招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~

都鳥

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最終章

最終話 時は流れて……

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「よー、ラウル。今日も薬草集めか?」
 冒険者ギルドで報告の順番待ちをしていると、バンッと強く背中を叩かれた。
 振り向いた僕をにこやかな笑顔が迎える。彼は狐獣人の青年で、僕と同じDランク冒険者だ。立派なボーボー鳥を背負っている。

「はい、いい薬草がたくさん採れました。トビーさんはボーボー鳥狩りですか?」
「ああ。だが一羽しか獲れなかったよ。まだまだだよなぁ」
 そう言ってボヤいている割に表情は明るい。トビーさんは、ハハハと大きな笑い声をあげた。

 この町は小さく、豊かではない。でも住人は皆、心穏やかで優しい人ばかりだ。ひと月ほど前に余所よそからこの町に来た僕らを、この町の皆は温かく迎え入れてくれた。

「クーは相変わらず、綺麗な毛並みしてんよなぁ」
 トビーさんは僕の隣で大人しく座っている、銀毛の狼に声を掛ける。
「クゥ!」
 褒められたとわかったのだろう。クーは嬉しそうにぶんぶんと尾を振った。

月牙狼ルナファングのしかも成獣を従えられるなんて、人は見かけによらないよなぁ。ラウルはまだ18歳だろう?」
 トビーさんは不思議そうな顔をしながら、僕のことを眺める。本当は18歳ではないけれど、そう見えても仕方がないし、わざわざ訂正をするつもりもない。だから笑って誤魔化すことにした。

「ははっ。僕ってそんなに頼りなさそうに見えますか?」
「いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。すごいなって思ってな」
 トビーさんの口ぶりから、僕を馬鹿にするようなそんな雰囲気は感じられない。それがとても嬉しい。

「ラウルさん、お待たせしました」
 話をしている間に順番が来たらしい。受付嬢に名前を呼ばれた。

「いつも丁寧に採集をしてくれて、品質も良くて助かります。今日は追加で採集してきた薬草はありますか?」
 僕が依頼品以外のものも採集してくることを、しっかり覚えられている。目的の薬草以外にも、いくつかの薬草や木の実の名前を挙げられ、マジックバッグから出して買い取ってもらった。

 受け取った報酬ほうしゅう金を手に、ホールの後方にあるテーブルで待つアリアちゃんのもとへ向かった。
「お待たせ」
「どうだった?」
「うん、これでパンは十分に買えるよ。食べられる野草も採集してあるし、今日は牙猪ファングボアも獲ったから、肉もしばらくは足りる。他に欲しい物はある?」
「うん、そうねぇ……」
 アリアちゃんが首を傾げると、彼女の金の髪と黒兎の垂れ耳もゆらりと揺れた。

「相変わらず二人とも仲が良いな。ったく、見せつけんじゃねえよ」
 声を掛けてきたのはさっきのトビーさんだ。僕らを冷やかす様にニヤニヤと笑っている。

「そ、そんな。見せつけるだなんて、そんなことしていないよ!」
「ははは。仲が良いのはいいことだぜえ」
 トビーさんはひらひらと手を振ってそう言うと、立ち去ってしまった。まあ、仲が良いのは違いないけれど…… わざわざ言われるのはちょっと恥ずかしい。

「もう少ししたら新しいのを作らないとね」
 アリアちゃんの声で視線を戻した。彼女は僕がテーブルに置いた冒険者カードを眺めている。
「Cまでにしないで、パパたちみたいにもっと上げればいいのに。そのくらいの実力はあるんだから」
 アリアちゃんが言っているのはランクのことだ。確かにAランクに上げるまで使えば、こんなにしょっちゅうカードを新調しないで済む。Cランクまでだと3~4年ほどしかもたない。このカードももう7枚目だ。

「でもこのくらいが僕に似合っている気がしてさ」
 そう言うと、アリアちゃんもふふふと笑う。
「うん、そうだね」
 こんな僕にそんな高いランクは似合わない。いや冒険者ランクに似合うとか似合わないとかは関係ないけど。でも僕は、これでいい気がする。

「で、どうかな?」
 周りに聞こえぬよう、少しだけ声を落とした。
「もう町には着いているから、そろそろ来ると思うわ」

 その言葉が終わらないうちに、何かに気付いたようにクーが立ち上がる。そして、冒険者ギルドの入り口の方を向いて尻尾を振った。

 ギルドの扉が外から開けられ、二人組の冒険者が入ってきた。
「よぉ、こいつを買い取ってもらえねえか?」
 薄茶の短髪の青年が、わざと目立とうとするかのように大きな声で叫んだ。その後ろから、赤毛の大男がハンマーベアを抱えて入ってくる。

「まったく。わざわざそんな風に大騒ぎをしなくてもいいだろう」
 二人から遅れて入ってきた銀髪の青年が、眼鏡を直しながら不服そうに言う。
「いいじゃねえか。どうせこいつはほっといても目立つんだしよ」
 そう言って、薄茶髪の青年は赤毛の大男を指さした。

 最初に入ってきた二人が依頼報告の列に並ぶと、銀髪の青年は一人でこちらへやってきて、僕らの隣のテーブルに席を取った。

 待ちきれなかったのだろう。クーがぶんぶんと千切れるほどに尾を振りながら青年の方に寄っていく。
「クゥ!」
 ひと声鳴くと、彼の前でちょこんとお座りをした。

「ああっ、すみません。僕の従魔が……」
「ああ、構いません。しかし随分と人に慣れていますね」
「幼獣の頃から一緒にいるので。僕の大切な仲間なんです」
 クーは青年が頭を撫でてくれないことを悟ると、少し寂しそうに尾を振るのを止めた。

 青年はそれには気付かず、僕らの方に話しかける。
「君たちはこの町の方ですか? よろしければ宿を紹介してもらえませんか?」
「この町には宿屋はないんです。それなら、私たちの家に来ませんか?」
 アリアちゃんの申し出に、今まで冷たい表情だった青年の表情が少し緩む。
「いいのですか? それは助かります」

 ちょうどそこへ、薄茶髪の青年と赤毛の大男が報酬の入った布袋を手にやってきた。
「待たせたな。って、どうしたんだ?」
「宿を尋ねたんだが、彼らの家に泊めてもらえることになった」
 銀髪の青年に紹介され、二人に頭を下げる。

「ああ、それは有難い。世話になる」
 リーダーらしい赤毛の大男が手を差し出し、それを僕も握り返した。

「実は、貴方あなたたち3人にお願いがあるんです」
「へえ、俺らに冒険者として依頼をするってことか? 実力も見ねえうちに?」
 ニヤニヤと笑いながら、薄茶髪の青年が言う。
 そんなの見なくたって、もうとっくにわかっている。

「僕らと一緒に、ある古城へ行ってもらえませんか?」
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