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「さっきのお清めもそうだけど、今日教えるのは、あくまで現場でのわふわっとしたやり方だから。どうしてやるとか、そういうちゃんと理由とかは下りてから、聖職やってる人に聞いてね」
「了解です」
「とりあえず、形を教えるから俺に続いてやってみて」
三人に指示して、横並びに一枚岩の前に立つ。
「まずはここで一礼」
挨拶は最初が肝心。お邪魔いたしますと、しっかり頭を下げる。
ここと最後はビシッといくとおさまりがいい。
「一歩前に出て、また軽く頭を下げる」
次の礼は、「どうも、これから祈りますんでよろしくお願いしますね」という感じ。
これは時と場合によって違うから注意。今回はこの山に住まう大精霊が対象なので、こう。
精霊は神ではなく、あくまで人の隣に生きるもの。へりくだりすぎるのもちょっと違う。
「ここで二回手を合わせる。このとき音は出さない」
これも音をたてる場合もある。何度も言うけど、すべては相手次第。
「ここで、祈る」
神秘への祈り。
それは魔法も何もない前世にもあった人間の神秘に対する根源的な行為ではあるが、いま俺が生きている世界の「祈り」は、それとは少し異なる。
そもそもこの世界は、魔法があり、精霊がいて、神秘との距離が近い。
なので、祈りに精神力を込めることで、実際に対象に祈りを届けることができるのだ。
感覚的には、俗っぽいがスパチャを精神力でする感じに近い。
これはこの世界に生きる人間ならば、できて当たり前の普通の行為であり、そうやって昔から神秘と付き合ってきたのだ。
当然、三人も熱心に祈る。端から見てても、良質そうな祈りを、御神体へ向けて送っている。
「祈りが終わったら、礼」
ご清聴ありがとうございました、の礼。
「そしたら、一歩引いて、最後にまた一礼。これで終わり」
こっちが一方的にやっている行為だからね。投げっぱなしではなく、終わりは明確にする。手紙でいう敬具のところなわけだ。
4人で合わせて礼をして、御神体の前から下がった。
■
「どう? 特に難しくはないでしょう?」
挨拶を終え、三人に聞いてみる。
「そうですね」
「しんねんのおまいりみたいだった!」
「そっか、君らのとこには初詣があったんだったね」
ケーラルには勇者の伝えた文化があり、その中には年の初めに神殿にお参りする初詣という慣習がある。
そのため、こういうのには慣れがあるのだ。
他の地方では、初詣という文化はない。熱心な信徒が祈りにくるくらいで、信仰が薄い一般人がお参りいくというのはあまりない。
きっと、勇者の出身地由来の文化なのだろう。
ちなみに勇者は出身地不明。イッタイドコカラキタンダロウナー。
「ここは地元だから、やり方も変わらないけど、地方によってけっこうやり方違ったりするから気をつけてね」
「そうなんですか?」
「今日やったやつはスタンダードなやつだから、ダメってことにはならないだろうけど、細かな違いが集中あったりするから、とりあえず地元の人に色々聞いてからのほうがいいよ。ギルド介せば、ちゃんとした人紹介してくれるだろうから」
「わかりました。そうしますね」
人間と同じで精霊も千差万別。
フランクに接して欲しいタイプもいれば、ちゃんと敬って欲しいタイプもいる。
だからこそ普段から関わっている地元の人の協力を得るのが重要となる。
地元の人も場が荒れて欲しくは無いので、余所者でもわりとちゃんと交流してくれるものだ。
ここら辺は長い歴史の中で、だんだんとそういう相互協力の土壌をつくっていったのだとか。
「ちなみに今日やったやつは、お清めと同じように一般向けに簡略化されたやつだから。聖職の本格的なやつはもっとしっかりやるよ」
「サイトさんはできるんですか?」
「できるよー。できるし、これから実際にやらなくちゃならないからね。ちょっと見学しててくれるかな」
今回はアオイのコトもあって、ちゃんと話を通しておきたかった。なので、正式な参拝をしてコミュニケーションをとるつもり。
「わかりました」
「たのしみー」
「勉強させていただきます」
そういって三人娘はちょっと下がった位置に移動した。
さぁはじめるか。
「では、はじめます」
再び御神体の前に立ち、体内に流れる気をヘソの下、いわゆる丹田というところに集める。
この気というのは、生命活動を維持する上で必要な生命力の余剰分であり、これが神秘の源となる。
この世界にある超常の力は、須くこの気を元にしており、魔力、聖力、霊力、様々な呼び方があるが、元を辿れば、皆同じもの。その加工・放出の仕方次第で、ラベルが変わるだけのことである。
ただ、生命力の多寡や個人の体質によって、これに変換できるけどこれにはできない、というような偏りが出てくる。結局のところそれが、その人間の才幹として扱われているというのが、今の世界というわけである。
(アオイ、お前も一緒にやろう)
傍らにいるアオイに声をかける。他の三人には認知できないので、気付かれないように脳内音声で。
(アイ!)
元気よく返事するアオイ。生まれたてとはいえ精霊。精霊の気配が一気に濃くなる。
こちらも体内の気を霊地のそれに同調させ、ゆっくりと霊力を放出していく。
御神体を目印にしてとっかかりを見つけ、そこを目指して霊力を放ち、強固なパスをつなげる。
そして、喉に気を回し、この世のものではない言語で、定型文を唱えはじめる。
『◆◇◆▼◇◆●▷♔◆♔○▼◇◇○▼◥◇◈◌◆◆►……』
「了解です」
「とりあえず、形を教えるから俺に続いてやってみて」
三人に指示して、横並びに一枚岩の前に立つ。
「まずはここで一礼」
挨拶は最初が肝心。お邪魔いたしますと、しっかり頭を下げる。
ここと最後はビシッといくとおさまりがいい。
「一歩前に出て、また軽く頭を下げる」
次の礼は、「どうも、これから祈りますんでよろしくお願いしますね」という感じ。
これは時と場合によって違うから注意。今回はこの山に住まう大精霊が対象なので、こう。
精霊は神ではなく、あくまで人の隣に生きるもの。へりくだりすぎるのもちょっと違う。
「ここで二回手を合わせる。このとき音は出さない」
これも音をたてる場合もある。何度も言うけど、すべては相手次第。
「ここで、祈る」
神秘への祈り。
それは魔法も何もない前世にもあった人間の神秘に対する根源的な行為ではあるが、いま俺が生きている世界の「祈り」は、それとは少し異なる。
そもそもこの世界は、魔法があり、精霊がいて、神秘との距離が近い。
なので、祈りに精神力を込めることで、実際に対象に祈りを届けることができるのだ。
感覚的には、俗っぽいがスパチャを精神力でする感じに近い。
これはこの世界に生きる人間ならば、できて当たり前の普通の行為であり、そうやって昔から神秘と付き合ってきたのだ。
当然、三人も熱心に祈る。端から見てても、良質そうな祈りを、御神体へ向けて送っている。
「祈りが終わったら、礼」
ご清聴ありがとうございました、の礼。
「そしたら、一歩引いて、最後にまた一礼。これで終わり」
こっちが一方的にやっている行為だからね。投げっぱなしではなく、終わりは明確にする。手紙でいう敬具のところなわけだ。
4人で合わせて礼をして、御神体の前から下がった。
■
「どう? 特に難しくはないでしょう?」
挨拶を終え、三人に聞いてみる。
「そうですね」
「しんねんのおまいりみたいだった!」
「そっか、君らのとこには初詣があったんだったね」
ケーラルには勇者の伝えた文化があり、その中には年の初めに神殿にお参りする初詣という慣習がある。
そのため、こういうのには慣れがあるのだ。
他の地方では、初詣という文化はない。熱心な信徒が祈りにくるくらいで、信仰が薄い一般人がお参りいくというのはあまりない。
きっと、勇者の出身地由来の文化なのだろう。
ちなみに勇者は出身地不明。イッタイドコカラキタンダロウナー。
「ここは地元だから、やり方も変わらないけど、地方によってけっこうやり方違ったりするから気をつけてね」
「そうなんですか?」
「今日やったやつはスタンダードなやつだから、ダメってことにはならないだろうけど、細かな違いが集中あったりするから、とりあえず地元の人に色々聞いてからのほうがいいよ。ギルド介せば、ちゃんとした人紹介してくれるだろうから」
「わかりました。そうしますね」
人間と同じで精霊も千差万別。
フランクに接して欲しいタイプもいれば、ちゃんと敬って欲しいタイプもいる。
だからこそ普段から関わっている地元の人の協力を得るのが重要となる。
地元の人も場が荒れて欲しくは無いので、余所者でもわりとちゃんと交流してくれるものだ。
ここら辺は長い歴史の中で、だんだんとそういう相互協力の土壌をつくっていったのだとか。
「ちなみに今日やったやつは、お清めと同じように一般向けに簡略化されたやつだから。聖職の本格的なやつはもっとしっかりやるよ」
「サイトさんはできるんですか?」
「できるよー。できるし、これから実際にやらなくちゃならないからね。ちょっと見学しててくれるかな」
今回はアオイのコトもあって、ちゃんと話を通しておきたかった。なので、正式な参拝をしてコミュニケーションをとるつもり。
「わかりました」
「たのしみー」
「勉強させていただきます」
そういって三人娘はちょっと下がった位置に移動した。
さぁはじめるか。
「では、はじめます」
再び御神体の前に立ち、体内に流れる気をヘソの下、いわゆる丹田というところに集める。
この気というのは、生命活動を維持する上で必要な生命力の余剰分であり、これが神秘の源となる。
この世界にある超常の力は、須くこの気を元にしており、魔力、聖力、霊力、様々な呼び方があるが、元を辿れば、皆同じもの。その加工・放出の仕方次第で、ラベルが変わるだけのことである。
ただ、生命力の多寡や個人の体質によって、これに変換できるけどこれにはできない、というような偏りが出てくる。結局のところそれが、その人間の才幹として扱われているというのが、今の世界というわけである。
(アオイ、お前も一緒にやろう)
傍らにいるアオイに声をかける。他の三人には認知できないので、気付かれないように脳内音声で。
(アイ!)
元気よく返事するアオイ。生まれたてとはいえ精霊。精霊の気配が一気に濃くなる。
こちらも体内の気を霊地のそれに同調させ、ゆっくりと霊力を放出していく。
御神体を目印にしてとっかかりを見つけ、そこを目指して霊力を放ち、強固なパスをつなげる。
そして、喉に気を回し、この世のものではない言語で、定型文を唱えはじめる。
『◆◇◆▼◇◆●▷♔◆♔○▼◇◇○▼◥◇◈◌◆◆►……』
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