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どゆこと? 

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「でっかいな…」「おっきい…」「きれい…」「素敵…」
 初めて王様にもらった親父の屋敷を見た時の、俺、コルネちゃん、ミルシェ、ミレーラの感想。
 いや、みんなの語彙力が低い感想で申し訳ない。もう、その圧倒的な存在感に、言葉が出ないだけなんだが。

 門扉を案内役の方が開けて、馬車を玄関前のロータリーまで進めた。
 玄関扉の前には、折り目正しく執事服を着こなした壮齢の男性が手足の先までピンッ! と伸ばし立っていた。
 馬車から全員が降りて、執事さんの前に進みゆくと、
「ヴァルナル伯爵様、ようこそお出でくださいました…いえ、これは失礼しました。お帰りなさいませ、伯爵様」
 そう言って、腰を深く折った執事さんは、玄関扉をゆっくりと開けた。
 いやいや、その玄関扉めちゃくちゃでかいけど、何で1人で開けれるの!? 重くないの? しかも片手じゃん!
 俺がそう思いながら見ていたからなのか、執事さんは俺に視線を移して、
「トールヴァルド子爵様。私、執事でございますれば、これぐらい出来て当然でございます」
 で、出たーー! 執事の謎能力! 何でも執事なら出来てしまう、あの謎能力がまさかここで見れるとは!
「あ、う…うん。流石だね…えっと…?」
 そう言えば名前知らないや。
「これは大変失礼いたしました。伯爵様、子爵様、そしてご家族の皆様。私、陛下よりヴァルナル伯爵様の執事を仰せつかりましたセルバス・ジェンと申します。今後は、セバスとお呼びくださいませ」
 おお! セバスチャンじゃないけど、何か似てるぞ! でもその略し方で良いの?
「うむ…セバスよ、王都での暮らしはまだ先になろうが、色々と頼る事も多くなるだろう。よろしく頼む」

 父さんが執事さんに挨拶してたが、俺が気になったのは執事さんの名前じゃない。
 開けた玄関扉の中だ! 広い玄関ホールの中に、メイドさんと執事さんが、ずらっと左右に並んでる! え、これ何? 
 ひのふの…少なくとも20人は居るんだけど? それも成人したばっかぐらいの少女から、20代の綺麗なお姉さんまで! あ、ショタ執事もいるな…。
 もしかして、これ(失礼)も貰えるの!? めっちゃうらやま! 俺も欲しい! 王様に頼んだら貰えるかな?
「トール様、羨ましい、俺も欲しい、とか考えていませんか?」
「トールさま…何か不穏な事を考えていませんか?」
「あ…あの…トールさま、そういう考えは良くないと思います…」
 メリルさん、何を仰ってますやら…。
 ミルシェさん、そんな事はありませんよ…。
 ミレーラさん、一体何の事でしょうか…。
「あ、あは、あはは、あははははははは……」
 ごめん…考えてました。だって、美女・美少女ばっかりなんだもん! 目の保養にいいじゃん! ハーレム願望は無いけど、華やかだし、良い匂いするし! 手は出さないけど、見るだけならいいじゃん! って、言いたいけど…言ったらこの身が危うい! 間違いなく死ぬる…。
 俺は危機察知能力が高いのだ! ここは得意のポーカーフェイスで乗り切らねば!
「トールさま…表情消して、この場を誤魔化そうとしても無駄ですよ。全部お見通しです」
 何でだよ! ミルシェの謎能力が進化してるじゃん! どうしてそこまで正確に心を読めるんだよ!
「トール様、誤魔化そうとしてもバレバレですよ? あれほど先に私達に手を付けなさいと言っているのに、まったく…」
 え? メリルにも謎能力が芽生えたの?
「いえ…全然、誤魔化せて無いですよ。お顔に出てますから…」
 マジ? ミレーラにも分かるのか? おかしい…得意技が効かないとは…まさか、本当に全部バレバレ?
「「「バレバレです!」」」

【メリル・ミルシェ・ミレーラの がったいこうげき! トールヴァルドは かいしんのいちげきをうけた!】
【ぐふっ!】
【トールヴァルドは しんでしまった! おお トールヴァルド! しんでしまうとは なにごとだ!】

「きっと、トールさまは、何かふざけた事を考えています!」
 ミルシェよ…もう許して…
「「「反省してください!」」」
 はい……

 そんなおふざけはこの辺にして。まあ、何だ。この屋敷(城)と使用人のセットを、昨日の今日で用意するなんて、王様の本気度が怖い!
 いや、待てよ? そんなすぐに用意出来るわけがない。つまり、これは元々ひそかに計画され、進められていたんだろうな。
 それだけ国王様にとって、父さんが大事って事だな、うん。
「陛下には礼を言わなければな。これほどの物を用意していただけるなんて」
 父さんも感慨深そうだ。
「そうだね。それだけ父さんに期待してるんだと思うよ」
 うんうん、良い事だ!
「は? お前、何を言ってるんだ? この屋敷は将来、お前の物になるんだぞ? それを見越して、陛下が用意して下さったに決まってるじゃないか。馬鹿な事を言うやつだなあ。期待されているのは、お前だよ…ははははははは!」
 え!? どゆこと? ねえ、どゆこと?
「俺が隠居する時は、お前の領地のあの湖畔の屋敷と交換だな。いや~ウルリーカと綺麗な景色を見ながらのんびり余生を送るとしよう!」
 え…何それ!? ちょっと待て! それは俺の老後のライフプラン…
「お前の将来は宰相だ。いや~出来の良い息子を持つと将来安泰だ! 隠居したら、俺はお気楽極楽隠居生活だな~! 頑張れよ、我が息子よ!」
 ちょっと待って! そのお気楽極楽生活は俺のもんだーーー!
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