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第一話 縁切り
しおりを挟む「今日でお前との縁をやっときれる。無能がさっさとここから消えろ」
私の元弟は私の横に何かを投げてきた。
それは少額の金が入った布袋だった。
「優秀な召喚士を歴代排出している我が侯爵家からこんな無能が生まれるなんて、なんと嘆かわしい。せめての慈悲として、王立学園は卒業させた。使い物にならない黄緑色の小鳥を連れて、出ていけ。そして、2度この家に戻って来るなよ」
私は布袋を拾わず、元実家から背を向けた。
そして歩き始めた。
見送りもない。
家族も使用人達すらも。
まぁ、今更だな。
元実家から離れ、近くにある裏路地に入ると、私の後ろが光りだした。
その光は直ぐにやみ、私の後ろから声が聞こえてきた。
「主、あれを殺してもいい?」
私は声がした方を向いた。
向いた方にいたのは黄緑色の髪を腰まで伸ばし、緑色の瞳をした美少女がいた。
「エーカ。無駄なことだから、しなくていい。それよりもこんな街から直ぐに離れよう」
「ん。主がそう言うなら、分かった」
私の名前はタリー。
元々は優秀な召喚士を歴代排出する侯爵家の長男だったが、私には召喚士としての才能が無かった。
なので、無能と言われた。
実家でも王立学園の召喚士科でも。
生まれてからも王立学園の4年間も。
無能と言われ、才能が無い私だが、1体だけ契約をすることが出来る。
そして、私が契約したのは私の後ろにいる美少女だ。
特殊進化し、人型に出来るようになっているのだ。
元の姿は黄緑色の小鳥の魔物だ。
「主。何をしてるの?」
エーカは可愛らしく首を傾げていた。
「少し考え事をしていただけだ」
「早く行こ、主」
そう言い、エーカは私の方に手を伸ばしてきた。
「ああ、こんな良い思い出が無い街は早く出よう」
私はエーカの手を握った。
「ウィンドレッグ」
すると、私とエーカの足に風が纏まりついた。
私はエーカと手を繋ぎながらジャンプすると、嫌な思い出しか無い街の壁を越えた。
壁を越えた私はエーカから手を離し、南に向かって走り始めた。
私は走りながら、後ろを振り向いた。
何があったとしてもこの街に戻ってくることはないだろう。
だから、本当にさようならだ。
私は前を向き直した。
「主。何処まで行くの?」
「南にある隣国との国境近くの街だね」
「なんで?国境近くの街?」
「国境の近くだと、元実家の者達がやって来ても直ぐに国を出ることが出来る。それと、色々と都合がいいからだ」
「ん。分かった。私は主に着いていくだけ」
そう言い、エーカは頷いた。
「ありがとう、エーカ」
その後、私達は3時間くらいで国境の街に到着した。
街に到着した私達は宿をとった。
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