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第三十ニ話 空間の歪み
しおりを挟む悪しき者を倒した私は、稀代の英雄と呼ばれるようになった。
そんな大層な名前がついても私達の生活は変わることは無かった。
あれから日が経ち、この世界に来てから丁度1年になった。
今日は王城に呼ばれ、クラスメイト達と集まっているところだ。
話していると、空間が歪み始めただ。
私は、瞬時に装衣を身に包んだ。
そして、3人の前に立った。
空間の歪みは加速し、やがて全てが歪んだ。
空間の歪みが収まると、王城ではない場所にいたのだ。
近くには塔が立っていたが、周りはコンクリートの壁に囲まれていた。
コンクリートの壁だと?
まさか、帰ってきたのか。
元の世界に。
音が聞こえた。
車の。
やっぱり、元の世界だ。
その車は、自衛隊の装甲車だった。
自衛隊の装甲車が私達の近くに来ると、迷彩服に身を包んだ自衛隊員が降りてきた。
そして、89式小銃を向けてきた。
「お前達は、何だ?」
「私達は、古井高校の元2年3組の生徒だ。多分だが、1年ぐらい行方不明になっていた者達だ」
自衛隊員は、驚きの表情を浮かべていた。
「それを証明することが出来るか?」
私達は古井高校の校歌を歌い、日本の観光名所などを話した。
「にわかに信じがたいが、どうやら本当のようだな。それで、そこにいる少女達は?日本人ではないようだが?」
「あー、彼女達は、色々と事情があるのだ。ここでは、長くなってしまうので、別のところで話します」
自衛隊員は無線で、何かを確認し始めた。
5分ぐらいすると、無線を切り、私達の方にやってきた。
「後5分ぐらいに来るトラックに乗り込んでくれ。そのトラックで移動して、建物の中で色々と聞くことにする」
その言葉の通りに、5分後に迷彩柄のトラックがやってきた。
私達は、そのトラックに乗り込んだ。
10分ぐらいで、建物郡が見えてきた。
その建物の周りには塹壕が掘られ、トーチカや見張り櫓なども設置されていた。
何かに備えているみたいだ。
トラックは1番大きな建物の前に止まった。
そこで、トラックを降り、大きな部屋に案内された。
その大きな部屋の中には、自衛隊の将校が3人待っていた。
私達は今まで何があったのかを聞かれ、全てを答えた。
装衣のことを、サリーサとエノーアのことを、これまであったことを。
エノーアは、ハーフエルフだということを証明する為に、少し尖った耳を見せた。
こんなファンタジー作品みたいな話を自衛隊の将校達らは、直ぐに受け入れたのだ。
そのことを疑問に思っていると、自衛隊の将校の1人が説明を始めた。
説明を聞いた私達は驚いた。
どうやら、ここにはダンジョンがあるようだ。
場所は元古井高校みたいだ。
現れたのは、私達が異世界に行ってからみたいだ。
私達が召喚されたのは、この影響のせいだろう。
そして、自衛隊は偶に出てくる魔物を壁の外に出ないようにここで戦っているようだ。
「今の我々には、抑えることしか出来ない。どうか、日本の為に力を貸して欲しい」
皆は、躊躇した。
当たり前だ。
ダンジョンの中は、危険で溢れている。
だが、私は未来を掴む為に行く。
「分かりました。私がダンジョンに行きます」
「わ、我々としては有り難いが、本当にいいのか?」
「私はこう見えて、異世界では英雄と呼ばれていました。なので、戦います。まぁ、報酬に期待したいだけですけど」
「差し支えがなければ教えてほしい。何を報酬としてほしいんだ?」
「私の報酬は、重婚と2人の戸籍ですね。サリーサとエノーアの」
それには、自衛隊の将校達は驚きの表情を浮かべ、面白そうな表情を浮かべた。
「若いな」
話は纏まった。
少し休憩してから、ダンジョンに挑むか。
そんなことを思っていると、いきなり扉が開いたのだ。
その場の者の視線は、全て扉に集まった。
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