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是非この機会に!
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うん、もう俺が言う事は何も無い。
お色直しを終えて、パーティーホールに隣接した控室に集合した嫁~ずは、それはそれは華やかだった。
メリルは濃紺で七分丈という、一見すると地味に感じるドレスなのだが、各所に散りばめられた小粒のダイヤがキラリと輝き、美しい金髪も相まって、とても上品な美しさだ。
ミルシェは、淡いブルーグリーンの膝丈のドレス。なんと縦糸がグリーンで横糸がブルーで編まれた生地は、見る角度によってドレスの色が蒼にも碧にも見えるという、凝った作りだ。耳元に輝くイヤリングの石は透明感のある赤紫。
ミレーラは、ちょっとミニな艶のある鮮やかなブルーのドレス。深い藍色の石の嵌ったイヤリングとネックレスで、藍色で統一。
マチルダのドレスは、そのメリハリのあるボディーラインを際立たせるかの様な仕立てだ。まるで身体を圧迫するかのようにキュッとしまった薄紫のドレスは、マチルダの体形と知性のレベルの高さを物語っている様だ。シルバーを大目に使い、パープルの輝きを持つ石の付いたピアスが、後ろでゆるく1本編みにしたために露わになった耳元で輝く。
イネスは普段の漢らしさから一変して、大きめのフリルとリボンを大胆にあしらった紅いドレス。特に腰の大きなリボンがキュートだ。
大人の女性と少女っぽさの混在した、計算し尽くされたかのようなアンバランスさが美しい。小さ目の紅玉のピアスが真っ赤なルージュと共に、妖艶さを醸し出している。
あ~何だ…つまりは、ジェムファイターの色に合わせたって事だな…似合ってるけど…ちょっと言ってもいいかな?
この後にある、夫婦の初めての共同作業って、普通はウェディングドレスでするもんだよね?
『大河さん、それは地球でのお話です。そもそもこの世界でのケーキカット第一号は、ユズユズですからね?』
そりゃそうだな。サラの言う事も一理ある。何も地球の風習や結婚式の様式に囚われる事も無いもんな。
『いいじゃないですか、この世界風の結婚式にしちゃえば!』
うむ、良きに計らいたまえ。
『私も余興を担当させてもらっておりますので、どうぞお楽しみに』
リリアさんの余興? まさか、サラを荒縄で縛って蝋燭を…それは公序良俗にとR指定に反するのでまずいのでは?
『アホかー! 何で私が公衆の面前で亀甲縛りで鬼畜攻めを受けにゃならんのですかーー!』
いや、リリアさんの特技って、それかな~って。あとゲストさんに犠牲者は出したくないので、サラならどうなっても構わないかなっと。
『あんたが私をどんな目で見てるか、よ~~~っくわかった!』
え? 今頃気が付いたのか?
『え?』
サラと初めて会った時からだぞ?
『マジっすか!?』
大マジです。
『……………』
控室の扉をドワーフメイドさんが静かに左右に開くと同時に、火と水の精霊さん渾身の協力技であるスモークが俺達を覆い始めます。
うん、スモークじゃなくミスト…いや、フォグだな。間違いなく霧ですね。
あんまり激しいとせっかくのドレスがぐっしょりしちゃうけど、そこは火の精霊さんがこっそり俺達に届く寸前に乾燥させるという、高等テクニックを披露中です。
「トール様…このスモーク、煙の臭いしませんけれど?」
「ああ、メリル達がスモーク演出したがってたから、魔法でちょちょいっとやってみたんだけど…迷惑だった?」
メリルの小声の問いに、俺も小声で応えると、嫁~ずが一斉に首を横に振って、嬉しそうに笑ってくれた。
精霊さんに頼んだだけなんだけどさ…本当は、精霊さんなら色付きのスモークとかも出来たかもしれないけど、そこは自重してもらった…精霊さんに。
スモークが漏れ出るが、構わずメイドさんが扉を開き切ると、俺達にスポットライトが当たる。
新開発した、光の魔道具を束ねた特注品だ。
今後、この式場に常設するだけでなく、他にも色々と使い道があるので、開発費をつぎ込んだ。
その甲斐あって、地球の式場にあるスポットライトと遜色ない出来で満足だ。
俺達の入場に合わせて、事前にホールの窓のカーテンは閉められ、照明も落としたので、お客様はいきなり暗くなって驚いただろうが、そこに俺達がスモーク(?)と共に眩しいまでの光に照らされての登場という、ド派手な演出に驚きすぎて声も出来ない様だ。
「皆様、新郎新婦の入場です。盛大な拍手でお迎えください」
ユズカが拡声の呪法具を握りしめて司会をつとめている。声を張り上げるでもなく、力まず滑らかでテンポの良い、なかなか上手い司会だ。ユズカ、才能あるな…これからは司会の仕事もやらせてみるか…バイト代はずめば、いやとは言わないはず。
俺達6人は、新郎新婦の席の横にある扉から、お客様方に会釈をしながらゆっくりと入場した。
さて、またまた新作のドレスなのだが、5人の花嫁のドレス姿に見惚れていたのは、もちろん男性諸氏だけではない。
女性のお客様も、この世界では見た事も無い全く新しい仕立てに、見惚れたり羨望の眼差しを嫁~ずに向けてたりする。
どうだ! これがアルテアンの職人の、全力全開渾身の作品だ!
このドレスと同じ物は、我がアルテアン領でしか仕立てられません! 是非この機会に、奥様やお嬢様に一着いかがですか?
今なら新作発表サービス特価、なんと通常よりも10%お安くなっております。どうぞお見逃しなく! なんて言ったら、きっと飛びつきそうな勢いの女性陣に気圧された男性陣のしょぼくれた姿が見られるんじゃないかと思うが、どうだろう?
後で、父さんの領地の仕立て屋さんで、随時ご注文はお受けしておりますので、どうぞよろしく願いしますと宣伝だけはしておこうかね。
もちろん、モデルも最高ですよ? っと、褒める事も忘れてはいけない。
忘れると、とっても怖い事になるからな…。
お色直しを終えて、パーティーホールに隣接した控室に集合した嫁~ずは、それはそれは華やかだった。
メリルは濃紺で七分丈という、一見すると地味に感じるドレスなのだが、各所に散りばめられた小粒のダイヤがキラリと輝き、美しい金髪も相まって、とても上品な美しさだ。
ミルシェは、淡いブルーグリーンの膝丈のドレス。なんと縦糸がグリーンで横糸がブルーで編まれた生地は、見る角度によってドレスの色が蒼にも碧にも見えるという、凝った作りだ。耳元に輝くイヤリングの石は透明感のある赤紫。
ミレーラは、ちょっとミニな艶のある鮮やかなブルーのドレス。深い藍色の石の嵌ったイヤリングとネックレスで、藍色で統一。
マチルダのドレスは、そのメリハリのあるボディーラインを際立たせるかの様な仕立てだ。まるで身体を圧迫するかのようにキュッとしまった薄紫のドレスは、マチルダの体形と知性のレベルの高さを物語っている様だ。シルバーを大目に使い、パープルの輝きを持つ石の付いたピアスが、後ろでゆるく1本編みにしたために露わになった耳元で輝く。
イネスは普段の漢らしさから一変して、大きめのフリルとリボンを大胆にあしらった紅いドレス。特に腰の大きなリボンがキュートだ。
大人の女性と少女っぽさの混在した、計算し尽くされたかのようなアンバランスさが美しい。小さ目の紅玉のピアスが真っ赤なルージュと共に、妖艶さを醸し出している。
あ~何だ…つまりは、ジェムファイターの色に合わせたって事だな…似合ってるけど…ちょっと言ってもいいかな?
この後にある、夫婦の初めての共同作業って、普通はウェディングドレスでするもんだよね?
『大河さん、それは地球でのお話です。そもそもこの世界でのケーキカット第一号は、ユズユズですからね?』
そりゃそうだな。サラの言う事も一理ある。何も地球の風習や結婚式の様式に囚われる事も無いもんな。
『いいじゃないですか、この世界風の結婚式にしちゃえば!』
うむ、良きに計らいたまえ。
『私も余興を担当させてもらっておりますので、どうぞお楽しみに』
リリアさんの余興? まさか、サラを荒縄で縛って蝋燭を…それは公序良俗にとR指定に反するのでまずいのでは?
『アホかー! 何で私が公衆の面前で亀甲縛りで鬼畜攻めを受けにゃならんのですかーー!』
いや、リリアさんの特技って、それかな~って。あとゲストさんに犠牲者は出したくないので、サラならどうなっても構わないかなっと。
『あんたが私をどんな目で見てるか、よ~~~っくわかった!』
え? 今頃気が付いたのか?
『え?』
サラと初めて会った時からだぞ?
『マジっすか!?』
大マジです。
『……………』
控室の扉をドワーフメイドさんが静かに左右に開くと同時に、火と水の精霊さん渾身の協力技であるスモークが俺達を覆い始めます。
うん、スモークじゃなくミスト…いや、フォグだな。間違いなく霧ですね。
あんまり激しいとせっかくのドレスがぐっしょりしちゃうけど、そこは火の精霊さんがこっそり俺達に届く寸前に乾燥させるという、高等テクニックを披露中です。
「トール様…このスモーク、煙の臭いしませんけれど?」
「ああ、メリル達がスモーク演出したがってたから、魔法でちょちょいっとやってみたんだけど…迷惑だった?」
メリルの小声の問いに、俺も小声で応えると、嫁~ずが一斉に首を横に振って、嬉しそうに笑ってくれた。
精霊さんに頼んだだけなんだけどさ…本当は、精霊さんなら色付きのスモークとかも出来たかもしれないけど、そこは自重してもらった…精霊さんに。
スモークが漏れ出るが、構わずメイドさんが扉を開き切ると、俺達にスポットライトが当たる。
新開発した、光の魔道具を束ねた特注品だ。
今後、この式場に常設するだけでなく、他にも色々と使い道があるので、開発費をつぎ込んだ。
その甲斐あって、地球の式場にあるスポットライトと遜色ない出来で満足だ。
俺達の入場に合わせて、事前にホールの窓のカーテンは閉められ、照明も落としたので、お客様はいきなり暗くなって驚いただろうが、そこに俺達がスモーク(?)と共に眩しいまでの光に照らされての登場という、ド派手な演出に驚きすぎて声も出来ない様だ。
「皆様、新郎新婦の入場です。盛大な拍手でお迎えください」
ユズカが拡声の呪法具を握りしめて司会をつとめている。声を張り上げるでもなく、力まず滑らかでテンポの良い、なかなか上手い司会だ。ユズカ、才能あるな…これからは司会の仕事もやらせてみるか…バイト代はずめば、いやとは言わないはず。
俺達6人は、新郎新婦の席の横にある扉から、お客様方に会釈をしながらゆっくりと入場した。
さて、またまた新作のドレスなのだが、5人の花嫁のドレス姿に見惚れていたのは、もちろん男性諸氏だけではない。
女性のお客様も、この世界では見た事も無い全く新しい仕立てに、見惚れたり羨望の眼差しを嫁~ずに向けてたりする。
どうだ! これがアルテアンの職人の、全力全開渾身の作品だ!
このドレスと同じ物は、我がアルテアン領でしか仕立てられません! 是非この機会に、奥様やお嬢様に一着いかがですか?
今なら新作発表サービス特価、なんと通常よりも10%お安くなっております。どうぞお見逃しなく! なんて言ったら、きっと飛びつきそうな勢いの女性陣に気圧された男性陣のしょぼくれた姿が見られるんじゃないかと思うが、どうだろう?
後で、父さんの領地の仕立て屋さんで、随時ご注文はお受けしておりますので、どうぞよろしく願いしますと宣伝だけはしておこうかね。
もちろん、モデルも最高ですよ? っと、褒める事も忘れてはいけない。
忘れると、とっても怖い事になるからな…。
応援ありがとうございます!
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