異世界召喚された装甲兵は、自分の意思で選択する

竹桜

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第三十七話 忘られた神

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 この世界に帰ってきてから、半年が経った。

 政府に用意して貰った家の中で、3人との同棲生活を楽しんでいる。

 ダンジョン踏破の報酬は各々が選んだ。 

 私は3人との重婚を、サリーサとエノーアは日本国籍を、純麗は家族との縁切りを。

 ちなみに、他の帰還者は家に帰った。

 今日は、3人は家の中にいない。

 街のカフェで、お茶しに行っている。

 こんな幸せな日々が続けばいいな。

 そんなことを思っていると、私は光に包まれた。

 次に気がつくと、知らない石壁に囲まれた空間の中に立っていた。

 瞬時に、装衣と発した。

 すると、重騎士の装衣が身を包んだ。

 直ぐにでも戦えるように周りを警戒していると、若い中性的な者が現れた。

 その若い中性的な者は神秘的な容姿をしていた。

 まるで神みたいだった。

 あれが、私を召喚した者か?
 
 そんなことを思っていると、その若い中性的な者は私に近づいてきた。

 「初めまして、異世界の、いや、異世界とこの世界の英雄」

 私はメイスを向けた。

 「貴方は?」

 「これは失礼。僕は忘れられた神。そして、君を召喚した者だよ」

 「忘れられた神だと?」

 「そう、忘れられた神だよ。異世界のね」

 忘れられた神は上を向いた。

 「ねぇ、英雄。僕の話を聞いて貰ってもいい?」

 「構わない」

 「ありがとう、英雄」

 忘れられた神は私の方を向いて、微笑んだ。

 「僕は千年前に信仰が途絶えてしまった異世界の神なんだ」

 「そして、信仰が途絶えたのは信仰していた大陸が崩壊したからなんだ」

 忘れられた神は気まずそうな表情を浮かべ、私の方を見てきた。

 「えっと、言いづらいだけど、実は君達を異世界に召喚したのは僕なんだ」

 「何故、私達を異世界に召喚したのだ?」

 「それはね、君達の中から英雄が生まれ欲しかったんだ。あ、それと、この世界に帰したのも僕だよ」

 「何故、そんなことをしたのか分からないが、まずは感謝したい。そのお陰で、自分の意志で選択でき、愛するべき者達に会えた」

 「僕の為にしたことだから、感謝はいらないよ」

 私は忘れられた神の目をしっかりと見た。

 「それで、何故私をここに呼んだんだ?」

 忘れられた神は満面の笑みを浮べた。

 「何でもないことだよ。僕と戦って死んで欲しいんだ」

 「なんだと?」

 「僕は全てに忘れられた神。僕自身の存在の証明をしたいんだ」

 「だから、死んでくれる?異世界とこの世界の英雄」

 忘れられた神は周りに雷を展開した。

 そうか。

 だから、自分の為か。

 自分の存在を証明するために、異世界に私達を召喚させ、英雄をつくったのか。

 その英雄を倒せば、自身の存在を嫌でも世界に証明出来る。

 悪しき者では無い。

 だが、私は死ぬ訳にはいかない。

 私には亡国の王女のサリーサが、ハーフエルフのエノーアが、元お嬢様の純麗が。

 私の帰りを待っているんだ。

 私は装衣と唱えた。
 
 第一次世界大戦の装衣が身を包んだ。

 MG08/15の銃口を忘れられた神に向けた。

 この場に静寂が訪れた。

 
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