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二度目の帰還
50 キス/デニス(1)
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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。友人の家に仮居候中。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
====================
リリアンに馬乗りになり彼女の唇に深く唇を重ねる、白髪の美しい女性のレイス…… リリアンはそれを受け入れるように大人しく目を閉じている。
なんだろう…… この光景は……
レイスが馬乗りになってすぐ、止めさせる為に駆けつけようとしたら、リリアンが俺を手で制した。
手を出すな……という事か……
確かにさっき、リリアンは「大丈夫」と言っていた。
でも……
レイスの服は出会った時にすでにボロボロだったが、リリアンに飛び掛かった時にどこかがさらに破れたのか、千切れてずるりと床に落ちた。身に着ける物を失ったレイスは、その白い裸体を晒したままで、リリアンにむさぶり付くように夢中で唇を吸っている。それが口を離す度に、ため息にも似たものがリリアンの口から洩れ聞こえてくる。
なにやら官能的にも思える光景に、これは見ていていいのかと、でも目も離せなくて。背中を壁につけたまま脱力し、ずるずるとしゃがみ込んだ。
半分透けるレイスの頬の内側に、重なりあう二つの唇が見えていて。それが求め合うように僅かずつ動く様に、つい自分の唇の感触として心で思い描いてしまう。
その想像で、こっそりと体を熱くしている自分がいた。
ふと、リリアンの手がレイスの胸元に差し入れられて居るのに気付いた。
そのリリアンの指にいつもは無い指輪が嵌められていて、そこからぼんやりと光が出ているのが見える。その光はレイスの体内の中心部に向かっては消える。
その間もずっと二人は唇を重ねたままで。そうしているうちにレイスの体はぼんやりとその形を変えていった。
いつの間にレイスは男性の姿に変わっていた。話に聞いていた、凛々しい男性の姿で。でもやはりまだリリアンの唇を吸っている。
と、ゆっくりとレイスがリリアンから唇を離した。
『リリアン……』
そう静かにレイスが囁く声を聞いて、今度はリリアンが彼の顔に両手を添え、自身の唇に迎えた。
俺は…… 惚れた女が他の男と唇を求め合っている…… まるでそんな光景を目にしている気分で……
正直、さっきまではちょっと変な気分になりかけていたが、今の気分はヤキモチに似たものでもやついているし、今すぐにでも止めたい気分でいっぱいだった。
もう我慢してられねえと思い始めた頃に、ようやくレイスがリリアンの唇から離れた。
ようやくレイスから解放されたリリアンは、彼女にしては珍しくぐったりとしていた。
「もうこの子は大丈夫です」
レイスの方に視線を向けると、彼は最初の頃の半分透けた姿ではなく、普通の人間にも見える姿になって、裸のまま立ち尽くしている。燃えるように赤かったその瞳は、うってかわって穏やかな深い青に変わっていた。襲い掛かってくる気はない様だ。
「アニー」
そうリリアンが声をかけると、レイスは『はい』と答えてぼんやりと崩れた。そこからまた形を作ると、先程の美しい、長い白髪の女性の姿に変わっていた。相変わらず裸なので、目のやり場に困る。
「お前はまず服を着ないとね」
リリアンは少しつらそうに身を起こすと、バッグを引き寄せて自分用の替えの服を取り出し、レイスに手渡した。
「大分お腹がすいてたみたいですね。魔力を全部持っていかれました」
自力では立ち上がる事もできないようで、慌てて彼女に寄り添って手で支えた。
「今のは…… ドレインされたのか?」
「魔力を受け取るのに、本当は触れるだけでもいいはずなんですけれど、あの方法だとより早く深く吸う事が出来るんですよ。まあこれはクリエイターの趣味なんでしょうけど」
そう少し笑って言った。
「クリエイター?」
「この子、レイスじゃないです。ゴーレムです」
「は!?」
ゴーレムだって? 俺の知っているゴーレムはダンジョンなんかで見かけるヤツで、石や土で出来ていてもっとゴツい、大雑把な姿をしていた。木製や布製の人形も、あれもゴーレムの一種か。
でも目の前でリリアンの服に腕を通そうとしているそれは、見た感じでは普通の人間とあまり変わらない。
「ゴーレムは、生命を持たない器に魔法で作り上げた疑似生命を宿らせるものです。器は作られた物に限りません。なんでもいいんです。この子は器に魔力を持った霧を使っています。姿が消えかかっていたのは、魔力が減って霧が薄まっていたからです。だから幽霊と勘違いされたのでしょう。そうして作り上げられたゴーレムは、魔法により結びつけられた主の命令を聞きます。与えられていた命令は『家を守れ』。その命令を守って、侵入者や家を壊そうとした人を排除したんでしょうね」
そう話してリリアンは立ち上がろうとしたが、足に力が入らないようでまた崩れた。
「ごめんなさい。少し休ませてください」
『どうぞ2階の部屋へ。ベッドは使えるようにしてあります』
横から、リリアンの服を着たレイス……ではない、ゴーレムが声を掛けてきた。
こいつを信じていいのか? リリアンの顔を見ると、大丈夫だと言うように頷いた。
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。友人の家に仮居候中。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
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リリアンに馬乗りになり彼女の唇に深く唇を重ねる、白髪の美しい女性のレイス…… リリアンはそれを受け入れるように大人しく目を閉じている。
なんだろう…… この光景は……
レイスが馬乗りになってすぐ、止めさせる為に駆けつけようとしたら、リリアンが俺を手で制した。
手を出すな……という事か……
確かにさっき、リリアンは「大丈夫」と言っていた。
でも……
レイスの服は出会った時にすでにボロボロだったが、リリアンに飛び掛かった時にどこかがさらに破れたのか、千切れてずるりと床に落ちた。身に着ける物を失ったレイスは、その白い裸体を晒したままで、リリアンにむさぶり付くように夢中で唇を吸っている。それが口を離す度に、ため息にも似たものがリリアンの口から洩れ聞こえてくる。
なにやら官能的にも思える光景に、これは見ていていいのかと、でも目も離せなくて。背中を壁につけたまま脱力し、ずるずるとしゃがみ込んだ。
半分透けるレイスの頬の内側に、重なりあう二つの唇が見えていて。それが求め合うように僅かずつ動く様に、つい自分の唇の感触として心で思い描いてしまう。
その想像で、こっそりと体を熱くしている自分がいた。
ふと、リリアンの手がレイスの胸元に差し入れられて居るのに気付いた。
そのリリアンの指にいつもは無い指輪が嵌められていて、そこからぼんやりと光が出ているのが見える。その光はレイスの体内の中心部に向かっては消える。
その間もずっと二人は唇を重ねたままで。そうしているうちにレイスの体はぼんやりとその形を変えていった。
いつの間にレイスは男性の姿に変わっていた。話に聞いていた、凛々しい男性の姿で。でもやはりまだリリアンの唇を吸っている。
と、ゆっくりとレイスがリリアンから唇を離した。
『リリアン……』
そう静かにレイスが囁く声を聞いて、今度はリリアンが彼の顔に両手を添え、自身の唇に迎えた。
俺は…… 惚れた女が他の男と唇を求め合っている…… まるでそんな光景を目にしている気分で……
正直、さっきまではちょっと変な気分になりかけていたが、今の気分はヤキモチに似たものでもやついているし、今すぐにでも止めたい気分でいっぱいだった。
もう我慢してられねえと思い始めた頃に、ようやくレイスがリリアンの唇から離れた。
ようやくレイスから解放されたリリアンは、彼女にしては珍しくぐったりとしていた。
「もうこの子は大丈夫です」
レイスの方に視線を向けると、彼は最初の頃の半分透けた姿ではなく、普通の人間にも見える姿になって、裸のまま立ち尽くしている。燃えるように赤かったその瞳は、うってかわって穏やかな深い青に変わっていた。襲い掛かってくる気はない様だ。
「アニー」
そうリリアンが声をかけると、レイスは『はい』と答えてぼんやりと崩れた。そこからまた形を作ると、先程の美しい、長い白髪の女性の姿に変わっていた。相変わらず裸なので、目のやり場に困る。
「お前はまず服を着ないとね」
リリアンは少しつらそうに身を起こすと、バッグを引き寄せて自分用の替えの服を取り出し、レイスに手渡した。
「大分お腹がすいてたみたいですね。魔力を全部持っていかれました」
自力では立ち上がる事もできないようで、慌てて彼女に寄り添って手で支えた。
「今のは…… ドレインされたのか?」
「魔力を受け取るのに、本当は触れるだけでもいいはずなんですけれど、あの方法だとより早く深く吸う事が出来るんですよ。まあこれはクリエイターの趣味なんでしょうけど」
そう少し笑って言った。
「クリエイター?」
「この子、レイスじゃないです。ゴーレムです」
「は!?」
ゴーレムだって? 俺の知っているゴーレムはダンジョンなんかで見かけるヤツで、石や土で出来ていてもっとゴツい、大雑把な姿をしていた。木製や布製の人形も、あれもゴーレムの一種か。
でも目の前でリリアンの服に腕を通そうとしているそれは、見た感じでは普通の人間とあまり変わらない。
「ゴーレムは、生命を持たない器に魔法で作り上げた疑似生命を宿らせるものです。器は作られた物に限りません。なんでもいいんです。この子は器に魔力を持った霧を使っています。姿が消えかかっていたのは、魔力が減って霧が薄まっていたからです。だから幽霊と勘違いされたのでしょう。そうして作り上げられたゴーレムは、魔法により結びつけられた主の命令を聞きます。与えられていた命令は『家を守れ』。その命令を守って、侵入者や家を壊そうとした人を排除したんでしょうね」
そう話してリリアンは立ち上がろうとしたが、足に力が入らないようでまた崩れた。
「ごめんなさい。少し休ませてください」
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