招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~

都鳥

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第二章

2-9 戦い終わって……

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 セリオンさんの言う通り、まき割りは量が多くて本当に大変だった。

 倒木を町のそばまで運んでくれたのは竜の姿のジャウマさんだ。倒木を運ぶことのできない僕は、ヴィーさん、セリオンさんと一緒にただひたすらに薪を割っていた。
 薪割りはやったことがあるし、どんなに大変かも知っているつもりだった。でもその量が半端なかった。多分、あそこにあった倒木を全部持ってきてくれたんだろう。

 最後には皆で斧を振り、持ってきた倒木が全て薪になった頃には、くたびれ切ってもう立ち上がれなくなっていた。僕だけが。


 大蛇を倒した証拠の牙と、大蛇から出た大きな魔結晶、そして大量の薪を、冒険者ギルドに持ち込むと、かなりの報酬ほうしゅう金を貰うことができた。
 これほどのお金を報酬で一時に貰うなんて、僕には初めての経験だ。すごい……

 ジャウマさんは皆の前でその報酬を半分に分けると、その半分をさらに四つに分け、そのうちの一つの山を僕の前に置いた。
「え……? このお金は?」
「うん? それはお前の分だぞ」
 そう言うヴィーさんも、ご機嫌な様子で金を財布にしまっている。

「依頼報酬の半分は、パーティー全体の旅の資金としてジャウマが管理して、皆で使う宿代や馬車代などはそこから出すことになっている。残りの報酬は、こうして皆で等分するんだ」
 なるほど、このパーティーではそういうルールなのか。そういえば自分も、先日受けた依頼の報酬をまだ渡していなかったことを思い出した。

「あのこれ…… 僕が依頼で貰った分です…… ほんの、少しですけど……」
 僕にとっては、あれが今までで一番の金額だったけれど、さっきの報酬に比べたら微々たるものだ。あんな大金の後で、この程度のお金を出すのは恥ずかしいような気もしたけれど、これがこのパーティーのルールなのなら、僕もそれに合わせないといけない。

「そうか、ありがとう」
 それだけ言って、ジャウマさんはそこから半分を取り、残りは僕に返した。
「あ…… これも皆で分けるんじゃないんですか?」
「いや、これはラウルだけで受けてきた依頼の分だろう?」

「わかりました。あ、でも……」
 いいや、依頼を受けたのは確かに僕だけだけど、依頼をこなしたのは僕だけじゃないな。

「はい、これ。アリアちゃんの分」
「えっ!? ラウルおにいちゃん、いいのー??」
 アリアちゃんは目を丸くさせて、驚きながらも喜んだ。

「おっ、アリア良かったなー」
「わーーいい!! ねえ、おかいものに行きたいー!」
 アリアちゃんは、さっき渡したお金をしまった財布を大切そうに抱えながら、ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねる。

 その様子を見ているセリオンさんと目が合うと、彼は僕にもちょっと優しい目で笑いかけた。
「君もそれで好きなものを買うといい。武器でも、装備でも、何か必要な道具でも」
 好きなもの…… と、言われて、あの工房でみた調合道具を思い出した。

 * * *

 翌日、調合道具を扱う店を紹介してもらおうと、先日の工房を訪れた。調合師さんは僕らのことを覚えていてくれた。しかも調合道具が欲しい旨を伝えると、手持ちの薬草類と引き換えに中古の調合道具を譲ってくれることになった。
 すごく有難い…… 安く上がった分で、調合の本も買うことができた。

「調合か、いいじゃないか」
 余計なことをしようとしていると思われるんじゃないかと、ちょっと心配していた。でもジャウマさんにそう言ってもらえて、ほっとした。
「僕の役目は守ることだって、わかっています。でも戦うことができないなら、せめてやれることを増やしたいと思って。あと結界を張る練習もします。もっと上手く使いこなせるように」
 僕の言葉を聞いて、ジャウマさんは頑張れと言うように僕の肩をポンと叩いた。

 アリアちゃんはヴィーさんと道具屋に行っていたそうだ。ニコニコと嬉しそうに、革製の肩掛けバッグを僕の胸に押し付けた。
「ラウルおにいちゃんに、これー」
「え? 僕に?」
「アリアが自分の小遣いで買ったんだ、大事に使えよ」
 ヴィーさんがニヤリと笑いながら言った。

 アリアちゃんから貰ったバッグに、さっそく調合道具をしまおうと、口を開いた。
「あ…… あれ??」
 ……なんだか変だ。バッグの中をのぞき込む。見えるはずのバッグの底が見えず、なにやらもやもやとした魔力のような物がよどんでいる。
 これは、もしかして……
「……マジックバッグ??」
 そう尋ねるとアリアちゃんは自慢げにうなずいた。

 マジックバッグは、見た目の容量より多く荷物が入れられたり、重量が軽減されたり、つまりは実際の大きさより多くの物を運べる効果があるバッグで、特殊な魔法がかかっているらしい。少なくともそこらの魔法使いがかけられるような魔法ではないので、どこにでもあるわけではないし、とてもとても高価なものだ。

 僕の為にそんな高価な物を…… 昨日渡したあのお金だけじゃ、全く足りないはずだ。だとしたら、これはアリアちゃんだけでなくて、皆で買ってくれたんじゃないんだろうか。

「皆さん、僕の為に…… ありがとうございます」
 皆を見回して言うと、一様いちように不思議そうな顔をした。
 ……あれ?

 僕の表情を見て、セリオンさんが何かに気付いたようだ。
「ああ、なるほど。確かにマジックバッグは普通に買ったなら高価な物だからな。君が勘違いをしても仕方ない」
 へ? 勘違い??
「大丈夫だ。私たちに礼を言う必要は全くない。そのバッグはアリアが自分で買った物で、アリアが魔法をかけたものだ」

 え? もしかして、特別な魔法を…… アリアちゃんが……?

「他の人たちにはないしょだよー」
 アリアちゃんが、可愛い声で僕にささやいた。
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