山の子ども

小貝川リン子

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3 大学編

3 梅雨‐② ※

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 瑞季の着物を脱がし、床に放る。俺も裸になり、ゆっくりと体を重ねた。温かくて滑らかな肌。どこを触ってもすべすべ。産毛さえ生えていない、陶器のような肌。そしていつ見ても真っ白だ。いや、今は紅が差しているが、それでも淡い紅色だ。
 
「や、ん……そんなさわるな」
「だって綺麗だから」
「く、くすぐったいんだよ」
「でもほら、こことかすごい勃ってるし」
 
 桜色の乳首。去年海で見て以来だ。あの時と違い、赤く膨らんでしまっている。いけない動画で見た女の子の乳首みたいだ。ちょんと摘まんでみると、思いのほか固い。
 
「ひぁ!? な、なに」
「気持ちよくない?」
「わかんな……あ、や、あっ」
「でも、お前のここは気持ちいって言ってる。自分でもわかるだろ?」
 
 摘まんだままくりくりと転がす。乳頭を軽く弾き、指先で捏ね回す。するとますます固くしこってくる。
 
「っあ、な、んで、そんなとこ……?」
「お前が好きだから。もっと気持ちよくなってよ」
「でも……っ、ぴりぴりして、へんなかんじ……」
「それが気持ちいいってことだよ。我慢しないで、声出して」
 
 初めての感覚にいまだ戸惑いを隠せないらしい。でも体は正直な反応を示す。股間のものも健在だ。処女の床上手、ってこういうことなのだろうか。男なら誰だって興奮すると思う。
 
「かりかりするのとくりくりするの、どっちがいい」
「ぅあ、や、わかんな……」
「わかるでしょ。ほら、どっちが好き」
「あぁっ……く、くりくりって、して……」
 
 胸しか弄っていないのに、おもしろいくらい乱れに乱れる。片乳を手で愛撫しながら、もう片方の乳首に吸い付いた。悲鳴に似た高い声が上がる。苦しそうに身悶えながら、俺の舌に胸を押し付けてくる。
 
「あっ、あ、なんで、なめるのぉ……」
「こーした方が気持ちいの。だろ?」
「やっ……も、へん、へんだからぁ」
「いーよ。一緒に変になろうな。もっと足開いて」
 
 濃厚な口づけをしながら、瑞季のあれに自身のそれをぐりぐり擦り付けた。へこへこ腰を振る様は間抜けだろうが止まらない。こういうの何て言うんだっけ。兜合わせ? 素股? どっちでもいいや。腰が抜けるほど気持ちいい。ぬるぬるの汁が混ざり合って溶けちゃいそうだ。自然と息が上がる。
 
「っや、やらぁ、も、はなして、はなして……」
「いや? いやなの? 俺は気持ちい、好きだよ」
「んぅ……へん、へんなの、だめ……や、あ、あっ」
 
 瑞季は髪を振り乱して善がりながら、腰をカクカク揺らしては自らのものを擦り付けてくる。身を捩り、夢中でシーツの海を掻く。白い肌は鮮やかな桃色に染まり、汗でじっとり濡れている。頭での理解が追い付いていないから嫌だ嫌だと泣いているだけで、快感を得ていることは間違いない。
 
「や、あぁっ! な、なんか、くる、……っ、へんなのくる、きちゃう」
「それでいいんだよ、我慢しないで出して……俺も、そろそろ……」
 
 そろそろというか、もうずっとギリギリだった。瑞季より先に達するのは格好が付かないので一所懸命我慢してきたけど、そろそろ本当に限界だ。早く出したい。ザーメンいっぱいぶち撒けたい。
 
 だのに、瑞季はまだ耐えている。太腿をぶるぶる震わせ、まぶたをきつく閉じて耐えている。その姿さえ扇情的だ。視覚からも聴覚からも、もちろん触覚からの刺激も強烈すぎて、ああもうほんとにやばいかも。脳みそが沸騰する。心臓が割れる。
 
「だめ、だめぇ……っ、なんかでる、もれちゃうぅ……」
「だいじょうぶ、出していいやつだから、ほら、リラックスして」
「やっ、こわい……しゅうやぁ……」
 
 初めての感覚だから怖いってのはわかる。俺も昔はそうだった。だけど今は四の五の言っていられない。瑞季にイッてもらわないと俺が出せない。深く口づけ、舌を絡め取って吸い上げ、乳首を高速で弾く。思い切り腰を前後に振り、どろどろの亀頭同士を擦り合わせる。
 
「んん゛ッ――ッ!?」
 
 ビクビクッと激しく痙攣し、瑞季は盛大な嬌声を上げた。でも俺が全部呑み込んだ。二人分の生温かいものが掌をしっとり濡らす。イッた後も瑞季のそこはビクビクと小刻みに痙攣し、とろとろと透明な液を垂らした。
 
「っは……ふぁ、あ……」
 
 焦点の合わないぼんやりと蕩けた表情で、甘い吐息を漏らしながらたっぷり余韻に浸っている。あそこだけじゃなく、体全体がぴくんぴくんと変則的に震える。
 
「……あれ? お前、髪の色……」
 
 飛び散った諸々をティッシュで拭き取りながらふと見ると、ついさっきまで確かに黒かった瑞季の髪が、本来の銀髪に戻っている。自分の目が信じられなくて――何しろ俺の頭も相当ぼんやりと蕩けていたから――瑞季の瞳を覗き見ると、こちらもやはり本来の色に戻っている。銀色とも灰色ともつかない、名状しがたい色。宝石みたいに綺麗な色。
 
「なぁ、聞いてる?」
 
 そっと前髪に触れる。顔を半分覆い隠すほどの長い前髪。汗を掻いたから、頬や額に銀糸が張り付いている。そのうちの一本を、指先でそっと摘まんだ。
 
「っ!? や、さわんな」
 
 途端、ぷいとそっぽを向かれた。さすがにショックだ。
 
「ご、ごめ……なんで?」
「んん……ぞわってする、から、やだ……」
「な、それって……」
 
 単に感じてるだけってことか。かわいすぎる。いやエロすぎる。心配になるくらい敏感だ。普通、一回射精しただけでこんなんなるか? 初めてのくせに……いや初めてだからなのかな。よく見ると乳首がびんびんに勃っている。下のものはすっかり萎えているけど、こっちはまだ元気なようだ。
 
 もう一回したいなぁ。もう一回、っていうか、挿れたい。なんかもう終わったみたいな雰囲気になってるけど、本来はこの後挿入するはずなんだよな。男同士は尻を使うのだと、以前どこかのサイトで読んだ。男同士でもちゃんとしたセックスができるのだと知り、その時は感動すら覚えた。
 
「ねぇ、瑞季」
 
 つんと脇腹を突つくが、嫌がって寝返りを打つ。こりゃあ、この先に進むのはしばらく無理かな。
 
「ねぇ、ごめんって。急にこんなことしてさ。悪かったよ。怒んないで」
「べつに、おこってない」
「ほんと? 許してくれる?」
「うん。びっくりしただけ。おこってない」
「じゃあさ、また今日みたいなことしてもいいか? お前は知らないかもだけど、好き同士ならみんなこういうことするんだぜ」
 
 俺が言うと、瑞季はぐるんと寝返りを打ってこちらを向く。銀髪が空を切り、頬に流れる。綺麗な髪。黒髪もよかったけど、こっちの方が好きだ。黒よりも軽く、垢抜けて見える。まるで本物の絹糸みたい。これからはずっとこのままでいてほしい。
 
「いいよ。また今日みたいなことしても。おれ、柊也になら何されてもいい」
「マジで」
「うん。おれ、柊也が好きだから。何しても怒らないよ。お前がしたいこと、何でもしていいよ」
 
 攻撃力の高い殺し文句だ。落ち着いていたはずの下腹部が疼く。
 
「じゃ、じゃあこの後続き……」
 
 手を延ばすが、ぱしんと叩かれる。
 
「でも今日は疲れた。ちょっと寝る」
 
 そう言ってまぶたを閉じた。ベッドに頬を押し付けて、うつ伏せのままで。
 
「寝ちゃうの?」
「うん」
「裸のままで?」
「四半刻で起きる」
「しは……何?」
「ん……すぐ起きるから」
 
 あーあ、眠ってしまった。一人になると、これまで気にも留めなかったものが唐突に気になり出す。例えば、部屋の湿気が酷いこととか。そういえば今日も朝から雨だったもんな。気温が上がったので湿度も上がったのだ。窓を開けて換気をしよう。
 
「あれ」
 
 そこで気が付く。空はとっくに晴れていた。二週間ぶりの青空。夏の訪れを思わせる、蒸すような熱い風が吹いた。
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