【エッセイ】自転車泥棒 

ロボモフ

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人を傷つけない妖怪の使い方

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「あれどこ行った?」
 物は勝手に動かないから、動かしたのはあなたである。
 ほとんどの場合は捜せばすぐに見つかる。少し記憶違いがあったとすれば、少し外れた場所から出てくるだけ。
 少し時間をかけることで、少し頭を働かせることで、ほとんどの捜し物はすぐに見つかることだろう。
 だが、一生の間にごく希にではあるが「絶対に出てこない物」というのが、必ず出てくるのである。
 もしかしたら、あなたも覚えがあるのではないだろうか。

(あった物をなかっかことにするのは難しい)

「絶対にあるはず」=「絶対に見つかる」
 強い信念はモチベーションを持続させる。最終的に見つかる物なら、どれほどの労力を注いでも、その甲斐はある。
 だが、もしも「絶対に出てこない物」に対しても同じようなマインドで向かったとしたら、努力は失望に結びつくばかりである。

「捜し物」=「本当に大切な物」
 という場合は、簡単にあきらめられるはずがない。
 そうではなく、ただ「あるはずだから見つけたい」という意地が先頭に立って捜し物に当たっている場合、以下の解決法をお勧めしたい。

「絶対にあるはず」
 信念が捜すをやめさせない。
 結果、捜し物は見つからず、時間だけが失われていく。
 これは(二重喪失)だ。

(勇気を持って信念を手放すことも必要)

 自分の記憶や人を疑うことは心が痛む。
 そこで今回ご紹介するのが
「妖怪の仕業」
 唐突なようだが、あえて妖怪という少し離れた存在を持ってきて、そいつのせいにしてしまう。(勿論、本気で妖怪に罪を着せるものではない)
 離れているということが重要だ。(そう思えるなら、猫でも幽霊でも宇宙人でも何でもいい)

 自分のせいで物がなくなったのではない。悪い妖怪が勝手に持って行ってしまった。腹立たしいが、一番のお気に入りのじゃなくてよかったな。妖怪が持って行ったのなら、いくら捜しても見つかりっこない。でも、運がよければその内に返してくれるかも。
「自分では(自分たちでは)どうすることもできない」
 みんな妖怪に押しつけることによって、自分の心を軽くすることができる。
 妖怪には悪いが、これは「悪者をつくらない」という人間の術なのだ。
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