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第六章
6-4 ダンジョン
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冒険者の町を出てしばらく歩いたところに、目的のダンジョンはあった。
ダンジョンの入口になっている石造りの扉の前に、簡易テントが張られている。僕らが近づくと、少し年嵩のいった先輩冒険者らしいおじさんが出てきた。
ジャウマさんがダンジョンの入場許可証とギルドカードを取り出すのを見て、慌てて自分もギルドカードを出す。
見ると、おじさんの腕には『受付』と書かれた腕章が付いていた。
おじさんは、ジャウマさんたち二人のギルドカードを見た後に、僕のカードを見て眉を顰めた。
「お前さんだけDランクなのか」
そしてまるで何かを確認するかのように、僕を上から下までじろじろと眺める。
「少しだけこいつを借りるぞ。そこで待っててくれ。お前はちょっとこっちに来い」
おじさんはジャウマさんたちに声をかけた後で、僕の肩を掴んで物陰に押し込んだ。
もしかして、僕は何か良くないことでもしてしまったんだろうか。不安で握った手が汗ばんでくる。
「なあお前、あいつらに脅されてたりはしないか?」
「ええっ?」
おじさんは意外な言葉を口にした。
「い、いや、脅されてるなんてことないです。とんでもない」
「そうか、なら良いんだが……」
そう言って、また僕の上から下までじろじろと見回す。
おじさんによると、どうやら僕が彼らに脅されて無理やり連れて来られたんじゃないかと、心配してくれたらしい。
嫌な話だけど、そういうことはたまにあるのだそうだ。
下級の冒険者を、上級冒険者が金で雇ったり脅したりして同行させる。表向きには、荷物持ちやサポートをさせると言っておいて、最後には魔獣の囮にしてダンジョンの中に捨ててくるのだそうだ。
「いやいや、あの二人はそんなことしません! 信頼している仲間ですから!」
「そっか、それならいいんだ。すまなかったな」
おじさんはそう言って、僕の肩をぽんと叩いた。
二人のもとへ戻ると、さっぱりとした表情でおじさんは告げた。
「入っていいぞ。ただ低ランクの坊主がいるんだから、無理はしちゃいかんぞ」
おじさんの首から下げてあった鍵で石造りの扉が開かれる。二人は軽く手を挙げて、僕はおじさんに会釈をして、ダンジョンの内部へ足を踏み入れた。
「なあ、ラウル。あのおっさんに何を言われたんだ?」
前を行くヴィーさんが、少し振り返り気味にこちらを見ながら言う。
「ああ、えっと…… 僕を心配してくれたみたいです」
「心配? ランクが低いからか?」
それは、一応合ってはいるけど、多分ヴィーさんの想像している理由とはちょっと違う。でも、そういうことにしておこうと、笑って誤魔化した。
* * *
ダンジョンは階層構造になっていて、奥深く、つまり地下へと潜るほどに強い魔獣が出る。
ダンジョンに入ることで得られるのは、魔獣の素材。そして多少の冒険者としての経験値。でも、それ以外には特別な報酬などはない。
しかしこの町の周囲にあるダンジョンにしか生息しない魔獣の素材は、高値で取引されている。その為、依頼の報酬も他の町での相場より高く設定されているのだそうだ。
と言っても、その高値で取引される素材を持つ魔獣が生息しているのはもっと下層の話で、今僕らが居る上層で見かける魔獣は、その辺りの森に居るものとさほど見た目は変わらない。ジャウマさんによると、それよりちょっと強いらしい。
「よっしゃ、ここのあたりでいいな」
ある程度進んだところで二人は足を止めると、事も有ろうに僕とクーを先頭に立たせた。
「こ、こ、これはどういうことですか!?」
「この辺りの魔獣相手にゃ、俺らじゃ役不足だからな」
ハハハと愉快そうにヴィーさんは笑う。だから僕らに任せると、そういうことだろう。
「でも、僕、武器はこれしか持っていないんですけど」
そう言って、腰に差していたショートソードを、抜いてみせた。
他の冒険者たちも持っているようなロングソードを試しに持ってみたこともある。でもいまいちしっくり来なかった。
「なんだか剣に振り回されてるな」
試しにロングソードを振らせてもらった僕を見て、ヴィーさんはそう言った。そして、ジャウマさんにはやんわりとロングソードを持つことを止められた。
それならと思い、ヴィーさんにクロスボウを試させてもらったけれど、やっぱりこれもしっくりこない。
魔法を使ってみても、普段の生活に使えるような小さな火や風を起こすのが精一杯だった。
僕は気が弱いから戦えないんだと思っていた。でもそれだけじゃない。武器を扱う素質もないんだろう。
そう思って凹む僕に、皆はそれでいいと言った。僕の役目は守ることなんだから、と。
結局僕は、一番手に馴染んだショートソードと、動きを邪魔しないくらいの軽い防具しか身につけていない。
代わりに、アリアちゃんがくれたマジックバッグの中にはたくさんの薬草とポーションが入っている。もちろん、魔物避けのからい粉の袋も。
ショートソードを抜いて見せた僕の頭を、ガシガシと撫でながらヴィーさんが言った。
「武器を振るうだけが戦いじゃねーし、お前は一人じゃない。クーがいるだろう?」
「クゥ!」
「へ?」
ダンジョンの入口になっている石造りの扉の前に、簡易テントが張られている。僕らが近づくと、少し年嵩のいった先輩冒険者らしいおじさんが出てきた。
ジャウマさんがダンジョンの入場許可証とギルドカードを取り出すのを見て、慌てて自分もギルドカードを出す。
見ると、おじさんの腕には『受付』と書かれた腕章が付いていた。
おじさんは、ジャウマさんたち二人のギルドカードを見た後に、僕のカードを見て眉を顰めた。
「お前さんだけDランクなのか」
そしてまるで何かを確認するかのように、僕を上から下までじろじろと眺める。
「少しだけこいつを借りるぞ。そこで待っててくれ。お前はちょっとこっちに来い」
おじさんはジャウマさんたちに声をかけた後で、僕の肩を掴んで物陰に押し込んだ。
もしかして、僕は何か良くないことでもしてしまったんだろうか。不安で握った手が汗ばんでくる。
「なあお前、あいつらに脅されてたりはしないか?」
「ええっ?」
おじさんは意外な言葉を口にした。
「い、いや、脅されてるなんてことないです。とんでもない」
「そうか、なら良いんだが……」
そう言って、また僕の上から下までじろじろと見回す。
おじさんによると、どうやら僕が彼らに脅されて無理やり連れて来られたんじゃないかと、心配してくれたらしい。
嫌な話だけど、そういうことはたまにあるのだそうだ。
下級の冒険者を、上級冒険者が金で雇ったり脅したりして同行させる。表向きには、荷物持ちやサポートをさせると言っておいて、最後には魔獣の囮にしてダンジョンの中に捨ててくるのだそうだ。
「いやいや、あの二人はそんなことしません! 信頼している仲間ですから!」
「そっか、それならいいんだ。すまなかったな」
おじさんはそう言って、僕の肩をぽんと叩いた。
二人のもとへ戻ると、さっぱりとした表情でおじさんは告げた。
「入っていいぞ。ただ低ランクの坊主がいるんだから、無理はしちゃいかんぞ」
おじさんの首から下げてあった鍵で石造りの扉が開かれる。二人は軽く手を挙げて、僕はおじさんに会釈をして、ダンジョンの内部へ足を踏み入れた。
「なあ、ラウル。あのおっさんに何を言われたんだ?」
前を行くヴィーさんが、少し振り返り気味にこちらを見ながら言う。
「ああ、えっと…… 僕を心配してくれたみたいです」
「心配? ランクが低いからか?」
それは、一応合ってはいるけど、多分ヴィーさんの想像している理由とはちょっと違う。でも、そういうことにしておこうと、笑って誤魔化した。
* * *
ダンジョンは階層構造になっていて、奥深く、つまり地下へと潜るほどに強い魔獣が出る。
ダンジョンに入ることで得られるのは、魔獣の素材。そして多少の冒険者としての経験値。でも、それ以外には特別な報酬などはない。
しかしこの町の周囲にあるダンジョンにしか生息しない魔獣の素材は、高値で取引されている。その為、依頼の報酬も他の町での相場より高く設定されているのだそうだ。
と言っても、その高値で取引される素材を持つ魔獣が生息しているのはもっと下層の話で、今僕らが居る上層で見かける魔獣は、その辺りの森に居るものとさほど見た目は変わらない。ジャウマさんによると、それよりちょっと強いらしい。
「よっしゃ、ここのあたりでいいな」
ある程度進んだところで二人は足を止めると、事も有ろうに僕とクーを先頭に立たせた。
「こ、こ、これはどういうことですか!?」
「この辺りの魔獣相手にゃ、俺らじゃ役不足だからな」
ハハハと愉快そうにヴィーさんは笑う。だから僕らに任せると、そういうことだろう。
「でも、僕、武器はこれしか持っていないんですけど」
そう言って、腰に差していたショートソードを、抜いてみせた。
他の冒険者たちも持っているようなロングソードを試しに持ってみたこともある。でもいまいちしっくり来なかった。
「なんだか剣に振り回されてるな」
試しにロングソードを振らせてもらった僕を見て、ヴィーさんはそう言った。そして、ジャウマさんにはやんわりとロングソードを持つことを止められた。
それならと思い、ヴィーさんにクロスボウを試させてもらったけれど、やっぱりこれもしっくりこない。
魔法を使ってみても、普段の生活に使えるような小さな火や風を起こすのが精一杯だった。
僕は気が弱いから戦えないんだと思っていた。でもそれだけじゃない。武器を扱う素質もないんだろう。
そう思って凹む僕に、皆はそれでいいと言った。僕の役目は守ることなんだから、と。
結局僕は、一番手に馴染んだショートソードと、動きを邪魔しないくらいの軽い防具しか身につけていない。
代わりに、アリアちゃんがくれたマジックバッグの中にはたくさんの薬草とポーションが入っている。もちろん、魔物避けのからい粉の袋も。
ショートソードを抜いて見せた僕の頭を、ガシガシと撫でながらヴィーさんが言った。
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「クゥ!」
「へ?」
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