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第二章
2-3 ギルドで依頼を受ける
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翌朝、冒険者ギルドに僕らが足を踏み入れると、一瞬だけ空気がざわりと揺れた。気のせいかと思ったけれど、そうじゃない。周囲の冒険者は互いに小声で話しながらこちらを窺っている。昨日、あれだけ目立っていたんだから、まあ当然だろう。
3人…いや僕以外の4人は、この状況には慣れているのか、それを気にする様子もなく、真っすぐに掲示板に向かった。
「金稼ぎも兼ねて、何か依頼を受けよう」
目的もわからず付いてきた僕に、説明するようにジャウマさんが言う。
「あ…… でも僕はまだランクが低いから……」
3人ともAランクの冒険者様で、僕はまだEランク。同じ依頼は受けられない。
ジャウマさんの横で、掲示板の依頼を順に眺める。ある依頼票で視線が止まった。
「これ……薪集めの依頼だ。これなら僕にもできるかな?」
「こんなの、ジャウが木をなぎ倒して持ってくりゃ一発だろう?」
「おい、俺をなんだと思ってるんだ?」
こっそりと、でも物騒なことを言って笑ったヴィーさんの肩を、ジャウマさんが強めに小突いた。
ヴィーさんが言っているのは、今の『人の姿』ジャウマさんのことではなく、『獣の姿』のジャウマさんのことだ。
この3人……いや、アリアちゃんも含めた4人の正体は人間でもなければ、獣人すらないのだそうだ。人間や獣人のような姿にもなれる、でも真の実力を出す時には、その姿は獣のものになる。
ジャウマさんは赤い竜。
ヴィジェスさんは虹色の羽根を持つ鳥。
セリオンさんは白狐。
アリアちゃんは黒い二本の角を持つ金毛の獣に。
そして僕も彼らの仲間で、彼らと同じように獣の姿になれる、らしい。
僕も……本当は人間ではないのだろう。でも何故だかそのことについての不安は全くない。
それよりも、僕が獣の姿になっても、やっぱり今のように弱いままだったらどうしようかと、そんな不安の方が上回っている。
「まあ、皆で一緒に運んだ方が。たくさん持って帰れるし良いよなあ」
ヴィーさんが僕の顔を覗き込んで言った言葉で、ハッと気付いた。どうやら、考え込んでしまっていたらしい。
「ラウル、どうした?」
「あ、ああ……うん……」
僕が一人で薪を集めても、その量はたかが知れている。僕が運べる程度の倒木を探して、手ごろな大きさに切っても、大した量にはならないだろう。
でもヴィーさんが言うように、力自慢のジャウマさんが木を切ってくれれば、それだけで沢山の薪が手に入る。さらに4人で薪を集めて持って帰ることができれば、かなりの量になるだろう。
でも本来ならばこれはEランクの依頼で、得られる経験値と報奨金は彼らがこなせる高ランクの依頼に比べたら、たかがしれている。
……やっぱり、僕が彼らの足手纏いになる訳にはいかない。
「あの…… 僕、一人でこの薬草集めをやってきます」
「うん? でも俺らもいるんだし、もうちょっと手ごたえのある依頼の方がいいんじゃねえか?」
「いえ、ちょうど手持ちの薬草の補充もしたかったので、そのついでにこの依頼を受けてきます」
僕の為に色々と考えてくれるヴィーさんに気を使って、そう嘘をついた。
「ヴィーはしつこいですよ。ラウルくんの希望を尊重すべきです」
相変わらずの冷たい言い方でセリオンさんが諫めると、ヴィーさんはばつが悪そうに目を逸らせた。
「そうか。じゃあ俺たちは3人でこっちの依頼を受けてこよう」
ジャウマさんは一度皆を見回して確認すると、Aランクの依頼票を手に取った。
* * *
僕の薬草採集には、アリアちゃんが付き合ってくれた。
弱くて戦うことのできなかった僕は、冒険者になってからの半年以上、ずっと薬草採集の依頼ばかりしていた。そのお陰か、こんな初めての場所でも、どの辺りにどんな薬草が生えているのかが、なんとなくわかってくる。
草原にも色々な薬草が生えている。でも日当たりが良すぎると、大抵の薬草は育ち過ぎで葉が固くなってしまう。これでは調合がしにくくて買取価格が安くなってしまう。森を少し入った半日陰に生えている薬草の方が、柔らかくて質が良いものが多い。
薬草の中でも、テナー草は逆に日陰を嫌うので草原で探す方がいい。下草の少ない開けたところで地面に這うように生えているので、人や獣に踏み荒らされていなさそうな場所を探す。
ルート草は水気の多いところに生えていて、この薬草は葉ではなくて掘り出した根を調合に使用する。冒険者ギルドに貼ってあった地図によると、この草原の西側に小さな小川があるらしい。その川岸が狙い目だろう。
今日は天気もよく風が穏やかなので、薬草採集も順調に進んだ。
「たくさん集められたねぇ。ラウルおにいちゃん、すごいね」
アリアちゃんがそう褒めてくれたけれど、これというのも、アリアちゃんが一緒に手伝ってくれたからだ。
「僕なんかより、ジャウマさんたちの方がずっと強いしすごいよ」
「うーん、でも」
アリアちゃんは、首を傾げながら続ける。
「ヴィーパパはなんでもすぐぐちゃぐちゃにしちゃうし、ジャウパパはこないだせっかく見つけた卵をわっちゃったし、セリパパは薬草のことなんてぜんぜんわからないって言ってたよー」
……そう言えば、彼らは料理も苦手って言ってたな。
料理の手伝いをしようとして、アリアちゃんに怒られて追い払われていた3人の姿を思い出した。
「パパたち、たたかうのは強いけど、ほかはぜんっぜんダメなんだもん。だからラウルおにいちゃんみたいに色んなことができるのもすごいと思うよー」
そう言って笑ってくれるアリアちゃんに癒やされて、心が温かくなった。
結局、依頼で必要な数よりもずっと多くの薬草が集められただけでなく、依頼票には載っていなかったルート草やテナー草も見つけることができた。
これらも冒険者ギルドで買い取ってもらえるといいんだけどな。
3人…いや僕以外の4人は、この状況には慣れているのか、それを気にする様子もなく、真っすぐに掲示板に向かった。
「金稼ぎも兼ねて、何か依頼を受けよう」
目的もわからず付いてきた僕に、説明するようにジャウマさんが言う。
「あ…… でも僕はまだランクが低いから……」
3人ともAランクの冒険者様で、僕はまだEランク。同じ依頼は受けられない。
ジャウマさんの横で、掲示板の依頼を順に眺める。ある依頼票で視線が止まった。
「これ……薪集めの依頼だ。これなら僕にもできるかな?」
「こんなの、ジャウが木をなぎ倒して持ってくりゃ一発だろう?」
「おい、俺をなんだと思ってるんだ?」
こっそりと、でも物騒なことを言って笑ったヴィーさんの肩を、ジャウマさんが強めに小突いた。
ヴィーさんが言っているのは、今の『人の姿』ジャウマさんのことではなく、『獣の姿』のジャウマさんのことだ。
この3人……いや、アリアちゃんも含めた4人の正体は人間でもなければ、獣人すらないのだそうだ。人間や獣人のような姿にもなれる、でも真の実力を出す時には、その姿は獣のものになる。
ジャウマさんは赤い竜。
ヴィジェスさんは虹色の羽根を持つ鳥。
セリオンさんは白狐。
アリアちゃんは黒い二本の角を持つ金毛の獣に。
そして僕も彼らの仲間で、彼らと同じように獣の姿になれる、らしい。
僕も……本当は人間ではないのだろう。でも何故だかそのことについての不安は全くない。
それよりも、僕が獣の姿になっても、やっぱり今のように弱いままだったらどうしようかと、そんな不安の方が上回っている。
「まあ、皆で一緒に運んだ方が。たくさん持って帰れるし良いよなあ」
ヴィーさんが僕の顔を覗き込んで言った言葉で、ハッと気付いた。どうやら、考え込んでしまっていたらしい。
「ラウル、どうした?」
「あ、ああ……うん……」
僕が一人で薪を集めても、その量はたかが知れている。僕が運べる程度の倒木を探して、手ごろな大きさに切っても、大した量にはならないだろう。
でもヴィーさんが言うように、力自慢のジャウマさんが木を切ってくれれば、それだけで沢山の薪が手に入る。さらに4人で薪を集めて持って帰ることができれば、かなりの量になるだろう。
でも本来ならばこれはEランクの依頼で、得られる経験値と報奨金は彼らがこなせる高ランクの依頼に比べたら、たかがしれている。
……やっぱり、僕が彼らの足手纏いになる訳にはいかない。
「あの…… 僕、一人でこの薬草集めをやってきます」
「うん? でも俺らもいるんだし、もうちょっと手ごたえのある依頼の方がいいんじゃねえか?」
「いえ、ちょうど手持ちの薬草の補充もしたかったので、そのついでにこの依頼を受けてきます」
僕の為に色々と考えてくれるヴィーさんに気を使って、そう嘘をついた。
「ヴィーはしつこいですよ。ラウルくんの希望を尊重すべきです」
相変わらずの冷たい言い方でセリオンさんが諫めると、ヴィーさんはばつが悪そうに目を逸らせた。
「そうか。じゃあ俺たちは3人でこっちの依頼を受けてこよう」
ジャウマさんは一度皆を見回して確認すると、Aランクの依頼票を手に取った。
* * *
僕の薬草採集には、アリアちゃんが付き合ってくれた。
弱くて戦うことのできなかった僕は、冒険者になってからの半年以上、ずっと薬草採集の依頼ばかりしていた。そのお陰か、こんな初めての場所でも、どの辺りにどんな薬草が生えているのかが、なんとなくわかってくる。
草原にも色々な薬草が生えている。でも日当たりが良すぎると、大抵の薬草は育ち過ぎで葉が固くなってしまう。これでは調合がしにくくて買取価格が安くなってしまう。森を少し入った半日陰に生えている薬草の方が、柔らかくて質が良いものが多い。
薬草の中でも、テナー草は逆に日陰を嫌うので草原で探す方がいい。下草の少ない開けたところで地面に這うように生えているので、人や獣に踏み荒らされていなさそうな場所を探す。
ルート草は水気の多いところに生えていて、この薬草は葉ではなくて掘り出した根を調合に使用する。冒険者ギルドに貼ってあった地図によると、この草原の西側に小さな小川があるらしい。その川岸が狙い目だろう。
今日は天気もよく風が穏やかなので、薬草採集も順調に進んだ。
「たくさん集められたねぇ。ラウルおにいちゃん、すごいね」
アリアちゃんがそう褒めてくれたけれど、これというのも、アリアちゃんが一緒に手伝ってくれたからだ。
「僕なんかより、ジャウマさんたちの方がずっと強いしすごいよ」
「うーん、でも」
アリアちゃんは、首を傾げながら続ける。
「ヴィーパパはなんでもすぐぐちゃぐちゃにしちゃうし、ジャウパパはこないだせっかく見つけた卵をわっちゃったし、セリパパは薬草のことなんてぜんぜんわからないって言ってたよー」
……そう言えば、彼らは料理も苦手って言ってたな。
料理の手伝いをしようとして、アリアちゃんに怒られて追い払われていた3人の姿を思い出した。
「パパたち、たたかうのは強いけど、ほかはぜんっぜんダメなんだもん。だからラウルおにいちゃんみたいに色んなことができるのもすごいと思うよー」
そう言って笑ってくれるアリアちゃんに癒やされて、心が温かくなった。
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