招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~

都鳥

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第八章

閑話10 収穫祭と精霊様(ハロウィン閑話)(後編)

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※この閑話の時系列は本編より前で、三章のと四章の間くらいになります。ご承知おきください。

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 お菓子をくれた夫人が扉を閉めると、待てない子供たちは早速お菓子の袋をのぞき込みはじめた。皆が同じものだろうに、互いの袋を広げて自慢し合う様子がまた可愛らしい。
 アリアちゃんも子供たちの真似をして袋を開ける。

「ふわー! カップケーキだー」
 笑いながら顔を上げると、アリアちゃんの目の前に居た子供と視線が合ったようだ。と言っても、相手の子供は頭からすっぽりと麻袋をかぶっていて表情はうかがえない。袋の目のところだけ穴があけてあって、そこから見える目がアリアちゃんの視線とぴったり合っていた。まるで二人で揃えたように一瞬止まったが、すぐにアリアちゃんの方から表情を崩した。

「美味しそうだねぇ~~」
 アリアちゃんに笑いかけられたその子も、大切そうにお菓子の袋を抱えながら、ウンウンとうなずいた。

 その先は、なんとなくその子供と一緒に皆の後を付いていった。
 大人からお菓子を貰うたびに、わいわいと皆で確認して、美味しそうだ早く食べたいと口々に言う。これじゃあ回るのに時間がかかるだろうと思ったけれど、大人たちもこっそり窓から子供たちが喜ぶ様を見ているから、これでいいらしい。

 アリアちゃんもくだんの子供と額を突き合わせて、お菓子を開いている。相手の子供の口数は少ないし表情も見えないが、アリアちゃんと楽しそうに笑い合い、あれこれ手振り身振りで嬉しさを表している。

 家を5軒ほど回って次の家に向かう道中、アリアちゃんと繋いでいない方の手に何かが触れた。
「うん?」
 見ると、あの麻袋をかぶった子供が僕の手にそっと掴まっている。その子は、僕が見ていることに気が付いて、ハッと驚いたように慌てて手を引っ込めた。
 背丈からするとアリアちゃんと同じくらいの歳、きっと5~6歳くらいだろう。夜道が心細くても当然だ。

 まだこちらを見上げているその子に、僕から手を差し出した。その子の表情は麻袋でさえぎられていて見ることはできない。でもちょっとだけ迷っているように思える。

「夜道は危ないから、僕と手を繋ごう」
 その子はこくりと頷くと、もう一度手を伸ばして、こんどはしっかりと僕の手を掴む。その小さな手を軽く握り返した。

 10軒ほど家を回ってまた町の中央に戻る頃には、子供たちの手には持ち切れないほどのお菓子が集まっていた。セリオンさんに、手提げ袋をもっていくように言われたのはこの為だったのか。
 麻袋の子は、手提げ袋を持ってきていなかったようなので、僕の首に巻いていたスカーフでお菓子を包んであげた。

「もう遅いから気を付けてお帰り! 今夜はお菓子を食べちゃダメだぞ! 明日のお楽しみだからな!」
 大人の言葉に「はーい」とか「えー」とか、可愛い声があちらこちらから上がり、今夜は解散となった。

「よし、僕らも宿に帰ろう」
 そう言って、アリアちゃんと手を繋ぐ。と、とんとんと、腰の辺りを誰かに叩かれた。

 振り返ると、あの麻袋の子供が立っている。お菓子の入ったスカーフの包みを僕に見せながら、何か言いたそうだ。
「ああ、そっか。スカーフを貸してたよね。いいよそれは君にあげる。でないと家へ持って帰るのが大変だろう? ああ、そうだ」

 自分のマジックバッグをごそごそと探る。昼の祭りの屋台でクッキーを買っていた。アリアちゃんと食べようと思って買ったけれど、同じものが二つあるし、今日は僕にまでたくさんお菓子を貰ってしまったから、きっとこれは食べきれないだろう。

「はい、これもどうぞ。精霊さん」
 クッキーの包みを、その子のスカーフ包みに入れてあげる。
「明日のお楽しみだよ」
 さっき大人に言われた言葉を真似すると、その子は嬉しそうに飛び跳ねた。

「気を付けてお帰り。おやすみなさい」
「おやすみーー!」
 僕らの言葉に、麻袋の子は手を振るとそのままあちらの方へ駆けて去っていった。

 * * *

 収穫祭をめいっぱい楽しんで、たくさんのお菓子と思い出を抱えて、またいつもの旅に戻った。そう、この国に入ったのは、収穫祭だけが目的じゃない。さらに街道を進んだ先に、目当ての『黒い魔獣』がいるらしい。

 ほぼ丸一日歩いて、今夜の野営の場所を決めて荷物を下ろした。夕飯の支度をするにはまだちょっと時間が早い。ジャウマさんたちに断って、辺りで採集をしてくることにした。

 この辺りにはコモドの木がありそうだ。あれの実は良い薬になる。ついでに、夕飯用に食べられる野草やキノコが見つかると良いんだけど。
 キョロキョロと林の中を歩き回ったけれど、あいにくキノコが少し見つかっただけだった。

「まあ、今日の夕飯に間に合うくらいは採れたし、そろそろ戻ろうかな」
 コモドの実が欲しかったけれど、仕方ない。そう思って、きびすを返そうとしたその時。
「……うん?」
 誰かに呼ばれた気がした。子供の声のような?
 いやでも、気のせいだろう。そう思ったけれど、何故だかこのまま戻るのは惜しい気持ちになって、なんとなく声がした気がする方へ足を向けた。

 僕の背より高く茂っている茂みを体を使ってかき分け、さらにその奥へ進む。と……

「うわっ!! すごい!」
 茂みの先は少し開けた広場の様になっていて、辺りにはコモドの実がたくさん落ちている。群生地らしい。

 でも僕の目に飛び込んできたのはそれだけじゃない。
 コモドの木に囲まれた広場の中心、まるでテーブルの様な岩の上に、緑色の何かが置いてある。
 落ちているコモドの実を踏まないようにしてそっと近づくと、それは昨日あの子にあげたはずの僕のスカーフだ。そのスカーフで何かが包まれている。

 その結び目を解いてそっと開けると、中にはキノコや森の果実がたくさん入っていた。
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