50 / 64
第五十話 妹
しおりを挟むあれから1ヶ月が経った。
今日はカーシャと一緒に歩いている。
隣を歩いているカーシャは真偽瞳を隠す魔法具をつけている。
「無事に買えて良かった」
「ん。前から欲しかった」
そう言い、カーシャは店で購入した紙袋を抱き締めていた。
ちなみに、カーシャが抱き締めている紙袋の中には熊のぬいぐるみが入っている。
まぁ、纏めるとカーシャが可愛いということだ。
(小僧は自身の婚約者達のことになると偶にバカになるよな)
(し、仕方無いだろ。可愛いからな)
(まぁ、今に始まったことではないから慣れたが)
こんな会話をしているとカーシャは嬉しそうな表情を浮かべていた。
か、可愛い。
可愛いカーシャのことを眺めているとある馬車とすれ違ったのだ。
いつもならただ通り過ぎるのだが、何故か止まった。
その瞬間、私は警戒した。
まさか、あの暴徒達か?
そんな疑問が頭を巡ったが、馬車から降りてきたのは少女だった。
その少女は高そうな服に身を包んでいる。
そして、その少女はカーシャの方だけを見続けていたのだ。
だが、何処かカーシャに似ている気がする。
そんなことを思っているとその少女は口を開いたのだ。
「お、お姉ちゃん」
お姉ちゃん?
そんなことは。
そう思いながら、私はカーシャの方を向いたが、信じられないような表情を浮かべていたのだ。
「ま、まさか、リニ?」
「はい、お姉ちゃんの妹のリニです」
どうやら、本当にカーシャの妹みたいだ。
「やっと会えました。これからお姉ちゃんは何か用事はありますか?」
「無いけど」
そう言い、カーシャは私の方を向いてきた。
私は頷いて答えた。
「ありがとう、お姉ちゃん。ここだとゆっくり出来ないので、移動しましょう。そちらの方もご一緒にどうぞ」
私達がカーシャの妹に案内されたのは個室のカフェだった。
注文した飲み物が到着してからカーシャの妹が話し始めたのだ。
話を纏めるとカーシャの妹は既に独り立ちし、家族との縁を切ったみたいだ。
商人として様々な場所に行き、生き別れたカーシャのことを探していた。
そして、再会したのだ。
全てを聞き終わった後、カーシャはこれまでのことを話した。
全てを聞き終えたカーシャの妹は信じられないような表情を浮かべていたのだ。
「つ、つまり、お姉ちゃんは隻腕の剣士の婚約者ということ?」
「ん」
そう言い、カーシャは頷いたのだ。
それを聞いたカーシャの妹は何かを呟いていた。
それは聞き取れない。
折角、出会えたのだ。
家族に。
だから、私は。
「リニ嬢。これは私からの提案なんのです」
「どんな提案なのですか?」
「カーシャと一緒に暮らしませんか?」
私の提案にリニ嬢は目を輝かせていた。
それから私はリニ嬢と話し、最終的にカーシャの許可を得たのだ。
これから、カーシャはリニ嬢の屋敷で2日程暮らすことになった。
送り迎えは私達がする。
それにはリニ嬢も直ぐに賛同した。
まぁ、仮にも王者決定戦の優勝パーティーだからな。
その日はカーシャはリニ嬢と一緒にいるみたいなので、リニ嬢の屋敷まで送り届けた。
送り届けた後、私は家に帰り、あったことを話したのだ。
それを聞いたシェリル達は嬉しそうな表情を浮かべていた。
10
あなたにおすすめの小説
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる