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第六章
6-5 結界魔法の訓練
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戦うことのできない僕が、戦うジャウマさんたちの近くにいられるのは、結界魔法があるからだ。
と言っても、そんなに大きい結界を張ることはできない。せいぜい僕とアリアちゃんを守れる程度だ。
僕なりに、もっと大きい結界魔法を張る練習をやってみたけれど、結果は殆ど変わらなかった。代わりに以前よりも早く、結界を張ったり消したりができるようになった。
これから僕がするのは、その結界魔法の扱いの訓練らしい。たしかにまだ若狼でさほど体が大きくないクーだったら、僕の結界魔法に入れることができる。
牙猪と戦うクーを、僕が結界魔法でサポートする。クーが前にでれば、猪の牙攻撃や体当たりに合わせて結界を張り、引けば自分と共に結界で守る。
弱った敵をクーが組み伏せたのを見計らって、僕がショートソードで止めを刺した。
「でもこれじゃあ、いつまでたっても僕自身は強くなれないですよね」
思わず、小さなため息を吐く。僕の言葉を聞いて、ヴィーさんとジャウマさんは、きょとんとしたような顔をした。
「俺らはお前に強くなってほしいなんて、言ったことはないぞ。まあ、確かにお前が強くなりたがっていることは知っているけどな」
「そうだ。俺たちがお前に願っているのは、アリアを守ることだ。これはお前でないとダメなんだ」
「な、なんで……ですか? ジャウマさんや、ヴィーさんの方が、僕なんかよりずっとずっと強いじゃないですか…… それが、なんで僕なんですか?」
「アリアがそう望んでいるからだ」
ジャウマさんは僕をじっと見ながら、そう言った。
アリアちゃんが…… 僕を……?
「クゥ!」
クーに呼ばれて前を見ると、次の牙猪が僕らを睨みつけている。考えを一度振り払って、クーの傍らに立つ。いつでも結界が張れるよう、構えなおした。
* * *
さすが『冒険者の町』だ。夕食の為に冒険者たちが集まる店を選んで入ると、その広さと賑やかさに圧倒された。いままで立ち寄ったどの店よりも賑やかかもしれない。
店内は吹き抜けの二階建てになっていて、物珍しさに上ばかり見上げていた僕の為に、ジャウマさんが二階席を選んでくれた。
吹き抜けに面した席からは、階下の様子がよく見える。
「広い店ですねえ」
子供っぽいかとも思うけれど、ついつい一階席を見回してしまう。
どの席の冒険者たちも、互いの働きを称えあい自身の功を誇りながら、和気あいあいと盛り上がっている。
あの席の冒険者たちは、大盛りになった串焼き肉の皿を囲んでいる。別のテーブルでは、皆で大きな骨付き肉を手にしてかぶり付いている。
その向こうのテーブルの上の、丸のままの鳥が載った大きな皿に目が留まった。
ヤマキジの丸焼きなら何度か見たことがあるけど、あれはもっと大きい。何の鳥だろうか? ヤマキジよりふた回りも大きいだけじゃない。腹には何かの草が詰め込まれているみたいだ。丸焼きの詰め物に野菜が入っているならわかる。でも取り分けている様子を見ると、あの草は食べるものではないようだ。香り付け……にしては、量が多い。
「あれ…… なんの鳥だろう?」
「ハハッ。気になるなら頼んでみりゃいいだろう?」
つい声に出してしまった僕に、ヴィーさんは笑って言うと、給仕を呼んだ。
いつものように、ヴィーさんとジャウマさんが適当に色々と頼んでくれる。僕の分の飲み物には酒精のないものを、ちゃんと選んでくれた。
「おつかれさーーん!」
ヴィーさんが音頭をとる声に合わせて、ジョッキを掲げる。
僕らがまず一口飲むのを待っていたかのように、二人がかりで運ばれた大きな皿がテーブルに載せられた。
そこには羽を毟られきつね色に焼かれた大きな鳥がどっしりと置かれている。
それだけじゃない。皿の横にはちょこんと添えられた2つの首が。
「え、ええ? この首……鳥と、ヘビ??」
「いや、違うぞラウル。こっちのヘビみたいのは尻尾だ」
僕を揶揄うわけでもなく、真面目な顔でジャウマさんが言う。
蛇の尾をもつ鳥の魔獣、図鑑で見たことがある。これは……
「コ、コカトリスですか?!」
「ああ、それの幼鳥だな」
ジャウマさんが丸焼きの腹を開いて見せる。さっき階下に見たのと同じように、そこには大量の草が詰め込まれていた。
「これ、毒消し草だ」
「ああ、コカトリスでも幼鳥のうちは毒が弱い。喉の下にある毒腺は破かないように取り除いてあるが、念のためこうして毒消し草を詰めて焼くんだ」
「確かに、こいつは他の町じゃなかなか食えねぇよな」
ヴィーさんは嬉しそうに言って手を伸ばすと、もも肉を掴んで胴体から引き剥がした。
ヴィーさんによると、ダンジョンの浅いエリアに、コカトリスの幼鳥が生息しているのと、さらに別のダンジョンで毒消し草の群生エリアがあるのだそうだ。
「こ、これ。けっこう贅沢なんじゃないですか?」
アリアちゃんの為にガッツリ稼ぐ、なんて話していたくせに、今日は僕の特訓に殆どの時間を費やしてしまったので、低ランクの魔獣を数頭狩ることができた程度だった。
だから贅沢はできないかと思っていたのに、二人は宿代を抜いた今日の稼ぎの残りを全部この夕飯につぎ込むつもりらしい。
「まあ、明日の分はまた明日稼げばいいさ」
「だよな!」
二人はそんなことを言い合って笑う。
まあ、確かにすでに頼んでしまった物を返すことはできない。それなら二人のいう通り、明日はもっと稼げるように頑張らないと。
と言っても、そんなに大きい結界を張ることはできない。せいぜい僕とアリアちゃんを守れる程度だ。
僕なりに、もっと大きい結界魔法を張る練習をやってみたけれど、結果は殆ど変わらなかった。代わりに以前よりも早く、結界を張ったり消したりができるようになった。
これから僕がするのは、その結界魔法の扱いの訓練らしい。たしかにまだ若狼でさほど体が大きくないクーだったら、僕の結界魔法に入れることができる。
牙猪と戦うクーを、僕が結界魔法でサポートする。クーが前にでれば、猪の牙攻撃や体当たりに合わせて結界を張り、引けば自分と共に結界で守る。
弱った敵をクーが組み伏せたのを見計らって、僕がショートソードで止めを刺した。
「でもこれじゃあ、いつまでたっても僕自身は強くなれないですよね」
思わず、小さなため息を吐く。僕の言葉を聞いて、ヴィーさんとジャウマさんは、きょとんとしたような顔をした。
「俺らはお前に強くなってほしいなんて、言ったことはないぞ。まあ、確かにお前が強くなりたがっていることは知っているけどな」
「そうだ。俺たちがお前に願っているのは、アリアを守ることだ。これはお前でないとダメなんだ」
「な、なんで……ですか? ジャウマさんや、ヴィーさんの方が、僕なんかよりずっとずっと強いじゃないですか…… それが、なんで僕なんですか?」
「アリアがそう望んでいるからだ」
ジャウマさんは僕をじっと見ながら、そう言った。
アリアちゃんが…… 僕を……?
「クゥ!」
クーに呼ばれて前を見ると、次の牙猪が僕らを睨みつけている。考えを一度振り払って、クーの傍らに立つ。いつでも結界が張れるよう、構えなおした。
* * *
さすが『冒険者の町』だ。夕食の為に冒険者たちが集まる店を選んで入ると、その広さと賑やかさに圧倒された。いままで立ち寄ったどの店よりも賑やかかもしれない。
店内は吹き抜けの二階建てになっていて、物珍しさに上ばかり見上げていた僕の為に、ジャウマさんが二階席を選んでくれた。
吹き抜けに面した席からは、階下の様子がよく見える。
「広い店ですねえ」
子供っぽいかとも思うけれど、ついつい一階席を見回してしまう。
どの席の冒険者たちも、互いの働きを称えあい自身の功を誇りながら、和気あいあいと盛り上がっている。
あの席の冒険者たちは、大盛りになった串焼き肉の皿を囲んでいる。別のテーブルでは、皆で大きな骨付き肉を手にしてかぶり付いている。
その向こうのテーブルの上の、丸のままの鳥が載った大きな皿に目が留まった。
ヤマキジの丸焼きなら何度か見たことがあるけど、あれはもっと大きい。何の鳥だろうか? ヤマキジよりふた回りも大きいだけじゃない。腹には何かの草が詰め込まれているみたいだ。丸焼きの詰め物に野菜が入っているならわかる。でも取り分けている様子を見ると、あの草は食べるものではないようだ。香り付け……にしては、量が多い。
「あれ…… なんの鳥だろう?」
「ハハッ。気になるなら頼んでみりゃいいだろう?」
つい声に出してしまった僕に、ヴィーさんは笑って言うと、給仕を呼んだ。
いつものように、ヴィーさんとジャウマさんが適当に色々と頼んでくれる。僕の分の飲み物には酒精のないものを、ちゃんと選んでくれた。
「おつかれさーーん!」
ヴィーさんが音頭をとる声に合わせて、ジョッキを掲げる。
僕らがまず一口飲むのを待っていたかのように、二人がかりで運ばれた大きな皿がテーブルに載せられた。
そこには羽を毟られきつね色に焼かれた大きな鳥がどっしりと置かれている。
それだけじゃない。皿の横にはちょこんと添えられた2つの首が。
「え、ええ? この首……鳥と、ヘビ??」
「いや、違うぞラウル。こっちのヘビみたいのは尻尾だ」
僕を揶揄うわけでもなく、真面目な顔でジャウマさんが言う。
蛇の尾をもつ鳥の魔獣、図鑑で見たことがある。これは……
「コ、コカトリスですか?!」
「ああ、それの幼鳥だな」
ジャウマさんが丸焼きの腹を開いて見せる。さっき階下に見たのと同じように、そこには大量の草が詰め込まれていた。
「これ、毒消し草だ」
「ああ、コカトリスでも幼鳥のうちは毒が弱い。喉の下にある毒腺は破かないように取り除いてあるが、念のためこうして毒消し草を詰めて焼くんだ」
「確かに、こいつは他の町じゃなかなか食えねぇよな」
ヴィーさんは嬉しそうに言って手を伸ばすと、もも肉を掴んで胴体から引き剥がした。
ヴィーさんによると、ダンジョンの浅いエリアに、コカトリスの幼鳥が生息しているのと、さらに別のダンジョンで毒消し草の群生エリアがあるのだそうだ。
「こ、これ。けっこう贅沢なんじゃないですか?」
アリアちゃんの為にガッツリ稼ぐ、なんて話していたくせに、今日は僕の特訓に殆どの時間を費やしてしまったので、低ランクの魔獣を数頭狩ることができた程度だった。
だから贅沢はできないかと思っていたのに、二人は宿代を抜いた今日の稼ぎの残りを全部この夕飯につぎ込むつもりらしい。
「まあ、明日の分はまた明日稼げばいいさ」
「だよな!」
二人はそんなことを言い合って笑う。
まあ、確かにすでに頼んでしまった物を返すことはできない。それなら二人のいう通り、明日はもっと稼げるように頑張らないと。
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