招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~

都鳥

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第八章

8-2 またアリアちゃんと一緒に

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「うふふーー」
 僕の隣で包丁を振るっているアリアちゃんは、やけにご機嫌だ。

 アリアちゃんが目覚めてから、以前のように皆の食事の支度は僕とアリアちゃんでやることになった。

 以前はまだ幼いアリアちゃんに刃物を使わせるのが怖くて、やってもらう手伝いといえば。野菜を洗ったり魚の鱗を取ったりの、下拵したごしらえが中心だった。
 でも今のアリアちゃんはもう10歳くらいの女の子だ。以前の様に「まだ小さいから危ないよ」なんてことは言えない。

 アリアちゃんの求めに応じて包丁を渡したのはいいけれど、やっぱり少し心配だ。
「ラウルと会うまでは、私が料理をしていたんだから。大丈夫よ」
 僕の心配に、アリアちゃんはそう言って胸を張って言った。

 * * *

「アリアが目覚めた記念だからな!」

 ヴィーさんはそう言って、湯気をたてているコカトリスの丸焼きからもも肉を引き剥がす。肉の切れ目から食欲をそそる匂いをたてている大きな骨付き肉を、アリアちゃんの皿に載せた。

 アリアちゃんは嬉しそうに目を輝かせながら、手を伸ばそうとして、そこでぴたっと止まった。
「えっ……と……」
 何故か気まずそうに、僕たちの顔色をうかがうように、ぐるりと見回す。そして、その視線はセリオンさんの顔で止まった。
 
 その視線に気付いたセリオンさんは、珍しく少し笑うと、アリアちゃんに優しく語り掛けた。
「余計なことは気にしないで、好きに食べるといい」

 それを聞いたアリアちゃんはまた嬉しそうに笑う。
「うん!」
 以前のアリアちゃんのように、元気に返事をしてから、骨付き肉を両手で持って可愛い口で噛み付いた。
「うわ! 美味しいねぇー!」
 その言葉に皆が微笑む。
 ヴィーさんはもう一つのもも肉を引き剥がすと、それをセリオンさんの皿に置いた。

 このコカトリスの丸焼きは、以前に行ったダンジョンの近くの町で食べたのと同じものだ。ジャウマさんがあの町に行った時に、買っておいてくれたそうだ。
 メインにはコカトリスがあるから、それに合せる料理をと言われて、アリアちゃんと二人で魚料理やサラダやスープを用意した。

 白身の魚に薄く衣を付けて揚げ焼きにしたものには、焦がしバターのソースがかけてあって、香ばしいいい香りをさせている。添えてある蒸し野菜と一緒に食べるのがいい。
 スープは王都で買ってきたベーコンでだしをとったものに、カットしたトマトを入れて仕上げた。具として根菜もたっぷり入っている。さじすくって口に入れると、ベーコンの脂と根菜の甘みにトマトの酸味が絡み合いながら、胃袋に落ちていく。
 サラダにはリンゴで作ったドレッシングがかかっている。コカトリスの丸焼きはスパイスが強めに効いているので、その後にサラダを食べるとこのドレッシングの甘みが口の中を落ち着けてくれる。

 それだけじゃない。僕らが料理をしている間にヴィーさんが街に出てデザートを買ってきてくれた。それを全部出したものだから、テーブルの上がいっぱいになった。


 久しぶりに全員がそろった食卓で、食事に舌鼓したつづみを打ちながら、アリアちゃんが眠っている間の話をした。
 
 ジャウマさんたちと町に出て、ダンジョンに潜ってきたこと。ジャウマさんと雰囲気の似た冒険者と知り合ったこと。ちなみに僕らが王都に出かけている間に、ジャウマさんはカルロさんの見舞いにまたあの町に行ってきたそうだ。
 皆で城の掃除をしたこと。この城の掃除をしているケサランパサランという魔獣は、ここにしかいない生き物なのだそうだ。僕らが城内の掃除をして、魔道具に魔力を込めている間に、ジャウマさんは外で張り切りすぎて、倉庫を一つ壊してしまったと謝った。それは僕も初耳だ。
 王都に行った時にヴィーさんとはぐれた話をすると、アリアちゃんはヴィーさんに怒った。ふりかと思ったら、本当に少し怒っているみたいだ。
 でもクーが活躍した話をすると、アリアちゃんは嬉しそうにクーの頭を撫でた。

 僕もダンジョンでクーと戦う練習をして、結界魔法が上達している。さらに城の魔導具に魔力を込めているうちに、魔力も上がった。あとは城の部屋に置いてあったいろんな魔導具を使わせてもらって、調合の幅が広がったことなんかを話した。

「ラウルも頑張ってるんだねー」
 皆の話を聞きながら、アリアちゃんもとても楽しそうだ。

 そういえば、アリアちゃんは目覚めてから、僕のことを「ラウルおにいちゃん」とは呼ばなくなった。代わりに「ラウル」と呼び捨てになった。
 ジャウマさんたちのことは今まで通り「パパ」と呼んでいるのに。

 やっぱり僕はあの3人とは違うみたいだ。まあ、彼らとはアリアちゃんとの出会い方も違う。その所為せいなのかもしれないけれど……
 でも何故か「おにいちゃん」と呼ばれていた頃よりも、今の呼ばれ方のほうがしっくりきている自分も居る。

 それだけじゃない。この城に来てから、うっすらとだけれどたまに懐かしい気がしていることにも気が付いていた。
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