母ちゃんとオレ

ヨッシー

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母ちゃんと父さんとオレ

1話

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異界館の椅子に座って眠ったと思ったら
一瞬で起きた
起きたこの場所は懐かしい家だった
父さんが買った家

そしてオレはというと、身体も小さくなって、本当に8歳のオレだった
ただ違うのは、これまで生きてた22年の記憶がハッキリあるってこと
そしてなんだか具合が悪い
たぶん、風邪で休んでるんだと思う
オレはまず母ちゃんを探すことにした
母ちゃんは家にいるかな?
オレは今自分の部屋に居るから
とりあえず1階のリビングに行ってみた
母ちゃんはソファーに横たわりながら、テレビを見ていた

若くてきれいだ
ああ、また母ちゃんに会えた
嬉しい

「母ちゃん」
「あらどしたの?」
「ううん…ギュ」
「あらぁ!w…カオくんどしたのよ~w…こんな抱きついてきて///」
「母ちゃん…」
「具合どう?…良くなった?」
「うーん…だるい」
「そう…後でお医者さん行こうね」
「うん」
「お医者さん怖くないの?」
「別に怖くないよ」
「え?…朝は怖いって泣いてたのに」
「あ…」

オレはこの頃は母ちゃんに抱きついたりもしないし、それどころか、話しかけるのもあまりしなかった
病院も怖かったはずだ

「な、なんか急に…怖くなくなったの」
「変なの…こんなに喋るのもいつもと違うし…」
「そ、そうかな///…母ちゃんは嫌だった?」
「そんなことない…嬉しいに決まってる」
「良かったw…母ちゃん…」
「ん?」
「オレもここで寝ていい?…病院に行くまで」
「うん…じゃあ、かけるの持ってくるから、寝っ転がっててね」
「うん」

ソファーに横になって待ってると
母ちゃんはブランケットを持ってきて
オレにかけて
オレの横に座った

「なんか…カオくんが急に近くなった感じw…変なのぉw」
「変なんだよ、オレw…でもね」
「うん」
「母ちゃんが好きだよ」
「カオくん…ギュ…なんか泣いちゃう…グス」
「母ちゃん…グス…スリスリ…オレ、おとなしく寝てるから…隣に居て?」
「うんw…グス…ずーっといるw」
「やったw…おやすみ」
「おやすみ…ナデナデ」

そうしてオレは風邪も治って、学校に行くようになった
久しぶりの小学校だ
オレはバカだけど、さすがに小学2年生の勉強くらい楽勝だ
それでもオレは、真面目に授業を受けた
オレもちゃんと勉強して、ユウトくんほどじゃなくても
ちゃんと知識を身につけようと思った
それは戻る前から決めてた

母ちゃんはというと、朝の9時から夕方4時までパートして帰ってくる
オレが母ちゃんに懐いた日から、母ちゃんはオレにやたら過保護になった

べったりと言っていいほど

オレは全然それは嬉しいからいいけど

オレは母ちゃんと仲良くなったから、今度はユウトくんが気になった
母ちゃんに誕生日プレゼントで自転車を買ってもらって
学校から帰ってから、ユウトくんの小学校に行くことにした

「母ちゃん…オレ、遊びに行ってくるね」
「うん…母ちゃん寂しいなあ」
「ごめんね…ギュ…なるべく早く帰るから」
「うんw…冗談だよw…ごめんね、気を使わせちゃってw…ギュ…かわいい」
「母ちゃん…チュ…」
「カオくんたらw」
「母ちゃんもして?///」
「うん…チュ」
「へへ///…じゃあ行ってくるね!」
「うん…あんまり暗くならないうちに帰るのよ」
「はーい」

オレが言うのもなんだけど
母ちゃんはオレに溺愛って感じだ

オレは自転車を飛ばして、ユウトくんの小学校に向かった
すぐに会えるといいけど…
どうやって探そう…
そんな心配をしながら向かってたけど
そんな心配はいらなかった
ユウトくんは校門のすぐ近くにいて
女の子を泣かせてた
オレはユウトくんに話しかけた

「ねえ」
「あ?…なんだお前誰だよ」
「オレはカオル…隣の小学校の2年生だよ」
「あ?…なんで隣のやつがここにいんだよ…ケンカ売りに来たのか?」
「違うよ…たまたま通りかかったの…女の子泣かしたらダメだよ」
「てめえには関係ねえだろ!」
「関係ないけど、ダメだよ」

そう言うと、ユウトくんは殴ってきた
すごいショック…
あんなにいつも優しくて、オレが泣くとギュッと肩を抱いてくれたユウトくんに殴られた

「痛い…」
「ざまあw…おら、さっさと帰れよ」
「いやだ…じゃあ、オレと一緒に遊ぼうよ」
「は?…お前バカじゃねえの?…なんで一緒に遊ぶってなるんだよ」
「君はオレを嫌い?」
「嫌いだよ…だからもっかい殴る」
「やめて!」
「離せよてめぇ!」
「いやだ…そんな事しちゃダメだよ!…君は本当はとっても優しいんだから!」
「なんだよ!…なんで初めて会ったくせにそんな事言うんだよ!」
「わからないけど、そう思うからだよ!」
「わかった…殴らないからとりあえず離せ」
「うん…」

手を離したらまた殴られた
ショックだ…
女の子は泣きながら、オレたちを見てる
よく見てみると、ハルさんじゃないか
小学生のハルさん、かわいい
オレはなんだかおかしくて笑えてきた

「なに殴られてニヤニヤしてんだてめぇ…気持ちわりいな」
「あ、いや…ごめんw…ねえ、遊ぼうよ」
「なんかさ…お前…変なやつ」
「よく言われるw」
「…いいよ、何するよ」
「君の名前は?」
「…ユウトだよ」
「君は?」
「…グス…」
「おれはカオル…君は?」
「…ハル…グス」
「ハルちゃん、泣かないで?…みんなで遊ぼうよ」
「…フルフル…」
「大丈夫だよ…ほんとはユウトくんは優しいから」
「は?…お前ほんとなんなの?」
「え?…友達」
「いつからそうなったんだよ」
「…さっきからw」
「調子狂うな…」
「ハルちゃん…これはい…」

オレはハンカチを渡した
ハルさんはおそるおそるハンカチを掴んだ

「ハルちゃん…勇気出して…一緒に遊ぼうよ」
「…うん」
「ユウトくんも、もういじめないでよ?」
「わーったよ」
「何して遊ぶ?」
「お前が誘ったんだから、お前が決めろよ」
「うーん…」

オレはすごく困った
小学生の遊びはわからない
なんせ前の人生でも、友達は居なかったし…

「じゃあさ…カオルはベイブレード持ってる?」
「ベイブレード…持ってない…」
「持ってねえのかよ…普通持ってるだろ」
「ごめん…」
「まぁいいや…オレんち来いよ…何個か持ってるから貸してやる」
「うん!…ハルちゃん行こう」
「う、うん…カオルくん…ギュ」

ハルさんは手を繋いできた
怖かったんだろう

「ユウトくんがいじめるから、すっかり怖がってるよ?」
「だからなんだよ」
「ハルちゃんに謝ってよ」
「あ?…てめぇ、オレの友達とか言って、ソイツの味方すんのかよ!」
「そうじゃないよ…友達だからだよ」
「は?」
「ユウトくんが悪い事したら、それをやめさすのが友達なんだよ…気に入らないならまた殴っていい…それでもオレは引かないよ」

ユウトくんはまた殴ろうと
パンチをオレに振り上げた
オレはそんなユウトくんの目をじっと見ていた
そしたらユウトくんは手を下ろした

「…わかったよ…謝るよ…ハルごめん…いじめてごめん」
「……」
「ハルちゃん、許す?」
「……」
「よし、じゃあユウトくんに仕返しをしよう」
「あ?」
「あ?…じゃないよ…ぶったりしたんでしょ?」
「…いや、ぶってはいないよ」
「じゃあ悪口?」
「まあ、バカとかブスとか?」
「それはね、ぶつより悪いよ…」
「…でも、痛くはねえだろ」
「痛いよ…ぶたれるよりずっと痛いよ」
「…そうなのか?」
「そうだよ…それにそんなのするのカッコ悪いよ」
「え?」
「ユウトくんのパンチは、これからは女の子を泣かせた奴に使ってよ…その方が断然カッコいいから」
「なんなんだよお前…ほんとに…」
「友達だよ」
「…わかったよ…ほら、ハル…殴れ…」
「ハルちゃん…ほら」
「…またいじめられるからヤダ」
「もうユウトくんはしないよ」
「うん…しない…悪かったよ」
「これからは守ってあげてよ」
「…わかった」
「…ほんと?」
「ああ…ポリポリ…そうするよ…」
「じゃあ許す…」
「ハルちゃん…どうせなら一発くらい殴ろうよw」
「え…」
「ああ、やれよ…なんかスッキリしねえから」

やっぱりユウトくんはユウトくんだ
オレはそう思った

「じゃ、じゃあ…ペチ」
「ハルちゃん、遠慮なくもっと強烈にやってよ」
「おお」
「…ベチ!!」
「…って」
「よし、やったねハルちゃんw」
「うんw…カオルくんありがと」
「ううんw」
「カオル…お前にも殴ったから…お前も殴れよ」
「おし…ドカ!」
「おぅぐ…てめぇ…顔かと思ったら…腹かよ…」
「へへへw」
「あははw…カオルくん、遊びに行く前に保健室行こうよ…顔から血が出てる」
「そうしよう」
「ゴホゴホ…悪かったよ…」
「いいよ、もうw」

そうして、3人で保健室に行き、保健の先生に手当を受けて
ユウトくんの家に行った

ユウトくんは『スタジアム』という、ベイブレードの対戦台も持っていた
オレとハルさんは、ユウトくんのベイブレードを借りて、対戦した
めちゃくちゃ面白い
ユウトくんもハルさんも、すごく楽しそうだった

「ユウトくん」
「ん?」
「もう暗くなるから、そろそろ帰るよ」
「え?…もうかよ…」
「うん、母ちゃんが心配するから」
「アタシも帰る」
「ちぇ…面白くなってきたのに」
「オレ、また明日も来るよ…また校門で待ってて…ハルちゃんも」
「わかった…」
「うん」
「じゃあまたね」
「おう」
「またね」
「ああ…ハル…悪かったな」
「うん!…もういいよ!…またね!」
「ああ、また明日!」

オレは帰りながら、この顔のケガを母ちゃんになんて説明しようか悩んだ
自転車で転んだって言おうかと思ったけど、普通顔にはあんまりケガしない
もし転んで顔がケガするほどなら、もっと身体がボロボロになってるはず

(やっぱりウソつくのも嫌だし、正直に話そう)

「ただいま~」
「おかえり…どうしたの!…その顔!」
「ああ…えっとね」

オレは正直に話した
母ちゃんはユウトくんの親に文句を言ってやるって
父さんも帰ってきたらそんな感じ
オレはでも、一生懸命に説明して、やめさせた

「…痛くない?」
「大丈夫…ユウトくんとはね、友達になったからね」
「よく殴ってきたやつと友達になろうと思ったな」
「うん…なんかね、そう思ったの」
「お前はほんと、変わってるな」
「でも、良い子だもんね~…ギュ」
「母ちゃん…ギュ」

父さんは今までのオレと、今のオレのギャップが納得いかない感じで
オレを怪訝そうな目で見ていた

オレは次の日も、その次の日も、ユウトくんとハルさんと遊んだ
最初はビクビクとしてたハルさんも、よく笑うようになった
元々ハルさんは明るい人だし、かわいい
幼いから、変な意味じゃなくて、余計にかわいい
ユウトくんはハルさんの気を引きたくて、いじめてたわけだから
仲良くなれたのは嬉しいみたい
いつだったか
ハルさんが先に帰って、オレが帰ろうとしたら

「ちょっと待ってカオくん」
「なあに?」
「いや…そのさ…」
「うん」
「ありがとな…いろいろと…友達とかさ…いろいろ///」
「そんなのお互い様だよw」
「…まぁさ、ありがと…じゃあな」
「うん、またね」

きっとその『いろいろ』にはハルさんの事も入ってたろう

オレは母ちゃんに『ベイブレード』をねだってみた
オレの人生で初めての事だと思う
過保護な母ちゃんは、ベイブレードを5種類と、スタジアムと、その他の部品とかもいろいろ買ってくれた
オレはすごく遠慮したけど
『ユー、買っちゃいなよ』って
誰かのマネして、買ってくれた
ハルさんも、パパンに買ってもらってた
ハルさんはリカちゃんが好きで、オレはその人形を使ってのままごともやった
ユウトくんもいやいやながら、付き合ってた

そんな感じで、オレたちはどんどん仲良くなっていった
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