ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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新しい生活

54 旅鳥の帰還(2)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者
・シアン…デニス、ミリアの知り合いの冒険者で、前・魔王討伐隊の一人
・ミリア…『樫の木亭』の給仕(ウエイトレス)をしている狐獣人の少女
・ニール…冒険者見習いとして活動している自称貴族の少年
・アラン…デニスの後輩の冒険者。騎士団に所属しながら、ニールの「冒険者の先生」をしている。

====================

 デニスさんが順に皆を紹介し、彼の事は『子供の時分から世話になっている人』と、そう言った。

 いつの間に二人は知り合っていたのか…… 確かにシアには話をしていたが、会わせた事は一度もなかった。きっとシアは、私が居なくなった後に、代わりにあの孤児院に行ってくれたのだろう。あの頃の私の、心の置き所の一つを、シアが大切にしてくれた事を嬉しく思った。
 ミリアの事もちゃんと気にかけてくれていた様で、彼女のシアを頼りきった表情を見て、改めて安心した。
 これなら、私はここにくる必要はなかったのかもな……

「リリちゃん、緊張してる?」
 その声にハッと現実に戻った。向かいに座ったミリアちゃんが、心配そうに私の顔を覗きこんでいる。余計な事を考え過ぎて神妙な顔にでもなっていたんだろう。
 確かに冒険者1年目のリリアンにとっては、相手が先の魔王討伐隊の一人となれば、まともに口もきけない程に緊張しても不思議はない。
「シアンさん、優しい人だから大丈夫よ」
 勘違いしているミリアちゃんの言葉に合わせて、うんと返事をしてみせた。


 私たちの紹介を兼ねた何時かのクエストの話で盛り上がり、一段落したところで彼が話題を変えた。
「そうそう、デニス。またお前んとこに泊めてもらえるか?」
 そう尋ねられたデニスさんは少し苦い顔になった。
「あー…… いいんだけどさ、今晩は俺ちょっと用があるんだわ。だから、おっさん、あの部屋に勝手に泊まってくれ」
「なんだ? 女のところにでも行くのか?」
「リリアン家でお泊り会なんだよ」
「それは楽しそうだな」

 笑みを浮かべた彼が急に私の方を向いて、その不意打ちに少しびくりとした。
「彼女んち行ったんだろ? あそこ、最近買ったばかりでさ。お披露目ひろめ兼ねて皆を招待してくれたんだ。だから俺は今晩いねぇけど、部屋は好きに使っていいからよ」
「なんだそれ、お前ばっかずりいぞ。なあ、リリアンちゃん。俺も行ったらダメかなあ?」
 優しい口調で、でもねだるように訴えてくる。

「あのっ、俺! シアンさんの話もっと聞きたいです! 魔王倒した話とか…… あと…… 討伐隊の仲間の話とか……」
「そんな面白い話はねえよ?」
 ニールが前のめりになって必死になって言う姿に、彼が苦笑いをして応えた。でもニールには期待の方が大きいみたいだ。
「なあ、だからシアンさんも一緒でいいだろう? リリアン!?」
 こっちを見るニールの目は、いつもの様にキラキラしている。本当、ニールはすぐ顔に出るからわかりやすいよね。

「じゃあもう一組お布団借りてきますね」
 笑いながら立ち上がると「わりいな、リリアン。俺も付き合うよ」とデニスさんも席を立った。
「すぐ戻ってきますし、マジックバッグに入れてくるので自分で持てます。大丈夫ですよ?」
 そう言ったのだけど、いいからと言ってきかない。
「すまんな、リリアンちゃん。俺が使う布団なんだから、俺が行けばいいんだけどさ。せめてデニスを代わりに連れてってやってくれや」

 彼までそんな事を言い出すので、諦めて折れる事にした。
「わかりました。あの……」
「なんだ?」
「リリアンって呼んで下さい」
 それを聞いた彼は、笑いながらジョッキを掲げてみせた。
「ああ、リリアン。よろしくな」

====================

<おまけ・今回の席の話とか>
 わざわざ話の中に書く事ではなかった事ですが、今回の席の並びはこんな感じでした。

 『樫の木亭』はそれほど大きい店ではないので、相席も出来るように席は詰めて座ります。
 今回は壁か窓際の6人掛けのテーブルで、まずデニスが一番奥に座っています。
 そこにアランとニールが来て、デニスの向かいに座ります。立場を考えるとアランがホール側なのですが、最近はすぐに手伝いに立てる様にと、ニールがホール側に座っています。
 デニスがシアンを連れてくると、デニスの隣(=ニールの向かい)がシアンになります。
 その後リリアンが来て、さらに後から来たミリアと残りの席に着くのですが、リリアンはシアンに挨拶をするつもりもあったので、シアンと顔を見合わせられる様にニールたち側に寄って立っていました。そのままそこの席に座ります。ミリアは当然の様にシアンの隣の席に(シアンの妹分なので&リリアンに配慮した)。

 シアンはデニスと一番話してますので、デニスの方に顔を向けている事が多いです。
 そして、デニスと話してすぐにリリアンの方を向くと、真反対なので「急に」なイメージになるんですよね。


 貸し布団…冒険者は家を持たない者も多く、そういった者たちは荷物を多くは持ちたがらないです。なので、町にはレンタル屋が多くあります。
 勿論、冒険者でなくても、裕福な貴族などでなければ余計な物は持っていないですし、町の人々も普通にレンタル屋を利用します。
 あまり使わないものは持つよりも無駄が少ないですし、物を借りて使うという事は日常で普通に見る光景になります。さらにゲームの中とかであるように、必要な物は買うけれど不要になったらすぐに売るって事も多いです。
 ちなみにEp.3やEp.8でパーティーに着て行った服も貸し服屋の物です。場所が王都なら、クリスやアレクは自前の服で行くんでしょうけれど。いくら性能の良いマジックバッグを持っていても、さすがに旅先にまで正装用の服は持って行ってはいないようです。
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