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第二話 歌姫
しおりを挟む国境の街に到着してから、1週間が経った。
夕食を食べ終え、部屋でゆっくりしていると、エーカが驚くべきことを言い始めたのだ。
「主。私、働く」
私は驚きのあまり固まってしまった。
「エ、エーカ?私の聞き間違いじゃなければ、今働くと言ったのか?」
「ん」
そう言い、エーカは頷いた。
「は、働くとしてもどうする気なんだ?」
「歌を歌う」
た、確かに、エーカの歌は上手いが、稼げるのか?
「歌で稼ぐことは分かったが、歌う場所はどうするんだ?」
「それは大丈夫。これがある」
そう言い、エーカは1つの紙をベッドの上に出してきた。
その紙を見てみると、歌上手のオーディションが2日後に開催される旨が書かれていた。
歌上手のオーディションか。
しかも、よくよく見てみると、1位は投票で決めるようだ。
エーカが歌上手のことは知っているが、どうするべきなんだ?
まぁ、エーカにとって、いい経験になるから、許可するか。
「分かった、エーカ。このオーディションに参加しても大丈夫だよ」
「ありがとう、主」
エーカは私の目を見て来た。
「主は私の歌を聞いてくれる?」
「勿論だ」
「ん」
エーカは嬉しそうな表情を浮べた。
それから2日が経った。
今私は歌上手のオーディション会場の観客席に座っている。
飲み物を飲みながら、開始を待っていると、司会がステージ上に上がり、オーディションが開始した。
エーカは飛び入り参加のため、順番が最後なので、他の参加者の歌を聞くことにした。
オーディションに参加するだけあって、誰も彼もが上手かったが、エーカ程で無かった。
そんなことを思っていると、16番目の女性が歌い終わった。
「エントリーナンバー17番。エーカ」
その声と共に、エーカが現れた。
現れたエーカに観客の男達は目を奪われていた。
私も少しだけ目が奪われてしまった。
エーカは黄緑色のドレスに身を包んでいた。
そのままエーカは胸の辺りで手を組み、歌い始めた。
その歌には誰もが目が奪われたのだ。
会場の観客達も会場のスタッフ達もオーディションに参加した者達も。
そして私も。
あまりにも美しすぎる歌だったのだ。
エーカが歌いきると、会場の観客達は席から立ち上がり、拍手が起こった。
その拍手の音は大きくなっていき、5分も続いた。
拍手は止んだが、次はエーカのことを歌姫と連呼し始めたのだ。
それは会場にいる者達、いや、私とエーカ以外の者達が。
投票の結果、100%の票がエーカに集まった。
誰も文句は言わない。
圧倒的過ぎるからだ。
圧倒的な1位をとったエーカは歌姫として歌を歌い働き始めた。
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