、定番のご飯のともらしい。
甘辛く炊かれた昆布の旨味が、塩っけのあるお米と口の中で複雑に絡み合う。
さらに隠し味の山椒がいい仕事をして、ピリリとアクセントを与えてくれる。たまらない。
おにぎりの味が舌に残っている間に、マグに入った味噌汁を啜る。
具はないが、とてもホッとする味。
おにぎり食って、味噌汁で流す。
控えめに言って、最高。
さて、お次はおかずにいこう。
おにぎりと味噌汁のあったかさで活性化した胃袋が、濃い味と油分を求め始める。
それに応えるように、ひょいっとから揚げを手に取る。
衣しっかりタイプで大きめ、揚げ色も濃いめの茶色の一番おいしいやつ。それが三つも。
そのままがぶりといくと、口いっぱいにニンニク醤油の味付けとそれに負けないぐらいのトリの味が、二重に広がる。
うっ、ウマい。
個人的にから揚げは、揚げたては酒のツマミ、冷めたやつはメシのおかずだと思ってる。
から揚げとして肉汁溢れるようになればなるほど、案外白飯が進まなかったりしたこと無いかな?
味が濃いから、そりゃあおかずにもなりはするけど、一旦肉が落ち着いて、肉汁が肉に戻って定着した後の方が、個人的には最高に米が進む。
何が言いたいのかというと、つまりは弁当のから揚げって、最高ってこと。
「から揚げうまー」
若いおなごも騒いでおるわ。
さぁ濃い環境の口内は、再び米を欲する。今度はおかずを受け止めるため、三角形の先ほどとは違う辺から責める。わざと頬張りすぎずに、あえて具まではいかない。
プレーンな味がから揚げの余韻を受け止める。
そしてまたから揚げにいく。
単純計算でおにぎりひとつにつき、から揚げが1.5個。
頭の中では様々なプランが浮かぶが、正解はたったひとつ。
から揚げに卵焼き、それも砂糖の効いた甘ーい卵焼きをぶつけていく。
昨日の晩に卵焼きは甘いのとしょっぱいのどちらにしますと聞かれ、ノータイムで答えた。
俺的には、お弁当の卵焼きは甘い派。どっちも好きなんだけどね。
鮮やかな黄色にしっかりと焼き目がついて、なかなか凛々しい佇まいの卵焼き。
一口口に運べば、優しい甘さが脳にまで染みてくるような感覚に陥る。
そうか、身体は甘さを求めていたのか。
から揚げ→卵焼きの黄金リレーで、シャットアウトの完封勝利。
何の言葉もでないとはこのことだね。
怒涛の勢いで一個目のおにぎりをたいらげ、たくわんでインターバル。
甘くない自然色のたくわん。
食感を楽しみつつ、気持ちは次のおにぎりへと。
ひとつ目のおにぎりは昆布。そうすると、お次のやつはきっとおそらくアレだ。
昨日女将さんに聞かれたのだ。アレは大丈夫ですか、と。
俺はそれに「もちろん、大好きです」と答えた。
おにぎりのド定番だし、シチュエーション的にも、つかれた身体にぴったしだ。
そう、それは梅干し。
あぁ想像しただけで、口に唾液がたまってくる。
しんぼうたまらんと、二個目にゴー。
白米の甘みにビリッとくる酸っぱさ。
うぉ~、すっぺー。そして、うめぇ~。
この脳にくる感じの酸っぱさ、そして血圧が心配になりそうな塩味。
ヤズヤの自家製の梅干しは、昔ながらの酸っぱくて塩っ辛いタイプの梅干し。
他の食材と合わせるとかならハチミツ入りのマイルドなのもいいけど、ごはんを食うなら、俺は断然こっち。
塩が強い分、ひとつの大きさは小さめで、おにぎりとジャストサイズ。こういう計算しつくされた仕事がうれしいね。
酸味が残る口内に送り込むは、卵焼き。その優しい甘さで全てを受け止めてくれる。
前半とから揚げとの手順前後というテクニック。
食べる順番で満足度が違ってくる。お弁当というのは、じつに奥が深い。
全てを食べ終え、最後にちょっと残しておいた味噌汁でシメ。
最高にうまかった。
ごちそうさまでした。
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