ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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新しい生活

59 彼女の後姿/デニス

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。今世では鉤爪クローを使い、剣のスキルは隠している。
・デニス…Sランクの実力を持つAランクの冒険者で、リリアンの先輩。リリアンに好意を抱いている。
・シアン…前・魔王討伐隊の一人で、前『英雄』アシュリーの『サポーター』。デニスの兄貴分
・ニール…冒険者見習いとして活動している、貴族の少年
・アラン…デニスの後輩の冒険者。騎士団に所属しながら、ニールの「冒険者の先生」をしている。

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 いつもの様に串焼肉を頬張り、エールで流し込んだ。見ると、はす向かいに座るアランの酒は、あまり減っていないようだ。
 俺らが肉と話に夢中になっている間、アランの口数が少ないのは気になっていた。今も何やら考え込んでいる。

「アラン、どうかしたのか?」
 そう声を掛けると一度は俺を見たが、そのまま手に持ったジョッキに視線を落として元気なく応えた。

「あ、いや…… 今日のリリアンさんが…… 凄かったなあと、思いまして……」

 そいつは俺も思った。
 アランはBランク。リリアンは冒険者カード上ではCランクだ。でも今日の動きを見る限りでは、もしかしたらアランよりも実力が上回ると思えてもおかしくない。
 たかだか冒険者になって半年も経っていないリリアン、対してアランは騎士団に居た時期があるとはいえ、冒険者になってから5年は経っている。
 アランが落ち込んでしまうのも無理はないだろう。

「おっさん、あれが『獣使い』の効果なのか?」
 シアンさんに尋ねたが、思うような返事は返って来なかった。
「いや、正直わからん。俺も『獣使い』をああして使うのは初めてだからな。普段の彼女の実力も知らないし…… そんなに違ったのか?」
 言われて思い起こしてみる。
「そういやこの間のグリフォンの時も、かなり良い動きをしてたな。今日程じゃあなかったが…… デビューしてからの成長スピードが早いのか?」

「リリアンはCランクになるの早かったよなー デニスさんとワイバーン狩って、それで上がったんだろう?」
 ニールが少し興奮気味に言った言葉に、何かが引っかかった。
「……ああ、確かに一緒にワイバーンを狩ったが…… でもその前からCランクだったぞ?」
「ええ? でもリリアンはワイバーンを倒したら、それが偶然クエスト対象だったって言ってたぞ」
「ああ、そのワイバーンなら故郷に帰る途中に倒したと聞いたが…… うん?」
 あの時は確か……

「どうしたんですか?」
 静かに聞いていたアランが、口を開いた。
「……おかしいな。俺とやった時には、2頭とも止めを刺したのは俺なんだ。リリアンは…… そうだ、自分の武器じゃワイバーンの皮に刃が通らないと言っていた。あいつが今使っている鉤爪クローは、こないだドワーフの国で受け取って来たばかりで、その時使っていたのは低スキル用の鉤爪クローだ」

 どうやってワイバーンとミノタウロスを倒したんだ?

「……リリアンが、ワイバーンを倒したのはDランクの時だ。俺と一緒に立ち寄った町で、そこのギルマスに経験値を付けてもらってCランクになった。でもBランクになる条件も満たしているそうだ」
「ワイバーンだけでBランクに、ですか?」
 アランが驚くのも無理はない。見習い時代の積み上げ経験値があったとしても、流石に跳ね上がりすぎだ。
 複数人でクエストをこなせば、経験値は人数で等分される。しかし一人なら……
「あの時の様子だとワイバーンも一人で倒したようだった。しかもあいつはミノタウロスも倒している。手負いを見つけて一人でやったんだと、そう聞いたが……」

 ミノタウロスと聞いて、ニールが目を見張った。
「もしかして、あのお土産の? あれは故郷の仲間と狩ったって、そう言ってたよな?」
「ああ、すまん…… リリアンはそう言ってたな。今の俺の話は聞かなかった事にしてくれ」
 そうは言ったが、もう遅かった。アランはさっき以上に考え込んでしまい、いまいち理解が追い付いていないニールは俺とアランの顔を交互に見比べた。


 俺たち3人が顔を突き合わせている横から、手に持つエールのジョッキを空にしたシアンさんが口を挟んだ。
「確かにリリアンの今日の動きは凄かった。要は彼女の実力が気になるんだよな?」

 そう言って、シアンさんは右目の眼帯を少しだけ上に持ち上げると、その手で目を隠すようにしながら、給仕をしているリリアンの背中に視線を向けた。わずかに見えた眼帯の下には、ひび割れたような模様の肌と、縦に切れ目の入ったような異様な瞳があった。

「……確かにCランクのスキルにしちゃ高いな。基礎力が高いんだ。でも武器スキルはそれ程じゃねえし、Bランクに上げるには…… あれじゃあ、まだ荷が重いだろう」
「……おっさん、その眼はなんだ?」
「詳しい事は話せねえが、この眼でスキルとか色んなものを視る事が出来るんだ。彼女のスキルにおかしいところはない。とすると今日のは『獣使い』の効果なのかもしれんな」
 それを聞いて、アランがそっと長く息を吐いた。

「ただ、なんだ?」
 シアンさんは、まだリリアンを眺めながら、眉をしかめている。
「見た事のないスキルがついてるな…… なんだ、あれは?」
「なんてスキルだ?」
わりい、読めねえんだ。俺らが使うのとは違う文字で見えるんだよ。なんとか数字と、見た事のあるスキル名はある程度わかるようになったんだが……」

「そういや、ラーシュさんがリリアンの事を神子みことか言ってたよな」
 思い出した様に言うニールの言葉に、あの夜の事を思い出し、頭に血が上りかけた。
 ……が、確かにあの時、リリアンは俺に『獣使い』スキルを付けてくれた。あれも普通には出来る事ではないだろう。
「獣人の神の、加護でも受けているのかもしれんな」
 そうシアンさんが言った言葉が、多分一番しっくり来る。

「それに彼女は大分性能の良いマジックバッグを持っていた。武器もお前らが知らないだけで他に持っているのかも知れないな。あのバッグなら、他にも武器を入れていてもおかしくはない」
「ああ、そっか…… そうだよな。気にしすぎたな」
 でも……
「でもリリアン、水くせえよなー。教えてくれてもいいのに。俺らの仲なのになぁ」
 そう言ったニールに、調子に乗るなと言いたそうに、アランがそっと肘で小突いた。

 そうだよな…… 知り合ってもう1年以上経つのに、まだ俺の知らないリリアンが居る。
 彼女の後姿を横目で見ながらそんな事を思っていると、シアンさんが隣から俺にだけ聞かせるように言った。
「聞きたい事も、言いたい事も、そのうちにって思っていると、いつその時を失うかわからねえぞ。俺みたいに後悔しても遅いんだからな」
 シアンさんの方を見ると、少し寂しそうな目で俺に笑ってみせた。

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(メモ)
 『獣使い』スキル(#7、14)
 グリフォン狩り(#48)
 ニールとワイバーンの話(#48)
 デニスとワイバーン狩り(#43)
 最初のワイバーン、クロー(#10、#11)
 ミノタウロス(#12、#34、#40)
 (Ep.7)
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