ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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獣人の国

19 食事のマナーとアミュレット/アラン(2)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・ニール…主人公リリアンの友人で、冒険者見習いとして活動している自称田舎貴族の少年
・アラン…Bランクの冒険者。ニールの「冒険者の先生」をしている。
・マーニャ…エルフでBランクの魔法使い。美人で酒に強い。
・デニス…西の冒険者ギルドに所属するAランクの冒険者で、アランの先輩

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 ナインテールは伝説級の魔獣だ。獣人の国に住処があると言われているが、その姿を見た者は少ない。
 その名の通り九つの尾をもち、その尾をアミュレットにすると、ある程度の状態異常耐性の効果が得られるそうだ。

 王国中の貴族が欲しがっていると言っても過言ではない。
 実際に持っているのは、主たる王族と上位貴族の数名くらいか。あとは一部の上位冒険者には持っている者も居るらしいが、大抵は持っている事を隠しているので、その事が知れる事はない。

「これはすごい…… やはり強かったですか?」
 ナインテールの名を周りの席に聞かせるわけには行かないので、わざと名を出さずに聞いた。
「そうね。3パーティーで行ったのだけど、思った以上に苦戦しちゃったわ」

 ナインテールはSSランクの魔獣だ。冒険者ランクにSSランクは存在しない。なので、SSランクの魔獣を相手にする場合にはSランクのパーティー複数で向かう必要がある。

「最期の言葉が耳から離れない。でもこれは私の罪なのよね……」
 ぽそりと、その美しい紫水晶アメシストの瞳を伏せながら、呟くように言った。
 ああ、そうか…… 高位の魔獣は人語を話すと言う。それを聞いてしまったのだろう。

「でも良いんですか? かなり高価なものですよね?」
「いいわよ。二人ともこれからはこういうのが必要でしょ」

 ナインテールの尾はそのままでも状態異常耐性の効果があるが、魔力を込めてアミュレット化すると魔力の流れが安定して効果が高くなる。
「バッグに入れておくだけで効果あるから。他の人に見つかると厄介だから仕舞っておきなさい」

「アミュレット化したのはマーニャさんですか?」
「ううん、私の妹分よ」
「そうですか、すごく綺麗な魔力ですね」
 手の上のアミュレットがまとった魔力は、まるでキラキラと光がこぼれていく様に見えた。

 確かに心無い者に見つかると奪われる可能性もあるだろう。マーニャさんに礼を言い、それぞれのバッグに仕舞いこんだ。


 マーニャさんが同席してくれた事で程よい緊張感がでたのか、それともさっきの忠告がきいたのか、ニールの食事マナーが大人しくなっていた。
 大人しくというか、ちょっと固いようにも見えるが、あの様子よりはこの方がずっと良い。美しい女性にあんな姿を見せるのはよろしくない。

「マーニャさんは本当にお食事の所作が丁寧ていねいですよね」
 そう声をかけると、ニールの顔色が濁った。せっかく話がれてたのに……と言いたげな風を感じる。
 その様子を目にして、マーニャさんが悪戯いたずらっ気に微笑んだ。

「昔の縁でお仕事を受けると、貴族の家に招かれることもあってねぇ。冒険者でもSランクになると、そういう機会はしょっちゅうあるから、デニスもそれでマナーを身に付けたんじゃないかしら」
 デニスさんの名前が出たのは、さっきの話を聞かれていたからだろう。
「え? Sランクって? デニスさんまだAランクだよな?」
 ニールは話の別の部分に反応した。

「あの子は一度Sランクになっているのよ」
 マーニャさんはワインで喉をうるおしながら、話を続けた。
「過去にクエストの失敗でランクダウンを受けたのよ。それからえてランクアップしていないみたいね」
「ただクエストを失敗しただけではランクダウンにはなりません。おそらく、その失敗で死者がでています」
 自分がそう補足すると、ニールの顔が強張こわばるのがわかった。死者、という言葉に驚いたのだろう。

「……そのクエストの失敗はあの子の所為せいじゃぁなかったんだけどね。でも失敗は失敗だから」
 それで降格された……
「だからって、あんなに臆病おくびょうにならなくてもいいのにねぇ。あの子の実力も性格も、知っている人はちゃんと知っているし、ちゃんと評価もしているわ」
 そう言って、マーニャさんは最後のワインを飲みほした。ディッシュの上もすっかりと綺麗になっていた。


「そういえば…… マーニャさんとデニスさんはどういう関係なんですか?」
 さっきから、ずっとデニスさんの事を『あの子』と呼んでいるのが気になった。

 女性の年齢はわかりにくいが、自分が見た感じではマーニャさんとデニスさんの歳はあまり変わらないようにも見える。
「ただの知り合いよ。あの子が冒険者になる前からのね」
「じゃあ、長い付き合いなんですね」
「そうでもないわ、最近よ。確か10年くらい前かしら? あの子が13歳で……」
 おかしい。10年は最近とは言わない。そういえば……

「そうか…… マーニャさん、エルフでしたね……」
 エルフは魔力の一番強い時で成長が止まる、そして人間よりはるかに長命だ。
 人間とは時間の感覚が違う。さらに見た目で年齢の判断が出来ないのだ。

「ふふふ…… 女性に年齢を訊いちゃダメよ?」
 その言葉に苦笑いをしながら、自分の女性運の無さを静かに心で呪った。このわずかに残った淡い心の跡は、酒で流してしまおう。

 給仕を呼んで強い酒を頼むと、じゃあ私もとマーニャさんも声を上げた。ニールが目を丸くさせていたが、構わずに二人で乾杯をした。

 飲み比べでも、マーニャさんには全くかなわなかった。
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