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「最後にこうして額にチョンっと水をかけて、これでお清めは終了」
三人娘に手本を見せるように、清めた水で指を濡らして、額、正確には眉間の少し上のところに触れる。額に感じる水の冷たさが心地好い。
「ぷはー、きもちいーい」
すぐそばでは、カリンが大胆なアレンジを加えて、顔まで洗っている。
「サイトさん、これはいいんですか?」
この無作法を心配するナツメ。
「まぁ問題は無いんだけど、なんでこれをやってるかってのだけは、間違えないようにね」
眉間の少し上、前世でいえば仏様の白毫とか、第三の目とかいわれるところ。
ここもまた神秘的な意味のある部所で、ここにその人間の魔力の相が表れるといわれている。
要は、ここを見ればその人間がどんな人間か解ってしまう場所なので、失礼のないようにきれいにしておきましょうという意味合いである。
「これで終わりだけど、そう難しくはないでしょ?」
「確かにパッパッっとやれば、すぐに済んじゃう感じですね」
今回はやらずに【浄化】で済ましたマリーが、そう同意する。
「あくまで、訪ねる前に身だしなみを軽く整える的なものだからね。聖職が儀式の前にやる本格的なやつとは違うよ」
正式なやつは、何日間食事制限したり、聖水も月の光に数年さらした特別製のやつを使用したりと大変だからね。俺は習ったけど、実際にやったことはない。
ただ、それを監修、指導できる資格は持ってる。
独立意識の高かった俺は、若い頃から色んな資格を取得していたのだ。えらい。
「じゃあ、準備も終わったことだし、山頂に向かおうか」
「「「はいっ」」」
■
山肌に設置された雑な石積みの階段。一段一段の間隔がまばらでハンドメイド感が強く、正直登りづらい。
そんな階段を登りきると、これより上は空の他に何もない、そんな空間が待ち受けている。
この場所は、前世の野球でいう内野グラウンドぐらいのサイズ感の平野で、その中央、まさにマウンドぐらいのところに人一人を優に越える高さの一枚岩が、どどんと鎮座している。
「これが、・・・頂上」
傍らから、呟くような声。
その声に振り向くと、感慨深げに立ちすくんでいる三人娘が目に入る。
彼女らにとって幼い頃から身近にあった、近くて遠い場所。
「ほんとにあったね、大岩」
かつて親が話してくれた、おとぎ話の中の精霊が住んでいるという秘密の大岩。
子どもながらに憧れたその場所。
時間が経ち、立ち入る資格を手に入れ、たどり着いた。
「えぇ。すごいですね」
成長して魔法を学んで、神秘への理解を深めた今だからこそ、解ることもある。
ここがこの地の中心であること。
自分たちの親や大人が、山にたいして熱心に拝んでいたこと。
遠くの街で出会った同郷の人間が、いつか戻りたいと願っていたこと。
この岩を前にしたとき、これまでのすべてがつながって、心から理解できたのだ。
「さぁただいまの挨拶をしようか」
三人は静かに頷いた。
三人娘に手本を見せるように、清めた水で指を濡らして、額、正確には眉間の少し上のところに触れる。額に感じる水の冷たさが心地好い。
「ぷはー、きもちいーい」
すぐそばでは、カリンが大胆なアレンジを加えて、顔まで洗っている。
「サイトさん、これはいいんですか?」
この無作法を心配するナツメ。
「まぁ問題は無いんだけど、なんでこれをやってるかってのだけは、間違えないようにね」
眉間の少し上、前世でいえば仏様の白毫とか、第三の目とかいわれるところ。
ここもまた神秘的な意味のある部所で、ここにその人間の魔力の相が表れるといわれている。
要は、ここを見ればその人間がどんな人間か解ってしまう場所なので、失礼のないようにきれいにしておきましょうという意味合いである。
「これで終わりだけど、そう難しくはないでしょ?」
「確かにパッパッっとやれば、すぐに済んじゃう感じですね」
今回はやらずに【浄化】で済ましたマリーが、そう同意する。
「あくまで、訪ねる前に身だしなみを軽く整える的なものだからね。聖職が儀式の前にやる本格的なやつとは違うよ」
正式なやつは、何日間食事制限したり、聖水も月の光に数年さらした特別製のやつを使用したりと大変だからね。俺は習ったけど、実際にやったことはない。
ただ、それを監修、指導できる資格は持ってる。
独立意識の高かった俺は、若い頃から色んな資格を取得していたのだ。えらい。
「じゃあ、準備も終わったことだし、山頂に向かおうか」
「「「はいっ」」」
■
山肌に設置された雑な石積みの階段。一段一段の間隔がまばらでハンドメイド感が強く、正直登りづらい。
そんな階段を登りきると、これより上は空の他に何もない、そんな空間が待ち受けている。
この場所は、前世の野球でいう内野グラウンドぐらいのサイズ感の平野で、その中央、まさにマウンドぐらいのところに人一人を優に越える高さの一枚岩が、どどんと鎮座している。
「これが、・・・頂上」
傍らから、呟くような声。
その声に振り向くと、感慨深げに立ちすくんでいる三人娘が目に入る。
彼女らにとって幼い頃から身近にあった、近くて遠い場所。
「ほんとにあったね、大岩」
かつて親が話してくれた、おとぎ話の中の精霊が住んでいるという秘密の大岩。
子どもながらに憧れたその場所。
時間が経ち、立ち入る資格を手に入れ、たどり着いた。
「えぇ。すごいですね」
成長して魔法を学んで、神秘への理解を深めた今だからこそ、解ることもある。
ここがこの地の中心であること。
自分たちの親や大人が、山にたいして熱心に拝んでいたこと。
遠くの街で出会った同郷の人間が、いつか戻りたいと願っていたこと。
この岩を前にしたとき、これまでのすべてがつながって、心から理解できたのだ。
「さぁただいまの挨拶をしようか」
三人は静かに頷いた。
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