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第二章
2-2 町を訪れる
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ベアを担いだままの姿でジャウマさんが冒険者ギルドの扉を開けると、辺りがざわりと揺れた。この姿は流石に目立つし、当然だろう。さらに横に並んだヴィーさんが、いつぞやのように大きく声を張り上げる。
「こいつを買い取ってほしい。すまねえが、先に獲物だけでもどっかに置かせてもらえねえか!?」
ヴィーさんは細い目をさらに細めながら周りを見回す。そして、まるで悪人がする様にニヤリと笑った。
カウンターから出てきた受付嬢の相手をしている二人を眺めながら、僕とアリアちゃんとセリオンさんは後方にあるテーブルに向かう。椅子に腰を下ろすと、ここまでの旅の緊張と疲れを一気に感じて、肘をついて項垂れた。
「大丈夫か?」
向かいに座ったセリオンさんが、涼しい表情のまま僕の顔を覗き込む。
「す、すみません…… 少し休めば大丈夫です」
強がってはみたけれど、本当はちょっとつらい。アリアちゃんが僕の為に、水の入った革水筒を差し出してくれた。
ううう、僕よりずっと幼いアリアちゃんだって、まだまだこんなに元気なのに…… 革水筒の水を呷ると、はーっと大きく息を吐き出した。
テーブルに肘をついたままで、買取の列に並ぶ二人を眺める。さっきの騒ぎのせいでか、すっかりと二人はギルド内の注目の的になっている。
いや、あの二人だけじゃない。女性の視線の殆どは、僕ら……いや、向かいに座るセリオンさんに注がれている。
美形の彼は相当モテそうだと思っていたら、やっぱりモテるのだそうだ。黙っていても女が寄ってきて羨ましいと、ヴィーさんが言っていた。
そうして3人が注目を浴びる横で、たかが歩きで旅をしてきただけで、へばっている僕は本当にみっともない。
彼らのような高ランクの冒険者たちと、こうして旅をさせてもらえているだけで十分に有難いのに。せめて皆に迷惑をかけずに済むようにしないと。
そう思いながら、革水筒に僅かに残っていた水を一気に飲み干した。
* * *
初めての旅、初めての故郷以外の町で、初めて泊まる宿は、ヴィーさんが自慢げに語ったところによると、わりかし良いランクの宿らしい。さっきのベアが良い値で買い取ってもらえたので、ちょっと張り込んだのだそうだ。
部屋に入ると腰を落ち着ける間もなく、ジャウマさんがヴィーさんに声をかけた。
「ヴィー、夕飯用に何か食うものを買ってきてくれないか」
「あ! 買い物なら、僕が……」
慌てて声を上げる。僕は戦闘では全く皆の役に立てていない。だからそのくらいは仕事をしないと。
「ラウルは疲れているだろう。無理をするな」
穏やかな顔でジャウマさんが言う。さっき冒険者ギルドでへばっていたところをしっかりと見られていたんだろう。
「ま、今日のメシを買って来るだけだから。すぐに帰ってくらあ」
そう言ってヴィーさんが手招きをすると、アリアちゃんは「はーい」と返事をして駆け寄り、そのままヴィーさんの手に掴まった。
「今日はヴィジェスに任せておけばいい」
閉まる扉に向かって呆けていた僕に、セリオンさんが言葉をくれた。気にしているだろうと、気遣ってくれている。
「ラウル、先に風呂に入っていいぞ」
「あ……」
ジャウマさんの言葉に、でも、と言いかけて、やっぱり止めた。
……何もしていない僕が、皆を差し置いて先に湯を使うなんて申し訳ないと、そう思った。
でもここで遠慮をしたからと言って、今の僕に何かができるわけじゃあない。今の僕にできるのは、リーダーでもあるジャウマさんの言葉に従うことくらいだ。
「……はい」
一言だけ応えて、浴室に向かった。
* * *
風呂から上がると、部屋中に肉の脂のいい匂いが充満していた。疲れで自覚していなかった空腹感が体の中から湧きあがり、腹が大きな音を立てる。その音で皆の視線が僕に集まった。
「ハラへっただろう? 待たせたな!」
ヴィーさんが腹の音に笑いながら、僕に手招きをした。
広げられた食事の数々に、また鳴き出そうとするお腹を押さえた。
湯気と良い匂いを上げている串焼き肉には、食欲をそそる香りのするソースがかかっている。これはオークの肉だそうだ。添えられた野菜は揚げてあるらしい。
いい焼き色のついたパンは、宿の女将さんおススメの店で買ってきたのだそうだ。隣に並ぶソーセージを挟んで食べても美味しそうだ。
酒もいくつか並べられている。今日は酒瓶ごと買ってきたらしい。僕とアリアちゃんの為には、リンゴのジュースを選んできてくれている。
「た、たくさん買ってきましたね」
「町にいる時くらいは、しっかり食っておかないとな」
嬉しそうにそう言うジャウマさんは、すでに大きな肉にかぶりついている。
僕も真似をして串焼き肉を手に取る。めいっぱいの大口をあけて噛み付くと、ソースと混ざった肉汁が口の中にじゅわりと溢れた。
おなかが膨れると、もう瞼が重くなってきている。目をこすった僕に気が付いて、アリアちゃんが声をかけてきた。
「ラウルおにいちゃん、ねむいの? いっしょにねよう―ー」
「慣れない旅で疲れが出るのは当然だ。翌日に残さないようにしっかり休むのも大事なことだぞ」
これじゃあまるで子供みたいだ、情けないなと思いながらも、疲れと眠気にどうにも抗えない。素直にジャウマさんの言葉に頷き、ベッドに潜り込んだ。アリアちゃんも当たり前のように僕の隣に横になる。
アリアちゃんが嬉しそうに僕にしがみつくと、その温かさで心が緩み、そのまま眠りの淵へと落ちていった。
「こいつを買い取ってほしい。すまねえが、先に獲物だけでもどっかに置かせてもらえねえか!?」
ヴィーさんは細い目をさらに細めながら周りを見回す。そして、まるで悪人がする様にニヤリと笑った。
カウンターから出てきた受付嬢の相手をしている二人を眺めながら、僕とアリアちゃんとセリオンさんは後方にあるテーブルに向かう。椅子に腰を下ろすと、ここまでの旅の緊張と疲れを一気に感じて、肘をついて項垂れた。
「大丈夫か?」
向かいに座ったセリオンさんが、涼しい表情のまま僕の顔を覗き込む。
「す、すみません…… 少し休めば大丈夫です」
強がってはみたけれど、本当はちょっとつらい。アリアちゃんが僕の為に、水の入った革水筒を差し出してくれた。
ううう、僕よりずっと幼いアリアちゃんだって、まだまだこんなに元気なのに…… 革水筒の水を呷ると、はーっと大きく息を吐き出した。
テーブルに肘をついたままで、買取の列に並ぶ二人を眺める。さっきの騒ぎのせいでか、すっかりと二人はギルド内の注目の的になっている。
いや、あの二人だけじゃない。女性の視線の殆どは、僕ら……いや、向かいに座るセリオンさんに注がれている。
美形の彼は相当モテそうだと思っていたら、やっぱりモテるのだそうだ。黙っていても女が寄ってきて羨ましいと、ヴィーさんが言っていた。
そうして3人が注目を浴びる横で、たかが歩きで旅をしてきただけで、へばっている僕は本当にみっともない。
彼らのような高ランクの冒険者たちと、こうして旅をさせてもらえているだけで十分に有難いのに。せめて皆に迷惑をかけずに済むようにしないと。
そう思いながら、革水筒に僅かに残っていた水を一気に飲み干した。
* * *
初めての旅、初めての故郷以外の町で、初めて泊まる宿は、ヴィーさんが自慢げに語ったところによると、わりかし良いランクの宿らしい。さっきのベアが良い値で買い取ってもらえたので、ちょっと張り込んだのだそうだ。
部屋に入ると腰を落ち着ける間もなく、ジャウマさんがヴィーさんに声をかけた。
「ヴィー、夕飯用に何か食うものを買ってきてくれないか」
「あ! 買い物なら、僕が……」
慌てて声を上げる。僕は戦闘では全く皆の役に立てていない。だからそのくらいは仕事をしないと。
「ラウルは疲れているだろう。無理をするな」
穏やかな顔でジャウマさんが言う。さっき冒険者ギルドでへばっていたところをしっかりと見られていたんだろう。
「ま、今日のメシを買って来るだけだから。すぐに帰ってくらあ」
そう言ってヴィーさんが手招きをすると、アリアちゃんは「はーい」と返事をして駆け寄り、そのままヴィーさんの手に掴まった。
「今日はヴィジェスに任せておけばいい」
閉まる扉に向かって呆けていた僕に、セリオンさんが言葉をくれた。気にしているだろうと、気遣ってくれている。
「ラウル、先に風呂に入っていいぞ」
「あ……」
ジャウマさんの言葉に、でも、と言いかけて、やっぱり止めた。
……何もしていない僕が、皆を差し置いて先に湯を使うなんて申し訳ないと、そう思った。
でもここで遠慮をしたからと言って、今の僕に何かができるわけじゃあない。今の僕にできるのは、リーダーでもあるジャウマさんの言葉に従うことくらいだ。
「……はい」
一言だけ応えて、浴室に向かった。
* * *
風呂から上がると、部屋中に肉の脂のいい匂いが充満していた。疲れで自覚していなかった空腹感が体の中から湧きあがり、腹が大きな音を立てる。その音で皆の視線が僕に集まった。
「ハラへっただろう? 待たせたな!」
ヴィーさんが腹の音に笑いながら、僕に手招きをした。
広げられた食事の数々に、また鳴き出そうとするお腹を押さえた。
湯気と良い匂いを上げている串焼き肉には、食欲をそそる香りのするソースがかかっている。これはオークの肉だそうだ。添えられた野菜は揚げてあるらしい。
いい焼き色のついたパンは、宿の女将さんおススメの店で買ってきたのだそうだ。隣に並ぶソーセージを挟んで食べても美味しそうだ。
酒もいくつか並べられている。今日は酒瓶ごと買ってきたらしい。僕とアリアちゃんの為には、リンゴのジュースを選んできてくれている。
「た、たくさん買ってきましたね」
「町にいる時くらいは、しっかり食っておかないとな」
嬉しそうにそう言うジャウマさんは、すでに大きな肉にかぶりついている。
僕も真似をして串焼き肉を手に取る。めいっぱいの大口をあけて噛み付くと、ソースと混ざった肉汁が口の中にじゅわりと溢れた。
おなかが膨れると、もう瞼が重くなってきている。目をこすった僕に気が付いて、アリアちゃんが声をかけてきた。
「ラウルおにいちゃん、ねむいの? いっしょにねよう―ー」
「慣れない旅で疲れが出るのは当然だ。翌日に残さないようにしっかり休むのも大事なことだぞ」
これじゃあまるで子供みたいだ、情けないなと思いながらも、疲れと眠気にどうにも抗えない。素直にジャウマさんの言葉に頷き、ベッドに潜り込んだ。アリアちゃんも当たり前のように僕の隣に横になる。
アリアちゃんが嬉しそうに僕にしがみつくと、その温かさで心が緩み、そのまま眠りの淵へと落ちていった。
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