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第六話 日常の崩壊
しおりを挟む聖女と男が出会ってから約一年が経ったある日の昼のこと。
「べリスさん、この紅茶は変わった味がしますね」と、男に問いを投げかけた。
「これは紅茶じゃなくて、緑茶という東洋の飲み物だよ」と、聖女の問いに答えた。
「紅茶と緑茶は、何の違いがあるんですか?」と、男に疑問を投げかけた。
「そうだなぁ、お茶の発酵度の違いらしい。つまりは、置いている時間の差らしい」と、男は聖女の問いに答えた。
こうして、二人は会話を楽しんでいた。少し時が経った時に、魔力の大きな波動を二人とも感じた取った。次の瞬間、空一面に窪んでいる場所に頭から角を生やしている男が写し出した。
「あれは、なんですか?」と、男に尋ねた。
「あれは、投影魔法だ。そして真ん中に写っているのは、絶滅したはずの魔族だ」と、男は緊張した顔で、聖女の問いに答えた。
男は、この時嫌な予感がして堪らなかった。何かが崩れるような感覚がしてならなかった。
問答している間に角を生やした男が話始めた。
「我が名は、魔王だ。一万年前に憎き神族に封印され、唯一残りし魔族の王だ」
そして、言葉を続けた「まぁ、一万年前よりは、弱体しているが、憎き神族がいない世界など片手間で滅ぼすことができる力を持っている」と、その言葉を納得出来るような魔力を世界中に振りまいた。
「だが、それだと芸が無くつまらない。故にある条件を満たすことが出来れば、滅ぼすことはやめよう」と、少し笑っていた。
「その条件は、百年に一度聖女と呼ばれている女を我に生贄として差し出せ。」
「条件の返答は、明日封印の地に今いる聖女を送ることだ。いい返事を期待しているよ」と、言って投影魔法が消えた。
男は、気づけば手から血が出るほど手を強く握りしめていた。そして、自身が愛しきものと思っている聖女に目線を向けると、顔は青く、体はブルブルと震えていた。その光景を見た男は、聖女を抱きしめ、言葉を掛けようとした。だが、その瞬間。
コンコンとドアが叩く音が聞こえ、「大司教様がお呼びで御座います、聖女様」と、女の声が聞こえた。
その言葉を聞いて、聖女は震えた声で「はい、すぐ行きます」と、返した。男に少し行ってきますねと言って、聖女はを部屋を出た。
男は、部屋に一人になり、椅子に座り、椅子の背もたれにもたれかかった。そして、覚悟を決めた顔をして、もう使わないと思っていた装備の手入れを始めた。
先程まで和やかな雰囲気が流れていたが、もう部屋の中には、男が装備の手入れの音しか聞こえなくなっていた。
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