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6章
2度目の鬼
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あれからさらに1年
ボロンゴ、プックル、チロルは毎日交代で宇宙船を見張っている
桃太郎たちは次の来襲者が来ても、すぐに行けるように港の近くに住居を移していた
お雪と吾郎も一緒だ
お雪と吾郎はせっかくだからと、蕎麦屋で安い賃金で雇われ、働いていた
この日、桃太郎はシータと共に、目黒の米問屋に来ていた
或右衛門に呼ばれていたからだ
桃太郎「どうしたよ?…みんな集まって」
或右衛門だけではなく、おみつ、おみつの子のおたえ、臣九郎、およしもいて、みんないつもより緊張している感じだった
シータ「おお、よちよち…ナデナデ…おたえちゃん大きくなったねえw」
おたえ「しーし、しーし」
シータ「うん、しーしだよぉ」
或右衛門「かわいいだろお?w」
シータ「ああ、おみっちゃんの子だしな」
或右衛門「お、オレの子でもあるからな?」
おみつ「ブフw」
桃太郎「臣たちは子どもまだか?」
臣九郎「まだw…実はこれから話そうとする事に関係があってな」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「ゲレちゃんさ、今度の奴らが来て戦うだろ?」
桃太郎「うん」
臣九郎「オレたちは足手まといになるだけだから、悪いけど参加はしない…」
桃太郎「うんうん…それでいいぞ」
臣九郎「でも、制圧が済んだらオレたちを呼んでほしいんだ」
桃太郎「…帰りてえのか?」
臣九郎「いや…或はわからねえけど、オレはもう未練はない」
或右衛門「オレもねえ」
桃太郎「…?…なんかそいつらに用があるとか?」
臣九郎「いや、全然」
シータ「あれか?…宇宙船の操縦か?」
臣九郎「そう…」
桃太郎「ん?」
シータ「あれを動かす技術だよ…わたしは知らないの…」
臣九郎「まあ、実際はゲレちゃんだけでも行ける…帰還操作すればいいだけだからね」
或右衛門「指定した座標に自動で行ってくれるんだよ」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「で、地球に戻るのも簡単操作だ…奴らの船にも地球の座標が記録されてると思うからさ」
桃太郎「ほむほむ…ならいいじゃんw」
臣九郎「でもな、不測の事態ってのもある…宇宙…あの空の向こう側ってのは、こことは大違いの環境なんだ…ものすごく危険なんだよ」
桃太郎「どんなふうに?」
臣九郎「まず、空気がない」
桃太郎「え?…息できないの?」
臣九郎「息できないどころじゃないんだw…そらもう恐ろしい事になる…それから、宇宙は気温がものすごく低い…冬は寒いだろ?」
桃太郎「うん」
臣九郎「それでも温度は0度とかなんだけどさ…宇宙は酷いとマイナス270度とかなのよ」
桃太郎「マイナスってのは引くって事だよな?…つまり、暑いの逆の温度?」
臣九郎「そうそう…で、あともっとヤバいのが放射線ってやつだ…それはこの地球にもほんのちょっぴりはあるけど、そいつが宇宙には大量にあってな…そいつに晒されるといくらゲレちゃんが強くても、そんなの関係なしに死ぬ…誰でも死ぬ」
桃太郎「そ、そんな危険なのか…」
臣九郎「宇宙船に乗ってるか、オメガを着てるなら大丈夫だけどな…生身じゃきっと1分ともたない」
桃太郎「う、うん…」
臣九郎「そしてこれが一番想像しにくいと思うけど、宇宙には重力がない…重力ってのはオレたちがこうしてここに座ってられる力だ」
桃太郎「うん?」
臣九郎「例えばこの刀さ…こいつは今手を離すとどうなる?」
桃太郎「床に落ちる」
臣九郎「当たり前だよな?」
桃太郎「うん」
臣九郎「けどそれは地球が引っ張ってるからなんだよ」
桃太郎「地球が?」
臣九郎「そう…だけど宇宙にはその力がないから、ここで手を離したら、ここに留まるわけ」
桃太郎「うっそだ~ww」
臣九郎「いや本当にw」
シータ「そうなのよw」
桃太郎「そ、そうなの?…で?」
臣九郎「そして空気もない…つまり、物を止める力が何もないわけ」
桃太郎「う?」
臣九郎「オレが刀をこう…投げる…そうすっと、弧を描いて床に落ちて止まるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「落ちるのは重力があるから、もしそれがなくても、空気があればいつかは止まる…空気が止めてくれるから…けど、宇宙にはそれがないから、投げたら真っ直ぐずっと同じ速さで飛びっぱなしだ」
桃太郎「ええ?!…うっそだろお前w」
臣九郎「本当だってばw…つまり、宇宙で何かあって、宇宙船が壊れて投げ出されたとする…でも、オメガとか宇宙服を着てればすぐには死なない…だけど、すっ飛ばされたらゲレちゃんはその方向にずっと…なにかに当たるまではずっと止まらずに進み続ける…そうなったらもう誰にも会えない…孤独にオメガの電力がなくなるまで生きて死ぬ」
桃太郎「こ、こええ…そんな死に方はさすがに嫌だ…」
臣九郎「まあ、そんな事故ってのはほとんどないに等しいんだけどさ…なぜかっつうとさ…夜空を見上げてみると星ってたくさん光ってるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「いっぱいもう数えきれない程あるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「けど実際は星と星の間隔ってものすごく距離があるわけ…例えばさ…遠い海に砂粒を一つ浮かべてさ…その砂粒を探してみ?って言われて、ゲレちゃんは見つけられると思う?」
桃太郎「いや、そんなの無理だろw」
臣九郎「宇宙ってのはそんな感じなんだよ…だから何かにぶつかるってのはそうそうない…だけどそれでも可能性は0じゃない」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「そうなった時には避けなきゃいけない…そうだろ?」
桃太郎「うん…じゃないとオイラもシータも死ぬ…」
臣九郎「けど、宇宙船を動かすってのは知識と技術がいる…そんでラムダにはそれは教えられてない…つまりシータは知らない」
桃太郎「物…だからか?」
シータ「うん…」
臣九郎「動かせるのはそう訓練された、或右衛門か…ギリギリオレなんだな」
或右衛門「すごいだろ?」
桃太郎「う、うん…なんかムカつくなw」
シータ「チッ…」
おみつ「ブフw」
桃太郎「じゃあさ…お前たちが地球に来た時、着地に失敗したのはなんでよ?」
臣九郎「それはな…実は以前から調べる為に探査機ってのを地球の周りにオニールから飛ばしててさ…それが運悪くテレポートした少し先にあったんだな…」
桃太郎「へぇぇ」
シータ「普通ならそんな事ないんだけどね…探査機はそれ一つだけじゃないけど、それでもねえ」
臣九郎「うん…ほんと運が悪いとしか言いようがない…で、或がそいつを回避しようとして、でも避けきれなくてぶつかって、予定の地点とは違う、この江戸に落ちたってわけさ」
シータ「もっと上手く避ければねえ」
或右衛門「し、仕方ないだろ…」
桃太郎「まあまあ…だからオイラはシータと会えたんだし」
シータ「うん…スリスリ」
或右衛門「そうだぞ」
桃太郎「…なんかムカつくw」
臣九郎「おめえは黙ってろよw」
或右衛門「お前、オレの方が先輩だからな?」
おみつ「或さん!」
或右衛門「はい、すみません」
およし「ブファw」
臣九郎「まあさ、そうだとしてもゲレちゃんにはそんな時どうする事も出来ないわけだ…たとえこんなのでも、居た方がマシってやつだ」
或右衛門「ひどくない?…少なくとも臣よりは上手いんだぞ?…ウル」
シータ「わかったわかった…」
臣九郎「だからさ…オレたちもオニールに一緒に行く事にしたんだ」
桃太郎「…おみっちゃんとおたえとおよしちゃんは?」
臣九郎「…連れてく…だからオレは子供作るならそれが終わってからにしようと思ってる」
シータ「なるほどね…」
桃太郎「おみっちゃんもおよしちゃんもそれでいいの?」
おみつ「はい…たくさん考えて、話し合って…覚悟を決めました」
およし「わたしは…臣さんとならどこで死んでもいい///」
臣九郎「およし…ギュ」
桃太郎「けど…そんなの次に来る奴らにやらせりゃよくない?」
臣九郎「次に来る奴らはそうすると、オニールには戻ってくれるけど、地球には戻りたくないだろう…」
桃太郎「なんで?…オイラたちを地球に下ろしてまた戻ればいいじゃん」
臣九郎「そんなに燃料はないよ…一往復しかできない…だからそれもあってさ…ゲレちゃんたちは宇宙船に燃料を補給する技術もないからさ…オレたちが必要になる…だけど、その補給だってのんびりやれるわけじゃない…満タンじゃなかったら、またここに帰ってもオニールには戻れない…そうだろ?」
桃太郎「そっか…」
臣九郎「ゲレちゃんはきっと、次に来る奴らも殺さないだろうし、出来る事ならちゃんと帰してやりてえだろ?」
桃太郎「そりゃそうだ…」
臣九郎「オレはさ…ぶっ殺した方がいいと思うけど…でもそれが出来るゲレちゃんじゃねえのはよくわかってる…だから好きなんだ」
桃太郎「てへへ///」
臣九郎「甘いなって思うけどなw…そんで、そいつらにやらせるってなってもさ、ゲレちゃんはぶっちゃけ、そいつらを信用出来るか?」
桃太郎「うーん…会ってみねえ事には…」
臣九郎「はっきり言って、普通オニール人はもっとオレたちより冷たい…急ぎ働きタイプだ…ラムダもゲレちゃんの命令はきかないと思うし、冷たい」
桃太郎「そうなのか?…シータは優しいじゃん」
臣九郎「シータがちょっとみんなと違うんだ…だからオレはシータを仲間に選んだんだからな」
シータ「…そうだったの?!」
臣九郎「うん…ほんとはヘラって奴だったんだけど…知ってるか?」
シータ「知ってる…本当に兵器みたいな奴だ…」
臣九郎「オレはそんなのと一緒に何日も宇宙を旅するのはごめんだった…だから一番人間味のあるシータに変えてもらったんだ」
シータ「そう…でもわかる気がする…臣は明るいもんね…」
臣九郎「そうそうw…つまんねえのはごめんだw…だからオレは或右衛門と仲良くなったしなw…或右衛門はたしかに察しが悪いし、変な奴だけど、少なくとも他人を平気で傷つけたりはしない奴だからさ」
或右衛門「臣///…照れるじゃねえか///」
臣九郎「オレは人殺しになるために軍に入ったわけじゃないから…そりゃ時には殺したりもするけど…ゲレちゃんみたいに強くないからさ…でも、他の連中は違う…殺すのに慣れちまってる…それがオニールの軍人だ」
シータ「臣九郎…」
桃太郎「臣九郎…お前、カッコいいな」
臣九郎「そんなんじゃねえってw…オレはただ、もっとみんなゲラゲラ笑って生きればいいのによって思うだけだw」
桃太郎「だな…」
臣九郎「だからさ…オレはオニールに帰りたいと思わない…およしと優しい江戸の連中と暮らした方がオレはずっと楽しい…だから絶対にまたここに帰りたい」
桃太郎「うん」
臣九郎「けどだからってゲレちゃんを見捨てるのも出来ない…そんなのは江戸っ子のやる事じゃないw」
桃太郎「うんw」
臣九郎「けど、およしも一緒だから、オニールに着いても、オレはゲレちゃんと一緒には戦わない…ただ、ゲレちゃんを無事に地球に帰す為についてく…ゲレちゃんが戦って死んじまったら…冷たいようだが、オレはゲレちゃんもシータも放ってとっとと地球に帰る」
桃太郎「十分だ…それでいい…オイラだっておめえらに死なれたくねえ」
シータ「うん…かまわないよ」
或右衛門「…悪いな…おみつたちは置いてけばいいと思うけど…それも出来ない」
桃太郎「わかってる…オイラだってシータを置いていかないんだ…ただ、本当死ぬなよ?」
臣九郎「ああw…そんなには弱くもないぜ、オレたちだって」
或右衛門「おう…おみつとおたえを守る為なら、本当の鬼にもなって斬ってやる」
桃太郎「…わかった…ありがとう」
シータ「ありがとね…」
臣九郎「いや…元はと言えばオニール人が悪いからw…ゲレちゃんばっか苦労させて申し訳ないぜ…」
桃太郎「いいんだ…それがオイラの役割なんだから」
シータ「カッコいい///」
おみつ「ほんと!///」
桃太郎「…お前たちが居なくなっても、このおたなは大丈夫なのか?」
臣九郎「大丈夫…だんなはもう説得したし、長谷川様にも気にしてくださるようお願いしてある」
桃太郎「ぬかりねえなw」
およし「頼りになりますよね///」
桃太郎「ああw…心強いぜ」
臣九郎「まあ、ちゃちゃっと終わらせて、帰ってまた遊ぼうぜw」
桃太郎「だなw」
臣九郎「けど…ゲレちゃん…一つ約束してくれ」
桃太郎「ん?」
臣九郎「ゲレちゃんには辛いだろうけど…地球を乗っ取る計画を立てた3人の奴らは、1人残さず殺してくれ…殺すの嫌だろうけど、そればっかりは仕方ねえ事だ…」
桃太郎「…わかってる…覚悟はしてる」
臣九郎「辛え事ばっかさせてすまねえ」
桃太郎「いいってw」
シータ「もしゲレちゃんが躊躇したら、わたしがやるよ…」
臣九郎「うん、頼んだ…その3人の名は知ってるか?」
シータ「うん…クロノス、ハデス、ゼウスだよね」
臣九郎「そう…そいつらにたどり着くのも大変だけど…頑張れとしか言えない」
桃太郎「十分だよw」
臣九郎「話はそれで全部だ」
桃太郎「わかった…じゃ、オイラは帰る」
或右衛門「帰るの?…久しぶりなんだし、今日は泊まってけよ」
桃太郎「その間に奴らが来たら、ここじゃすぐに行けないだろw」
或右衛門「ああ…そっか…」
桃太郎「楽しくやるのは何もかも済んでからさ…じゃあ帰ろう、シータ」
シータ「うん…おたえちゃん返すね、おみっちゃん」
おみつ「はい…すっかり寝ちゃってw…しーしが好きなのよね」
シータ「わたしも子どもが好きみたいw…じゃあまたね」
およし「はい…お気をつけて!」
臣九郎「またなw」
そうして桃太郎とシータは帰った
それからまた数日後
チロル「今日はオレだな…行ってくる」
桃太郎「うん…気をつけてな!」
チロルは鬼ヶ島に着くと、宇宙船に入り、充電器に繋がる
宇宙船のソーラーパネルは無事なので、電力は今も作られている
チロル「ふう…しかし、いつ来るのかね…ちゃんとここに来ればいいけど…」
チロルたちは機械なので、退屈は感じない
たいがい何もしていない時は省エネモードにしている
朝になったら鬼ヶ島に来て、また朝に帰り、交代する
この何もない島で、24時間ただひたすらジッといつ来るかもわからないものを見張るのは、人間なら耐えられないだろう
チロル「オレあと何年くらいもつかな…体…」
チロルは妨害電波を出す機能があり、それを使うのは身体にも負担がかかる
オニールならば部品の交換がすぐに出来るが、地球では消耗したらそれまでだった
チロル「メモリーさえ無事なら死なないけど…いやだな…またイズさんに会いたい」
チロルたちはイズが大好きだった
中でも特にチロルは好きなのであった
ボロンゴやプックルは見た目はかわいい犬や猿なので、みんなに触られてかまってもらえるが、チロルは大きな鳥なので、抱っこしてくれる人と言えば桃太郎くらいだ
しかし、イズはみんなが鍛錬をしてる最中も、ずっと抱っこしてくれていた
チロル「機械なのにな…オレ」
ここ、鬼ヶ島に居るとイズの事を思い出す
チロルは宇宙船のモニターに接続し、イズの映像を映した
チロル「あと198年か…絶対そんなにもたないよ…」
一番懸念するのはバッテリーの寿命だ
チロルたちはバッテリーが一番消耗しない、50%~80%の電力を維持するように注意していた
過充電や消耗した状態からの充電は負荷が大きいのだ
しかし、いつでもそう上手く維持出来るわけではない
チロル「それでももたないだろうな…イズさんに会うどころか、ゲレちゃんとも居られないだろう…」
チロルは自分が機械であるのに、どうしてこんなに寂しくなったりするのか、いつも不思議に思う
チロル「ゲレちゃんがメモリーだけでもずっと持ってくれてたら、レイさんたちが体を作ってくれるかな…」
そう考えていると、ハッチの開いた事を知らせる灯りが光った
チロル(ついに来たか?)
チロルは充電器を外し、透明になり、待った
すると、オメガを着た者たちが入ってきた
「なんでこんなとこに不時着してるんだ?」
「さあね…前の奴らはどこだ?」
「まさかやられたのか?…こんな時代遅れの奴らに」
「だけど死体もオメガもないな…」
チロル(4人か?…今回も)
チロル(どうやって抜け出すかな…)
充電器は操縦室にあり、彼らがまず調べに来るのは当然操縦室だ
チロルは透明とはいえ、注意して見ればバレてしまう
チロル(ちょっと電力使うけど、あの物陰で粒子化しよう…)
チロルは操縦席の下の隙間に、粒子になって入りこんだ
チロル(隙を見て粒子のまま外に出て…飛んでいくしかない…)
しかしそれは非常に危険でもあった
粒子の状態で攻撃されればすぐに破壊されてしまうし、身体を構成する粒子が揃っていなければ、中途半端な形になってしまう
なによりメモリーだけは粒子化出来ないので、それを破壊されれば終わりだ
透明になるにも一旦元の形に戻ってからでなくては出来ない
「通信システムが動かない…直そうとはしたみたいだ」
「アルファとオミクロンは優秀な人間だったんだろ?」
「だけど、メカニックはツェータというラムダだけだったようだね」
「ほんとはアタシが来るはずだったのに」
彼らは他の船員たちの部屋を手分けして見る事になった
チロル(よし…しめた)
チロルは一旦体を元に戻して、透明になり、すかさず外に出た
外にはアルファの宇宙船より少し大きめな宇宙船があり、その宇宙船のそばに銃を持った2人が見張っていた
チロル(全部で6人か?…急いでゲレちゃんに伝えなきゃ)
チロルのバッテリーは残り60%になってしまっていた
桃太郎の長屋
チロル「ゲレちゃん!」
桃太郎「おっ!…もしかして!」
チロル「うん、奴らだ…今度は見えた限りでは6人いる…大丈夫?」
桃太郎「問題ないw」
シータ「やっと来たかw」
ボロンゴ「チロル、よく無事だったな…ホッとしたよ」
プックル「うん、良かったぜ」
チロル「ははw…人の心配するなんておかしいなw」
ボロンゴ「全くだw」
桃太郎「おっし…行くか」
チロル「悪いけどゲレちゃん…ボロンゴに乗ってくれ…オレは電力が少ない…妨害電波を出す電力は確保しないと」
桃太郎「わかった…ボロンゴ乗るぞ」
ボロンゴ「わん!」
桃太郎「ブファww…やめろ、こんな時にww」
シータ「ブフゥww」
プックル「シータ、余計な事かもだけど、ポテンツァはちゃんと持った?」
シータ「うん…大丈夫!…二つちゃんとある!…ありがと!」
チロル「早く行こう」
道中、空
チロル「あいつらのうち、4人はまだアルファの船を調べてると思う…外に奴らの船を守ってるのが2人…先にそいつらをやっちまおう」
桃太郎「オケオケ…おめえらは全員シータを守れよ?」
プックル「うん、わかってる」
ボロンゴ「わん!」
桃太郎「ブフww…それ流行ってるのか?w」
ボロンゴ「うんw」
シータ「ククww」
プックル「キー!!」
桃太郎「いや…お前のはなんか違うわ…」
シータ「うん…」
プックル「なんでよw」
桃太郎たちは鬼ヶ島に降りた
奴らの宇宙船の影に降りたので、まだ気付かれてはいない
ボロンゴとプックルは透明になり、シータの後ろを進み、チロルは透明にはならず、宇宙船の影に隠れていた
桃太郎「よう」
「な!…お前!」
桃太郎はすかさずガンマソードで一閃し、1人倒し、倒れて仰向けになっている足に叩きつけ、太腿を折った
その激痛のショックで気絶した
簡単に倒され、もう1人は狼狽える
「う、うそだ!」
シータ「ウソじゃない!」
「あががが…ガク」
シータ「うそ…この武器すごいw」
桃太郎「オイラもびっくりだ…簡単にオメガが壊れたよ」
シータ「負ける気しないねw」
桃太郎「しねえw」
ボロンゴ「奴らはまだこちらに気付いてないな…ハッチの前で待ち伏せしよう」
プックル「おい、チロル…もう来ていいぞ」
チロル「うん」
ハッチ前
チロル「ここからなら妨害電波届くよ…奴らの銃を使えなくするよ」
桃太郎「頼む」
チロルは妨害電波を出すと、機能停止した
桃太郎「ち、チロル!」
ボロンゴ「大丈夫…残り電力がわずかになったからスリープモードになったんだ…充電すればまた元気になるよ」
プックル「ごめんな、チロル…お前ばっか負担でよお」
シータ「ね、音出しておびき出そうか」
桃太郎「そうするか」
桃太郎はハッチの中に入り、壁をガンガンと拳で叩いた
中から4人が出てくる
桃太郎「こいや」
「なんだと…外の奴らは?」
桃太郎「あっちで寝とるよw…来いよ」
「アタシが行く!」
そう言って銃を構え、突進してくるが、銃は不発になっている
銃を捨て、細身の剣で桃太郎に斬りかかる
桃太郎「シータ、こいつは任せる」
桃太郎は剣を折り、ハッチの外に蹴り出した
シータ「あんた女だね?…ラムダか?」
「お前…たしかシータ」
シータ「わたしを知ってるの?」
「アタシの代わりになんでお前が選ばれたんだ」
シータ「てことはヘラか…さあね…弱いからじゃない?」
ヘラ「こいつ!」
ヘラの成績はラムダの中でもトップクラスであり、シータは中の上といった成績だった
自分より格下のシータにバカにされ、逆上し、シータに猛烈に襲いかかった
しかし、シータはミランダから教えを受けて、桃太郎と毎日稽古しているのだ
ミランダや桃太郎と比べれば、スピードもパワーも大した事はなかった
とはいえ、シータは生身であり、攻撃をくらうわけにはいかない
ヘラの攻撃を一つ一つ丁寧にいなし、ガードし、かわした
シータ「それで全力?…大した事ないね、やっぱ」
ヘラ「このクソ女!」
シータ「クソはてめえだ…このブス!」
シータは裏拳をヘラに繰り出した
ヘラはシータの間合いの外に避けたが、シータはポテンツァを前に出していた
ヘラのヘルメットが砕け、鼻が折れる
ヘラ「ぐっ!」
シータ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
シータの怒涛のラッシュパンチに、ヘラのオメガがどんどん砕け、剥がれていく
そうして、生身になったヘラはシータのポテンツァになすすべもなく敗北した
シータ「ゲレちゃん!」
桃太郎「おうシータ…こっちも終わったよw」
シータ「さっすが!…3人も居たのにw」
桃太郎「いや、もう師匠と比べたらカスだわw」
シータ「だねw」
ボロンゴ「私たちはまるで役に立ってないな」
プックル「うんwごめんね、ゲレちゃん」
桃太郎「何言ってんだw…その方がいいに決まってる」
桃太郎は外でズタボロになっているヘラと、先に倒した足の折れた者と、ポテンツァの電流で気絶している者を、アルファの宇宙船に入れた
桃太郎「なあシータ…オメガは他人では脱がせられねえのか?」
シータ「うん…オメガは本人しか脱げない」
桃太郎「じゃあやっぱり砕くしかないか」
シータ「そうだね…けどこの武器ならまるで煎餅割るみたいなもんだねw」
桃太郎「その女だけはもうボロボロだなw…かわいそうに」
シータ「でもこいつわたしの事『クソ女』って言ったのよ」
桃太郎「なんだと?…オイラのシータにこの野郎…」
プックル「待てゲレちゃん…それ以上やったら死んじゃうw」
桃太郎「お、おお、そうか…」
シータ「ブフゥww」
そして桃太郎とシータがバキバキとオメガを砕いていると、中の3人のうちの1人が目を覚ました
「ぐっ…」
桃太郎「おう、起きた?…悪いけどオメガは脱いでくれよ」
「い、いやだ…」
桃太郎「じゃあ砕くだけだなあ…」
桃太郎はそう言って、ガンマソードを降り上げた
「ま、待った!…わかった!…脱ぐ!」
桃太郎「そうしてくれw…オイラだってそんなに痛めつけたいわけじゃねえから」
その男は自らオメガを脱いだ
そうして、服だけになった6人はそれぞれどこかしら折れたり、気を失ったりしていて、シータのラッシュをくらったヘラは見るも無残な姿になっていた
「ヘラがこんな…お前たちは…」
桃太郎「オイラ桃太郎…ゲレちゃんと呼んでくれ…こいつらは前に来た奴らの探索機…で、シータは知ってるか?」
「…いや…」
桃太郎「お前はラムダか?」
「…いや」
桃太郎「名前は?」
「…ヒドラだ…」
桃太郎「ヒドラ…なんかかっけぇ!」
シータ「ブフww…のんきなんだからw」
ヒドラ「……」
桃太郎「シータはこの船に乗ってた乗組員だ…ラムダのシータ」
ヒドラ「ラムダっぽくないな…」
桃太郎「オイラの妻だ」
ヒドラ「…なに?…お前…任務はどうした」
シータ「お前だと?このカス野郎!…ベキ!」
ヒドラ「ぐわ!…ガク」
桃太郎「せいせいせい…また気絶しちゃったじゃんw」
シータ「ごめん///」
プックル「シータらしいやw…チロルは充電器に繋いできたよ」
ボロンゴ「復活まで1時間はかかると思う」
桃太郎「そっか…チロル…早く元気になるんだぞ…」
シータ「こいつらはどうする?…治療する?」
桃太郎「うん…特にこの女は早くしないと死ぬ」
シータ「じゃあ服脱がすか…」
桃太郎とシータはヘラの服を脱がし、治療マシンに入れた
シータ「ゲレちゃん、コイツの裸は見てもなんとも思わない?」
桃太郎「へ?」
シータ「おっぱい揉んでみてえな…とか…コイツも結構キレイな身体してると思うけど」
桃太郎「いや全然w…たしかにキレイだとは思うけど…なんつうか、欲情はしねえな」
シータ「…良かった///」
桃太郎「お?…1時間?…ケガのわりに早いな」
シータ「一つ一つは重度じゃないからね…」
桃太郎「そういう事か…こいつだけは身体はなんともないけどずっと起きねえな」
シータ「ポテンツァの電流すごいね…さすが神様の武器だ…技名考えようかな」
桃太郎「おお…なんて?」
シータ「んー…ライトニングボルト…それかライトニングプラズマ」
桃太郎「かかかっけぇ!!」
シータ「でしょお?w…どっちがいいかな?」
桃太郎「んー…もしさ、技名を叫びながら攻撃したらさ、『ライトニングプラズマ!』より、『ライトニングボルトォー!!』の方が気持ちが入りそうじゃない?」
シータ「…それだ!」
ボロンゴ「のんきだなあ…」
プックル「まあ、それだけ余裕なんだろw」
それから2人はすぐに治療マシンに入れられるように、全員の服を脱がし、至るところに縄でくくりつけた
桃太郎「おーし…これでまあ大丈夫だろ」
シータ「うん…きったねえもん丸出しだ」
桃太郎「そ、そんな事言うなよぉ…オイラにもついてるのに…」
シータ「ゲレちゃんのはキレイだよお///…大好き」
桃太郎「そうお?」
シータ「うん!…ナデナデ」
桃太郎「おっふ…///…やめちくり~」
プックル「なあ、アルファとオミクロンはいつ呼びに行く?」
桃太郎「うーん…オイラ見張ってるから、シータと一緒に呼んできて?」
シータ「え…ゲレちゃんと離れるのヤダよ…」
桃太郎「オイラも嫌だけど…万一もあるからさ…それにボロンゴもプックルも単体で町をウロウロは出来ねえし」
ボロンゴ「たしかに…」
シータ「うう…ギュ…」
桃太郎「ちょっとだけ我慢だ…な?」
シータ「うん…チュウして?」
桃太郎「んー…チュゥ」
シータ「じゃあ行ってくるね…ボロンゴ乗せてって」
ボロンゴ「り」
そうしてシータは目黒に向かった
或右衛門と臣九郎は、すぐさま妻子と共に、鬼ヶ島へと出発し、シータは帰る前にお雪と吾郎に説明をしてから戻った
シータが戻るまでの間に、シータに殴られて気絶していたヒドラがまた起きた
プックル「ゲレちゃん、こいつまた起きたよ」
桃太郎「お、ヒドラ…大丈夫か?」
ヒドラ「…ぺっ!」
ヒドラは唾を吐きかけた
桃太郎「お前なあ…懲りねえなあ」
ヒドラ「殺せ…」
桃太郎「バキ!…簡単に殺せとか言ってんじゃねえ!」
プックル「ゲレちゃん…また気絶しちゃったよ…」
桃太郎「あ…弱えな」
それから少し経つと、最初に足を折られた男が目を覚ました
「うう…ぐ…」
凄まじく痛いのに、縄で縛られている為押さえる事も出来ない
桃太郎「ごめんな…お前、名前は?」
「うう…あ…」
桃太郎「うう…あ…って名前か?」
プックル「そんなわけないw」
桃太郎「わかってるよw」
「こ…殺さないのか?」
桃太郎「それが名前か?」
「ち、違う…ハァハァ…ペルセウス」
桃太郎「ペルセウスね…」
ペルセウス「ああ…ハァ…ハァ…」
桃太郎「お前はラムダ?」
ペルセウス「そ、そうだ…」
桃太郎「今ヘラが治療マシンに入ってる…次に入れてやるな…あと1時間ちょっとくらい待てるか?」
ペルセウス「な、なぜ助ける?…ハァ…」
桃太郎「あんま人殺しなんてしたくねえって普通はw…特に恨みもねえのに」
ペルセウス「うう…」
桃太郎「せめて痛み止めとかあればな…」
プックル「お前の船にあるだろ?…とってきてやるよ…場所を教えろよ」
ペルセウス「この船と…ハァ…一緒だ…」
プックル「わかった…待ってろ」
プックルはペルセウスたちの宇宙船から鎮痛剤を持ってきて、注射した
ペルセウス「あ、ありがと…」
桃太郎「話せるか?」
ペルセウス「ああ…」
桃太郎「ヒドラとヘラ以外の3人の名前は?」
ペルセウス「あそこの奴がタナトス…あっちがイリス…そこの奴はアーテーだ」
桃太郎「タナトス、イリス、アーテー…か…誰がラムダで、誰が人間?」
ペルセウス「ヒドラとタナトスが人間…あとはラムダだ」
桃太郎「ありがと」
シータ「ただいま~…ギュゥ」
桃太郎「おーよしよしよし…ギュ…」
ペルセウス「…シータか?」
シータ「うん…知ってるの?」
ペルセウス「ああ…ヘラがな…前回自分じゃなくてシータが選ばれた事が気に入らないみたいで…シータの事を言っていた…」
シータ「そんなに行きたかったのか?…あの女」
ペルセウス「いや…自分の方が優れたラムダなのに、シータが選ばれたから…」
シータ「くだらねえ…」
桃太郎「うん…けどまあ、そういうのはちょっと人間らしいなw」
ペルセウス「かもしれんな…我々は感情を持つのはあまり許されない…だがヘラは嫉妬の感情を持ったのだろう」
桃太郎「かわいそうにな…お前らもオイラから見たら人間にしか見えないのに」
ペルセウス「気を使わなくていい」
桃太郎「ペルセウス…おめえは自分の信念で作戦に参加してるのか?」
ペルセウス「いや…オレたちは命令を聞くだけだ…」
桃太郎「オニールに義理があるか?」
ペルセウス「いや…」
桃太郎「帰りたいか?」
ペルセウス「そういう思いはない…」
シータ「あんたはラムダっぽいラムダだね」
桃太郎「うーん…ラムダのこいつの方が、ヒドラよか良い奴に見える」
ペルセウス「ヒドラは人間なのにラムダよりも強い…だから自信があるのだろう」
桃太郎「弱いけどなあ…」
ペルセウス「あんたが強すぎるだけだ…」
桃太郎「オイラ桃太郎…ゲレちゃんて呼べ」
ペルセウス「ゲレちゃんみたいにみんな強いのか?…この星の人間は」
桃太郎「そんな事はないよ」
ペルセウス「オレたちを治して…どうするつもりだ?」
桃太郎「オニールに連れてく…帰りたいだろ?」
ペルセウス「別に…どっちでもいい」
桃太郎「そうなのか?」
シータ「ラムダはこんな感じだよ」
ペルセウス「ゲレちゃんもオニールへ?」
桃太郎「ああ…クロノスとハデスとゼウスって野郎を殺しにな…」
ペルセウス「なるほど…それは不可能に思えるが…ゲレちゃんならやれそうだな」
桃太郎「うーん…やらねえと地球に攻めてくるんだろ?」
ペルセウス「そうだな…」
シータ「あ!…ヘラが終わったよ!」
桃太郎「お、よし…今、縄解くからな…逃げるなよ?」
ペルセウス「ゲレちゃんに抵抗しても無駄なのはわかっているし、この足ではできない」
桃太郎「それもそうかw」
ヘラ「なんでアタシ…シータ!」
シータ「うるせぇな…黙ってろブス」
桃太郎「せいせいせい…もう」
シータ「ごめん、つい…」
桃太郎「ヘラ…おめえこっちに来い」
ヘラは走って逃げ出した
桃太郎「あ!」
シータ「ボロンゴがいるから大丈夫よ…でもわたしも行ってくる」
桃太郎「うん」
シータが追いつくと、ヘラはボロンゴに足を噛まれていた
ヘラはボロンゴに蹴りを入れるが、オメガと同じ耐久性のボロンゴには効いていない
シータ「逃げてんじゃねえよ、面倒くせえな…バキ!」
ヘラ「ぐふ!…くそ…」
シータ「ボロンゴ、手錠出して?」
ボロンゴ「り」
シータはヘラに手錠をかけて、桃太郎のところに連れて行った
桃太郎「ヘラ…おめえは気が強いな…そんなに作戦が大事なのか?」
ヘラ「別に…」
桃太郎「シータ…ヘラに服着せてやろう」
シータ「うん…」
桃太郎とシータは一旦手錠を外し、ヘラに服を着させた
桃太郎「逃げねえ方がいいぞ…せっかく治ったのに足がまた傷だらけじゃねえか」
ヘラ「たしかに…あんたからは逃げれないね…」
桃太郎「うん…それに逃げてどうなるもんじゃねえよ…オイラは別に殺したりはしねえからさ」
ヘラ「わかったよ…」
桃太郎「うんうん…いい子だ…ナデナデ」
ヘラ「やめろよ…」
シータ「ほんとかわいくないねぇ」
桃太郎「仕方ねえよ、ヘラからしたら敵だもんなw…オイラは桃太郎…ゲレちゃんて呼べ」
ヘラ「ああ…」
桃太郎「ペルセウス、待たせたな…治療マシンに入れてやるからな」
ペルセウス「すまない…」
ペルセウスが治療マシンに入っていると、イリスとタナトスとヒドラも目を覚ました
アーテーはまだ起きない
シータ「ライトニングボルトでやられると全然起きないね…」
桃太郎「な…便利だなあ…」
シータ「あと98人は気絶させられる」
桃太郎「すげ~使えるw…師匠に感謝だ」
プックル「だなw…チロルのスリープモードを解除して…」
チロル「オレ復活!」
桃太郎「おお…チロル…良かったあ…ギュ…ダッコ」
チロル「ははw…充電切れただけだよ」
桃太郎「そうだけどさ…心配なもんは心配だよ…」
チロル「ありがと…スリスリ」
ヒドラ「それ機械だろ?…お前、機械相手にそんな事して、頭おかしいのか?」
桃太郎「頭おかしいのはお前だ…オイラには人間のお前よりラムダの方がよっぽど人間に見えるぞ」
ヘラ「……」
イリス「……」
桃太郎「さ、鎮痛剤…あと2本ある…ヒドラはバカだからお前たちに使ってやる」
イリス「すまない」
タナトス「わりい…本当に殺す気ないんだな…」
桃太郎「ねえよw…タナトスは人間なんだよな?」
タナトス「ああ…」
桃太郎「家族は?」
タナトス「いるよ…妻と息子…」
桃太郎「そっか…良かったなw…ちゃんと帰してやるよ」
タナトス「…なんで敵にそんな事を?」
ヒドラ「バカだからに決まってるじゃねえかw」
シータ「おめえ、ほんとクソだな…ドカ!バキ!」
ヒドラ「てめぇ…ラムダのくせに…覚えてろよ…」
桃太郎「ヒドラ…」
ヒドラ「なんだよ…」
桃太郎はヒドラの頭に手を乗せ、ルーチェの治癒の光を出してみた
ヒドラ「え…あ…」
ヒドラの心の中が優しく温かな光で満たされ、泣き始めた
アーテーもその光に当たり、目を覚ました
ヒドラ「うう…グス…」
ヘラ「な、なにをしたの?」
桃太郎「わからねえ…オイラ、気がついたらそうしてた」
タナトス「え?」
桃太郎「ヒドラ…」
ヒドラ「はい…」
イリス「え…」
ヘラ「うそ…」
傲慢で、他人の事などどうでも良く、ラムダを人として見たりもしないし、殺す事にも何も感じない…みんなの知るヒドラはそんな男だった
そんなヒドラが『はい』と返事をした
それには冷静なラムダたちも驚いた
桃太郎「おめえ…本当のヒドラはどんな奴だ?」
ヒドラ「オレは…世の中が憎い…全てが憎い」
桃太郎「なぜ?…なぜそうなった?」
ヒドラ「…オレの親父は…いつも母ちゃんを殴ってた…何かにつけて文句言って…母ちゃんを殴った…」
桃太郎「なんだと…それで?」
ヒドラ「オレは怖かった…母ちゃんをかわいそうと思ったけど、怖くて守ってやれなかった…」
桃太郎「うん…そうだよな…」
ヒドラ「でも…だからオレは強くなろうとした…体を鍛えて…そんで、ある日母ちゃんを守ろうと親父に殴りかかった」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「親父はでもずるくて…こう言った『お前がオレを一発殴ったら、お前じゃなくてこいつを10回殴る』って…」
シータ「ひどい…なんてやつ!」
桃太郎「それで…ヒドラはどうした?」
ヒドラ「オレは…それで親父を殴れなくなった…悔しくて涙が出て…心底憎くて、オレは親父を睨んだ…でもそれ以上何も出来ないでいたら、次に母ちゃんにこう言った…『このガキをぶっ殺したら、お前を殴るのやめて別れてやる』って…」
桃太郎「うん…そしたら?」
ヒドラ「母ちゃんは台所に行って、包丁を持って…オレを刺してきた…本気だった…その母ちゃんの恐ろしい顔…今でも忘れられない…グス…」
タナトス「なんてことだ…」
桃太郎「……」
ヒドラ「オレは逃げた…家から飛び出して逃げた…母ちゃんはそのオレを追いかけてきた…包丁持って…オレは怖くてもう家に帰れなくなった…だけど、それでも帰らなきゃいけなかった…」
桃太郎「なぜ?」
ヒドラ「オレには妹がいたからだ…あんな悪魔みたいな奴らのとこに、妹を置いていけない…オレは妹を助けようと戻って…窓から覗いた…」
シータ「そ、それで…?」
ヒドラ「妹は血だらけになって死んでた…グス…母ちゃんの服には血がたくさんついてて…オレはもう気が変になって、耐えられずに逃げた…オレはそれでしばらく公園とか…そういうとこで乞食みたいにして暮らしてた…雑草食ったりして…時々腹こわして苦しんだり…」
ヘラ「ひどすぎる…」
ヒドラ「オレはなぜ母ちゃんを守ろうとしたのに、母ちゃんがオレを殺そうとしたのか…妹を殺したのか考えた…そんで出た答えはこうだ…『自分が助かりたいから』」
タナトス「そりゃそうだな…」
桃太郎「…それほど母ちゃんも苦しかったんだろうな」
ヒドラ「それはさ…そんなのはオレもわかってる…けどよ…あのオレを殺そうとした時の恐ろしい顔は…オレへの愛なんて一欠片もなかった…そのうち警察がオレを探して保護して…オレは孤児院に入れられた…オレはでも、その時はもう誰も信じられなくなってた…だから誰とも関わらず、憎しみにまかせて暴れたりして…みんなはオレから離れていった」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「でもオレは…本当は優しくして欲しかった…愛してくれる誰かが欲しかった…それなのに信じられなくて、乱暴して…誰もがオレを嫌った…だからオレも人を嫌った…全員ぶっ殺したくなって…軍隊に入った…今度のこの地球に来たのも、地球人を全員ぶっ殺してやるって…」
桃太郎「辛かったなあ…けどよ…それじゃおめえは自分の親父や母ちゃんと一緒じゃねえか…」
ヒドラ「そうだ…オレは弱いからそんな道を選んだ…そうしないとオレは…」
桃太郎「そうだな…おめえは弱え…でも今まではそうだったとして、これからもそうなのか?…これからも弱いまま生きていくのか?」
ヒドラ「うう…グス…オレは…どうすれば」
桃太郎「お前は今までどのくらい殺した?」
ヒドラ「わからない…たくさんだ…」
桃太郎「お前のその生い立ちは同情するけどよ…お前は弱さから逃げるためにたくさんの命を奪ったんだ…そんなお前が愛を欲しがるなんて、図々しいにも程があるだろ…」
ヒドラ「わかってる…」
桃太郎「でもオイラはそんな図々しいお前にさえ、優しくしてやる…許してやる…だからよ、今度からは本当に強くなって…今まで奪った命よりもっと多くを救えよ…な?」
ヒドラ「うう…グス…うわぁあああ!!」
桃太郎「よしよし…ナデナデ」
ヒドラは桃太郎にすがり、大泣きした
今まで溜まりに溜まったものを一気に吐き出すかのように、泣いた
それを見ていたみんなには、桃太郎がまるで本物の神のように思えた
そうしてしばらくすると、ヒドラは顔を上げ、照れながら笑い、桃太郎にこう言った
ヒドラ「ゲレちゃん…ありがとう…オレはこれからは守る為だけに戦うよ…強くなるよ」
桃太郎「うんうんw…それでこそ男だ」
ヒドラ「へへ///」
桃太郎「けどさ…オイラおめえに謝らなきゃいけねえ」
ヒドラ「何を?」
桃太郎「オイラがさっきヒドラに当てた光…おめえはそれでケガも治ったろ?」
ヒドラ「そ、そういえば…!!…どこも痛くない…」
桃太郎「あれはさ…なんでも治せるんだけど、その代わり寿命を短くしちまうんだ…ごめん…何年なのかはわからねえけど…オイラはヒドラの寿命を奪った…」
ヒドラ「そっか…でも気にしないでくれよw…そんなくらい当たり前だ…オレはそれ以上に罪深いんだ…こんなに心が晴れた事なんてないんだ…明日死んでもオレはゲレちゃんを恨んだりはしない…感謝するよ、ゲレちゃん」
桃太郎「すまねえ…」
ヒドラ「この残った寿命でさ…出来るだけ守るよ…」
桃太郎「ああw…じゃあ…ま、とりあえず服着ろやw」
ヒドラ「あ…うん///」
タナトス「奇跡だ…」
桃太郎「お前…アーテーだったか…」
アーテー「あ、ああ…」
桃太郎「お前はどこか痛いとことかない?」
アーテー「ちょっとまだ身体に麻痺感がある…」
桃太郎「我慢できそうか?…みんなの治療が済んだら、いちおう入れや」
アーテー「あ…ああ…オレたちを治して…何を企んでるんだ?」
桃太郎「あああもう…めんどくせえなw…いちいち聞くなよw」
シータ「普通そう思うってw」
プックル「うんw」
桃太郎「もお…本当にオイラは特におめえらになんかしようとか、させようとか、そんなの考えてねえんだって…普通はなあ…殺すとかそう簡単に出来るもんじゃねえし、痛がってたら手当てしてやりてえって思うんだよ…オイラはその普通な事してるだけw…な?…わかった?」
ヒドラ「信じるよw」
イリス「何の見返りもなく?」
アーテー「それがわからない」
桃太郎「見返りぃ?…うーん…あるとすればそりゃお前らの元気な顔じゃねえか?w」
イリス「オレたちの元気な顔?」
桃太郎「うん…さっきのヒドラみたいな笑顔とか…」
アーテー「それに何の価値があるんだ?」
桃太郎「うるっせえなあもうw」
シータ「ブフゥww」
ボロンゴ「私も最初はわからなかったよ」
チロル「うん…今はわかるけど、上手く説明できない…でもあったかくなるんだ」
イリス「機械のお前が?…オーバーヒートしてるのではなくて?」
チロル「違うw…けど、ヒドラはわかったんじゃねえか?」
ヒドラ「ああ…オレはわかった…ゲレちゃんはオニールの人間とは全然違う…」
プックル「ゲレちゃんは特別あったかいけど、この江戸の人間はほとんどが優しくてあったかいぜ」
シータ「うんうん」
ボロンゴ「もちろん、悪人もいるがな」
シータ「オニールの人間は江戸っ子と比べたらクソ以下だぞ」
タナトス「つまり、オニールの常識は通用しないって事か」
シータ「そんなもん、通用しない方がいい…とにかく、あんたらは黙って元気になってりゃいいのよ」
桃太郎「うんうん…ま、ケガさせたオイラたちが言うのも何だけどさw…けど、それはこの地球を守る為だからな?…誰だって理不尽に居場所を奪われたくねえだろ?…殺されてまでさ」
タナトス「そりゃそうだ…オレなら治さないで殺す」
ヘラ「アタシもだ…その方が安心できるし、楽だ」
桃太郎「オイラだってそんな事は理解できるけどよ…昔な、オイラも人を殺した事あるんだよ」
ヒドラ「え?」
桃太郎「もちろん、悪人だ…殺さなければ、理不尽に優しい人間たちが死ぬ…だから殺した…4人もね…オイラはその時さ、みんなから感謝された…『ゲレちゃんが殺したから、わたしたちは生きれるんだよ』ってね…でもそれでもオイラは後悔してる…あん時オイラがもっと強けりゃ、そいつらだって殺さないで済んだんだ…だからオイラは強くなろうとした…そんなオイラが簡単に殺すはずねえだろ」
イリス「そんなに殺すのが嫌なのか…」
桃太郎「うん…オイラにはどうするのが正しいかなんてわからねえから…オイラが正しいと思う事を信じてやるだけだ…お前たちを治すのだってオイラはそれが正しいと思うからしてる…それだけの事だ…本当に何にも企んでなんかないよ…それでもまだわからねえなら縄解いてやる」
桃太郎はそう言うと、縛られている者を解放した
タナトス「オレたちがゲレちゃんの目を盗んで通信しに行ったらどうするんだ?」
桃太郎「そしたらまた殴って連れ戻すw…でもそんな事したくないからやめれw」
ヒドラ「そんなマネする奴はオレがしばく」
ボロンゴ「私も」
シータ「わたしも」
桃太郎「だってさw…でもやめてくれよ?」
ヘラ「アタシはもうそんな気にならない…」
イリス「なぜかオレもだ…ゲレちゃんが悲しむと思うとやれない」
プックル「だろ?w…それだよw」
アーテー「ラムダとしては欠陥品だと思うが…オレもそう思う」
タナトス「たしかになw…欠陥品だw」
チロル「だけど、欠陥品を作ったのはお前たちオニール人だぜ?…ラムダを物だと思って優しさを与えなかったから、ゲレちゃんの優しさがなおさら身に沁みるんだからな…」
ボロンゴ「オニール人もラムダに優しければ、ラムダは裏切らないはずだ」
タナトス「機械に説教されちまったw…ま、オレももうなんかどうでも良くなっちまったよ…」
プックル「ペルセウスが終わったよ、ゲレちゃん」
桃太郎「お、じゃあタナトス入れや…1人で入れるか?」
タナトス「なんとか…」
桃太郎「ペルセウス、すっかり良くなったか?」
ペルセウス「ああ…ありがとう、ゲレちゃん」
桃太郎「良かったなあw」
ヒドラ「なあ、ゲレちゃん」
桃太郎「ん?」
ヒドラ「この後さ、みんな治ったらどうするんだ?」
桃太郎「簡単さ、ヒドラたちの乗ってきた宇宙船で、オイラもオニールに行って、地球を襲う計画を立ててる3人をぶっ殺す」
ヒドラ「…それはちょっといろいろ無理があるぜ」
桃太郎「オイラには出来なそうか?」
ヒドラ「うーん…なんていうの?…出来る出来ないより、その3人てのはオレたちの国の奴らなわけで…他の国の連中も考えてるかもしれないってのが一つ」
桃太郎「ほむほむ」
ヒドラ「まあ、それはまだいいんだ…実際そうする技術を他の国はまだ持ってないはずだからね…」
桃太郎「うん…おお、良かったw」
ヒドラ「たださ、その3人てのはゼウス、ハデス、クロノス…そんなだろ?」
桃太郎「うんうん」
ヒドラ「ゼウスってのは国の…コスモスって国なんだけど、そのコスモスの統治者…つまり権力の一番トップな奴だ」
桃太郎「わかりやすくw」
シータ「火付盗賊改が国なら、平蔵さんってとこよ」
桃太郎「お!…ありがとうw」
ヒドラ「そのゼウスってのは一番偉いからさ…何が偉いか知んねえけど…そいつぶっ殺したら報復で地球に戦争を仕掛けてくるかもしれない…」
桃太郎「ん…そっか…言われてみればオイラも平蔵さんが殺されたら絶対やり返すわ…」
シータ「たしかに…」
桃太郎「ハデスとクロノスは?」
ヒドラ「ハデスはコスモスのあらゆる軍に命令を出せる一番上の奴…クロノスはオレたちの部署の一番上のクソ野郎だ…その2人は殺してもまあ…大丈夫だとは思う…でも、殺すならクロノスとその補佐のカオスかな…」
桃太郎「ん?…ゼウスとハデスは?」
ヒドラ「そいつらももちろん命令を出せるけど、宇宙を短時間で移動する技術を開発したのはカオスってやつなんだ…その技術を共有してるのはクロノスだけ…だと思う…もしかしたらハデスも持ってるかもしれないけど…とにかく、その技術さえなければ、命令を出そうが実際に地球に行く事が出来なくなるわけだ」
桃太郎「おお!…なるほど!」
ヒドラ「ただし、この宇宙船みたいにその技術がある船は壊さないといけない」
桃太郎「ほむほむ…どのくらいあるの?」
ヒドラ「正確にはわからないけど…20くらいかな…ただし、そのうちの10機はオレらのよりでかい…かなり」
桃太郎「その10機は完全に戦う為の軍艦みたいなもんか」
ヒドラ「そうそうw…それは絶対に破壊しないといけない」
桃太郎「けどさ、破壊しても誰かがその技術をまた持って作る可能性もあるよな?」
ヒドラ「いや…それはない」
桃太郎「どうして?」
ヒドラ「はっきり言って、地球を侵略しなけりゃいけないほど、オニールはもう資源がないからだ…材料がなければ作ろうと思っても作れないだろ?…しかも、金もものすごいかかる」
桃太郎「そんなにオニールはやべえのか…なんだかかわいそうになってきた…」
ヒドラ「優しいなあ…けど、だからってこの星の奴らを皆殺しにするのは間違ってる」
ヘラ「まさか、あんたがそんな事言うなんてね」
ヒドラ「ああw…なんかわからないんだけど、ゲレちゃんの光を浴びたらこう…オレの中のドロドロした汚いもんがなくなったような…今はどうしてあんなに憎んでたかわからないほどだよ…悪かったなあ…ラムダだからって物扱いしちまって…今はもうそんなふうに思う事すら罪悪感がある」
ヘラ「へぇぇ…ま、別にいいけど…それより、それ以上その話をするなら、タナトスも居た方がいいんじゃないか?」
イリス「ああ…」
桃太郎「それもそうだな…明日には前回来た奴らもここに来るから、それからにしよう」
ヒドラ「前回の…」
桃太郎「そうw…笑うぜ、今じゃ嫁ももらってすっかり侍だw」
シータ「ねw…侍ってのはこの江戸の兵士みたいな…ちょっと違うけど、そんな感じよ」
ヒドラ「ここで嫁を?」
シータ「そう…本当にここの人間はねえ…全然違うのよ…オニール人はみんな『わたしわたし』って自己主張が激しいし、誰かが話してる途中でも構わず割り込んできたり…そのくせ自分の意見が通らないとふてくされたり、ヒステリーになったりするでしょ?」
ヒドラ「ああ…そうだな」
シータ「でもそれが普通じゃない?」
ヒドラ「ああ…」
シータ「誰かに迷惑かけるのもなんとも思わないくせに、自分がされると怒るじゃない?」
ヒドラ「だな」
桃太郎「そ、そうなの?!」
アーテー「人間はそうだな」
ヘラ「愚かだからな」
シータ「けど、この江戸の人間は違う…そりゃ、悪い奴も当然いるけど、たいがいは他人を思いやって生きてる…自分が損しても、相手が幸せなら満足だし、迷惑だって極力かけないようにして…たとえそれで迷惑がかかっても、『気にするねえw』って笑って済ますのよ」
ヒドラ「ウソだろ?」
プックル「ウソじゃないぜw」
シータ「オニール人が聞いたら『バカか』って思うかもしれないけど…実際にそうしてる人たちを見ると、とても感動するのよ…とても美しいと思う…オニールの女と江戸の女だと、見た目はオニールの方がいいかもしれないけど、心の美しさやかわいらしさは圧倒的に江戸の女の方が上だよ…アルファとかオミクロンにも聞いてみなよ」
ヒドラ「うん…」
桃太郎「オイラはそれが普通だからなあ…」
アーテー「なるほど…それが普通だから我々を助けたのか…ようやく理解した」
桃太郎「今頃?!ww」
イリス「ああ…要するに『損得で行動をしない』という事だろ?…それについては理解しがたいが、そういう人間性だとしたら、ゲレちゃんの行動は理解できる」
ヘラ「まあ、そういうことだね…その原理で言うと、ゲレちゃんは本当にアタシらに何か企みがあったりはしないって事になる…信じがたいけど」
桃太郎「うんw…けど、信じろよ」
ヘラ「アタシは誰の事も信じたことはないよ」
桃太郎「今まではそうかもしれないけど、オイラの事は信じろ」
ヘラ「裏切らない保証は?」
桃太郎「何を出せば保証になるんだ?…そんなもん」
ボロンゴ「たしかにw」
桃太郎「そんなもんなくても、オイラはウソつかない…少なくともヘラを傷つけるウソはな」
ヘラ「ふうん…」
桃太郎「まあいいさ…そんなの強制することじゃねえしなw…プックル、やつらの宇宙船から食べる物持ってきてやってよ」
プックル「り」
ヒドラ「オレも…江戸の人間に会ってみたいな…」
シータ「ラムダのわたしが言うのも何だけど、人生観が変わるよ」
ヒドラ「いいなw」
シータ「あんたもきっと守りたいと思うようになる」
ヒドラ「そっかw」
その後、タナトスも治療が終わり、足から出血しているヘラがもう一度入り、それからアーテーが入った
食事もとり、眠った
桃太郎はハッチにチロルを抱いて座っていた
隣にはシータがいる
桃太郎「チロル…なんだか元気ねえじゃんかよ…どした?…ナデナデ…充電が足りないか?」
チロル「ゲレちゃん…大丈夫…ちょっとバッテリーがへたれただけだよ…スリスリ」
シータ「ああ…たしかにあんたはボロンゴたちよりもバッテリーを酷使してるもんね…ナデナデ…」
桃太郎「そうだったのか?…なんで?」
シータ「妨害電波を出すと、ほとんど電力を使うのよ…バッテリーてのは、ほとんどなくなってから充電したりすると、弱っちゃうのね…チロルは2回は妨害電波を使ったから…」
桃太郎「オイラの為に…ごめんよ、チロル」
チロル「ううんw…それがオレの役目だから…ゲレちゃんの役に立って嬉しいよ」
桃太郎「チロル…グス…かわいいなあ…ギュ」
チロル「ゲレちゃん…お願いがあるんだ」
桃太郎「うん?」
チロル「オレはきっとボロンゴたちよりも早く、動けなくなる時がくる…」
桃太郎「そんな悲しい事言うなよ…」
チロル「大丈夫w…生き物じゃないから、機能停止するだけだよw…ウィ-ン…ゲレちゃん、見える?…この薄っぺらな青い板みたいなの」
桃太郎「うん…」
チロル「これがオレのメモリー…『命』だよ…オレさ…あと何年かして、もういけないってなったらさ…ゲレちゃんこのオレのメモリーをずっと持ってて欲しいんだ」
桃太郎「当たり前だろ!…ギュ」
チロル「まだ動けても、弱ってしまうとメモリーが狂うかもしれないからさ…そうなる前に言うから…ずっと持ってて?…オレね、ゲレちゃんが大好きだけど、イズさんも大好きなんだw…だから絶対にまた会いたいんだ…だからさ、また会わせてくれる?」
桃太郎「ああ…オイラがお前を見捨てるはずないだろ!…グス」
チロル「ああ…こんな時、オレもせめて生き物なら泣けるのにな…大好きだよ、ゲレちゃん」
桃太郎「バカ…」
シータ「…ウル」
チロル「でもさ、まだ数年は元気だから…楽しくいてよw」
桃太郎「うん…」
チロル「オレの事こうして抱っこしてくれるの、ゲレちゃんかイズさんだけだからさ…大好きなんだよ」
シータ「チロル…」
チロル「おかしいよなw…機械なのにさ…こんな甘えてさw」
桃太郎「おかしいもんか…誰だってあったかいのが一番いいんだから」
シータ「そうだよ」
ヒドラは離れたところから、桃太郎たちのその会話を聞いていた
なぜだか胸が熱くなり、涙がこぼれた
こんな人間たちの住むこの星を滅ぼす事は、今のヒドラにはもう出来なかった
翌日の昼頃に、アルファとオミクロンが鬼ヶ島にやってきた
おみつやおよしは念の為、吾郎たちに預けてきていた
或右衛門「拙者、馳せ参じたでござる」
桃太郎「ブファww…おめえ、どこでそんな言葉覚えたんだよw」
臣九郎「それがしも、参上つかまつった」
シータ「ブフww」
或右衛門「ゲラゲラww」
臣九郎「ははははww…で、奴らは?」
桃太郎「この中に居るよ、みんな」
或右衛門「やっぱ1人も殺してないんだ?」
シータ「ゲレちゃんがそんな事するはずねえだろ…ゲシ」
或右衛門「いたーい!」
臣九郎「やっぱすげえなw…入って大丈夫?」
桃太郎「うん…入ろう」
桃太郎を先頭に、みんなは中に入った
或右衛門「ま、また繋がねえで…大丈夫なのかよ…」
ヒドラ「大丈夫だ…アルファだったな…お前」
或右衛門「アルファ?…或右衛門と呼べ」
桃太郎「ブファww」
臣九郎「オレは臣九郎だ…」
シータ「そうなのねw」
ヒドラ「お、おう…」
或右衛門「お前はたしか…ヒドラだったか?」
臣九郎「オレ、お前嫌い…すぐ怒るし…」
ヒドラ「わ、悪かったよ…」
臣九郎「え?…だいぶ違くね?」
シータ「ゲレちゃんに心をもらったのよ」
臣九郎「なるほどねw…納得」
イリス「納得なのか…」
タナトス「オミクロン…その頭はなんだ?…すごい変だぞ…」
ヘラ「だせえw」
桃太郎「おいヘラ…」
臣九郎「いいんだゲレちゃんw…オレだって初めはそう思ったんだからww…けど、慣れるとカッコいいんだぞ、これ…髷って言うんだ」
或右衛門「オレも今髪を伸ばしておるのだ」
シータ「ブファww…江戸かぶれww」
桃太郎「…グww…ま、まあよ…クッww…まあほら…あれだw…ちゃんとこれからの作戦を話そうじゃねえかw」
ヒドラ「わ、わかったw」
桃太郎「もう一度ヒドラ、昨日のとこまで説明してくれ…」
ボロンゴ「それなら映像を流してやろうか?」
桃太郎「さすが!」
ボロンゴは宇宙船のモニターに接続し、昨日のヒドラと桃太郎の会話を流した
タナトス「ほほう…」
臣九郎「ごめん、ゲレちゃん…オレ、そこまで考えてなかったわww」
桃太郎「いや、オレもww」
臣九郎「じゃあゲレちゃんが殺すべき相手は減ったわけだな…」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「いや、まだ問題がある」
桃太郎「どんな?」
ヒドラ「もしこのままオニールに何にも伝えずにオニールに行くとするだろ?」
桃太郎「うん」
ヒドラ「オニールに行くまで、早くても600日前後はかかる…だけど、何にも通信しなければ、今から1年後にまたオレたちみたいなのがオニールから出発する」
臣九郎「ああ!…そっか…そうすると、オレたちとそいつらが行き違う事になるんだな…」
ヒドラ「そうだ…で、そいつらは600日後にここに来る…つまり、1年と600日…965日前後だ…けど、その時はゲレちゃんたちは作戦が上手く行ったと仮定しても、地球に戻ってる最中なわけだ」
桃太郎「つまり、オイラたちはここにはいねえって事か」
ヒドラ「うん、ここから600日かけてオニールに行って、仮に10日で作戦を終えて、また600日かけて地球に戻るとすると、1210日経たないと、ゲレちゃんはここに帰ってない」
或右衛門「じゃあ、1210-965で245日は次の奴らが江戸で暴れるわけか…」
臣九郎「それはダメだ!…ゲレちゃんがいなくちゃたくさんの人間が死んでしまう!」
ヒドラ「まあ、江戸ではないと思うが、そうなる事に変わりはないな」
桃太郎「じゃあ行けねえじゃん…」
タナトス「簡単な事じゃねえかw…オレらが通信すりゃ、次の奴らは来ないだろ」
ヒドラ「そう…オレが『この星の人間は強くてやめた方がいい』って感じの事を伝えれば、止められると思う…けど、ゲレちゃん」
桃太郎「ん?」
ヒドラ「ゲレちゃんはオレに通信をさせられるほど信じているか?」
桃太郎「おう」
ヒドラ「本当か?…よく考えたか?…もしオレが騙してて、そういうフリして『攻めてこい』とか言う事だってあり得るぞ」
桃太郎「それはねえよw」
ヒドラ「なんでだ」
桃太郎「だってヒドラだもん」
ヒドラ「…クゥ…ウル…」
桃太郎「オイラはおめえを信じる…お前は昨日言った『これからは守る為に戦う』って…それをオイラは信じてる」
ヘラ「信じる…か」
或右衛門「ゲレちゃんらしいや」
臣九郎「実になw」
ヒドラ「…ありがとう、ゲレちゃん…こんなに嬉しい事はない…」
臣九郎「お前本当にヒドラか?ww」
タナトス「なww」
ヒドラ「わかった…そしたらオレ、通信する内容を考える…一緒に考えてくれ」
臣九郎「わかった」
桃太郎「おう」
プックル「昨日のゲレちゃんとシータと、お前らの戦闘の映像もあるぞ…使えるか?」
ヒドラ「ああ!…そりゃいいな!」
シータ「さすがじゃんw」
それから桃太郎たちは、通信する内容の文言を相談した
その頃のヘラたち
ヘラ「あんたはボロンゴだったっけ」
ボロンゴ「そうだ」
ヘラ「変な名前だね」
ボロンゴ「そうか?…だがオレは好きだ」
ヘラ「なんで?」
ボロンゴ「ゲレちゃんが好きだからだ」
ヘラ「機械のくせに…」
ボロンゴ「オレもそう思う」
イリス「逆を言えば、機械にすらそう思わせるということか」
ボロンゴ「そうだ」
アーテー「それはプログラム上、マスターを守るということじゃないのか?」
ボロンゴ「もちろんそれもある…だけどそんなのは関係ない…オレは今はゲレちゃんだけを守ったりはしない…それが全く無関係な人間であっても、泣いていたり弱っていたりしたらオレは守る」
ヘラ「なんでさ!」
ボロンゴ「ゲレちゃんがそういう人間だからだ…もっと言えば、オレもそう行動すれば、ゲレちゃんはオレを褒めるだろう?…もっと好きになってくれるだろう?…だからだ」
アーテー「なるほど…お前は損得で動いてるわけだな」
ボロンゴ「機械だからな…不利益な事はあまりしようとは思わない」
イリス「ふむ…しかし、そんなに好きなのか…ゲレちゃんが」
ボロンゴ「ああ…オレは機械だから、新陳代謝をする生物と違って、予備パーツがなければ長くはもたない…だが、オレは動けてる間はゲレちゃんとずっと一緒にいたい」
ペルセウス「すごいな…それがあたたかいということか」
ボロンゴ「ああ…それは『熱』ではないんだ…そう感じるとしか言えない…上手く説明は出来ないが、オレもプックルもチロルもみんなよくわかっている」
ペルセウス「なんだか羨ましいよ」
桃太郎「文言てどんなだ?…『地球人は強すぎてダメです!』とか?」
臣九郎「うんまあw…それを具体的にそれっぽくだw」
或右衛門「どういう状況で言うんだ?」
シータ「戦ってる最中に報告するのはおかしいよね…そんな暇ないし」
ヒドラ「そうだな…それにそうなると、そういう騒がしい状況や気持ちを作らないといけなくなる」
タナトス「オレら役者じゃねえぞw」
臣九郎「じゃあ、ヒドラは宇宙船に隠れていた事にして、戦闘がひとまず終わったていで報告する感じでいいんじゃね?」
タナトス「それがいいな…こいつなら1人で隠れてても、見てる奴も変に思わないだろう…」
或右衛門「だな…」
ヒドラ「自分でもそう思う」
桃太郎「けど、ヒドラなら真っ先に攻撃するんじゃねえか?」
ヒドラ「それもそうだ…けどオレは卑怯だから、負けそうになったら仲間を置いて逃げる奴だ」
臣九郎「お前、よく自分をそう言えるなw」
シータ「うんw」
ヒドラ「ゲレちゃん、オレをぶん殴ってくれ」
桃太郎「え?!」
ヒドラ「オレはそこにあるボロボロになったオメガを着て、ダメージを受けた感じにする…というか、瀕死になった演技をするのは役者でもないオレは出来そうにない…だからオレを瀕死にしてくれ」
桃太郎「嫌だよ…」
ヒドラ「ゲレちゃんじゃなくてもいい、シータでも」
シータ「…ええ…」
桃太郎「なにもそんな…そうだ、治療マシンに入った後に報告した事にすれば?」
臣九郎「それもありだと思う…けど、そんな悠長な事してから報告もおかしいかな…」
タナトス「ならオレらでやるw…こいつには今までムカつかせてもらったからなw」
ヒドラ「ああ、いいぞ」
タナトス「…お前、本当に変わったなあ…」
ヒドラ「報告の文言は…
そうして報告内容を考えると、全員で表に出て、ヒドラはタナトスたちと対峙した
ヒドラはボロボロになった自分のオメガを着ている
ヘラ「本当にいいのか?」
ヒドラ「ああ…お前らもオレにムカついてるだろ?w…早くやれよ、ラムダは素直に命令に従ってりゃいいんだバカが」
タナトス「行くぞ、お前ら」
ペルセウス「すまない…」
桃太郎「待て!…待ってくれ」
ヒドラ「なんだよ、ゲレちゃん…」
桃太郎「いや…オイラ、そういう嫌な役目を他の奴にやらすなんて卑怯だ…やっぱしオイラがやる…」
ヘラ「気にすんな、アタシはマジでぶん殴りたい」
イリス「オレも今までの事を思い出してそういう気分になっている」
ヒドラ「だってさ…正直言ってオレもゲレちゃんに殴られるダメージは怖いw」
或右衛門「オレもそれは嫌だなあw」
桃太郎「けど…戦いでもねえのに痛めつけられてるのなんて…オイラ見たくねえ」
タナトスは桃太郎がそう言っている最中にヒドラに攻撃をした
ヘラもペルセウスもイリス、アーテーもそれに続いて攻撃する
桃太郎「ああ!!」
タナトス「ごちゃごちゃ言うなよ、地球人w」
ヘラ「どうせあとですぐ治るんだぞ」
桃太郎「うう…ごめんよ、ヒドラ…グス…」
ヒドラ「…うぐ…が…優しい…なw…オレの為に…泣くなんて…グス…」
臣九郎「……」
或右衛門「…ウル」
ヒドラは瀕死になりながらも立ち上がり、宇宙船の通信機に向かった
そしてオニールとの交信を始めた
交信の電波が届くには30分程かかる
ヒドラ「ぐぶ…う…」
桃太郎「大丈夫か?…ギュ」
ヒドラ「うん…あとは待てばいい…」
桃太郎「我慢出来る?」
ヒドラ「大丈夫…オレも訓練されてる…」
桃太郎「ごめんな…ナデナデ」
ヒドラ「いいんだ…もう少しそうしてくれ…とてもあったかい…グス…」
桃太郎「ああ…グス…ナデナデ」
シータ「…グス」
それを見ているヘラやタナトスも、だいぶ心が動かされ、密かに泣いた
オニールで生きてきた人間にとって、桃太郎の心から労る様子はとても新鮮で感動的な事だった
臣九郎「友蔵さんも、オレたちの為にだんなに必死で頭下げてくれたっけ…ウル」
或右衛門「ああ…グス」
シータ「おママもパパスも…いきなり来たこんなわけわからない女を『娘』って…簡単に言ってくれた…グス…」
タナトス「それが地球人…」
臣九郎「信じられないだろ?w…オレはもう、オニールに帰りたくなくなっちまった」
ヘラ「……」
桃太郎「その通信てのが来るまで、少し寝てろや…オイラこうしててやるからさ」
ヒドラ「うん…ありがとう…ゲレちゃん」
ヒドラは誰かに甘えた記憶はほとんどない
愛もぬくもりも知らないで育った
だからこそ桃太郎の腕の中がとても幸福に感じた
痛みなどどうでも良くなる程に
そうしてしばらく待つと、通信機から声が聞こえた
それはオニールのコスモスの言葉なので、桃太郎にはわからない
シータ「ヒドラ…起きて」
ヒドラ「あ、ああ…」
ヒドラは息も絶えだえに、交信を始めた
途中で、ヘラがボコボコにやられている映像は、特に驚かれたようだった
シータ「…!」
タナトス「ウッソだろ…w」
プックル「バカくせえ…」
桃太郎「ど、どうした?」
臣九郎「しっ」
ヒドラとの交信の相手はカオスであった
そしてその会話を聞いたシータたちは、その内容に驚いた
そして、交信が終わった
ボロンゴ「ゲレちゃん…交信が終わった」
桃太郎「おし、ヒドラ…今治療するからな!」
ヒドラ「うん…よろしく頼むw」
桃太郎はヒドラの着ているものを全て剥ぎ取り、タナトスの宇宙船の治療マシンに入れた
桃太郎「意外とそんなにかからないな…」
タナトス「このマシンの方がアレより新しいし、ゲレちゃんやシータの攻撃の方がよっぽどダメージがデカいしな」
桃太郎「そ、そっか…で、みんなは何に驚いてたの?」
シータ「今ね、オニールでは世界大戦が始まったみたいなの…」
桃太郎「ん?…世界大戦?」
ヘラ「世界中を巻き込んだ戦争だよ…」
桃太郎「え?…いくさか?」
臣九郎「そう…オレたちが住んでたコスモスって国は、オニールでは最高の軍事力…戦う力があってな…実質的に世界の国の頂点なんだが、『ヒッタイト』っていうほとんど独裁国家の国がバカだから攻撃を仕掛けてきたらしくて…」
或右衛門「でもって、戦争が始まると、今まで抑圧されてた民衆たちも、各地で紛争…争いを始めたらしい」
イリス「オニールの人間は愚かだからな…」
桃太郎「それは同じ国の仲間で?」
アーテー「ああ…それほどに教養がないんだ」
桃太郎「バカな…」
タナトス「バカなんだよw」
ヘラ「世界の至るところで『核』が使われてるって…」
桃太郎「それは?」
ボロンゴ「核爆弾という大きな威力を持った兵器だよ…今その映像を見せる」
桃太郎「すっげえ…」
プックル「こいつは爆発の威力も凄まじいけど、それ以上にヤバいのはこの後だ」
チロル「放射能って危険なもんが何年にも渡って留まるんだけど…それに晒されると生き物の身体はボロボロになる」
シータ「つまり、大勢の生物が死んで、それから何年も『死の大地』になるのよ」
桃太郎「げえ…」
タナトス「そんでコスモスはその報復に、ヒッタイトに向けて『バイオ兵器』を放つみたいだ」
桃太郎「それは?」
アーテー「それは爆弾とは違って、簡単に言うと『病気をばら撒く兵器』だ」
ペルセウス「それはハデスが開発した兵器で、その病気は空気感染して広域の人間が死に至る」
臣九郎「つまり、風に乗って病気の元が世界中に広がって、多くの人が死ぬって事」
桃太郎「な、なんだってえ?!…けど、そんなもん自分らも危ねえだろ」
ボロンゴ「いや…コスモスは大丈夫だ」
桃太郎「なんでよ」
プックル「普通は自分の国に影響が出ないように計算して撃つもんだし、影響が出てもその病気に対抗できる薬を持ってるんだ」
タナトス「ま、大きな規模で『自分が良ければいい』ってやつだな」
桃太郎「酷いことを…」
シータ「それがオニールなのよ…」
桃太郎「そいつはもう手遅れなのか?」
イリス「ああ…もう撃たれた」
桃太郎「なんてことを…」
タナトス「まあ、その代わり地球を侵略する余裕もなくなって良かったじゃねえかw」
桃太郎「そんなのいいわけない…オイラはオニール人がたくさん死んで良かったなんて喜べないぞ」
臣九郎「だけどよ、ゲレちゃん…オレたちにはどうする事も…」
桃太郎「けど、お前たちの家族は心配じゃねえのか?」
或右衛門「心配は心配だけど…」
桃太郎「タナトスは?…妻と子がいるんだろ?」
タナトス「ああ…だが、地球人のゲレちゃんには大変なんだろうが、オレたちにはそれほどでもない…」
桃太郎「愛してねえのか?」
タナトス「そんな事ないが…」
桃太郎「オイラたちがオニールへ戻ってさ…なんか出来る事はねえのか?」
ヘラ「ない」
桃太郎「全然?」
イリス「ないだろう…」
ペルセウス「そのバイオ兵器を鎮める兵器を打ち込むくらいか?」
桃太郎「それやれば病気の奴は助かるのか?」
ペルセウス「まだ潜伏期間の人間はな」
臣九郎「病気になるっていっても、すぐに症状が出るわけじゃないんだ…感染から症状が出るまでの時間を『潜伏期間』って言うのね?…その間ならその薬で治せるんだけど」
桃太郎「じゃあ今すぐ行ってやろうぜ!」
或右衛門「落ちつけ、ゲレちゃん!」
桃太郎「でも!」
臣九郎「ゲレちゃん…それはゲレちゃんがうたなくても、すぐにうたれるんだよ」
桃太郎「え?…どういうこと?」
臣九郎「その潜伏期間ていうのが何の為にあると思う?」
桃太郎「え?…うーん…」
臣九郎「殺すのが目的なら、すぐに死んでしまうような毒を撃てばいい…だろ?…で、潜伏期間てのは人によって短いのもいれば、長いのもいる」
桃太郎「つまり…長い奴だけ生き残らせる?」
臣九郎「そう…全ての人間が死んだら、それはそれで世界は成り立たないから、そうやって命を操作する為の兵器だ…そして、核爆弾と違って、後々までその土地が使えないって事もないし、建物なんかも無事ですぐに使える…コスモスの連中はそうやって弱った国を征服するつもりなのさ」
桃太郎「酷い奴らだ…」
タナトス「どっちにしろ、ここから今すぐ出たって、着くのは600日後だ…そんだけ経てばまた状況も変わってるし、ゲレちゃんに出来る事はないって事だ」
桃太郎「くそ…グス…」
イリス「なんでゲレちゃんは会った事もない知らない人たちの為に…しかも地球を乗っ取ろうとしたオニール人たちをそんなに心配して、涙まで流すんだ?」
シータ「それが江戸の人間なのよ」
或右衛門「侍の心だ」
臣九郎「この国では『敵に塩を送る』って風習があってな…戦争の相手にさえ、食べ物がなくて苦しんでいたら分け与えるのさ」
アーテー「なぜ?!」
臣九郎「戦うなら戦いで正々堂々と勝負をする為だ…それは非効率だと思うだろうがな」
或右衛門「でも、だからこそ、戦った相手を恨まずに命をかけて戦えるんだ」
臣九郎「オレたちはそういう心を知った…ここの人間は、たしかにオレたちより文明は遅れてるし、知識もないけど、オレたちの方が遥かに愚かで原始人だぞ」
シータ「わたしもそう思うよ」
プックル「機械のオレでも思うぜ」
桃太郎「オイラだってさ…知らなきゃオニールの事は気にしない…そりゃ知らないんだもんなw…けど、知ったからにはなんかしてやりてえ…オイラには出来るはずだ…ヒドラにやったみたいに、オニールの残された人の心をあったかくしてやる」
ペルセウス「…ゲレちゃん、まだ行く気なのか?」
タナトス「…もう多分地球は大丈夫だぜ?」
桃太郎「オイラは行く…何か出来る事やったら帰る」
臣九郎「しょうがねえなあw」
或右衛門「全く効率度外視だよなw」
シータ「じゃあおママたちにしばらくお別れの挨拶しないとねw」
桃太郎「はははw…行こうか」
タナトス「わけわからないのに…なんでか感動するな…」
ヘラ「うん…」
ペルセウス「ああ…」
そうして桃太郎たちはオニールへと向かい、オニールで3年かけて首脳各国の者たちに『光』をもたらしていった
オニールの人々は桃太郎から『心』をもらい、少しずつだが変わっていった
戦争により人口も減った事で、資源の枯渇問題も縮小し、『光』で変わったカオスによって、新たなテクノロジーが開発され、それが人々を救済するエネルギーになった
カオスはオニール人から英雄と称えられるようになる
カオス「私が英雄か…本当の英雄はゲレちゃんなのに」
タナトス「まあなw」
ヘラ「まあゲレちゃんは『神』でいいじゃない」
カオス「ああ…本当にそう思う…」
そうしてオニールにも、桃太郎によって平和がもたらされた
ボロンゴ、プックル、チロルは毎日交代で宇宙船を見張っている
桃太郎たちは次の来襲者が来ても、すぐに行けるように港の近くに住居を移していた
お雪と吾郎も一緒だ
お雪と吾郎はせっかくだからと、蕎麦屋で安い賃金で雇われ、働いていた
この日、桃太郎はシータと共に、目黒の米問屋に来ていた
或右衛門に呼ばれていたからだ
桃太郎「どうしたよ?…みんな集まって」
或右衛門だけではなく、おみつ、おみつの子のおたえ、臣九郎、およしもいて、みんないつもより緊張している感じだった
シータ「おお、よちよち…ナデナデ…おたえちゃん大きくなったねえw」
おたえ「しーし、しーし」
シータ「うん、しーしだよぉ」
或右衛門「かわいいだろお?w」
シータ「ああ、おみっちゃんの子だしな」
或右衛門「お、オレの子でもあるからな?」
おみつ「ブフw」
桃太郎「臣たちは子どもまだか?」
臣九郎「まだw…実はこれから話そうとする事に関係があってな」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「ゲレちゃんさ、今度の奴らが来て戦うだろ?」
桃太郎「うん」
臣九郎「オレたちは足手まといになるだけだから、悪いけど参加はしない…」
桃太郎「うんうん…それでいいぞ」
臣九郎「でも、制圧が済んだらオレたちを呼んでほしいんだ」
桃太郎「…帰りてえのか?」
臣九郎「いや…或はわからねえけど、オレはもう未練はない」
或右衛門「オレもねえ」
桃太郎「…?…なんかそいつらに用があるとか?」
臣九郎「いや、全然」
シータ「あれか?…宇宙船の操縦か?」
臣九郎「そう…」
桃太郎「ん?」
シータ「あれを動かす技術だよ…わたしは知らないの…」
臣九郎「まあ、実際はゲレちゃんだけでも行ける…帰還操作すればいいだけだからね」
或右衛門「指定した座標に自動で行ってくれるんだよ」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「で、地球に戻るのも簡単操作だ…奴らの船にも地球の座標が記録されてると思うからさ」
桃太郎「ほむほむ…ならいいじゃんw」
臣九郎「でもな、不測の事態ってのもある…宇宙…あの空の向こう側ってのは、こことは大違いの環境なんだ…ものすごく危険なんだよ」
桃太郎「どんなふうに?」
臣九郎「まず、空気がない」
桃太郎「え?…息できないの?」
臣九郎「息できないどころじゃないんだw…そらもう恐ろしい事になる…それから、宇宙は気温がものすごく低い…冬は寒いだろ?」
桃太郎「うん」
臣九郎「それでも温度は0度とかなんだけどさ…宇宙は酷いとマイナス270度とかなのよ」
桃太郎「マイナスってのは引くって事だよな?…つまり、暑いの逆の温度?」
臣九郎「そうそう…で、あともっとヤバいのが放射線ってやつだ…それはこの地球にもほんのちょっぴりはあるけど、そいつが宇宙には大量にあってな…そいつに晒されるといくらゲレちゃんが強くても、そんなの関係なしに死ぬ…誰でも死ぬ」
桃太郎「そ、そんな危険なのか…」
臣九郎「宇宙船に乗ってるか、オメガを着てるなら大丈夫だけどな…生身じゃきっと1分ともたない」
桃太郎「う、うん…」
臣九郎「そしてこれが一番想像しにくいと思うけど、宇宙には重力がない…重力ってのはオレたちがこうしてここに座ってられる力だ」
桃太郎「うん?」
臣九郎「例えばこの刀さ…こいつは今手を離すとどうなる?」
桃太郎「床に落ちる」
臣九郎「当たり前だよな?」
桃太郎「うん」
臣九郎「けどそれは地球が引っ張ってるからなんだよ」
桃太郎「地球が?」
臣九郎「そう…だけど宇宙にはその力がないから、ここで手を離したら、ここに留まるわけ」
桃太郎「うっそだ~ww」
臣九郎「いや本当にw」
シータ「そうなのよw」
桃太郎「そ、そうなの?…で?」
臣九郎「そして空気もない…つまり、物を止める力が何もないわけ」
桃太郎「う?」
臣九郎「オレが刀をこう…投げる…そうすっと、弧を描いて床に落ちて止まるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「落ちるのは重力があるから、もしそれがなくても、空気があればいつかは止まる…空気が止めてくれるから…けど、宇宙にはそれがないから、投げたら真っ直ぐずっと同じ速さで飛びっぱなしだ」
桃太郎「ええ?!…うっそだろお前w」
臣九郎「本当だってばw…つまり、宇宙で何かあって、宇宙船が壊れて投げ出されたとする…でも、オメガとか宇宙服を着てればすぐには死なない…だけど、すっ飛ばされたらゲレちゃんはその方向にずっと…なにかに当たるまではずっと止まらずに進み続ける…そうなったらもう誰にも会えない…孤独にオメガの電力がなくなるまで生きて死ぬ」
桃太郎「こ、こええ…そんな死に方はさすがに嫌だ…」
臣九郎「まあ、そんな事故ってのはほとんどないに等しいんだけどさ…なぜかっつうとさ…夜空を見上げてみると星ってたくさん光ってるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「いっぱいもう数えきれない程あるだろ?」
桃太郎「うんうん」
臣九郎「けど実際は星と星の間隔ってものすごく距離があるわけ…例えばさ…遠い海に砂粒を一つ浮かべてさ…その砂粒を探してみ?って言われて、ゲレちゃんは見つけられると思う?」
桃太郎「いや、そんなの無理だろw」
臣九郎「宇宙ってのはそんな感じなんだよ…だから何かにぶつかるってのはそうそうない…だけどそれでも可能性は0じゃない」
桃太郎「ほむほむ」
臣九郎「そうなった時には避けなきゃいけない…そうだろ?」
桃太郎「うん…じゃないとオイラもシータも死ぬ…」
臣九郎「けど、宇宙船を動かすってのは知識と技術がいる…そんでラムダにはそれは教えられてない…つまりシータは知らない」
桃太郎「物…だからか?」
シータ「うん…」
臣九郎「動かせるのはそう訓練された、或右衛門か…ギリギリオレなんだな」
或右衛門「すごいだろ?」
桃太郎「う、うん…なんかムカつくなw」
シータ「チッ…」
おみつ「ブフw」
桃太郎「じゃあさ…お前たちが地球に来た時、着地に失敗したのはなんでよ?」
臣九郎「それはな…実は以前から調べる為に探査機ってのを地球の周りにオニールから飛ばしててさ…それが運悪くテレポートした少し先にあったんだな…」
桃太郎「へぇぇ」
シータ「普通ならそんな事ないんだけどね…探査機はそれ一つだけじゃないけど、それでもねえ」
臣九郎「うん…ほんと運が悪いとしか言いようがない…で、或がそいつを回避しようとして、でも避けきれなくてぶつかって、予定の地点とは違う、この江戸に落ちたってわけさ」
シータ「もっと上手く避ければねえ」
或右衛門「し、仕方ないだろ…」
桃太郎「まあまあ…だからオイラはシータと会えたんだし」
シータ「うん…スリスリ」
或右衛門「そうだぞ」
桃太郎「…なんかムカつくw」
臣九郎「おめえは黙ってろよw」
或右衛門「お前、オレの方が先輩だからな?」
おみつ「或さん!」
或右衛門「はい、すみません」
およし「ブファw」
臣九郎「まあさ、そうだとしてもゲレちゃんにはそんな時どうする事も出来ないわけだ…たとえこんなのでも、居た方がマシってやつだ」
或右衛門「ひどくない?…少なくとも臣よりは上手いんだぞ?…ウル」
シータ「わかったわかった…」
臣九郎「だからさ…オレたちもオニールに一緒に行く事にしたんだ」
桃太郎「…おみっちゃんとおたえとおよしちゃんは?」
臣九郎「…連れてく…だからオレは子供作るならそれが終わってからにしようと思ってる」
シータ「なるほどね…」
桃太郎「おみっちゃんもおよしちゃんもそれでいいの?」
おみつ「はい…たくさん考えて、話し合って…覚悟を決めました」
およし「わたしは…臣さんとならどこで死んでもいい///」
臣九郎「およし…ギュ」
桃太郎「けど…そんなの次に来る奴らにやらせりゃよくない?」
臣九郎「次に来る奴らはそうすると、オニールには戻ってくれるけど、地球には戻りたくないだろう…」
桃太郎「なんで?…オイラたちを地球に下ろしてまた戻ればいいじゃん」
臣九郎「そんなに燃料はないよ…一往復しかできない…だからそれもあってさ…ゲレちゃんたちは宇宙船に燃料を補給する技術もないからさ…オレたちが必要になる…だけど、その補給だってのんびりやれるわけじゃない…満タンじゃなかったら、またここに帰ってもオニールには戻れない…そうだろ?」
桃太郎「そっか…」
臣九郎「ゲレちゃんはきっと、次に来る奴らも殺さないだろうし、出来る事ならちゃんと帰してやりてえだろ?」
桃太郎「そりゃそうだ…」
臣九郎「オレはさ…ぶっ殺した方がいいと思うけど…でもそれが出来るゲレちゃんじゃねえのはよくわかってる…だから好きなんだ」
桃太郎「てへへ///」
臣九郎「甘いなって思うけどなw…そんで、そいつらにやらせるってなってもさ、ゲレちゃんはぶっちゃけ、そいつらを信用出来るか?」
桃太郎「うーん…会ってみねえ事には…」
臣九郎「はっきり言って、普通オニール人はもっとオレたちより冷たい…急ぎ働きタイプだ…ラムダもゲレちゃんの命令はきかないと思うし、冷たい」
桃太郎「そうなのか?…シータは優しいじゃん」
臣九郎「シータがちょっとみんなと違うんだ…だからオレはシータを仲間に選んだんだからな」
シータ「…そうだったの?!」
臣九郎「うん…ほんとはヘラって奴だったんだけど…知ってるか?」
シータ「知ってる…本当に兵器みたいな奴だ…」
臣九郎「オレはそんなのと一緒に何日も宇宙を旅するのはごめんだった…だから一番人間味のあるシータに変えてもらったんだ」
シータ「そう…でもわかる気がする…臣は明るいもんね…」
臣九郎「そうそうw…つまんねえのはごめんだw…だからオレは或右衛門と仲良くなったしなw…或右衛門はたしかに察しが悪いし、変な奴だけど、少なくとも他人を平気で傷つけたりはしない奴だからさ」
或右衛門「臣///…照れるじゃねえか///」
臣九郎「オレは人殺しになるために軍に入ったわけじゃないから…そりゃ時には殺したりもするけど…ゲレちゃんみたいに強くないからさ…でも、他の連中は違う…殺すのに慣れちまってる…それがオニールの軍人だ」
シータ「臣九郎…」
桃太郎「臣九郎…お前、カッコいいな」
臣九郎「そんなんじゃねえってw…オレはただ、もっとみんなゲラゲラ笑って生きればいいのによって思うだけだw」
桃太郎「だな…」
臣九郎「だからさ…オレはオニールに帰りたいと思わない…およしと優しい江戸の連中と暮らした方がオレはずっと楽しい…だから絶対にまたここに帰りたい」
桃太郎「うん」
臣九郎「けどだからってゲレちゃんを見捨てるのも出来ない…そんなのは江戸っ子のやる事じゃないw」
桃太郎「うんw」
臣九郎「けど、およしも一緒だから、オニールに着いても、オレはゲレちゃんと一緒には戦わない…ただ、ゲレちゃんを無事に地球に帰す為についてく…ゲレちゃんが戦って死んじまったら…冷たいようだが、オレはゲレちゃんもシータも放ってとっとと地球に帰る」
桃太郎「十分だ…それでいい…オイラだっておめえらに死なれたくねえ」
シータ「うん…かまわないよ」
或右衛門「…悪いな…おみつたちは置いてけばいいと思うけど…それも出来ない」
桃太郎「わかってる…オイラだってシータを置いていかないんだ…ただ、本当死ぬなよ?」
臣九郎「ああw…そんなには弱くもないぜ、オレたちだって」
或右衛門「おう…おみつとおたえを守る為なら、本当の鬼にもなって斬ってやる」
桃太郎「…わかった…ありがとう」
シータ「ありがとね…」
臣九郎「いや…元はと言えばオニール人が悪いからw…ゲレちゃんばっか苦労させて申し訳ないぜ…」
桃太郎「いいんだ…それがオイラの役割なんだから」
シータ「カッコいい///」
おみつ「ほんと!///」
桃太郎「…お前たちが居なくなっても、このおたなは大丈夫なのか?」
臣九郎「大丈夫…だんなはもう説得したし、長谷川様にも気にしてくださるようお願いしてある」
桃太郎「ぬかりねえなw」
およし「頼りになりますよね///」
桃太郎「ああw…心強いぜ」
臣九郎「まあ、ちゃちゃっと終わらせて、帰ってまた遊ぼうぜw」
桃太郎「だなw」
臣九郎「けど…ゲレちゃん…一つ約束してくれ」
桃太郎「ん?」
臣九郎「ゲレちゃんには辛いだろうけど…地球を乗っ取る計画を立てた3人の奴らは、1人残さず殺してくれ…殺すの嫌だろうけど、そればっかりは仕方ねえ事だ…」
桃太郎「…わかってる…覚悟はしてる」
臣九郎「辛え事ばっかさせてすまねえ」
桃太郎「いいってw」
シータ「もしゲレちゃんが躊躇したら、わたしがやるよ…」
臣九郎「うん、頼んだ…その3人の名は知ってるか?」
シータ「うん…クロノス、ハデス、ゼウスだよね」
臣九郎「そう…そいつらにたどり着くのも大変だけど…頑張れとしか言えない」
桃太郎「十分だよw」
臣九郎「話はそれで全部だ」
桃太郎「わかった…じゃ、オイラは帰る」
或右衛門「帰るの?…久しぶりなんだし、今日は泊まってけよ」
桃太郎「その間に奴らが来たら、ここじゃすぐに行けないだろw」
或右衛門「ああ…そっか…」
桃太郎「楽しくやるのは何もかも済んでからさ…じゃあ帰ろう、シータ」
シータ「うん…おたえちゃん返すね、おみっちゃん」
おみつ「はい…すっかり寝ちゃってw…しーしが好きなのよね」
シータ「わたしも子どもが好きみたいw…じゃあまたね」
およし「はい…お気をつけて!」
臣九郎「またなw」
そうして桃太郎とシータは帰った
それからまた数日後
チロル「今日はオレだな…行ってくる」
桃太郎「うん…気をつけてな!」
チロルは鬼ヶ島に着くと、宇宙船に入り、充電器に繋がる
宇宙船のソーラーパネルは無事なので、電力は今も作られている
チロル「ふう…しかし、いつ来るのかね…ちゃんとここに来ればいいけど…」
チロルたちは機械なので、退屈は感じない
たいがい何もしていない時は省エネモードにしている
朝になったら鬼ヶ島に来て、また朝に帰り、交代する
この何もない島で、24時間ただひたすらジッといつ来るかもわからないものを見張るのは、人間なら耐えられないだろう
チロル「オレあと何年くらいもつかな…体…」
チロルは妨害電波を出す機能があり、それを使うのは身体にも負担がかかる
オニールならば部品の交換がすぐに出来るが、地球では消耗したらそれまでだった
チロル「メモリーさえ無事なら死なないけど…いやだな…またイズさんに会いたい」
チロルたちはイズが大好きだった
中でも特にチロルは好きなのであった
ボロンゴやプックルは見た目はかわいい犬や猿なので、みんなに触られてかまってもらえるが、チロルは大きな鳥なので、抱っこしてくれる人と言えば桃太郎くらいだ
しかし、イズはみんなが鍛錬をしてる最中も、ずっと抱っこしてくれていた
チロル「機械なのにな…オレ」
ここ、鬼ヶ島に居るとイズの事を思い出す
チロルは宇宙船のモニターに接続し、イズの映像を映した
チロル「あと198年か…絶対そんなにもたないよ…」
一番懸念するのはバッテリーの寿命だ
チロルたちはバッテリーが一番消耗しない、50%~80%の電力を維持するように注意していた
過充電や消耗した状態からの充電は負荷が大きいのだ
しかし、いつでもそう上手く維持出来るわけではない
チロル「それでももたないだろうな…イズさんに会うどころか、ゲレちゃんとも居られないだろう…」
チロルは自分が機械であるのに、どうしてこんなに寂しくなったりするのか、いつも不思議に思う
チロル「ゲレちゃんがメモリーだけでもずっと持ってくれてたら、レイさんたちが体を作ってくれるかな…」
そう考えていると、ハッチの開いた事を知らせる灯りが光った
チロル(ついに来たか?)
チロルは充電器を外し、透明になり、待った
すると、オメガを着た者たちが入ってきた
「なんでこんなとこに不時着してるんだ?」
「さあね…前の奴らはどこだ?」
「まさかやられたのか?…こんな時代遅れの奴らに」
「だけど死体もオメガもないな…」
チロル(4人か?…今回も)
チロル(どうやって抜け出すかな…)
充電器は操縦室にあり、彼らがまず調べに来るのは当然操縦室だ
チロルは透明とはいえ、注意して見ればバレてしまう
チロル(ちょっと電力使うけど、あの物陰で粒子化しよう…)
チロルは操縦席の下の隙間に、粒子になって入りこんだ
チロル(隙を見て粒子のまま外に出て…飛んでいくしかない…)
しかしそれは非常に危険でもあった
粒子の状態で攻撃されればすぐに破壊されてしまうし、身体を構成する粒子が揃っていなければ、中途半端な形になってしまう
なによりメモリーだけは粒子化出来ないので、それを破壊されれば終わりだ
透明になるにも一旦元の形に戻ってからでなくては出来ない
「通信システムが動かない…直そうとはしたみたいだ」
「アルファとオミクロンは優秀な人間だったんだろ?」
「だけど、メカニックはツェータというラムダだけだったようだね」
「ほんとはアタシが来るはずだったのに」
彼らは他の船員たちの部屋を手分けして見る事になった
チロル(よし…しめた)
チロルは一旦体を元に戻して、透明になり、すかさず外に出た
外にはアルファの宇宙船より少し大きめな宇宙船があり、その宇宙船のそばに銃を持った2人が見張っていた
チロル(全部で6人か?…急いでゲレちゃんに伝えなきゃ)
チロルのバッテリーは残り60%になってしまっていた
桃太郎の長屋
チロル「ゲレちゃん!」
桃太郎「おっ!…もしかして!」
チロル「うん、奴らだ…今度は見えた限りでは6人いる…大丈夫?」
桃太郎「問題ないw」
シータ「やっと来たかw」
ボロンゴ「チロル、よく無事だったな…ホッとしたよ」
プックル「うん、良かったぜ」
チロル「ははw…人の心配するなんておかしいなw」
ボロンゴ「全くだw」
桃太郎「おっし…行くか」
チロル「悪いけどゲレちゃん…ボロンゴに乗ってくれ…オレは電力が少ない…妨害電波を出す電力は確保しないと」
桃太郎「わかった…ボロンゴ乗るぞ」
ボロンゴ「わん!」
桃太郎「ブファww…やめろ、こんな時にww」
シータ「ブフゥww」
プックル「シータ、余計な事かもだけど、ポテンツァはちゃんと持った?」
シータ「うん…大丈夫!…二つちゃんとある!…ありがと!」
チロル「早く行こう」
道中、空
チロル「あいつらのうち、4人はまだアルファの船を調べてると思う…外に奴らの船を守ってるのが2人…先にそいつらをやっちまおう」
桃太郎「オケオケ…おめえらは全員シータを守れよ?」
プックル「うん、わかってる」
ボロンゴ「わん!」
桃太郎「ブフww…それ流行ってるのか?w」
ボロンゴ「うんw」
シータ「ククww」
プックル「キー!!」
桃太郎「いや…お前のはなんか違うわ…」
シータ「うん…」
プックル「なんでよw」
桃太郎たちは鬼ヶ島に降りた
奴らの宇宙船の影に降りたので、まだ気付かれてはいない
ボロンゴとプックルは透明になり、シータの後ろを進み、チロルは透明にはならず、宇宙船の影に隠れていた
桃太郎「よう」
「な!…お前!」
桃太郎はすかさずガンマソードで一閃し、1人倒し、倒れて仰向けになっている足に叩きつけ、太腿を折った
その激痛のショックで気絶した
簡単に倒され、もう1人は狼狽える
「う、うそだ!」
シータ「ウソじゃない!」
「あががが…ガク」
シータ「うそ…この武器すごいw」
桃太郎「オイラもびっくりだ…簡単にオメガが壊れたよ」
シータ「負ける気しないねw」
桃太郎「しねえw」
ボロンゴ「奴らはまだこちらに気付いてないな…ハッチの前で待ち伏せしよう」
プックル「おい、チロル…もう来ていいぞ」
チロル「うん」
ハッチ前
チロル「ここからなら妨害電波届くよ…奴らの銃を使えなくするよ」
桃太郎「頼む」
チロルは妨害電波を出すと、機能停止した
桃太郎「ち、チロル!」
ボロンゴ「大丈夫…残り電力がわずかになったからスリープモードになったんだ…充電すればまた元気になるよ」
プックル「ごめんな、チロル…お前ばっか負担でよお」
シータ「ね、音出しておびき出そうか」
桃太郎「そうするか」
桃太郎はハッチの中に入り、壁をガンガンと拳で叩いた
中から4人が出てくる
桃太郎「こいや」
「なんだと…外の奴らは?」
桃太郎「あっちで寝とるよw…来いよ」
「アタシが行く!」
そう言って銃を構え、突進してくるが、銃は不発になっている
銃を捨て、細身の剣で桃太郎に斬りかかる
桃太郎「シータ、こいつは任せる」
桃太郎は剣を折り、ハッチの外に蹴り出した
シータ「あんた女だね?…ラムダか?」
「お前…たしかシータ」
シータ「わたしを知ってるの?」
「アタシの代わりになんでお前が選ばれたんだ」
シータ「てことはヘラか…さあね…弱いからじゃない?」
ヘラ「こいつ!」
ヘラの成績はラムダの中でもトップクラスであり、シータは中の上といった成績だった
自分より格下のシータにバカにされ、逆上し、シータに猛烈に襲いかかった
しかし、シータはミランダから教えを受けて、桃太郎と毎日稽古しているのだ
ミランダや桃太郎と比べれば、スピードもパワーも大した事はなかった
とはいえ、シータは生身であり、攻撃をくらうわけにはいかない
ヘラの攻撃を一つ一つ丁寧にいなし、ガードし、かわした
シータ「それで全力?…大した事ないね、やっぱ」
ヘラ「このクソ女!」
シータ「クソはてめえだ…このブス!」
シータは裏拳をヘラに繰り出した
ヘラはシータの間合いの外に避けたが、シータはポテンツァを前に出していた
ヘラのヘルメットが砕け、鼻が折れる
ヘラ「ぐっ!」
シータ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
シータの怒涛のラッシュパンチに、ヘラのオメガがどんどん砕け、剥がれていく
そうして、生身になったヘラはシータのポテンツァになすすべもなく敗北した
シータ「ゲレちゃん!」
桃太郎「おうシータ…こっちも終わったよw」
シータ「さっすが!…3人も居たのにw」
桃太郎「いや、もう師匠と比べたらカスだわw」
シータ「だねw」
ボロンゴ「私たちはまるで役に立ってないな」
プックル「うんwごめんね、ゲレちゃん」
桃太郎「何言ってんだw…その方がいいに決まってる」
桃太郎は外でズタボロになっているヘラと、先に倒した足の折れた者と、ポテンツァの電流で気絶している者を、アルファの宇宙船に入れた
桃太郎「なあシータ…オメガは他人では脱がせられねえのか?」
シータ「うん…オメガは本人しか脱げない」
桃太郎「じゃあやっぱり砕くしかないか」
シータ「そうだね…けどこの武器ならまるで煎餅割るみたいなもんだねw」
桃太郎「その女だけはもうボロボロだなw…かわいそうに」
シータ「でもこいつわたしの事『クソ女』って言ったのよ」
桃太郎「なんだと?…オイラのシータにこの野郎…」
プックル「待てゲレちゃん…それ以上やったら死んじゃうw」
桃太郎「お、おお、そうか…」
シータ「ブフゥww」
そして桃太郎とシータがバキバキとオメガを砕いていると、中の3人のうちの1人が目を覚ました
「ぐっ…」
桃太郎「おう、起きた?…悪いけどオメガは脱いでくれよ」
「い、いやだ…」
桃太郎「じゃあ砕くだけだなあ…」
桃太郎はそう言って、ガンマソードを降り上げた
「ま、待った!…わかった!…脱ぐ!」
桃太郎「そうしてくれw…オイラだってそんなに痛めつけたいわけじゃねえから」
その男は自らオメガを脱いだ
そうして、服だけになった6人はそれぞれどこかしら折れたり、気を失ったりしていて、シータのラッシュをくらったヘラは見るも無残な姿になっていた
「ヘラがこんな…お前たちは…」
桃太郎「オイラ桃太郎…ゲレちゃんと呼んでくれ…こいつらは前に来た奴らの探索機…で、シータは知ってるか?」
「…いや…」
桃太郎「お前はラムダか?」
「…いや」
桃太郎「名前は?」
「…ヒドラだ…」
桃太郎「ヒドラ…なんかかっけぇ!」
シータ「ブフww…のんきなんだからw」
ヒドラ「……」
桃太郎「シータはこの船に乗ってた乗組員だ…ラムダのシータ」
ヒドラ「ラムダっぽくないな…」
桃太郎「オイラの妻だ」
ヒドラ「…なに?…お前…任務はどうした」
シータ「お前だと?このカス野郎!…ベキ!」
ヒドラ「ぐわ!…ガク」
桃太郎「せいせいせい…また気絶しちゃったじゃんw」
シータ「ごめん///」
プックル「シータらしいやw…チロルは充電器に繋いできたよ」
ボロンゴ「復活まで1時間はかかると思う」
桃太郎「そっか…チロル…早く元気になるんだぞ…」
シータ「こいつらはどうする?…治療する?」
桃太郎「うん…特にこの女は早くしないと死ぬ」
シータ「じゃあ服脱がすか…」
桃太郎とシータはヘラの服を脱がし、治療マシンに入れた
シータ「ゲレちゃん、コイツの裸は見てもなんとも思わない?」
桃太郎「へ?」
シータ「おっぱい揉んでみてえな…とか…コイツも結構キレイな身体してると思うけど」
桃太郎「いや全然w…たしかにキレイだとは思うけど…なんつうか、欲情はしねえな」
シータ「…良かった///」
桃太郎「お?…1時間?…ケガのわりに早いな」
シータ「一つ一つは重度じゃないからね…」
桃太郎「そういう事か…こいつだけは身体はなんともないけどずっと起きねえな」
シータ「ポテンツァの電流すごいね…さすが神様の武器だ…技名考えようかな」
桃太郎「おお…なんて?」
シータ「んー…ライトニングボルト…それかライトニングプラズマ」
桃太郎「かかかっけぇ!!」
シータ「でしょお?w…どっちがいいかな?」
桃太郎「んー…もしさ、技名を叫びながら攻撃したらさ、『ライトニングプラズマ!』より、『ライトニングボルトォー!!』の方が気持ちが入りそうじゃない?」
シータ「…それだ!」
ボロンゴ「のんきだなあ…」
プックル「まあ、それだけ余裕なんだろw」
それから2人はすぐに治療マシンに入れられるように、全員の服を脱がし、至るところに縄でくくりつけた
桃太郎「おーし…これでまあ大丈夫だろ」
シータ「うん…きったねえもん丸出しだ」
桃太郎「そ、そんな事言うなよぉ…オイラにもついてるのに…」
シータ「ゲレちゃんのはキレイだよお///…大好き」
桃太郎「そうお?」
シータ「うん!…ナデナデ」
桃太郎「おっふ…///…やめちくり~」
プックル「なあ、アルファとオミクロンはいつ呼びに行く?」
桃太郎「うーん…オイラ見張ってるから、シータと一緒に呼んできて?」
シータ「え…ゲレちゃんと離れるのヤダよ…」
桃太郎「オイラも嫌だけど…万一もあるからさ…それにボロンゴもプックルも単体で町をウロウロは出来ねえし」
ボロンゴ「たしかに…」
シータ「うう…ギュ…」
桃太郎「ちょっとだけ我慢だ…な?」
シータ「うん…チュウして?」
桃太郎「んー…チュゥ」
シータ「じゃあ行ってくるね…ボロンゴ乗せてって」
ボロンゴ「り」
そうしてシータは目黒に向かった
或右衛門と臣九郎は、すぐさま妻子と共に、鬼ヶ島へと出発し、シータは帰る前にお雪と吾郎に説明をしてから戻った
シータが戻るまでの間に、シータに殴られて気絶していたヒドラがまた起きた
プックル「ゲレちゃん、こいつまた起きたよ」
桃太郎「お、ヒドラ…大丈夫か?」
ヒドラ「…ぺっ!」
ヒドラは唾を吐きかけた
桃太郎「お前なあ…懲りねえなあ」
ヒドラ「殺せ…」
桃太郎「バキ!…簡単に殺せとか言ってんじゃねえ!」
プックル「ゲレちゃん…また気絶しちゃったよ…」
桃太郎「あ…弱えな」
それから少し経つと、最初に足を折られた男が目を覚ました
「うう…ぐ…」
凄まじく痛いのに、縄で縛られている為押さえる事も出来ない
桃太郎「ごめんな…お前、名前は?」
「うう…あ…」
桃太郎「うう…あ…って名前か?」
プックル「そんなわけないw」
桃太郎「わかってるよw」
「こ…殺さないのか?」
桃太郎「それが名前か?」
「ち、違う…ハァハァ…ペルセウス」
桃太郎「ペルセウスね…」
ペルセウス「ああ…ハァ…ハァ…」
桃太郎「お前はラムダ?」
ペルセウス「そ、そうだ…」
桃太郎「今ヘラが治療マシンに入ってる…次に入れてやるな…あと1時間ちょっとくらい待てるか?」
ペルセウス「な、なぜ助ける?…ハァ…」
桃太郎「あんま人殺しなんてしたくねえって普通はw…特に恨みもねえのに」
ペルセウス「うう…」
桃太郎「せめて痛み止めとかあればな…」
プックル「お前の船にあるだろ?…とってきてやるよ…場所を教えろよ」
ペルセウス「この船と…ハァ…一緒だ…」
プックル「わかった…待ってろ」
プックルはペルセウスたちの宇宙船から鎮痛剤を持ってきて、注射した
ペルセウス「あ、ありがと…」
桃太郎「話せるか?」
ペルセウス「ああ…」
桃太郎「ヒドラとヘラ以外の3人の名前は?」
ペルセウス「あそこの奴がタナトス…あっちがイリス…そこの奴はアーテーだ」
桃太郎「タナトス、イリス、アーテー…か…誰がラムダで、誰が人間?」
ペルセウス「ヒドラとタナトスが人間…あとはラムダだ」
桃太郎「ありがと」
シータ「ただいま~…ギュゥ」
桃太郎「おーよしよしよし…ギュ…」
ペルセウス「…シータか?」
シータ「うん…知ってるの?」
ペルセウス「ああ…ヘラがな…前回自分じゃなくてシータが選ばれた事が気に入らないみたいで…シータの事を言っていた…」
シータ「そんなに行きたかったのか?…あの女」
ペルセウス「いや…自分の方が優れたラムダなのに、シータが選ばれたから…」
シータ「くだらねえ…」
桃太郎「うん…けどまあ、そういうのはちょっと人間らしいなw」
ペルセウス「かもしれんな…我々は感情を持つのはあまり許されない…だがヘラは嫉妬の感情を持ったのだろう」
桃太郎「かわいそうにな…お前らもオイラから見たら人間にしか見えないのに」
ペルセウス「気を使わなくていい」
桃太郎「ペルセウス…おめえは自分の信念で作戦に参加してるのか?」
ペルセウス「いや…オレたちは命令を聞くだけだ…」
桃太郎「オニールに義理があるか?」
ペルセウス「いや…」
桃太郎「帰りたいか?」
ペルセウス「そういう思いはない…」
シータ「あんたはラムダっぽいラムダだね」
桃太郎「うーん…ラムダのこいつの方が、ヒドラよか良い奴に見える」
ペルセウス「ヒドラは人間なのにラムダよりも強い…だから自信があるのだろう」
桃太郎「弱いけどなあ…」
ペルセウス「あんたが強すぎるだけだ…」
桃太郎「オイラ桃太郎…ゲレちゃんて呼べ」
ペルセウス「ゲレちゃんみたいにみんな強いのか?…この星の人間は」
桃太郎「そんな事はないよ」
ペルセウス「オレたちを治して…どうするつもりだ?」
桃太郎「オニールに連れてく…帰りたいだろ?」
ペルセウス「別に…どっちでもいい」
桃太郎「そうなのか?」
シータ「ラムダはこんな感じだよ」
ペルセウス「ゲレちゃんもオニールへ?」
桃太郎「ああ…クロノスとハデスとゼウスって野郎を殺しにな…」
ペルセウス「なるほど…それは不可能に思えるが…ゲレちゃんならやれそうだな」
桃太郎「うーん…やらねえと地球に攻めてくるんだろ?」
ペルセウス「そうだな…」
シータ「あ!…ヘラが終わったよ!」
桃太郎「お、よし…今、縄解くからな…逃げるなよ?」
ペルセウス「ゲレちゃんに抵抗しても無駄なのはわかっているし、この足ではできない」
桃太郎「それもそうかw」
ヘラ「なんでアタシ…シータ!」
シータ「うるせぇな…黙ってろブス」
桃太郎「せいせいせい…もう」
シータ「ごめん、つい…」
桃太郎「ヘラ…おめえこっちに来い」
ヘラは走って逃げ出した
桃太郎「あ!」
シータ「ボロンゴがいるから大丈夫よ…でもわたしも行ってくる」
桃太郎「うん」
シータが追いつくと、ヘラはボロンゴに足を噛まれていた
ヘラはボロンゴに蹴りを入れるが、オメガと同じ耐久性のボロンゴには効いていない
シータ「逃げてんじゃねえよ、面倒くせえな…バキ!」
ヘラ「ぐふ!…くそ…」
シータ「ボロンゴ、手錠出して?」
ボロンゴ「り」
シータはヘラに手錠をかけて、桃太郎のところに連れて行った
桃太郎「ヘラ…おめえは気が強いな…そんなに作戦が大事なのか?」
ヘラ「別に…」
桃太郎「シータ…ヘラに服着せてやろう」
シータ「うん…」
桃太郎とシータは一旦手錠を外し、ヘラに服を着させた
桃太郎「逃げねえ方がいいぞ…せっかく治ったのに足がまた傷だらけじゃねえか」
ヘラ「たしかに…あんたからは逃げれないね…」
桃太郎「うん…それに逃げてどうなるもんじゃねえよ…オイラは別に殺したりはしねえからさ」
ヘラ「わかったよ…」
桃太郎「うんうん…いい子だ…ナデナデ」
ヘラ「やめろよ…」
シータ「ほんとかわいくないねぇ」
桃太郎「仕方ねえよ、ヘラからしたら敵だもんなw…オイラは桃太郎…ゲレちゃんて呼べ」
ヘラ「ああ…」
桃太郎「ペルセウス、待たせたな…治療マシンに入れてやるからな」
ペルセウス「すまない…」
ペルセウスが治療マシンに入っていると、イリスとタナトスとヒドラも目を覚ました
アーテーはまだ起きない
シータ「ライトニングボルトでやられると全然起きないね…」
桃太郎「な…便利だなあ…」
シータ「あと98人は気絶させられる」
桃太郎「すげ~使えるw…師匠に感謝だ」
プックル「だなw…チロルのスリープモードを解除して…」
チロル「オレ復活!」
桃太郎「おお…チロル…良かったあ…ギュ…ダッコ」
チロル「ははw…充電切れただけだよ」
桃太郎「そうだけどさ…心配なもんは心配だよ…」
チロル「ありがと…スリスリ」
ヒドラ「それ機械だろ?…お前、機械相手にそんな事して、頭おかしいのか?」
桃太郎「頭おかしいのはお前だ…オイラには人間のお前よりラムダの方がよっぽど人間に見えるぞ」
ヘラ「……」
イリス「……」
桃太郎「さ、鎮痛剤…あと2本ある…ヒドラはバカだからお前たちに使ってやる」
イリス「すまない」
タナトス「わりい…本当に殺す気ないんだな…」
桃太郎「ねえよw…タナトスは人間なんだよな?」
タナトス「ああ…」
桃太郎「家族は?」
タナトス「いるよ…妻と息子…」
桃太郎「そっか…良かったなw…ちゃんと帰してやるよ」
タナトス「…なんで敵にそんな事を?」
ヒドラ「バカだからに決まってるじゃねえかw」
シータ「おめえ、ほんとクソだな…ドカ!バキ!」
ヒドラ「てめぇ…ラムダのくせに…覚えてろよ…」
桃太郎「ヒドラ…」
ヒドラ「なんだよ…」
桃太郎はヒドラの頭に手を乗せ、ルーチェの治癒の光を出してみた
ヒドラ「え…あ…」
ヒドラの心の中が優しく温かな光で満たされ、泣き始めた
アーテーもその光に当たり、目を覚ました
ヒドラ「うう…グス…」
ヘラ「な、なにをしたの?」
桃太郎「わからねえ…オイラ、気がついたらそうしてた」
タナトス「え?」
桃太郎「ヒドラ…」
ヒドラ「はい…」
イリス「え…」
ヘラ「うそ…」
傲慢で、他人の事などどうでも良く、ラムダを人として見たりもしないし、殺す事にも何も感じない…みんなの知るヒドラはそんな男だった
そんなヒドラが『はい』と返事をした
それには冷静なラムダたちも驚いた
桃太郎「おめえ…本当のヒドラはどんな奴だ?」
ヒドラ「オレは…世の中が憎い…全てが憎い」
桃太郎「なぜ?…なぜそうなった?」
ヒドラ「…オレの親父は…いつも母ちゃんを殴ってた…何かにつけて文句言って…母ちゃんを殴った…」
桃太郎「なんだと…それで?」
ヒドラ「オレは怖かった…母ちゃんをかわいそうと思ったけど、怖くて守ってやれなかった…」
桃太郎「うん…そうだよな…」
ヒドラ「でも…だからオレは強くなろうとした…体を鍛えて…そんで、ある日母ちゃんを守ろうと親父に殴りかかった」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「親父はでもずるくて…こう言った『お前がオレを一発殴ったら、お前じゃなくてこいつを10回殴る』って…」
シータ「ひどい…なんてやつ!」
桃太郎「それで…ヒドラはどうした?」
ヒドラ「オレは…それで親父を殴れなくなった…悔しくて涙が出て…心底憎くて、オレは親父を睨んだ…でもそれ以上何も出来ないでいたら、次に母ちゃんにこう言った…『このガキをぶっ殺したら、お前を殴るのやめて別れてやる』って…」
桃太郎「うん…そしたら?」
ヒドラ「母ちゃんは台所に行って、包丁を持って…オレを刺してきた…本気だった…その母ちゃんの恐ろしい顔…今でも忘れられない…グス…」
タナトス「なんてことだ…」
桃太郎「……」
ヒドラ「オレは逃げた…家から飛び出して逃げた…母ちゃんはそのオレを追いかけてきた…包丁持って…オレは怖くてもう家に帰れなくなった…だけど、それでも帰らなきゃいけなかった…」
桃太郎「なぜ?」
ヒドラ「オレには妹がいたからだ…あんな悪魔みたいな奴らのとこに、妹を置いていけない…オレは妹を助けようと戻って…窓から覗いた…」
シータ「そ、それで…?」
ヒドラ「妹は血だらけになって死んでた…グス…母ちゃんの服には血がたくさんついてて…オレはもう気が変になって、耐えられずに逃げた…オレはそれでしばらく公園とか…そういうとこで乞食みたいにして暮らしてた…雑草食ったりして…時々腹こわして苦しんだり…」
ヘラ「ひどすぎる…」
ヒドラ「オレはなぜ母ちゃんを守ろうとしたのに、母ちゃんがオレを殺そうとしたのか…妹を殺したのか考えた…そんで出た答えはこうだ…『自分が助かりたいから』」
タナトス「そりゃそうだな…」
桃太郎「…それほど母ちゃんも苦しかったんだろうな」
ヒドラ「それはさ…そんなのはオレもわかってる…けどよ…あのオレを殺そうとした時の恐ろしい顔は…オレへの愛なんて一欠片もなかった…そのうち警察がオレを探して保護して…オレは孤児院に入れられた…オレはでも、その時はもう誰も信じられなくなってた…だから誰とも関わらず、憎しみにまかせて暴れたりして…みんなはオレから離れていった」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「でもオレは…本当は優しくして欲しかった…愛してくれる誰かが欲しかった…それなのに信じられなくて、乱暴して…誰もがオレを嫌った…だからオレも人を嫌った…全員ぶっ殺したくなって…軍隊に入った…今度のこの地球に来たのも、地球人を全員ぶっ殺してやるって…」
桃太郎「辛かったなあ…けどよ…それじゃおめえは自分の親父や母ちゃんと一緒じゃねえか…」
ヒドラ「そうだ…オレは弱いからそんな道を選んだ…そうしないとオレは…」
桃太郎「そうだな…おめえは弱え…でも今まではそうだったとして、これからもそうなのか?…これからも弱いまま生きていくのか?」
ヒドラ「うう…グス…オレは…どうすれば」
桃太郎「お前は今までどのくらい殺した?」
ヒドラ「わからない…たくさんだ…」
桃太郎「お前のその生い立ちは同情するけどよ…お前は弱さから逃げるためにたくさんの命を奪ったんだ…そんなお前が愛を欲しがるなんて、図々しいにも程があるだろ…」
ヒドラ「わかってる…」
桃太郎「でもオイラはそんな図々しいお前にさえ、優しくしてやる…許してやる…だからよ、今度からは本当に強くなって…今まで奪った命よりもっと多くを救えよ…な?」
ヒドラ「うう…グス…うわぁあああ!!」
桃太郎「よしよし…ナデナデ」
ヒドラは桃太郎にすがり、大泣きした
今まで溜まりに溜まったものを一気に吐き出すかのように、泣いた
それを見ていたみんなには、桃太郎がまるで本物の神のように思えた
そうしてしばらくすると、ヒドラは顔を上げ、照れながら笑い、桃太郎にこう言った
ヒドラ「ゲレちゃん…ありがとう…オレはこれからは守る為だけに戦うよ…強くなるよ」
桃太郎「うんうんw…それでこそ男だ」
ヒドラ「へへ///」
桃太郎「けどさ…オイラおめえに謝らなきゃいけねえ」
ヒドラ「何を?」
桃太郎「オイラがさっきヒドラに当てた光…おめえはそれでケガも治ったろ?」
ヒドラ「そ、そういえば…!!…どこも痛くない…」
桃太郎「あれはさ…なんでも治せるんだけど、その代わり寿命を短くしちまうんだ…ごめん…何年なのかはわからねえけど…オイラはヒドラの寿命を奪った…」
ヒドラ「そっか…でも気にしないでくれよw…そんなくらい当たり前だ…オレはそれ以上に罪深いんだ…こんなに心が晴れた事なんてないんだ…明日死んでもオレはゲレちゃんを恨んだりはしない…感謝するよ、ゲレちゃん」
桃太郎「すまねえ…」
ヒドラ「この残った寿命でさ…出来るだけ守るよ…」
桃太郎「ああw…じゃあ…ま、とりあえず服着ろやw」
ヒドラ「あ…うん///」
タナトス「奇跡だ…」
桃太郎「お前…アーテーだったか…」
アーテー「あ、ああ…」
桃太郎「お前はどこか痛いとことかない?」
アーテー「ちょっとまだ身体に麻痺感がある…」
桃太郎「我慢できそうか?…みんなの治療が済んだら、いちおう入れや」
アーテー「あ…ああ…オレたちを治して…何を企んでるんだ?」
桃太郎「あああもう…めんどくせえなw…いちいち聞くなよw」
シータ「普通そう思うってw」
プックル「うんw」
桃太郎「もお…本当にオイラは特におめえらになんかしようとか、させようとか、そんなの考えてねえんだって…普通はなあ…殺すとかそう簡単に出来るもんじゃねえし、痛がってたら手当てしてやりてえって思うんだよ…オイラはその普通な事してるだけw…な?…わかった?」
ヒドラ「信じるよw」
イリス「何の見返りもなく?」
アーテー「それがわからない」
桃太郎「見返りぃ?…うーん…あるとすればそりゃお前らの元気な顔じゃねえか?w」
イリス「オレたちの元気な顔?」
桃太郎「うん…さっきのヒドラみたいな笑顔とか…」
アーテー「それに何の価値があるんだ?」
桃太郎「うるっせえなあもうw」
シータ「ブフゥww」
ボロンゴ「私も最初はわからなかったよ」
チロル「うん…今はわかるけど、上手く説明できない…でもあったかくなるんだ」
イリス「機械のお前が?…オーバーヒートしてるのではなくて?」
チロル「違うw…けど、ヒドラはわかったんじゃねえか?」
ヒドラ「ああ…オレはわかった…ゲレちゃんはオニールの人間とは全然違う…」
プックル「ゲレちゃんは特別あったかいけど、この江戸の人間はほとんどが優しくてあったかいぜ」
シータ「うんうん」
ボロンゴ「もちろん、悪人もいるがな」
シータ「オニールの人間は江戸っ子と比べたらクソ以下だぞ」
タナトス「つまり、オニールの常識は通用しないって事か」
シータ「そんなもん、通用しない方がいい…とにかく、あんたらは黙って元気になってりゃいいのよ」
桃太郎「うんうん…ま、ケガさせたオイラたちが言うのも何だけどさw…けど、それはこの地球を守る為だからな?…誰だって理不尽に居場所を奪われたくねえだろ?…殺されてまでさ」
タナトス「そりゃそうだ…オレなら治さないで殺す」
ヘラ「アタシもだ…その方が安心できるし、楽だ」
桃太郎「オイラだってそんな事は理解できるけどよ…昔な、オイラも人を殺した事あるんだよ」
ヒドラ「え?」
桃太郎「もちろん、悪人だ…殺さなければ、理不尽に優しい人間たちが死ぬ…だから殺した…4人もね…オイラはその時さ、みんなから感謝された…『ゲレちゃんが殺したから、わたしたちは生きれるんだよ』ってね…でもそれでもオイラは後悔してる…あん時オイラがもっと強けりゃ、そいつらだって殺さないで済んだんだ…だからオイラは強くなろうとした…そんなオイラが簡単に殺すはずねえだろ」
イリス「そんなに殺すのが嫌なのか…」
桃太郎「うん…オイラにはどうするのが正しいかなんてわからねえから…オイラが正しいと思う事を信じてやるだけだ…お前たちを治すのだってオイラはそれが正しいと思うからしてる…それだけの事だ…本当に何にも企んでなんかないよ…それでもまだわからねえなら縄解いてやる」
桃太郎はそう言うと、縛られている者を解放した
タナトス「オレたちがゲレちゃんの目を盗んで通信しに行ったらどうするんだ?」
桃太郎「そしたらまた殴って連れ戻すw…でもそんな事したくないからやめれw」
ヒドラ「そんなマネする奴はオレがしばく」
ボロンゴ「私も」
シータ「わたしも」
桃太郎「だってさw…でもやめてくれよ?」
ヘラ「アタシはもうそんな気にならない…」
イリス「なぜかオレもだ…ゲレちゃんが悲しむと思うとやれない」
プックル「だろ?w…それだよw」
アーテー「ラムダとしては欠陥品だと思うが…オレもそう思う」
タナトス「たしかになw…欠陥品だw」
チロル「だけど、欠陥品を作ったのはお前たちオニール人だぜ?…ラムダを物だと思って優しさを与えなかったから、ゲレちゃんの優しさがなおさら身に沁みるんだからな…」
ボロンゴ「オニール人もラムダに優しければ、ラムダは裏切らないはずだ」
タナトス「機械に説教されちまったw…ま、オレももうなんかどうでも良くなっちまったよ…」
プックル「ペルセウスが終わったよ、ゲレちゃん」
桃太郎「お、じゃあタナトス入れや…1人で入れるか?」
タナトス「なんとか…」
桃太郎「ペルセウス、すっかり良くなったか?」
ペルセウス「ああ…ありがとう、ゲレちゃん」
桃太郎「良かったなあw」
ヒドラ「なあ、ゲレちゃん」
桃太郎「ん?」
ヒドラ「この後さ、みんな治ったらどうするんだ?」
桃太郎「簡単さ、ヒドラたちの乗ってきた宇宙船で、オイラもオニールに行って、地球を襲う計画を立ててる3人をぶっ殺す」
ヒドラ「…それはちょっといろいろ無理があるぜ」
桃太郎「オイラには出来なそうか?」
ヒドラ「うーん…なんていうの?…出来る出来ないより、その3人てのはオレたちの国の奴らなわけで…他の国の連中も考えてるかもしれないってのが一つ」
桃太郎「ほむほむ」
ヒドラ「まあ、それはまだいいんだ…実際そうする技術を他の国はまだ持ってないはずだからね…」
桃太郎「うん…おお、良かったw」
ヒドラ「たださ、その3人てのはゼウス、ハデス、クロノス…そんなだろ?」
桃太郎「うんうん」
ヒドラ「ゼウスってのは国の…コスモスって国なんだけど、そのコスモスの統治者…つまり権力の一番トップな奴だ」
桃太郎「わかりやすくw」
シータ「火付盗賊改が国なら、平蔵さんってとこよ」
桃太郎「お!…ありがとうw」
ヒドラ「そのゼウスってのは一番偉いからさ…何が偉いか知んねえけど…そいつぶっ殺したら報復で地球に戦争を仕掛けてくるかもしれない…」
桃太郎「ん…そっか…言われてみればオイラも平蔵さんが殺されたら絶対やり返すわ…」
シータ「たしかに…」
桃太郎「ハデスとクロノスは?」
ヒドラ「ハデスはコスモスのあらゆる軍に命令を出せる一番上の奴…クロノスはオレたちの部署の一番上のクソ野郎だ…その2人は殺してもまあ…大丈夫だとは思う…でも、殺すならクロノスとその補佐のカオスかな…」
桃太郎「ん?…ゼウスとハデスは?」
ヒドラ「そいつらももちろん命令を出せるけど、宇宙を短時間で移動する技術を開発したのはカオスってやつなんだ…その技術を共有してるのはクロノスだけ…だと思う…もしかしたらハデスも持ってるかもしれないけど…とにかく、その技術さえなければ、命令を出そうが実際に地球に行く事が出来なくなるわけだ」
桃太郎「おお!…なるほど!」
ヒドラ「ただし、この宇宙船みたいにその技術がある船は壊さないといけない」
桃太郎「ほむほむ…どのくらいあるの?」
ヒドラ「正確にはわからないけど…20くらいかな…ただし、そのうちの10機はオレらのよりでかい…かなり」
桃太郎「その10機は完全に戦う為の軍艦みたいなもんか」
ヒドラ「そうそうw…それは絶対に破壊しないといけない」
桃太郎「けどさ、破壊しても誰かがその技術をまた持って作る可能性もあるよな?」
ヒドラ「いや…それはない」
桃太郎「どうして?」
ヒドラ「はっきり言って、地球を侵略しなけりゃいけないほど、オニールはもう資源がないからだ…材料がなければ作ろうと思っても作れないだろ?…しかも、金もものすごいかかる」
桃太郎「そんなにオニールはやべえのか…なんだかかわいそうになってきた…」
ヒドラ「優しいなあ…けど、だからってこの星の奴らを皆殺しにするのは間違ってる」
ヘラ「まさか、あんたがそんな事言うなんてね」
ヒドラ「ああw…なんかわからないんだけど、ゲレちゃんの光を浴びたらこう…オレの中のドロドロした汚いもんがなくなったような…今はどうしてあんなに憎んでたかわからないほどだよ…悪かったなあ…ラムダだからって物扱いしちまって…今はもうそんなふうに思う事すら罪悪感がある」
ヘラ「へぇぇ…ま、別にいいけど…それより、それ以上その話をするなら、タナトスも居た方がいいんじゃないか?」
イリス「ああ…」
桃太郎「それもそうだな…明日には前回来た奴らもここに来るから、それからにしよう」
ヒドラ「前回の…」
桃太郎「そうw…笑うぜ、今じゃ嫁ももらってすっかり侍だw」
シータ「ねw…侍ってのはこの江戸の兵士みたいな…ちょっと違うけど、そんな感じよ」
ヒドラ「ここで嫁を?」
シータ「そう…本当にここの人間はねえ…全然違うのよ…オニール人はみんな『わたしわたし』って自己主張が激しいし、誰かが話してる途中でも構わず割り込んできたり…そのくせ自分の意見が通らないとふてくされたり、ヒステリーになったりするでしょ?」
ヒドラ「ああ…そうだな」
シータ「でもそれが普通じゃない?」
ヒドラ「ああ…」
シータ「誰かに迷惑かけるのもなんとも思わないくせに、自分がされると怒るじゃない?」
ヒドラ「だな」
桃太郎「そ、そうなの?!」
アーテー「人間はそうだな」
ヘラ「愚かだからな」
シータ「けど、この江戸の人間は違う…そりゃ、悪い奴も当然いるけど、たいがいは他人を思いやって生きてる…自分が損しても、相手が幸せなら満足だし、迷惑だって極力かけないようにして…たとえそれで迷惑がかかっても、『気にするねえw』って笑って済ますのよ」
ヒドラ「ウソだろ?」
プックル「ウソじゃないぜw」
シータ「オニール人が聞いたら『バカか』って思うかもしれないけど…実際にそうしてる人たちを見ると、とても感動するのよ…とても美しいと思う…オニールの女と江戸の女だと、見た目はオニールの方がいいかもしれないけど、心の美しさやかわいらしさは圧倒的に江戸の女の方が上だよ…アルファとかオミクロンにも聞いてみなよ」
ヒドラ「うん…」
桃太郎「オイラはそれが普通だからなあ…」
アーテー「なるほど…それが普通だから我々を助けたのか…ようやく理解した」
桃太郎「今頃?!ww」
イリス「ああ…要するに『損得で行動をしない』という事だろ?…それについては理解しがたいが、そういう人間性だとしたら、ゲレちゃんの行動は理解できる」
ヘラ「まあ、そういうことだね…その原理で言うと、ゲレちゃんは本当にアタシらに何か企みがあったりはしないって事になる…信じがたいけど」
桃太郎「うんw…けど、信じろよ」
ヘラ「アタシは誰の事も信じたことはないよ」
桃太郎「今まではそうかもしれないけど、オイラの事は信じろ」
ヘラ「裏切らない保証は?」
桃太郎「何を出せば保証になるんだ?…そんなもん」
ボロンゴ「たしかにw」
桃太郎「そんなもんなくても、オイラはウソつかない…少なくともヘラを傷つけるウソはな」
ヘラ「ふうん…」
桃太郎「まあいいさ…そんなの強制することじゃねえしなw…プックル、やつらの宇宙船から食べる物持ってきてやってよ」
プックル「り」
ヒドラ「オレも…江戸の人間に会ってみたいな…」
シータ「ラムダのわたしが言うのも何だけど、人生観が変わるよ」
ヒドラ「いいなw」
シータ「あんたもきっと守りたいと思うようになる」
ヒドラ「そっかw」
その後、タナトスも治療が終わり、足から出血しているヘラがもう一度入り、それからアーテーが入った
食事もとり、眠った
桃太郎はハッチにチロルを抱いて座っていた
隣にはシータがいる
桃太郎「チロル…なんだか元気ねえじゃんかよ…どした?…ナデナデ…充電が足りないか?」
チロル「ゲレちゃん…大丈夫…ちょっとバッテリーがへたれただけだよ…スリスリ」
シータ「ああ…たしかにあんたはボロンゴたちよりもバッテリーを酷使してるもんね…ナデナデ…」
桃太郎「そうだったのか?…なんで?」
シータ「妨害電波を出すと、ほとんど電力を使うのよ…バッテリーてのは、ほとんどなくなってから充電したりすると、弱っちゃうのね…チロルは2回は妨害電波を使ったから…」
桃太郎「オイラの為に…ごめんよ、チロル」
チロル「ううんw…それがオレの役目だから…ゲレちゃんの役に立って嬉しいよ」
桃太郎「チロル…グス…かわいいなあ…ギュ」
チロル「ゲレちゃん…お願いがあるんだ」
桃太郎「うん?」
チロル「オレはきっとボロンゴたちよりも早く、動けなくなる時がくる…」
桃太郎「そんな悲しい事言うなよ…」
チロル「大丈夫w…生き物じゃないから、機能停止するだけだよw…ウィ-ン…ゲレちゃん、見える?…この薄っぺらな青い板みたいなの」
桃太郎「うん…」
チロル「これがオレのメモリー…『命』だよ…オレさ…あと何年かして、もういけないってなったらさ…ゲレちゃんこのオレのメモリーをずっと持ってて欲しいんだ」
桃太郎「当たり前だろ!…ギュ」
チロル「まだ動けても、弱ってしまうとメモリーが狂うかもしれないからさ…そうなる前に言うから…ずっと持ってて?…オレね、ゲレちゃんが大好きだけど、イズさんも大好きなんだw…だから絶対にまた会いたいんだ…だからさ、また会わせてくれる?」
桃太郎「ああ…オイラがお前を見捨てるはずないだろ!…グス」
チロル「ああ…こんな時、オレもせめて生き物なら泣けるのにな…大好きだよ、ゲレちゃん」
桃太郎「バカ…」
シータ「…ウル」
チロル「でもさ、まだ数年は元気だから…楽しくいてよw」
桃太郎「うん…」
チロル「オレの事こうして抱っこしてくれるの、ゲレちゃんかイズさんだけだからさ…大好きなんだよ」
シータ「チロル…」
チロル「おかしいよなw…機械なのにさ…こんな甘えてさw」
桃太郎「おかしいもんか…誰だってあったかいのが一番いいんだから」
シータ「そうだよ」
ヒドラは離れたところから、桃太郎たちのその会話を聞いていた
なぜだか胸が熱くなり、涙がこぼれた
こんな人間たちの住むこの星を滅ぼす事は、今のヒドラにはもう出来なかった
翌日の昼頃に、アルファとオミクロンが鬼ヶ島にやってきた
おみつやおよしは念の為、吾郎たちに預けてきていた
或右衛門「拙者、馳せ参じたでござる」
桃太郎「ブファww…おめえ、どこでそんな言葉覚えたんだよw」
臣九郎「それがしも、参上つかまつった」
シータ「ブフww」
或右衛門「ゲラゲラww」
臣九郎「ははははww…で、奴らは?」
桃太郎「この中に居るよ、みんな」
或右衛門「やっぱ1人も殺してないんだ?」
シータ「ゲレちゃんがそんな事するはずねえだろ…ゲシ」
或右衛門「いたーい!」
臣九郎「やっぱすげえなw…入って大丈夫?」
桃太郎「うん…入ろう」
桃太郎を先頭に、みんなは中に入った
或右衛門「ま、また繋がねえで…大丈夫なのかよ…」
ヒドラ「大丈夫だ…アルファだったな…お前」
或右衛門「アルファ?…或右衛門と呼べ」
桃太郎「ブファww」
臣九郎「オレは臣九郎だ…」
シータ「そうなのねw」
ヒドラ「お、おう…」
或右衛門「お前はたしか…ヒドラだったか?」
臣九郎「オレ、お前嫌い…すぐ怒るし…」
ヒドラ「わ、悪かったよ…」
臣九郎「え?…だいぶ違くね?」
シータ「ゲレちゃんに心をもらったのよ」
臣九郎「なるほどねw…納得」
イリス「納得なのか…」
タナトス「オミクロン…その頭はなんだ?…すごい変だぞ…」
ヘラ「だせえw」
桃太郎「おいヘラ…」
臣九郎「いいんだゲレちゃんw…オレだって初めはそう思ったんだからww…けど、慣れるとカッコいいんだぞ、これ…髷って言うんだ」
或右衛門「オレも今髪を伸ばしておるのだ」
シータ「ブファww…江戸かぶれww」
桃太郎「…グww…ま、まあよ…クッww…まあほら…あれだw…ちゃんとこれからの作戦を話そうじゃねえかw」
ヒドラ「わ、わかったw」
桃太郎「もう一度ヒドラ、昨日のとこまで説明してくれ…」
ボロンゴ「それなら映像を流してやろうか?」
桃太郎「さすが!」
ボロンゴは宇宙船のモニターに接続し、昨日のヒドラと桃太郎の会話を流した
タナトス「ほほう…」
臣九郎「ごめん、ゲレちゃん…オレ、そこまで考えてなかったわww」
桃太郎「いや、オレもww」
臣九郎「じゃあゲレちゃんが殺すべき相手は減ったわけだな…」
桃太郎「うん…」
ヒドラ「いや、まだ問題がある」
桃太郎「どんな?」
ヒドラ「もしこのままオニールに何にも伝えずにオニールに行くとするだろ?」
桃太郎「うん」
ヒドラ「オニールに行くまで、早くても600日前後はかかる…だけど、何にも通信しなければ、今から1年後にまたオレたちみたいなのがオニールから出発する」
臣九郎「ああ!…そっか…そうすると、オレたちとそいつらが行き違う事になるんだな…」
ヒドラ「そうだ…で、そいつらは600日後にここに来る…つまり、1年と600日…965日前後だ…けど、その時はゲレちゃんたちは作戦が上手く行ったと仮定しても、地球に戻ってる最中なわけだ」
桃太郎「つまり、オイラたちはここにはいねえって事か」
ヒドラ「うん、ここから600日かけてオニールに行って、仮に10日で作戦を終えて、また600日かけて地球に戻るとすると、1210日経たないと、ゲレちゃんはここに帰ってない」
或右衛門「じゃあ、1210-965で245日は次の奴らが江戸で暴れるわけか…」
臣九郎「それはダメだ!…ゲレちゃんがいなくちゃたくさんの人間が死んでしまう!」
ヒドラ「まあ、江戸ではないと思うが、そうなる事に変わりはないな」
桃太郎「じゃあ行けねえじゃん…」
タナトス「簡単な事じゃねえかw…オレらが通信すりゃ、次の奴らは来ないだろ」
ヒドラ「そう…オレが『この星の人間は強くてやめた方がいい』って感じの事を伝えれば、止められると思う…けど、ゲレちゃん」
桃太郎「ん?」
ヒドラ「ゲレちゃんはオレに通信をさせられるほど信じているか?」
桃太郎「おう」
ヒドラ「本当か?…よく考えたか?…もしオレが騙してて、そういうフリして『攻めてこい』とか言う事だってあり得るぞ」
桃太郎「それはねえよw」
ヒドラ「なんでだ」
桃太郎「だってヒドラだもん」
ヒドラ「…クゥ…ウル…」
桃太郎「オイラはおめえを信じる…お前は昨日言った『これからは守る為に戦う』って…それをオイラは信じてる」
ヘラ「信じる…か」
或右衛門「ゲレちゃんらしいや」
臣九郎「実になw」
ヒドラ「…ありがとう、ゲレちゃん…こんなに嬉しい事はない…」
臣九郎「お前本当にヒドラか?ww」
タナトス「なww」
ヒドラ「わかった…そしたらオレ、通信する内容を考える…一緒に考えてくれ」
臣九郎「わかった」
桃太郎「おう」
プックル「昨日のゲレちゃんとシータと、お前らの戦闘の映像もあるぞ…使えるか?」
ヒドラ「ああ!…そりゃいいな!」
シータ「さすがじゃんw」
それから桃太郎たちは、通信する内容の文言を相談した
その頃のヘラたち
ヘラ「あんたはボロンゴだったっけ」
ボロンゴ「そうだ」
ヘラ「変な名前だね」
ボロンゴ「そうか?…だがオレは好きだ」
ヘラ「なんで?」
ボロンゴ「ゲレちゃんが好きだからだ」
ヘラ「機械のくせに…」
ボロンゴ「オレもそう思う」
イリス「逆を言えば、機械にすらそう思わせるということか」
ボロンゴ「そうだ」
アーテー「それはプログラム上、マスターを守るということじゃないのか?」
ボロンゴ「もちろんそれもある…だけどそんなのは関係ない…オレは今はゲレちゃんだけを守ったりはしない…それが全く無関係な人間であっても、泣いていたり弱っていたりしたらオレは守る」
ヘラ「なんでさ!」
ボロンゴ「ゲレちゃんがそういう人間だからだ…もっと言えば、オレもそう行動すれば、ゲレちゃんはオレを褒めるだろう?…もっと好きになってくれるだろう?…だからだ」
アーテー「なるほど…お前は損得で動いてるわけだな」
ボロンゴ「機械だからな…不利益な事はあまりしようとは思わない」
イリス「ふむ…しかし、そんなに好きなのか…ゲレちゃんが」
ボロンゴ「ああ…オレは機械だから、新陳代謝をする生物と違って、予備パーツがなければ長くはもたない…だが、オレは動けてる間はゲレちゃんとずっと一緒にいたい」
ペルセウス「すごいな…それがあたたかいということか」
ボロンゴ「ああ…それは『熱』ではないんだ…そう感じるとしか言えない…上手く説明は出来ないが、オレもプックルもチロルもみんなよくわかっている」
ペルセウス「なんだか羨ましいよ」
桃太郎「文言てどんなだ?…『地球人は強すぎてダメです!』とか?」
臣九郎「うんまあw…それを具体的にそれっぽくだw」
或右衛門「どういう状況で言うんだ?」
シータ「戦ってる最中に報告するのはおかしいよね…そんな暇ないし」
ヒドラ「そうだな…それにそうなると、そういう騒がしい状況や気持ちを作らないといけなくなる」
タナトス「オレら役者じゃねえぞw」
臣九郎「じゃあ、ヒドラは宇宙船に隠れていた事にして、戦闘がひとまず終わったていで報告する感じでいいんじゃね?」
タナトス「それがいいな…こいつなら1人で隠れてても、見てる奴も変に思わないだろう…」
或右衛門「だな…」
ヒドラ「自分でもそう思う」
桃太郎「けど、ヒドラなら真っ先に攻撃するんじゃねえか?」
ヒドラ「それもそうだ…けどオレは卑怯だから、負けそうになったら仲間を置いて逃げる奴だ」
臣九郎「お前、よく自分をそう言えるなw」
シータ「うんw」
ヒドラ「ゲレちゃん、オレをぶん殴ってくれ」
桃太郎「え?!」
ヒドラ「オレはそこにあるボロボロになったオメガを着て、ダメージを受けた感じにする…というか、瀕死になった演技をするのは役者でもないオレは出来そうにない…だからオレを瀕死にしてくれ」
桃太郎「嫌だよ…」
ヒドラ「ゲレちゃんじゃなくてもいい、シータでも」
シータ「…ええ…」
桃太郎「なにもそんな…そうだ、治療マシンに入った後に報告した事にすれば?」
臣九郎「それもありだと思う…けど、そんな悠長な事してから報告もおかしいかな…」
タナトス「ならオレらでやるw…こいつには今までムカつかせてもらったからなw」
ヒドラ「ああ、いいぞ」
タナトス「…お前、本当に変わったなあ…」
ヒドラ「報告の文言は…
そうして報告内容を考えると、全員で表に出て、ヒドラはタナトスたちと対峙した
ヒドラはボロボロになった自分のオメガを着ている
ヘラ「本当にいいのか?」
ヒドラ「ああ…お前らもオレにムカついてるだろ?w…早くやれよ、ラムダは素直に命令に従ってりゃいいんだバカが」
タナトス「行くぞ、お前ら」
ペルセウス「すまない…」
桃太郎「待て!…待ってくれ」
ヒドラ「なんだよ、ゲレちゃん…」
桃太郎「いや…オイラ、そういう嫌な役目を他の奴にやらすなんて卑怯だ…やっぱしオイラがやる…」
ヘラ「気にすんな、アタシはマジでぶん殴りたい」
イリス「オレも今までの事を思い出してそういう気分になっている」
ヒドラ「だってさ…正直言ってオレもゲレちゃんに殴られるダメージは怖いw」
或右衛門「オレもそれは嫌だなあw」
桃太郎「けど…戦いでもねえのに痛めつけられてるのなんて…オイラ見たくねえ」
タナトスは桃太郎がそう言っている最中にヒドラに攻撃をした
ヘラもペルセウスもイリス、アーテーもそれに続いて攻撃する
桃太郎「ああ!!」
タナトス「ごちゃごちゃ言うなよ、地球人w」
ヘラ「どうせあとですぐ治るんだぞ」
桃太郎「うう…ごめんよ、ヒドラ…グス…」
ヒドラ「…うぐ…が…優しい…なw…オレの為に…泣くなんて…グス…」
臣九郎「……」
或右衛門「…ウル」
ヒドラは瀕死になりながらも立ち上がり、宇宙船の通信機に向かった
そしてオニールとの交信を始めた
交信の電波が届くには30分程かかる
ヒドラ「ぐぶ…う…」
桃太郎「大丈夫か?…ギュ」
ヒドラ「うん…あとは待てばいい…」
桃太郎「我慢出来る?」
ヒドラ「大丈夫…オレも訓練されてる…」
桃太郎「ごめんな…ナデナデ」
ヒドラ「いいんだ…もう少しそうしてくれ…とてもあったかい…グス…」
桃太郎「ああ…グス…ナデナデ」
シータ「…グス」
それを見ているヘラやタナトスも、だいぶ心が動かされ、密かに泣いた
オニールで生きてきた人間にとって、桃太郎の心から労る様子はとても新鮮で感動的な事だった
臣九郎「友蔵さんも、オレたちの為にだんなに必死で頭下げてくれたっけ…ウル」
或右衛門「ああ…グス」
シータ「おママもパパスも…いきなり来たこんなわけわからない女を『娘』って…簡単に言ってくれた…グス…」
タナトス「それが地球人…」
臣九郎「信じられないだろ?w…オレはもう、オニールに帰りたくなくなっちまった」
ヘラ「……」
桃太郎「その通信てのが来るまで、少し寝てろや…オイラこうしててやるからさ」
ヒドラ「うん…ありがとう…ゲレちゃん」
ヒドラは誰かに甘えた記憶はほとんどない
愛もぬくもりも知らないで育った
だからこそ桃太郎の腕の中がとても幸福に感じた
痛みなどどうでも良くなる程に
そうしてしばらく待つと、通信機から声が聞こえた
それはオニールのコスモスの言葉なので、桃太郎にはわからない
シータ「ヒドラ…起きて」
ヒドラ「あ、ああ…」
ヒドラは息も絶えだえに、交信を始めた
途中で、ヘラがボコボコにやられている映像は、特に驚かれたようだった
シータ「…!」
タナトス「ウッソだろ…w」
プックル「バカくせえ…」
桃太郎「ど、どうした?」
臣九郎「しっ」
ヒドラとの交信の相手はカオスであった
そしてその会話を聞いたシータたちは、その内容に驚いた
そして、交信が終わった
ボロンゴ「ゲレちゃん…交信が終わった」
桃太郎「おし、ヒドラ…今治療するからな!」
ヒドラ「うん…よろしく頼むw」
桃太郎はヒドラの着ているものを全て剥ぎ取り、タナトスの宇宙船の治療マシンに入れた
桃太郎「意外とそんなにかからないな…」
タナトス「このマシンの方がアレより新しいし、ゲレちゃんやシータの攻撃の方がよっぽどダメージがデカいしな」
桃太郎「そ、そっか…で、みんなは何に驚いてたの?」
シータ「今ね、オニールでは世界大戦が始まったみたいなの…」
桃太郎「ん?…世界大戦?」
ヘラ「世界中を巻き込んだ戦争だよ…」
桃太郎「え?…いくさか?」
臣九郎「そう…オレたちが住んでたコスモスって国は、オニールでは最高の軍事力…戦う力があってな…実質的に世界の国の頂点なんだが、『ヒッタイト』っていうほとんど独裁国家の国がバカだから攻撃を仕掛けてきたらしくて…」
或右衛門「でもって、戦争が始まると、今まで抑圧されてた民衆たちも、各地で紛争…争いを始めたらしい」
イリス「オニールの人間は愚かだからな…」
桃太郎「それは同じ国の仲間で?」
アーテー「ああ…それほどに教養がないんだ」
桃太郎「バカな…」
タナトス「バカなんだよw」
ヘラ「世界の至るところで『核』が使われてるって…」
桃太郎「それは?」
ボロンゴ「核爆弾という大きな威力を持った兵器だよ…今その映像を見せる」
桃太郎「すっげえ…」
プックル「こいつは爆発の威力も凄まじいけど、それ以上にヤバいのはこの後だ」
チロル「放射能って危険なもんが何年にも渡って留まるんだけど…それに晒されると生き物の身体はボロボロになる」
シータ「つまり、大勢の生物が死んで、それから何年も『死の大地』になるのよ」
桃太郎「げえ…」
タナトス「そんでコスモスはその報復に、ヒッタイトに向けて『バイオ兵器』を放つみたいだ」
桃太郎「それは?」
アーテー「それは爆弾とは違って、簡単に言うと『病気をばら撒く兵器』だ」
ペルセウス「それはハデスが開発した兵器で、その病気は空気感染して広域の人間が死に至る」
臣九郎「つまり、風に乗って病気の元が世界中に広がって、多くの人が死ぬって事」
桃太郎「な、なんだってえ?!…けど、そんなもん自分らも危ねえだろ」
ボロンゴ「いや…コスモスは大丈夫だ」
桃太郎「なんでよ」
プックル「普通は自分の国に影響が出ないように計算して撃つもんだし、影響が出てもその病気に対抗できる薬を持ってるんだ」
タナトス「ま、大きな規模で『自分が良ければいい』ってやつだな」
桃太郎「酷いことを…」
シータ「それがオニールなのよ…」
桃太郎「そいつはもう手遅れなのか?」
イリス「ああ…もう撃たれた」
桃太郎「なんてことを…」
タナトス「まあ、その代わり地球を侵略する余裕もなくなって良かったじゃねえかw」
桃太郎「そんなのいいわけない…オイラはオニール人がたくさん死んで良かったなんて喜べないぞ」
臣九郎「だけどよ、ゲレちゃん…オレたちにはどうする事も…」
桃太郎「けど、お前たちの家族は心配じゃねえのか?」
或右衛門「心配は心配だけど…」
桃太郎「タナトスは?…妻と子がいるんだろ?」
タナトス「ああ…だが、地球人のゲレちゃんには大変なんだろうが、オレたちにはそれほどでもない…」
桃太郎「愛してねえのか?」
タナトス「そんな事ないが…」
桃太郎「オイラたちがオニールへ戻ってさ…なんか出来る事はねえのか?」
ヘラ「ない」
桃太郎「全然?」
イリス「ないだろう…」
ペルセウス「そのバイオ兵器を鎮める兵器を打ち込むくらいか?」
桃太郎「それやれば病気の奴は助かるのか?」
ペルセウス「まだ潜伏期間の人間はな」
臣九郎「病気になるっていっても、すぐに症状が出るわけじゃないんだ…感染から症状が出るまでの時間を『潜伏期間』って言うのね?…その間ならその薬で治せるんだけど」
桃太郎「じゃあ今すぐ行ってやろうぜ!」
或右衛門「落ちつけ、ゲレちゃん!」
桃太郎「でも!」
臣九郎「ゲレちゃん…それはゲレちゃんがうたなくても、すぐにうたれるんだよ」
桃太郎「え?…どういうこと?」
臣九郎「その潜伏期間ていうのが何の為にあると思う?」
桃太郎「え?…うーん…」
臣九郎「殺すのが目的なら、すぐに死んでしまうような毒を撃てばいい…だろ?…で、潜伏期間てのは人によって短いのもいれば、長いのもいる」
桃太郎「つまり…長い奴だけ生き残らせる?」
臣九郎「そう…全ての人間が死んだら、それはそれで世界は成り立たないから、そうやって命を操作する為の兵器だ…そして、核爆弾と違って、後々までその土地が使えないって事もないし、建物なんかも無事ですぐに使える…コスモスの連中はそうやって弱った国を征服するつもりなのさ」
桃太郎「酷い奴らだ…」
タナトス「どっちにしろ、ここから今すぐ出たって、着くのは600日後だ…そんだけ経てばまた状況も変わってるし、ゲレちゃんに出来る事はないって事だ」
桃太郎「くそ…グス…」
イリス「なんでゲレちゃんは会った事もない知らない人たちの為に…しかも地球を乗っ取ろうとしたオニール人たちをそんなに心配して、涙まで流すんだ?」
シータ「それが江戸の人間なのよ」
或右衛門「侍の心だ」
臣九郎「この国では『敵に塩を送る』って風習があってな…戦争の相手にさえ、食べ物がなくて苦しんでいたら分け与えるのさ」
アーテー「なぜ?!」
臣九郎「戦うなら戦いで正々堂々と勝負をする為だ…それは非効率だと思うだろうがな」
或右衛門「でも、だからこそ、戦った相手を恨まずに命をかけて戦えるんだ」
臣九郎「オレたちはそういう心を知った…ここの人間は、たしかにオレたちより文明は遅れてるし、知識もないけど、オレたちの方が遥かに愚かで原始人だぞ」
シータ「わたしもそう思うよ」
プックル「機械のオレでも思うぜ」
桃太郎「オイラだってさ…知らなきゃオニールの事は気にしない…そりゃ知らないんだもんなw…けど、知ったからにはなんかしてやりてえ…オイラには出来るはずだ…ヒドラにやったみたいに、オニールの残された人の心をあったかくしてやる」
ペルセウス「…ゲレちゃん、まだ行く気なのか?」
タナトス「…もう多分地球は大丈夫だぜ?」
桃太郎「オイラは行く…何か出来る事やったら帰る」
臣九郎「しょうがねえなあw」
或右衛門「全く効率度外視だよなw」
シータ「じゃあおママたちにしばらくお別れの挨拶しないとねw」
桃太郎「はははw…行こうか」
タナトス「わけわからないのに…なんでか感動するな…」
ヘラ「うん…」
ペルセウス「ああ…」
そうして桃太郎たちはオニールへと向かい、オニールで3年かけて首脳各国の者たちに『光』をもたらしていった
オニールの人々は桃太郎から『心』をもらい、少しずつだが変わっていった
戦争により人口も減った事で、資源の枯渇問題も縮小し、『光』で変わったカオスによって、新たなテクノロジーが開発され、それが人々を救済するエネルギーになった
カオスはオニール人から英雄と称えられるようになる
カオス「私が英雄か…本当の英雄はゲレちゃんなのに」
タナトス「まあなw」
ヘラ「まあゲレちゃんは『神』でいいじゃない」
カオス「ああ…本当にそう思う…」
そうしてオニールにも、桃太郎によって平和がもたらされた
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