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第八章
閑話9 魔獣肉料理で有名な料理店にて(食欲の秋閑話)(前編)
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※この閑話の時系列は本編より前で、四章と五章の間くらいになります。ご承知おきください。
==================
この一行は本当に良く食べる。
「まあ、冒険者は体が資本だからな」
ジャウマさんがそう言うのは、とてもよくわかる。この人は体も大きいし、とても逞しい。
ヴィーさんもうめえうめえと言いながら、食べ散らかすように食べる。ちょっとだけ行儀が悪くて、たまにアリアちゃんに怒られている。立場からすると逆に思えるんだけどな。
セリオンさんはとても上品に食べる。豪快に食事をする物の多い冒険者たちの中で、この行儀のよさは少し浮いていそうなくらいに。でもって、セリオンさんも静かに沢山食べる。
だから食事の支度は、量が多くて少し大変だ。
それを3人もわかってくれているのか、旅の道中は仕方ないけれど、町に居る時にはできるだけ外食をするようにしてくれる。
食堂に行く理由はそれだけではなく、情報収集の意味もあるそうだけど。
今回訪れたこの町では、色々な魔獣の肉を使った料理が食べられる店があるそうだ。
ジャウマさんが嬉しそうにそう話すと、アリアちゃんとクーも嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
色々な魔獣の肉……って、いつも食べているのとそんなに変わらない気がする。でもよく考えたら、それはあの3人がいる所為……いや、おかげなのかもしれない。
何せ、あの3人にかかれば殆どの魔獣は『ただの肉』なんだ。
兎や猪や野牛だけでなく、ワイバーンの様な竜種でさえ、「食いたい」の一言でソロでも狩ってくる。まぁ3人共Aランクだし、多分それ以上に強いしなぁ。
その魔獣の肉を料理するのは僕の役目だ。でも最近調理法がマンネリ化していて頭を抱えていることは確かだ。皆が不満を口にすることはないけれど、せっかくの色々な魔獣の肉だしなと、そう思う気持ちがある。だから、そういう店なら是非行って、実際に食べてみたい。
「それは楽しみですね!」
「だろ? しかも、給仕も美人が多いらしい」
……ヴィーさんの目当てはきっとそっちの方だろう。
「ラウルくんにはいつも料理番をしてもらっているからな。町にいるときくらいは、ラウルくんも食事を楽しむ側に回るといい」
そう言ってセリオンさんは、僕の肩を優しくぽんと叩いた。
目的の店は、さぞかし繁盛していて賑わっているだろうと思ったら、意外にそうでもなかった。入店待ちで並ぶことも覚悟していたのに。
カランとドアベルの音を鳴らして扉を開けた僕らを出迎えたのは、トラ縞の猫の耳に尻尾を持った、獣人の女の子だった。
店内には客が少ないどころか、全く客がいない。確かにまだ昼食には早い時間だけれど、どうにも人気店には思えない。
どうやら、彼女一人で接客しているようだ。僕より少し年下くらいだろう。可愛い子ではあるけれど、ヴィーさんが言っていた『美人の給仕』には、ちょっと幼い。
店内を見回しても、目当ての美人が見つからなかったせいか、ヴィーさんが明らかに不満そうな顔をした。
「いらっしゃい! えっと、今は日替わりの焼き魚の定食しかだせないんだけど……いいですか?」
猫耳の彼女はあまり接客に慣れている感じではない。戸惑いながら、僕らに言った。
「この店では、色々な魔獣の肉をつかった、変わった料理が食べられると聞いたんだが」
ジャウマさんがそう言うと、猫耳の女の子は困ったように耳を垂らした。
「じつは…… 材料の魔獣の肉が仕入れられなくて。今は魔獣肉のメニューが出せないんだ……です」
「料理人はいるんだろう? 足りないのは魔獣の肉だけか?」
「料理人てか、うちのオヤジだけど。スパイスも足りないって言ってたけど……」
話しているうちに口調が崩れてくる。どうやら、こっちが彼女の素らしい。
「それなら、私たちの持っている魔獣の肉を料理してもらう事は可能だろうか?」
セリオンさんの言葉に、彼女の耳がピンっと立ち上がった。
「お兄さんたち、魔獣の肉をもっているのかい!?」
「ははは、俺らはこう見えてもAランクなんだぜ」
さっきまで不満そうな顔をしていたヴィーさんが、偉そうな口ぶりで言う。
「その肉、売ってもらえないかな? もちろん料理もするから!」
普段はこの女の子も父親と一緒に厨房に入っているのだそうだ。ところが魔獣の肉が仕入れられなくなり、お客さんの足がパタリと止んでしまった。なので仕方なく、バイトの給仕さんには暇を取ってもらい、代わりに彼女が慣れない給仕をしていたらしい。
女の子に案内され店奥の厨房へ向かうと、そこには彼女と同じ猫耳と尻尾をもったおじさんが居た。
あの人が彼女のお父さんなんだろう。同じ猫獣人だろうと思うのだけど、おじさんの恰幅が良くて、ちょっと猫にはみえない…… 何に見えたかは自分の心にしまっておこう。
「魔獣の肉を売ってくれるんだってな。それは助かる」
「欲しいのは何の肉だ?」
「何のって、そんな選べるほどに持っているのか?」
ジャウマさんの言葉に、おじさんは首を傾げながら言った。
「ラウル。お前のバッグには、今は何の肉が入っている?」
「ええと……」
バッグに手を入れて確認する。
「ハンマーベア、オーク、ワイバーン。それから――」
「おおお……」
手持ちの魔獣肉の名前を列挙していくと、おじさんの喜ぶ顔が目の前に近づいてくる。ううう、近いっ。
「牛の肉はないか!? バスターホーンとか!」
『バスターホーン』は、草原に棲む牛型の魔獣だ。太く頑丈な角をもち、その角で突進して攻撃をしてくる。当たると大怪我をするので攻撃自体は脅威なのだが、こいつはまっすぐにしか突進できない。その習性を利用して岩や大木にぶつけることができれば比較的狩るのは簡単で、牛型魔獣の肉としては比較的流通しやすい。
「え? 牛でしたらミノタウロスなら――」
僕の言葉を聞いて、おじさんがガシッと僕の肩を掴む。
「ミノタウロスだと! もしかすると、それは東の草原に居たやつか!?」
興奮して話すおじさんの唾が、もろに僕の顔にかかった。ううう……
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この一行は本当に良く食べる。
「まあ、冒険者は体が資本だからな」
ジャウマさんがそう言うのは、とてもよくわかる。この人は体も大きいし、とても逞しい。
ヴィーさんもうめえうめえと言いながら、食べ散らかすように食べる。ちょっとだけ行儀が悪くて、たまにアリアちゃんに怒られている。立場からすると逆に思えるんだけどな。
セリオンさんはとても上品に食べる。豪快に食事をする物の多い冒険者たちの中で、この行儀のよさは少し浮いていそうなくらいに。でもって、セリオンさんも静かに沢山食べる。
だから食事の支度は、量が多くて少し大変だ。
それを3人もわかってくれているのか、旅の道中は仕方ないけれど、町に居る時にはできるだけ外食をするようにしてくれる。
食堂に行く理由はそれだけではなく、情報収集の意味もあるそうだけど。
今回訪れたこの町では、色々な魔獣の肉を使った料理が食べられる店があるそうだ。
ジャウマさんが嬉しそうにそう話すと、アリアちゃんとクーも嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
色々な魔獣の肉……って、いつも食べているのとそんなに変わらない気がする。でもよく考えたら、それはあの3人がいる所為……いや、おかげなのかもしれない。
何せ、あの3人にかかれば殆どの魔獣は『ただの肉』なんだ。
兎や猪や野牛だけでなく、ワイバーンの様な竜種でさえ、「食いたい」の一言でソロでも狩ってくる。まぁ3人共Aランクだし、多分それ以上に強いしなぁ。
その魔獣の肉を料理するのは僕の役目だ。でも最近調理法がマンネリ化していて頭を抱えていることは確かだ。皆が不満を口にすることはないけれど、せっかくの色々な魔獣の肉だしなと、そう思う気持ちがある。だから、そういう店なら是非行って、実際に食べてみたい。
「それは楽しみですね!」
「だろ? しかも、給仕も美人が多いらしい」
……ヴィーさんの目当てはきっとそっちの方だろう。
「ラウルくんにはいつも料理番をしてもらっているからな。町にいるときくらいは、ラウルくんも食事を楽しむ側に回るといい」
そう言ってセリオンさんは、僕の肩を優しくぽんと叩いた。
目的の店は、さぞかし繁盛していて賑わっているだろうと思ったら、意外にそうでもなかった。入店待ちで並ぶことも覚悟していたのに。
カランとドアベルの音を鳴らして扉を開けた僕らを出迎えたのは、トラ縞の猫の耳に尻尾を持った、獣人の女の子だった。
店内には客が少ないどころか、全く客がいない。確かにまだ昼食には早い時間だけれど、どうにも人気店には思えない。
どうやら、彼女一人で接客しているようだ。僕より少し年下くらいだろう。可愛い子ではあるけれど、ヴィーさんが言っていた『美人の給仕』には、ちょっと幼い。
店内を見回しても、目当ての美人が見つからなかったせいか、ヴィーさんが明らかに不満そうな顔をした。
「いらっしゃい! えっと、今は日替わりの焼き魚の定食しかだせないんだけど……いいですか?」
猫耳の彼女はあまり接客に慣れている感じではない。戸惑いながら、僕らに言った。
「この店では、色々な魔獣の肉をつかった、変わった料理が食べられると聞いたんだが」
ジャウマさんがそう言うと、猫耳の女の子は困ったように耳を垂らした。
「じつは…… 材料の魔獣の肉が仕入れられなくて。今は魔獣肉のメニューが出せないんだ……です」
「料理人はいるんだろう? 足りないのは魔獣の肉だけか?」
「料理人てか、うちのオヤジだけど。スパイスも足りないって言ってたけど……」
話しているうちに口調が崩れてくる。どうやら、こっちが彼女の素らしい。
「それなら、私たちの持っている魔獣の肉を料理してもらう事は可能だろうか?」
セリオンさんの言葉に、彼女の耳がピンっと立ち上がった。
「お兄さんたち、魔獣の肉をもっているのかい!?」
「ははは、俺らはこう見えてもAランクなんだぜ」
さっきまで不満そうな顔をしていたヴィーさんが、偉そうな口ぶりで言う。
「その肉、売ってもらえないかな? もちろん料理もするから!」
普段はこの女の子も父親と一緒に厨房に入っているのだそうだ。ところが魔獣の肉が仕入れられなくなり、お客さんの足がパタリと止んでしまった。なので仕方なく、バイトの給仕さんには暇を取ってもらい、代わりに彼女が慣れない給仕をしていたらしい。
女の子に案内され店奥の厨房へ向かうと、そこには彼女と同じ猫耳と尻尾をもったおじさんが居た。
あの人が彼女のお父さんなんだろう。同じ猫獣人だろうと思うのだけど、おじさんの恰幅が良くて、ちょっと猫にはみえない…… 何に見えたかは自分の心にしまっておこう。
「魔獣の肉を売ってくれるんだってな。それは助かる」
「欲しいのは何の肉だ?」
「何のって、そんな選べるほどに持っているのか?」
ジャウマさんの言葉に、おじさんは首を傾げながら言った。
「ラウル。お前のバッグには、今は何の肉が入っている?」
「ええと……」
バッグに手を入れて確認する。
「ハンマーベア、オーク、ワイバーン。それから――」
「おおお……」
手持ちの魔獣肉の名前を列挙していくと、おじさんの喜ぶ顔が目の前に近づいてくる。ううう、近いっ。
「牛の肉はないか!? バスターホーンとか!」
『バスターホーン』は、草原に棲む牛型の魔獣だ。太く頑丈な角をもち、その角で突進して攻撃をしてくる。当たると大怪我をするので攻撃自体は脅威なのだが、こいつはまっすぐにしか突進できない。その習性を利用して岩や大木にぶつけることができれば比較的狩るのは簡単で、牛型魔獣の肉としては比較的流通しやすい。
「え? 牛でしたらミノタウロスなら――」
僕の言葉を聞いて、おじさんがガシッと僕の肩を掴む。
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