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祠での作業を終えて、外に出る。
まだ暗くはないものの、日の位置が先ほどよりもさがっていて、風も凪いでいる。
もう今日は十分働いたと、空がもう店じまいをしたがっているかのようだ。
「さぁ日があるうちに設営を終えてしまおうか」
「はい」
設営といっても、前世のキャンプのようにテントを張ったりするわけではない。
こちらにあるテントは軍用の大人数タイプしかなく、個人用のものは見たことがない。
なぜかというと、需要がないからだ。
この世界には魔法という便利なものがある。
周辺に魔力を巡らせて、適当な触媒を置いて陣をはれば、外敵を遮るちょっとした結界の完成だ。
気休め程度の防衛機能だが、雨風や虫程度なら心配なくなるのだ。
なので地面に適当な布をしいて、外套でも被ればそれで寝床の完成である。
なので、今回の設営が意味するのは、主に水場と焚き火と簡易竈のことになる。
普通の冒険者ならそれすらも用意しないのがほとんどなんだけど、今回はレジャー気分だし、俺はうまいものが食べたい。
「途中途中で拾ってきた枯れ木は1ヵ所に集めておいて。後、祠にあった水晶はちゃんと持ってきてくれた?」
「はい、ここにあります」
マリーがかかげた蒼く輝く拳大の丸い水晶。
これは、いわば精霊の客と認められた証のようなものであり、これを結界の触媒に用いることで、この霊地での安全を確保できる。
この結界は、普通の結界の何倍もの強度と性能でありながら、ほとんど魔力も消費しない。
つまりこれで張った結界の中は、街中にいるぐらい安全というわけだ。
「これさえあれば、夜も万全なのさ」
「すごいですね、それ」
「ぐっすりねれる」
この水晶はこの山頂エリアから持ち出すことは厳禁であり、一晩使用したらもとの場所に戻すのが基本ルールとなっている。
「これも精霊様の恩恵ということだね。ありがたく受け取っておこう」
「はーい」
■
結界を発生させると、その内側はもう安全で快適な空間となっている。
「おおー、ムシがいなくなった」
こういう自然豊かな場所は、あえてこれまで指摘もしてこなかったが、当然虫も飛んでる。
冒険者なんてやってると慣れて気にしなくなるが、それでも顔の周りとかをブンブン飛ばれたらウザいので、虫除けはなんだかんだありがたい。
後は、今日は過ごしやすい気温だからあんまり意味がないが、結界内はちょうどいい気温が保たれていたりもする。冬なんかはほんとありがたい。
張る結界によって効果や範囲に差があるが、冒険者にとって、結界張りは大切な技術なのである。
「じゃあ俺とカリンで火起こし、マリーとナツメで水場造りをしようか。飲用水はさっきの湧水を使うから、水質は適当でいいからね」
「わかりました」
「了解です」
「カリンはそこの焚き火スペースで薪を用意して組んどいてくれるかな。その間に竈を造っておくから」
「わかったー」
「じゃあ作業開始」
俺の言葉を合図に三人も一斉に動き出す。戸惑うことなく、テキパキと作業をこなしていく。
そりゃあ年頃のお嬢さん方とはいえ、冒険者として飯を食ってるのだから、ここら辺の作業は勝手知ったるというものだ。
さて、三人に負けないよう俺の方も働かなくちゃ。
土魔法を使いながら、簡易的な竈を造っていく。火口は二つで、火力に強弱をつけられるように、火元からの高さを変える。さらに内側に火が効率的にまわる紋様を刻めば、お手製の竈が完成。
ろくな素材も無しに造ったので、耐久性とかは全くないが、今晩使えればオッケーなので問題はない。
「こっちの竈は終わったよ」
「こっちもできたー」
竈を造り終え、傍らのカリンの方を見ると、薪を火が着きやすいようにうまく隙間を造りながら組み上げていた。傍らには、手頃なサイズに割った薪の山もある。
だいぶ頑張ってくれたようだ。
「おー、だいぶ頑張ったね。じゃあこれで準備は終わりだから、あとは料理をはじめるときに、改めて火種を入れよう」
「うんっ!」
まだ暗くはないものの、日の位置が先ほどよりもさがっていて、風も凪いでいる。
もう今日は十分働いたと、空がもう店じまいをしたがっているかのようだ。
「さぁ日があるうちに設営を終えてしまおうか」
「はい」
設営といっても、前世のキャンプのようにテントを張ったりするわけではない。
こちらにあるテントは軍用の大人数タイプしかなく、個人用のものは見たことがない。
なぜかというと、需要がないからだ。
この世界には魔法という便利なものがある。
周辺に魔力を巡らせて、適当な触媒を置いて陣をはれば、外敵を遮るちょっとした結界の完成だ。
気休め程度の防衛機能だが、雨風や虫程度なら心配なくなるのだ。
なので地面に適当な布をしいて、外套でも被ればそれで寝床の完成である。
なので、今回の設営が意味するのは、主に水場と焚き火と簡易竈のことになる。
普通の冒険者ならそれすらも用意しないのがほとんどなんだけど、今回はレジャー気分だし、俺はうまいものが食べたい。
「途中途中で拾ってきた枯れ木は1ヵ所に集めておいて。後、祠にあった水晶はちゃんと持ってきてくれた?」
「はい、ここにあります」
マリーがかかげた蒼く輝く拳大の丸い水晶。
これは、いわば精霊の客と認められた証のようなものであり、これを結界の触媒に用いることで、この霊地での安全を確保できる。
この結界は、普通の結界の何倍もの強度と性能でありながら、ほとんど魔力も消費しない。
つまりこれで張った結界の中は、街中にいるぐらい安全というわけだ。
「これさえあれば、夜も万全なのさ」
「すごいですね、それ」
「ぐっすりねれる」
この水晶はこの山頂エリアから持ち出すことは厳禁であり、一晩使用したらもとの場所に戻すのが基本ルールとなっている。
「これも精霊様の恩恵ということだね。ありがたく受け取っておこう」
「はーい」
■
結界を発生させると、その内側はもう安全で快適な空間となっている。
「おおー、ムシがいなくなった」
こういう自然豊かな場所は、あえてこれまで指摘もしてこなかったが、当然虫も飛んでる。
冒険者なんてやってると慣れて気にしなくなるが、それでも顔の周りとかをブンブン飛ばれたらウザいので、虫除けはなんだかんだありがたい。
後は、今日は過ごしやすい気温だからあんまり意味がないが、結界内はちょうどいい気温が保たれていたりもする。冬なんかはほんとありがたい。
張る結界によって効果や範囲に差があるが、冒険者にとって、結界張りは大切な技術なのである。
「じゃあ俺とカリンで火起こし、マリーとナツメで水場造りをしようか。飲用水はさっきの湧水を使うから、水質は適当でいいからね」
「わかりました」
「了解です」
「カリンはそこの焚き火スペースで薪を用意して組んどいてくれるかな。その間に竈を造っておくから」
「わかったー」
「じゃあ作業開始」
俺の言葉を合図に三人も一斉に動き出す。戸惑うことなく、テキパキと作業をこなしていく。
そりゃあ年頃のお嬢さん方とはいえ、冒険者として飯を食ってるのだから、ここら辺の作業は勝手知ったるというものだ。
さて、三人に負けないよう俺の方も働かなくちゃ。
土魔法を使いながら、簡易的な竈を造っていく。火口は二つで、火力に強弱をつけられるように、火元からの高さを変える。さらに内側に火が効率的にまわる紋様を刻めば、お手製の竈が完成。
ろくな素材も無しに造ったので、耐久性とかは全くないが、今晩使えればオッケーなので問題はない。
「こっちの竈は終わったよ」
「こっちもできたー」
竈を造り終え、傍らのカリンの方を見ると、薪を火が着きやすいようにうまく隙間を造りながら組み上げていた。傍らには、手頃なサイズに割った薪の山もある。
だいぶ頑張ってくれたようだ。
「おー、だいぶ頑張ったね。じゃあこれで準備は終わりだから、あとは料理をはじめるときに、改めて火種を入れよう」
「うんっ!」
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