山の子ども

小貝川リン子

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3 大学編

4 仲夏‐① キスのその先の裏 ※

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 ある夜のこと。俺達はいつものように布団の上で乳繰り合っていた。ただ普段と違うのは、俺も瑞季も風呂上がりだってことだ。ふわりと香る石鹸の匂い、濡れた髪、純白の寝巻姿、どれもこれもが新鮮だった。瑞季は元々色白だし、最近では髪も目も素のままで暮らしているから、その上白い着物なんて着たらまるで雪の妖精みたいだ。
 
 瑞季が俺の上に圧し掛かり、夢中で口づける。相変わらずキスが好きだが、自分からは舌を入れてこない。やり方がわからないのか知らないが、チュッと唇を合わせるキスがお気に入りらしい。でも俺が舌を延ばせば嬉しそうに絡めてくる。ふわふわの舌をきつめに吸うと、腰がゆるゆると動く。
 
 瑞季の股間に手を延ばし、わずかに反応しているそれに触れる。服の上から、掌で包むようにして優しく揉んでやる。瑞季は驚いて顔を上げようとするが、後頭部を押さえて逃がさない。
 
 そのうち膝が立たなくなって、瑞季はぺたんと尻をついてしまう。俺のあれも固くなっていて、自然と擦り合わせる形になる。布越しなので刺激はあまり強くないけど、熱だけはよく伝わる。固さやサイズ感もわかる。
 
「もぉ、またパンツ履いてないじゃん。エッチ」
「は、はかないのがふつうだって、前に言っただろ」
「うん、聞いたよ。下着のラインが出ちゃうのが恥ずかしいんだよね」
「はずかしいわけじゃない……みっともないからだ」
「えー、でもさ、ノーパンの方がみっともなくねぇ? 勃ってるの丸わかりだし、着物まで濡れちゃってるよ。ほらここ、先っちょ湿ってるもん」
 
 手探りでぐりぐりと亀頭を押す。
 
「っ、や、」
「やじゃないでしょ。こういう時は気持ちいいって言うんだって、この前教えただろ」
「ぅあ、で、でも……」
「んー?」
「ち、直接、さわって……」
「やっぱりエッチじゃん。かわいい」
 
 裾をはだけさせ、手を忍び込ませる。白い着物から覗く、白い太腿。しっとりと掌に吸い付いて手触りがいい。
 
「も、いつまでそんなとこ」
「だって気持ちいいんだもん。……もーちょい腰上げて。そう」
 
 丁寧に皮を剥いてやり、ようやくそこに触ってやると、あぁもうたまんないっていうような、うっとりした吐息を漏らす。
 
「ぁん、いい……」
「痛くない?」
「うん、うん……先っぽ、くりくりしてぇ……」
 
 無意識だろうが腰をカクつかせ、俺の手に我慢汁を塗り付けながら善がる。覚えたてのくせに淫乱になったもんだ。服の上から乳首をかりかり引っ掻くと、ひぃっと細い声を上げてしがみつく。俺の耳に唇を寄せて喘ぐ。その声でこちらも反応してしまう。
 
「あっ、あっ、それ、やぁ」
「気持ちいい、な。服の上からでも勃ってるのわかるよ。おっぱい好きだろ?」
「んん……いい、きもちい」
「……ねぇ、今日は時間もあるし、普段できないことがしたいんだけど。いい?」
 
 とろりと瞳を潤ませて、瑞季はこくりとうなずいた。
 
 膝を掴んで股を割り、足をM字に開かせる。着物はすっかり乱れてしまって、衿も裾もはだけているのに、あえて帯は結んだままにしてある。倒錯的なその姿にそそられる。全裸よりむしろ色っぽい。
 
 下着を履いていないので、隠すべき大事なところがモロ見えである。局部は先走りでしとどに濡れ、俺に見られてさらに汁を零す。体を折り曲げるようにして足を開かすと、かわいい尻の穴までもが見えてしまう。思わず喉が鳴る。
 
「っ、じろじろ見ないで……」
 
 瑞季は股を閉じようとするが、それを無理やり押さえ付けて開かせる。
 
「なんで? 恥ずかしい?」
「か、蛙みたいで嫌だ。品がない……」
「全然大丈夫、変じゃねぇから。エロくてかわいいよ」
「も……なにするんだよ……?」
「何って……んーと……」
 
 言葉では言いにくい。適当にはぐらかし、枕の下に忍ばせていたローションをこっそり取り出す。コンパクトサイズのボトルだ。お徳用も売ってたけど恥ずかしくて買えなかった。蓋を開けて手に塗りたくり、まだ閉じたままの蕾についと触れた。
 
「ひゃっ!?」
「ごめん、冷たかった?」
「ちが……ど、どこさわって……?」
「お尻の穴かな」
 
 指はまだ入りそうにないので、ひたすら表面をすりすり撫でる。直接ローションをぶっかけて塗り広げ、皺の一本一本を丁寧に撫で解していく。
 
「うんん……やだ、そんなとこ……」
「いや? どんな感じ?」
「だってそこは……なんでいじるの……?」
「あー、俺のを挿れるため?」
「いれる?」
「うん。こんな風に……」
 
 ローションを足し、滑りをよくして指を一本入れてみた。第一関節までならすんなり入る。
 
「っ!?」
「わかる? 先っちょだけだけど」
「お、おまえの……?」
「ちょ、酷くない!? まだ指だけだよ。俺のこんなに小さくねぇから」
「ぁ、ゆび?」
「そーだよ。もうちょい入れるな」
 
 指の付け根まで入れると、瑞季は苦しそうに顔を歪める。指一本通るのがやっとってくらい圧迫感があり、溶けてしまいそうなほど熱い。内臓の温度だ。
 
「ごめん、痛い?」
「いや……うぅん、へんな感じ……きもちわるい」
 
 やはり、実際やるとなると難しい。最初からうまくはいかない。そもそもここは出す場所であって、入れる場所ではないしな。
 
「痛くはないんだよな?」
「うん……なんか、入ってるなって感じ……」
「じゃあ深呼吸して。あんまり力まないで」
 
 ゆっくりゆっくり指を動かし、肉壁を撫で解していく。中は意外と潤っているが、それでも時折ローションを足して乾かないようにする。間違っても爪を立てないよう、とにかく丁寧に、ゆっくり優しく解していく。かすかな水音と二人分の息遣いだけが響く。
 
 根気強く時間をかけて弄っていれば、窮屈だったところがだんだん柔らかく緩んできて、多少は自由に指を動かせるようになる。ゆっくりと抜き差ししたり、指を回してみたり、なおも丁寧に撫で解す。
 突然、瑞季が反応を示した。縮んでいたあそこも頭をもたげて固くなる。
 
「……今の、気持ちよかったの?」
「っわ、わかんない」
「ここ……うーん、ここか?」
「ぁあっ!」
 
 見つけた。瑞季のいいところ。少し固く、しこっている。これが前立腺か。男のGスポットだとか何とかってネットに書いてあった。
 
「ふぁ、や、なんで……??」
 
 不安と困惑の滲み出る声。そりゃあそうだ。尻を弄られてる時点で既に大混乱なのに、尻で気持ちよくなっちゃってるなんてにわかには信じがたいだろう。俺も信じられない。
 
「大丈夫だから、怖がらないで」
「だ、だって、こんな……」
「大丈夫、気持ちいいだけだよ。こっちもこんなになってるし」
 
 触っていないのに勝手に勃ち上がっているそれを弄ってやると、後ろも連動してきゅうっと締まる。だけど瑞季は嫌がって、たぶん怖がっているんだと思うけど、涙を浮かべてかぶりを振る。
 
「ひぅ、んぅう……やだ、やぁあ……」
「痛い?」
「いたくな、けど、こんなのしらないっ……あっ、それやだっ……ぐりぐり、しないでぇ」
「それってどれ? こっち? それともこっち?」
 
 中のいいところをこりこり擦りながら、亀頭をくりくり撫で回す。前も後ろもとろとろに蕩け、瑞季の表情もどろどろに溶けている。自ら大きく足を開いて腰を揺らめかす。顔も体も真っ赤に上気し、汗でてらてら光っている。
 
 もしかしたら、瑞季にはこっちの才能があるのかもしれない。最初から中で感じてるし、前立腺もあっさり見つかったし。
 
「なぁ、後ろだけでイケそう?」
「いっ? わ、わかんな、……んぁっ、こわい、こわいの、しゅうやぁ……」
 
 悩ましげに名前を呼ばれてぞくぞくする。いやいや、今日は何も挿入まで行けなくともいいんだ。とりあえず指を入れるところまでできたなら十分だ。
 
「イケなさそうだけど気持ちよくて怖い? 初めての感覚だからかな?」
「んぅ、うんっ……しゅ、しゅうやぁ、ちゅうして、……」
 
 両手を突き出してねだる。普段はチューなんて言わないのに。余程余裕がないのだろう。かわいい。唇を寄せると、両腕でぎゅっと抱きしめられた。かわいい。キスをすると、中がきゅんきゅん締まる。かわいい。
 
 それでもさすがに後ろだけでは達せず、口を使って前の方も愛撫してやる。口でするのは初めてだけど、バナナを食べる感覚とあまり変わらなかった。我慢汁のおかげでぬるぬる滑るし、口当たりも悪くない。
 
 初めての口淫に驚いたのか瑞季は甲高い悲鳴を上げ、じたばた暴れて逃げようとする。しかし俺がしっかり押さえ込んでいるので叶わない。
 
「ひぁあんっ! やっ、やっ、だめだめだめっ!」
「きもひい? らひていーよ」
 
 竿を抜きながら、亀頭をべろべろしゃぶる。裏筋をなぞったり鈴口をほじったりされるのが特に好きらしい。俺の顔の横で太腿がぶるぶる震え、踵がガクガク空中を蹴った。俺の背中も何度か蹴られた。
 
 髪の毛をぐしゃぐしゃに掴まれ、引っ張られる。喉を突かれて苦しくても、そんな風になるまで感じてくれていることが嬉しい。もっと乱れた姿を見たいと気合が入る。じゅるるっと品のない水音を立てて豪快に吸い上げる。
 
 もちろん、同時に後孔も刺激する。両方で感じて達してもらいたい。前を舐る度に肉襞が指に吸い付いて、搾り取るみたいにぎゅんぎゅんうねって気持ちいい。中指だけだけど、気持ちいい。ここに入ったらさぞかし気持ちいいのだろうと、まだ知らぬ快感に思いを馳せる。
 
「あ、あぁあッ! もうやら、だめっ、だめぇ……しゅ、や、しゅぅやぁ、……ぁあ゛ッ、く、くる、っ、きそ、きちゃう、やだぁあぁ……ッ」
 
 これ以上ないってくらい、切羽詰まった嬌声。絶頂に向け、瑞季の腰がだんだんせり上がってくる。爪先が震え、背中が弓なりに仰け反る。俺の手を強く握り、指を絡める。
 
 どくん。と、時限爆弾のように口の中のものが弾けた。じゅわっと舌の上に何とも言えない味が広がる。本当に何とも言えない。苦いとか青臭いとかよく聞くけれど、想像していたものより全然マシだと思う。というか、意外と悪くない。甘くない蜂蜜みたいな感じ。これが正真正銘瑞季の味なのだ。そう思うと愛しくなって、飲み込んでしまった。
 
「は……ぁ、う……」
「瑞季?」
「ふぁ……んぅ……」
 
 俺の顔を見て幸福そうに微笑んだかと思うと、瑞季はゆっくりと目を閉じた。ぐったりと弛緩した体。忙しく上下する胸。小刻みに震える太腿。切なげにヒクつく後孔。指を抜くと、名残惜しそうに吸い付いてくる。ローションかはたまた瑞季の愛液か、粘液がつと糸を引く。
 
 勃ったままの乳首。桜色を通り越して紅色だ。戯れに突つくと、ビクンと腰が跳ねる。あ、とかすかな声が漏れる。気を失っていても、敏感な体は勝手に反応するらしい。
 
 もう一度、瑞季の尻に視線を落とす。余韻でヒクヒクしているけど、蕾はほとんど閉じている。今日はまだ中指を入れただけで、とてもじゃないけど一物が入るほどのスペースはない。これからは指を二本、三本と増やし、じっくり時間をかけて拡張していかなくては。
 
「……一緒にがんばろうな」
 
 瑞季の銀の髪を撫ぜ、何とはなしに呟いた。汗で少し湿っていた。
 
 ぐしゃぐしゃに乱れた着物をできる範囲で直し、自分のものは自分で処理し、汚れたところは綺麗に拭いて、ようやく眠った。同じ布団で寝るのは初めてだ。お泊りだって初めて。瑞季の体温が心地よく、この上なく満たされた気持ちになった。
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