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第八章
8-8 魔獣の巣穴
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穴から飛び出してきたネズミのような小動物たちは、倒れているヴィーさんに次々と襲いかかった。10匹以上は居るようだ。
「ラウル、アリアを連れて離れろ」
突然の出来事に茫然としていた僕は、ジャウマさんの声で自分を取り戻した。
「アリアちゃんこっちに!」
僕と同じく、隣で立ち尽くしているアリアちゃんの腕を引っ張る。
「はーい」
慌てる僕と対照的に、気の抜けるような平和な返事が返ってくる。
「あれ?」
アリアちゃんだけじゃない。後ろにいるセリオンさんに目を向けると、彼も静かにヴィーさんの様子を見ている。
「大丈夫だ。私たちはこの程度では殆どダメージは受けない。まあ、あいつは自業自得だ」
セリオンさんが冷たい表情で言った。
「くそっ! 痛てえ!!」
ヴィーさんは叫びながらも、体に群がるネズミを掴んでは投げ、振り払っている。確かにネズミはヴィーさんに噛み付いてはいるけれど、僕が心配するほどには傷ついてはいないようだ。
「『穴ぐらネズミ』はさほど強くはない魔獣だが、群れをなして数で襲ってくるのと、毒があるのが厄介なんだ。まあ、アレにはネズミの歯はたたないだろうが、アリアに傷を付けさせるわけにはいかない。君やクーも毒は堪えるだろう」
とうとうセリオンさんが、ヴィーさんをアレと呼んだ。そういえば、ジャウマさんたちに毒は効かないと、確かに以前に聞いていた。
「おい! お前ら手伝え!」
そんな話をしている間にも、ヴィーさんは腕をぶんぶんと振り回してネズミを振り払っている。振り払われたネズミは再びヴィーさんに襲いかかるものだから、振り払ってもきりがないみたいだ。
「ヴィーパパー、ネズミさんを苛めちゃダメよー」
アリアちゃんの言葉を聞いて、ふぅとセリオンさんがため息を吐いた。
「しかたないな。ラウルくん、魔獣を追い払うあの袋を持っているな。あれを撒いてやってくれ」
「え? は、はい!」
セリオンさんが言ったのは、あのからい実の粉が入っている袋のことだ。いつも懐に必ず入れているから、確かに持っている。でもいいんだろうか?
「えっと…… ヴィーさん、目を瞑ってってくださいね」
「へ!? お、おい! ちょっと待て!」
「行きますよ!!」
ヴィーさんが目を瞑るのを確認して、思いっきり袋を投げる。狙ったつもりはないのに、袋はヴィーさんの顔面にヒットした。
「ぶは!?」
袋から赤い粉が飛び散ると、それを浴びたネズミたちは、キーキーと鳴き声を上げながらようやくヴィーさんから離れていった。
「くっそ!!」
ようやくネズミたちから解放されたヴィーさんが立ち上がる。
「ふーー。死ぬかと思ったぜ」
「ヴィーさん。だ、大丈夫……ですか?」
死ぬとか言っているけれど、齧られた跡は赤くなっているだけで出血している様子はない。でも、着ていた服はボロボロになっていた。
「うわ! かれぇ!」
ヴィーさんが頭を振ると、僕が投げた袋の赤い粉がはらはらと周りに落ちてきて、咄嗟にそれを避けた。
「きゃっ」
流石に、アリアちゃんもヴィーさんから一歩離れる。
「ヴィー、まず体を洗え」
セリオンさんがそう言って杖を振り上げると、ヴィーさんの頭上にゆらゆらと水球が現れる。水球がぱしゃりと弾けると、まるで大きなバケツをひっくりかえしたような水がヴィーさんの頭上から降り注いだ。
「くそっ! お前らひでえぞ!」
「す、すみませんっ!!」
ヴィーさんの怒号に反射的に謝ってしまった。でも確かに僕もちょっとひどいなとは思った。
ヴィーさんがタオルで体を拭き、ボロボロの服から着替えている間に、ジャウマさんが『穴ぐらネズミ』の出てきた穴を覗き込む。
それからセリオンさんを呼ぶと、何か相談しているようだ。
「ここは『穴ぐらネズミ』の巣穴の様です。さっきのネズミたちは巣穴を守ろうとしていたんでしょう」
そう言えば、さっきのネズミたちは簡単には逃げようとしなかったし、襲いかかった相手もヴィーさんだけだった。ヴィーさんを巣を荒らす侵略者とでも思ったのだろう。
「さらに奥に向かって続いている。ここから進めそうだ」
「でも、ジャウマさんたちが通るには狭くないですか?」
僕やアリアちゃん、ヴィーさんくらいならなんとかなりそうだけど、体格の良いジャウマさんにこの穴は狭いだろう」
「あいつらには悪いが、掘りながら進もう」
「こういうのはジャウの役目だな」
着替えを終えたヴィーさんが、意地悪そうに笑いながら言った。
* * *
獣化したジャウマさんを先頭に、『穴ぐらネズミ』の巣を掘り進んで抜けると、その先はまた同じような遺跡の廊下になっていた。
でも辺りに漂う気配が今までとは明らかに違うのが、僕にでもわかる。
これは『黒い魔力』だろう。そして今までの旅の最中で感じていたものとは比べものにならないくらい、強い。
そして奥へと進む毎に、僕らの行く手を邪魔する魔獣の強さは増していった。
でも彼ら3人にとっては問題になるような相手ではないらしい。僕らのマジックバッグには、3人が倒した魔獣が次々と詰め込まれていった。
「でも、なんかおかしいな」
ヴィーさんが言った。
「そうですね。本来なら魔獣が人を襲うのは、食らおうとするか、縄張りを守ろうとするか。ですが、この魔獣たちはそうではないようです」
「どういうことですか?」
セリオンさんの言葉に、疑問を投げかける。それに答えたのはジャウマさんだった。
「おそらくだが、こいつらは何かを恐れている。その原因になるものが、この奥に居るんだろう」
「まぁ、この魔力じゃ『大当たり』だろうな」
「ああしかも、こいつはでかい」
「そうですね」
3人はそう言って頷き合うと、僕らの方……いや、僕と手を繋いでいるアリアちゃんの方を見た。
「ラウル、アリアを連れて離れろ」
突然の出来事に茫然としていた僕は、ジャウマさんの声で自分を取り戻した。
「アリアちゃんこっちに!」
僕と同じく、隣で立ち尽くしているアリアちゃんの腕を引っ張る。
「はーい」
慌てる僕と対照的に、気の抜けるような平和な返事が返ってくる。
「あれ?」
アリアちゃんだけじゃない。後ろにいるセリオンさんに目を向けると、彼も静かにヴィーさんの様子を見ている。
「大丈夫だ。私たちはこの程度では殆どダメージは受けない。まあ、あいつは自業自得だ」
セリオンさんが冷たい表情で言った。
「くそっ! 痛てえ!!」
ヴィーさんは叫びながらも、体に群がるネズミを掴んでは投げ、振り払っている。確かにネズミはヴィーさんに噛み付いてはいるけれど、僕が心配するほどには傷ついてはいないようだ。
「『穴ぐらネズミ』はさほど強くはない魔獣だが、群れをなして数で襲ってくるのと、毒があるのが厄介なんだ。まあ、アレにはネズミの歯はたたないだろうが、アリアに傷を付けさせるわけにはいかない。君やクーも毒は堪えるだろう」
とうとうセリオンさんが、ヴィーさんをアレと呼んだ。そういえば、ジャウマさんたちに毒は効かないと、確かに以前に聞いていた。
「おい! お前ら手伝え!」
そんな話をしている間にも、ヴィーさんは腕をぶんぶんと振り回してネズミを振り払っている。振り払われたネズミは再びヴィーさんに襲いかかるものだから、振り払ってもきりがないみたいだ。
「ヴィーパパー、ネズミさんを苛めちゃダメよー」
アリアちゃんの言葉を聞いて、ふぅとセリオンさんがため息を吐いた。
「しかたないな。ラウルくん、魔獣を追い払うあの袋を持っているな。あれを撒いてやってくれ」
「え? は、はい!」
セリオンさんが言ったのは、あのからい実の粉が入っている袋のことだ。いつも懐に必ず入れているから、確かに持っている。でもいいんだろうか?
「えっと…… ヴィーさん、目を瞑ってってくださいね」
「へ!? お、おい! ちょっと待て!」
「行きますよ!!」
ヴィーさんが目を瞑るのを確認して、思いっきり袋を投げる。狙ったつもりはないのに、袋はヴィーさんの顔面にヒットした。
「ぶは!?」
袋から赤い粉が飛び散ると、それを浴びたネズミたちは、キーキーと鳴き声を上げながらようやくヴィーさんから離れていった。
「くっそ!!」
ようやくネズミたちから解放されたヴィーさんが立ち上がる。
「ふーー。死ぬかと思ったぜ」
「ヴィーさん。だ、大丈夫……ですか?」
死ぬとか言っているけれど、齧られた跡は赤くなっているだけで出血している様子はない。でも、着ていた服はボロボロになっていた。
「うわ! かれぇ!」
ヴィーさんが頭を振ると、僕が投げた袋の赤い粉がはらはらと周りに落ちてきて、咄嗟にそれを避けた。
「きゃっ」
流石に、アリアちゃんもヴィーさんから一歩離れる。
「ヴィー、まず体を洗え」
セリオンさんがそう言って杖を振り上げると、ヴィーさんの頭上にゆらゆらと水球が現れる。水球がぱしゃりと弾けると、まるで大きなバケツをひっくりかえしたような水がヴィーさんの頭上から降り注いだ。
「くそっ! お前らひでえぞ!」
「す、すみませんっ!!」
ヴィーさんの怒号に反射的に謝ってしまった。でも確かに僕もちょっとひどいなとは思った。
ヴィーさんがタオルで体を拭き、ボロボロの服から着替えている間に、ジャウマさんが『穴ぐらネズミ』の出てきた穴を覗き込む。
それからセリオンさんを呼ぶと、何か相談しているようだ。
「ここは『穴ぐらネズミ』の巣穴の様です。さっきのネズミたちは巣穴を守ろうとしていたんでしょう」
そう言えば、さっきのネズミたちは簡単には逃げようとしなかったし、襲いかかった相手もヴィーさんだけだった。ヴィーさんを巣を荒らす侵略者とでも思ったのだろう。
「さらに奥に向かって続いている。ここから進めそうだ」
「でも、ジャウマさんたちが通るには狭くないですか?」
僕やアリアちゃん、ヴィーさんくらいならなんとかなりそうだけど、体格の良いジャウマさんにこの穴は狭いだろう」
「あいつらには悪いが、掘りながら進もう」
「こういうのはジャウの役目だな」
着替えを終えたヴィーさんが、意地悪そうに笑いながら言った。
* * *
獣化したジャウマさんを先頭に、『穴ぐらネズミ』の巣を掘り進んで抜けると、その先はまた同じような遺跡の廊下になっていた。
でも辺りに漂う気配が今までとは明らかに違うのが、僕にでもわかる。
これは『黒い魔力』だろう。そして今までの旅の最中で感じていたものとは比べものにならないくらい、強い。
そして奥へと進む毎に、僕らの行く手を邪魔する魔獣の強さは増していった。
でも彼ら3人にとっては問題になるような相手ではないらしい。僕らのマジックバッグには、3人が倒した魔獣が次々と詰め込まれていった。
「でも、なんかおかしいな」
ヴィーさんが言った。
「そうですね。本来なら魔獣が人を襲うのは、食らおうとするか、縄張りを守ろうとするか。ですが、この魔獣たちはそうではないようです」
「どういうことですか?」
セリオンさんの言葉に、疑問を投げかける。それに答えたのはジャウマさんだった。
「おそらくだが、こいつらは何かを恐れている。その原因になるものが、この奥に居るんだろう」
「まぁ、この魔力じゃ『大当たり』だろうな」
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「そうですね」
3人はそう言って頷き合うと、僕らの方……いや、僕と手を繋いでいるアリアちゃんの方を見た。
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