ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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王都を離れて

100 聖夜祭/ニール(1)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・ニール…主人公リリアンの友人で、冒険者見習いとして活動している自称貴族の少年。その正体は前英雄の息子で、現国王の甥にあたる。
・アラン…騎士団に所属しながら、ニールの「冒険者の先生」をしているBランク冒険者

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「よぉ!」
 いつもの様に声をかけると、少年の元気そうな笑顔が返ってきた。

 以前、西門近くにいたポーション売りの少年が、数か月前から戻ってきている。それを知ってから、こうしてたまに立ち寄るようにしている。
 最近はクエストに行く機会が減っているから、そこまでポーションを使う機会は無い。でも買っておいて損はない物だしな。そんな風に自分に言い訳をして、いくつかポーションを選んだ。

 本当は彼の事が少し気になっている。
 彼は自分よりも小さいのに、こうして一人前に働いている。それも病気のお父さんの為なんだそうだ。
 俺の父は、俺が生まれる前に死んでしまった。その所為せいか父親の為に尽くす彼を、より応援したい気持ちを抱いている。そして俺の父の事を重ねてしまい、せめて彼の父には助かってほしいと、そう願ってしまっている。

 あからさまにお金を渡すとかそういう事は出来ない。でもこうして買い物をして、彼にも声をかけて元気づけて、それが少しでも彼の助けになればと、そう思った。
 でもきっとそれでも金は全然足りないだろう。


「なあ、アラン。西の冒険者ギルドの皆に宣伝したらどうかな? そしたら皆がポーションを買ってくれると思うんだ」
 そうアランに提案をしてみると、少し難しい顔をされた。いいアイデアだと思ったんだけど、そうではないらしい。

「ニール、あの少年の助けになりたいという貴方の気持ちはわかります。でもそれをしてしまうと、商業ギルドの認可を受けた正規のポーション屋の商売の邪魔をする事になってしまいますよ。当然、彼らにも生活があるんです」
「ああ、そうか…… じゃあ、あいつのポーションをポーション屋に買ってもらうとか……」
「それも正規のルートでポーションを店に卸している、調合師たちの迷惑になるでしょう。ああして、ほそぼそと売っているだけですから、どうにか目こぼしされていますが、目立つような事をするとそうはいかなくなるでしょう」

 うん……そうだよな。皆にも生活があって、それが公平に回るような仕組みがあって、その上で生活が成り立っているんだ。
「あいつさ…… あんな年から働いているなんて、生活も苦しいんじゃないのかなあ。学校には行ってないのかな?」
「おそらくですが…… 彼の話からするとおそらく片親……そして、その父親も病気では働く事もできないのでしょう。もしも、というには不謹慎ふきんしんな話ですが、彼が孤児であれば孤児院に入る事ができます。そうであれば、孤児院から学校に通う事ができるのでしょうが」

 そうか…… 半端な家庭事情の家の者には、国の支援は行き届いていないのか……

「家庭の事情はそれぞれですし、複雑な問題でもあります。一朝一夕で考えられるような事ではありません。でもそういう事に目をむけられるようになったのは、悪い事ではないと思いますよ」
 そう言って、アランは何故か俺の頭に手を置いた。なんで頭を撫でられるのか、理由はわからなかったけれど、多分俺が考えようとしている事は間違ってはいないんだろうなと、そう思った。


「なあ、そういえばさ。祭りの日に屋台で売るのはどうなんだろう?」
 祭りの屋台は商店が出している物もあるが、普段は商売をしない者たちが出す屋台もある。
「ああ、屋台でなら商業ギルドに所属していなくても堂々と売る事ができますね。一番最近だと聖夜祭の日に屋台が出ます」
「祭りの屋台は、他の店たちの邪魔にはなっていないのか?」
「商店も屋台を出したり、売り出しをしたりしていますしね。それに祭り気分も相まって、買い手側の財布も緩むので、損をするどころかそれなりに儲ける事ができていると思いますよ」

 成程…… でも残念ながら、この王都で屋台を出す機会は限られている。年末の聖夜祭の次はおそらく闘技大会の日になるだろう。

「もっと他にも機会を作るのはどうかな?」
「祭りの、ですか?」
「いやそうじゃなくて。祭りの日でなくても、皆で屋台を出したらどうなのかなと思って」
「ああ、教会のバザーのようなイベントですか?」
「バザー?」

 俺は知らなかったんだが、王都以外の町の教会では町民たちが持ち寄った物を互いに売る機会を設けているらしい。
 教会の庭を使って、物を売るだけでなく食べ物の屋台なんかも出て、ちょっとしたイベントのようなものになっているんだと。
 でも残念ながら、王都の大教会ではそういうイベントは開かれない。

「まあ、あんな風に屋台を出すだけでもちょっとしたイベントみたいになりますし、町民や商業ギルドは歓迎するんじゃないですか。ただ勿論ですが、誰かが取りまとめる必要があります。さらに人手をどうするか。支度の為のお金も必要です。あとは場所の確保ですね」
「場所?」
「祭りの日のように往来で店を出すようにするなら、その日は乗合馬車が走れなくなります。その為の許可も要りますし、馬車が走らなくて困る人も出てくるでしょう。ですからこれは避けた方がいいと思います。交通の邪魔にならないようにするなら、どこか広い場所…… 例えば学校の校庭や公園で開くのが良いかと。校庭は学校の管轄ですから、学校に許可を取る必要があります。公園なら……」
 そこまで言って、アランは俺をじっと見た。

 アランが言いたい事はすぐに分かった。王都内にある公園などの公共施設は、王城の管轄だ。つまりは、王城の主である王の許可がいる。
 そして、俺なら……そこまでの話を通すのは、おそらく町民や並みの貴族よりもずっとずっと容易たやすいのだろう。
 すぐには難しいだろう。でもやってみても、いいのかもしれない……

「ひとまず聖夜祭に自分で屋台を出してみたらどうでしょうか。私も協力いたしますよ」
 アランの言葉に、黙ってうなずいた。

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(メモ)
 ポーション売りの少年(#19)
 ニールの父の死(#32、#44)
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