悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜

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第五十五話 鬼人

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 私はその男を見て確信した。

 姿形はまるで違うが間違えるはずもない。

 あのオーガは、あのハイオーガは、あのグレートオーガは、あの者は私の宿敵だ。

 私は大きく笑った。

 その笑い方は悪役みたいな笑い方だったかもしれないがそんなことどうでもいい。

 「久し振りだな、私の宿敵よ」

 「ああ、久し振りだな、我が宿敵よ」
 
 「あの時と比べて、体が大きくなったな。何年振りだ?」

 「最後に会ったのが、私が9歳の頃だから約6年振りくらいですね」

 「また、進化したのですか?」

 「ああ、また進化した。今度は鬼人だ。私はあの時に完全に死んだが、四天王と名乗る男が私を生き返らせた。そして、私に力を与える代わりに契約をしたが、もう必要無いな」

 そう言い、宿敵は私が辛うじて見えるスピードで刀を抜き、目に見えない何かを切ったのだ。

 その後、クラベルは信じられないような表情を浮かべていたのだ。

 「な、何をしたんだ、鬼人?」

 「何って、お前との契約を切っただけだ。私がお前と契約したのは我が宿敵ともう一度戦うためだ。だから、もう必要ない」

 「バ、バカな、こんなことがあるはずが無い。そ、それにふざけるな、鬼人。私は契約をしたのだぞ、それを、切っただと」

 そう言い、クラベルは驚愕と怒りが混ざった表情を浮かべていたのだ。

 「黙れ、私はお前に構っているほど暇では無い」

 そう言い、宿敵は私が辛うじて見ることが出来るスピードで刀を抜き、クラベルの右腕を切り落としたのだ。

 右腕を切り落とされたクラベルは悲鳴を上げながら膝を地面に着けた。

 宿敵は膝を着いたクラベルの喉元に刀を押し付けたのだ。

 「邪魔するな」

 私は直ぐにエリーゼの前に行った。

 「さて、我が宿敵よ。そこの者は?」

 「彼女は私の婚約者のエリーゼだ」

 「婚約者がいたのか?いつからだ?」

 「10歳の頃だ」

 「そうか、婚約者がいたのか、我が宿敵には。安心してくれ、私は我が宿敵の婚約者に手を出す気は無い。だが、戦いの邪魔だけはしないでもらいたい」

 それを聞いた私はエリーゼの手を掴んだのだ。

 「エリーゼ、私はこれから宿敵と一対一で戦う。この戦いは私と宿敵の真剣勝負だ。絶対に勝つから、ここで待っていてくれるか?」

 エリーゼは私の手を強く掴んで、頷いて答えてくれた。

 私はエリーゼから離れて、鞘から剣を抜いたのだ。

 「待たせて、すまなかった。宿敵よ」

 「いや、気にするな」

 「そうだ、宿敵。名前はなんと言うのだ?」

 「私には名前なんてものは無い。いや、要らないのだ。私は我が宿敵の宿敵であれば良いのだ。だから、我が宿敵の名前にも興味はない。私が興味あるのは我が宿敵ということだけだ。例え、貴族だろうが、平民だろが私にはどうでも良いことだ」

 「こちらからも1つ聞くがあの1年間でどれ程の鍛錬を積んだ?」

 「血反吐を吐くまで鍛錬した」

 「才能では無かったのか?」

 「残念ながら。私はそこまで才能は無かったが鍛錬をしてここまで至った。素振りしていたら朝になっていた。魔法で枯れた溜め池を水いっぱいにした。三日三晩鍛錬をして血反吐を吐くまでした。それらの鍛錬が私をここまで強くしたのだ」

 そう言い、私は宿敵の方を向いたのだ。
 
 「だが、私が強くなれたと思っていることは宿敵に会えたことだ。貴殿に会えなければ、私はここまで強くなれなかっただろう。感謝する、宿敵よ」

 「いや、それならば、私も我が宿敵に感謝せぬばならない。私も我が宿敵がいなければ、ハイオーガにもグレートオーガにも鬼人にもなれなかっただろう。感謝する、我が宿敵よ。それに我が宿敵は私の角をアクセサリーとして付けてくれている」

 「気付いていましたか」

 そう言い、首からアクセサリーを取り出した。

 「あの時、私は我が宿敵と会えて、良かった」

 「そろそろ、始めましょうか?宿敵よ」

 そう言い、アクセサリーを首にかけ直した。

 「そうだな、後はこれで語ろうか」

 そう言い、私は剣を構えた。

 そして、宿敵も刀を構えた。

 私達の戦いを見ているのは全世界の人間達だがこの場にいるのは私と宿敵とエリーゼと右手を失ったクラベルだけだ。

 静寂が訪れた。
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