ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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王都を離れて

101 露天風呂/デニス(1)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。転生前は前・魔王討伐隊、『英雄』のアシュリー
・デニス…Sランクの実力を持つAランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。
・シアン…前・魔王討伐隊の一人。アシュリーとは討伐隊になる前からの付き合いがあり、ずっと彼女に想いを寄せていた。
・タングス…現在リリアンたちが世話になっている、仙狐(3本の尾を持つ白毛の狐)の兄妹の兄
・シャーメ…仙狐兄妹の妹。二人とも今は20歳程度の人狐の姿で過ごしている。

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 九尾ナインテール――つまり、仙狐せんこの親は多い時には10匹もの子どもを産むのだそうだ。その為、ここ仙狐の住処は他の高位魔獣の住処に比べると広い、らしい。

 タングスとシャーメがそう言っていたんだが、俺は高位魔獣の住処といえば、他には古龍エンシェントドラゴンの爺さんのところしか知らない。あそこもかなり広い屋敷だろうと言ったら、ここのような仙狐だけの住処とは勝手が違うのだそうだ。
 古龍は一体だけの魔獣で、他の高位魔獣のような繁殖は行わない。あの屋敷にいた竜人たちに、守り神のように崇められているのだそうだ。なのであの屋敷は竜人によって用意された神殿の様なもので、古龍の爺さんだけの家というわけではないらしい。

 ともかくそういう理由で、ここには俺たちが一人ずつ使わせてもらっても余る程に部屋があるし、毎朝トレーニングをしている庭も十分な広さがあるし、風呂なんか一時いちどきに何人も入れるほどに大きいし、しかも露天なのでとても気分がいい。
 夕食の後には、なんとなく男連中が連れ立って風呂を済ませ、その後にリリアンとシャーメが仲良く風呂へ向かう、そんなのが恒例になっていた。


 今日も夕飯の片づけを済ませてから、俺だけ少し遅れて風呂場へ向かった。
 脱衣所で服を脱いでいると、風呂の方からシアンさんとタングスの話し声が聞こえる。なんだか今日はいつもに増して盛り上がっているようだ。
 タオルを片手に脱衣所を出る。外の冷たい風に肩を震わせた。
 ただでさえ寒い季節で、山の空気はさらに冷え込んでいる。その所為せいで露天風呂から立ち上る湯気がいつもより厚く、視界をぼんやりとさえぎっていた。

 早く温かい湯につかりたくて、手早く体を流して風呂へ向かうと、シアンさんの声がした。
「おいおい、デニスが来ちまったじゃねえか」

「なんだよ、おっさん。俺が来たら何か都合が悪いのかよ」
 そう言い返しながら、湯に足を差し込む。
「いいじゃん、別に。私は気にしないよーー」

 うん??
 全く予想もしていなかった、可愛らしい高い声がした。

 咄嗟とっさに湯にどぼんと胸まで浸かって、手にしたタオルで下半身を隠す。
 湯気の所為で視界は悪いが、ここまで来れば人の顔もうっすらとわかる。シアンさんと、タングスと……シャーメ!?

「ほら見てみろ。お前が気にしなくても、デニスは気にするんだよ」
「そうなの? んーー、どれどれ……」

 見てみろと言われたからか、パシャパシャと湯の音をさせながら、嬉しそうにシャーメが近づいて来る。
 でも裸で、今シャーメは人狐の姿になっていて、全く隠す様子もなく…… 白い長髪を頭の上でまとめてあるからか、肩から下の体のラインもはっきりわかる。白い肌と、柔らかそうな二つの山が目に入って、慌てて後ろを向いた。

「な、な、な、なんでシャーメがいるんだ!?」
「えー、久しぶりに皆とお風呂に入りたくってーー」
 呑気な声で返事が返ってくる。久しぶりって、少なくとも俺はシャーメと同じ風呂に入った事は一度もないぞ!?

「あー、すまんなデニス…… こいつら、元が魔獣だからか裸に対する羞恥心が俺らよりは薄いみたいなんだ……」
「狐の姿なら服を着ていなくても気にしないクセに、人になると気にするの、変なのーー」
 そうなのか? そういう問題なのか? いや、だからって見ていい訳じゃあ無いような気もするぞ。

「シャーメが気にしなさ過ぎるんだよ。僕らにだってちゃんと羞恥心はあるんだよ」
 ため息と一緒にあきれた声でタングスが言った。
「シアン兄ちゃんは家族みたいなものだからね。小さな頃から何度も一緒にお風呂に入ってるし。でもデニスは違うんだから、シャーメは早く出ろって、僕らは言ってたんだけどね」


「……あれ?」
 後ろを向いている俺の背中を、シャーメの手が撫でる。
 っちょっ! 何をしようとしてるんだ?

「デニス、傷だらけだね。これ、どうしたの??」

 ……あ……

 風呂にシャーメが居た事に驚いて、すっかり自分の事を失念していた。

 俺の背中の傷の事をシアンさんは既に知っているし、タングスも今までわざわざ訊こうとしてくる事もしなかった。でも、こうやってあからさまに背中を向けていれば…… そりゃ、気が付くよな……

「……昔、ダンジョンで魔獣にやられたんだ。みっともないよな」
 Sランク冒険者の癖に…… あの時、自分で自分を責めた言葉を思い出す。
「みっともないの? なんで?」
「……仲間を守れなくて。しかも逃げた時についた傷だ。相手に立ち向かって付いた傷じゃない」
 苦々しい気持ちで口にした言葉も、言い訳にすらならない。意気地なしだと、そう思われても仕方がないと、そう思った。
 でも俺の耳に飛び込んで来たのは、まったく違う言葉だった。

====================
(メモ)
 背中の傷(#33、Ep.14)
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