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第九話 愛しき君に祝福を

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 [封印の地]

 魔王の前から男は消え、次の瞬間、魔王の後ろにいた。短刀を魔王に突き刺そうとしたが、魔王にはばれていた。

 「そこか、人間」と言い、数十個の魔法が男に向かって飛んで来た。

 男は、その魔法らを影移動を使い、回避した。

 「それも気づいているぞ」と言い、投げ物も全部防いだ。

 男は、内心舌打ちをした。明らかにレベルが違いすぎることに。

 魔王は、「さぁ、まだまだ始まったばかりだ。早く、かかって来い」

 男は、「じゃあ、遠慮なく行かせて貰うぜ」

  次の瞬間、魔王の肌に傷が出来た。そして、傷口は紫色に変化していた。

 魔王は、「ほおぅ、毒か、しかも中々強力なものだな。だか、しかし我には効かないぞ」

 「まじかよ。その毒ドラゴンを一滴で倒すことができるのに」と、男は驚きを隠せなかった。

 「この程度のもので我に勝てると思っていたのか」と、言いながら、魔王は禍々しい剣を抜いた。

 「いや、これは前座に過ぎない。まだまだだ」と言い、男は構えた。

 [数時間後]

 戦いは、男が劣勢気味だったが、大きな負傷は、今のところなかった。だか、魔王もそれは同じである。

 男は、緊迫した戦いを行なっていたが、疲労のせいで反応が遅れてしまい、魔王に左腕を斬られてしまった。

 男は、痛みを我慢しながら、紐ですぐに止血を行い、回復薬を飲んだか、左腕は使いものにならなくなった。

 魔王は、「これで、左腕は使えまい」

 男は、「ああ、そうだな。だが、まだ俺は動けるぞ」

 男は、このままではただ死ぬだけだと思い、男の最後の切り札を出すことにした。

 男は、魔王の真正面から短刀を持って攻撃をしようとした。

 「愚直だな」と言い、手に持っていた禍々しい剣で男のことを貫いた。

 だが、剣が男から離れることは無かった。男は、筋肉で体の中で剣を止めたのだ。

 「離せ、人間よ」と言い、魔王は剣を抜こうとしている。

 男はそんな魔王の言葉を無視して、叫んだ。「人間たちよ、俺はこれから魔王を100年封じ込めよう。だから、100年の間に魔王を殺せる方法を作り出せ」と言い、変わった短刀を手に持った。

 魔王はその短刀を見て、驚いた。

 魔王は、「貴様、それは、封印の短剣ではないか。なぜそれを貴様が持っている」

 男は、「昔の依頼の報酬として、貰ったんだよ。やっと役に立つな」

 魔王は、剣を抜こうと必死になっていた。だが、それも途中で止まった。

 男が、黒いフードをとり、戦いの場に相応しくない穏やかな顔を浮かべていたからだ。

 男は、世界ではなくただ一人だけに届けるように言った。「君と出会えたことが幸せだった。ありがとう。どうか、これからも幸せになってくれ、君に祝福を」と言い残した。

 男は、魔王に封印の短剣を振り下ろした。そして、封印の地では時が止まった。

 こうして人間たちは、100年の猶予ができたのだ。

 そして、男は魔王に勝利したのだ。聖女が死ぬまで魔王から守ることが出来たから。

 
 

 

 
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