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第三章
3-5 キノコを探して森に入る
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先ほど見かけた冒険者が来た道を逆に辿る。しばらく進んで森にぶつかると、道はその森のさらに奥へと続いていた。どこからかカンムリ鳥の鳴き声も聞こえる。ここが当たりだろう。
リュフタケは湿った柔らかい土を好む。森の入口付近ではなく、もう少し森の奥、木が深く茂っている方を目指して進んだ。
案の定、その森にキノコはあった。
が……キノコだけじゃない。がふがふと鼻息を立てながら、ずんぐりとした獣が木の根元でガサゴソと何かをしている。あれはディグボアだ。
リュフタケが生えている森になら、当然こいつがいるだろうとは思っていた。けれど、まさかこんなに早く鉢合わせすることになるとは……
ディグボアは牙猪に比べると、一回り体は小さくて牙がない。基本的に気性は臆病で出会ってもすぐに逃げ出してしまうので、さほど危険はない。
強靭な鼻先で土を掘り、地中の虫や木の根などを好んで食べるディグボアの、一番の好物がリュフタケなのだ。リュフタケを食べている時だけは邪魔をされると怒って攻撃をしてくる。
そしてまさに今が、その場面なのだろう。
「ここにはアイツがいるから、見つからずにそっと移動して、別のところを探そう」
アリアちゃんに小声で伝え、そっと後ろ向きに歩を進めた。
パキッ!
足元で大きな音がして、心臓が飛び出しそうになった。
……下を見ると、朽ちかけた枝が僕の革靴の下で真っ二つになっていた。
ブフーー!!
ディグボアの鼻息が聞こえた……やばい!!
ハッと顔を上げて猪の方を見る。鼻先に土や木の葉をつけたままの猪が、今にも襲いかかろうとこちらを睨みつけていた。
「ラウルおにいちゃん、兎ちゃんの時みたいに、あいつに結界魔法を使って倒せないかな?」
「そ、そうだ!」
あの時のように、兎に魔法をかけた要領で結界魔法をボアに向ける。鼻息を荒くしているボアの顔の周りを光の球体が覆った。が、すぐに弾けて消えた。
「あれっ!?」
慌ててまた結界魔法を放つ。結界はボアの顔を覆っては消え、覆ってはまた消える。
「だ、だめだ…… あの時の兎とディグボアだと魔獣のランクが違う所為かもしれない」
苛立ったディグボアが僕らに突進しようと頭を低くしたのを見て、慌てて自分たちに結界を張る。僕らの周りを覆うように光の壁が現れた。
途端に、結界にボアがめいっぱいの体当たりをしてきた。
「うわあ!!」
咄嗟にアリアちゃんを守る様に抱きしめる。でも結界のお陰で、体当たりは僕らには届かなかった。それどころか逆にボアの方が結界に弾かれて転がっている。
すっかり興奮しているのか、そのくらいでは諦めようとしないボアは、再び立ち上がる。またこちらに向かって駆けてきて、弾かれて倒れた。
「ラウルおにいちゃん、どうしよう……」
不安そうにアリアちゃんが僕を見る。三度、ボアがこちらに走り出そうとしたその時、頭上からばさりと大きな羽ばたきが聞こえた。
「あ!! ヴィーパパ!!」
上を見ながらアリアちゃんが叫んだ途端、僕らの頭上から無数の鳥の羽根が、まるで弓から放たれた矢のようにディグボアに向かって飛んでいく。
アリアちゃんに倣って見上げると、そこには背に羽根を生やし足先にだけ猛禽類の鉤爪を持った、半人半鳥の姿のヴィーさんが、空中で羽ばたいていた。
フギッ!!
ヴィーさんが打ち出した無数の羽根が突き刺さり、ボアが悲鳴をあげる。でも少しよろけただけで、すぐに体勢を立て直した。
次の瞬間、ヴィーさんがボアを目掛けて飛び降りる。そのまま両足の鉤爪でボアの体を押さえつけた。
「ラウル、やれ!」
「あ…… は、はい!!」
ヴィーさんに名を呼ばれ、慌てて腰から短剣を抜く。
ボアに駆け寄り、その首元をねらって、短剣で切りつけた。
* * *
ジャウマさんたち3人は、依頼の途中でこの近くを通りかかったんだそうだ。鳥に姿を変えたヴィーさんが先行していたところ、僕らが森に入るのが見えたので、気になってこっそり様子を見に来てくれたらしい。
「すみません…… 本当なら、僕がアリアちゃんを守らなければいけないのに……」
油断もしていた。それだけでなく、兎を倒せたことで少しだけ調子に乗っていた。
「間に合って良かったな。怪我が無くて幸いだった」
そう言ってジャウマさんが、元気付けるように肩をポンポンと叩いてくれる。
3人もアリアちゃんも、僕を責めるようなことはしない。
でも僕はアリアちゃんを守ることしかできないんだから、それすらできなかったら本当の役立たずじゃないか……
ジャウマさんたちには次の依頼があるのだそうで、森を出たところで別れた。
町へ戻り冒険者ギルドで、薬草の採集依頼と、併せてリュフタケ集めも依頼完了処理をしてもらう。ディグボアは肉屋に持ち込んで解体してもらった。
「今日はたっくさんさいしゅーできて良かったねーー」
宿へ戻る道すがら、ご機嫌で笑うアリアちゃんに、頑張って笑みを返す。
でも心の中は、どんよりと曇ったままだった。
リュフタケは湿った柔らかい土を好む。森の入口付近ではなく、もう少し森の奥、木が深く茂っている方を目指して進んだ。
案の定、その森にキノコはあった。
が……キノコだけじゃない。がふがふと鼻息を立てながら、ずんぐりとした獣が木の根元でガサゴソと何かをしている。あれはディグボアだ。
リュフタケが生えている森になら、当然こいつがいるだろうとは思っていた。けれど、まさかこんなに早く鉢合わせすることになるとは……
ディグボアは牙猪に比べると、一回り体は小さくて牙がない。基本的に気性は臆病で出会ってもすぐに逃げ出してしまうので、さほど危険はない。
強靭な鼻先で土を掘り、地中の虫や木の根などを好んで食べるディグボアの、一番の好物がリュフタケなのだ。リュフタケを食べている時だけは邪魔をされると怒って攻撃をしてくる。
そしてまさに今が、その場面なのだろう。
「ここにはアイツがいるから、見つからずにそっと移動して、別のところを探そう」
アリアちゃんに小声で伝え、そっと後ろ向きに歩を進めた。
パキッ!
足元で大きな音がして、心臓が飛び出しそうになった。
……下を見ると、朽ちかけた枝が僕の革靴の下で真っ二つになっていた。
ブフーー!!
ディグボアの鼻息が聞こえた……やばい!!
ハッと顔を上げて猪の方を見る。鼻先に土や木の葉をつけたままの猪が、今にも襲いかかろうとこちらを睨みつけていた。
「ラウルおにいちゃん、兎ちゃんの時みたいに、あいつに結界魔法を使って倒せないかな?」
「そ、そうだ!」
あの時のように、兎に魔法をかけた要領で結界魔法をボアに向ける。鼻息を荒くしているボアの顔の周りを光の球体が覆った。が、すぐに弾けて消えた。
「あれっ!?」
慌ててまた結界魔法を放つ。結界はボアの顔を覆っては消え、覆ってはまた消える。
「だ、だめだ…… あの時の兎とディグボアだと魔獣のランクが違う所為かもしれない」
苛立ったディグボアが僕らに突進しようと頭を低くしたのを見て、慌てて自分たちに結界を張る。僕らの周りを覆うように光の壁が現れた。
途端に、結界にボアがめいっぱいの体当たりをしてきた。
「うわあ!!」
咄嗟にアリアちゃんを守る様に抱きしめる。でも結界のお陰で、体当たりは僕らには届かなかった。それどころか逆にボアの方が結界に弾かれて転がっている。
すっかり興奮しているのか、そのくらいでは諦めようとしないボアは、再び立ち上がる。またこちらに向かって駆けてきて、弾かれて倒れた。
「ラウルおにいちゃん、どうしよう……」
不安そうにアリアちゃんが僕を見る。三度、ボアがこちらに走り出そうとしたその時、頭上からばさりと大きな羽ばたきが聞こえた。
「あ!! ヴィーパパ!!」
上を見ながらアリアちゃんが叫んだ途端、僕らの頭上から無数の鳥の羽根が、まるで弓から放たれた矢のようにディグボアに向かって飛んでいく。
アリアちゃんに倣って見上げると、そこには背に羽根を生やし足先にだけ猛禽類の鉤爪を持った、半人半鳥の姿のヴィーさんが、空中で羽ばたいていた。
フギッ!!
ヴィーさんが打ち出した無数の羽根が突き刺さり、ボアが悲鳴をあげる。でも少しよろけただけで、すぐに体勢を立て直した。
次の瞬間、ヴィーさんがボアを目掛けて飛び降りる。そのまま両足の鉤爪でボアの体を押さえつけた。
「ラウル、やれ!」
「あ…… は、はい!!」
ヴィーさんに名を呼ばれ、慌てて腰から短剣を抜く。
ボアに駆け寄り、その首元をねらって、短剣で切りつけた。
* * *
ジャウマさんたち3人は、依頼の途中でこの近くを通りかかったんだそうだ。鳥に姿を変えたヴィーさんが先行していたところ、僕らが森に入るのが見えたので、気になってこっそり様子を見に来てくれたらしい。
「すみません…… 本当なら、僕がアリアちゃんを守らなければいけないのに……」
油断もしていた。それだけでなく、兎を倒せたことで少しだけ調子に乗っていた。
「間に合って良かったな。怪我が無くて幸いだった」
そう言ってジャウマさんが、元気付けるように肩をポンポンと叩いてくれる。
3人もアリアちゃんも、僕を責めるようなことはしない。
でも僕はアリアちゃんを守ることしかできないんだから、それすらできなかったら本当の役立たずじゃないか……
ジャウマさんたちには次の依頼があるのだそうで、森を出たところで別れた。
町へ戻り冒険者ギルドで、薬草の採集依頼と、併せてリュフタケ集めも依頼完了処理をしてもらう。ディグボアは肉屋に持ち込んで解体してもらった。
「今日はたっくさんさいしゅーできて良かったねーー」
宿へ戻る道すがら、ご機嫌で笑うアリアちゃんに、頑張って笑みを返す。
でも心の中は、どんよりと曇ったままだった。
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