モテたかったが、こうじゃない 魔力ゼロになったおれは、あらゆるスパダリを魅了する愛され体質になってしまった

三ツ葉なん

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web版設定第二章

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「はぁー…、お腹いっぱい…」

はち切れそうなお腹を摩って余韻に浸る。もう大満足。

後から出て来たお米もふっくらほかほかで、肉汁と絡まって最高だった。

「幸せぇ…」

「そりゃ良かったな。でもお前王宮でも飯食ってたろ。そっちに比べたら大したことなくないか?」

「いやいや、兄貴そうじゃ無いんだよ。確かに王宮の料理もほっぺが落ちるくらい美味しかった。でも兄貴の料理は…こう…食べ慣れた味の最上級って感じ!」

分かるかな~。
もう、自分の語彙力の無さにうんざりする。

「とにかく凄く美味いの!」

「そ、そうか。…アイス食うか?」

え!アイスもあるの!?

「食う!」

「ははっ、腹一杯じゃねぇのかよ」

「デザートは別腹!」

「便利な腹だな」

兄貴がへにゃっと笑った。

おれ、兄貴の笑った顔好きだな。

炭酸が抜けたジュースみたい。

普段目が合っただけで殴られそうな顔してるからギャップが凄い。

いやまあ、ギャップならグランツ様もかなりあるんだけど…。

おれが考えに耽っている間に、空いたお皿を手際よく重ねて持っていこうとしている兄貴にはっとする。

「ごめんっ、おれ洗うよ」

「いいって、大した量じゃないしすぐ終わる。坊主はゆっくりしてろ」

そう言ってさっさと皿を持って行ってしまった。

お母さん…っ!
兄貴は兄貴じゃなくて、お母さんだったのね…っ!

色々誤解してました。ごめんね兄貴。
お礼はエプロンにしよう。

いやー、正直兄貴と2人でほぼ部屋に篭りっきりの数日なんてどう過ごせばいいか不安だったけど、こんなに美味しいご飯が出てくるんだったらむしろラッキーだよ。

なんだかんだ優しいし、話しやすい。
なによりみんなと違って変に特別扱いしてこない感じが落ち着く。

悪気が無いのは分かってるんだけどさ。
みんなおれの事どこか“女の子扱い”してくる感じが、…正直ちょっと嫌な時がある。

分かってる。
だってレイヴァン様達からしたらまさに絶世の美女に見えてるんだから当然だ。

でも、それでもおれは男だし。

やっぱり『可愛い』よりは『格好良い』って言われたい。

まあ…おれの周りにいるイケメンがガチのイケメンエリートだから、格好良いって言われてもお世辞に聞こえるんだけどね…。

環境が鬼畜過ぎる。

「ほらよ」

目の前にそっとアイスが置かれた。

ほらここにも料理も出来るエリートイケメンが…て、なんだこれは…っ!

ガラスの器に入ったバニラアイスにクッキーの耳が刺さってて、チョコで目と口が描いてあるそれはまさに、

「うさちゃん!」

うはっ、何これ可愛い!お店で出るやつじゃん!

おれがくだらない事考えてる間にこんな凄い物作ってたの…っ!?しかも洗い物までして?

此奴、女子力まで高いのか…っ!

「眺めてないで食えよ」

「崩すの勿体無い」

「溶けたらどうせ崩れるぞ」

「確かに」

ごめんねうさちゃん。

遠慮なく食べたアイスは普通に美味かった。

口の中がさっぱりする。

兄貴はコーヒーだけ飲んでた。

「あ、話は変わるんだけどさ、おれ聖女さんの事いまいち分かってないんだけど聖女って何するの?」

「ん?あぁ、確かに一般的には馴染みが無いかもな。なにせ直接関わりのある教会や王族ですら伝承レベルでしか知らないし。かくいう俺も詳しくは無いんだが、簡単に言うと『魔力を減らしてもらう』んだ」

「魔力を減らす?」

「誰のでもってわけじゃなくて、女性の魔力だけ減らせるらしい。ほら、女性は魔力量が少ないほど良いとされてるだろ?あれは男性側からより多く魔力を受け取って優秀な子供を成せると言われているからだ。つまり、魔力量の少ない女性が多いほど、優秀な人材が生まれやすいってこったな」

「じゃあ聖女さんに魔力量の少ない女性を増やしてもらうって事?」

「そう言う事。表立ってしてないが、聖女召喚の儀は毎年教会内で行われてる。でもまさか本当に聖女が現れるなんて思わなかったぜ」

「でも成功させる気でしてたんじゃないの?」

「言ったろ?伝承レベルでしか知らないって。残ってる資料も殆どない。分かってる事といえば聖女の役割と特徴、あと儀式の仕方くらいなもんだ。前に召喚出来たのが200年、その前なんか倍の400年だぜ。恒例行事くらいにしか思ってなかったよ」

「えぇー…」

そんな適当な感じで異世界に召喚されるなんて可哀想に…。
おれなら発狂ものだ。

「聖女には悪いが、俺達だっていきなり目の前におとぎ話の人物が現れたんだ。慎重にもなるだろ」

「そりゃそうだろうけど…」

なんとも迷惑な話だ。

「でもさ、おれ達にとっては良い事だけど、勝手に連れて来て働かせるって酷くない?聖女さんって元の世界に帰れないの?」

「帰れるぞ」

「帰れるの!?」

「条件付きにはなるが、女性から減らした魔力は消えるんじゃなくて何処かに貯まるらしい。で、魔力を貯めると神が現れて聖女の願いを1つ叶えてくれるんだ。それで何千年も前に来た聖女が1人、元の世界に帰ったらしい。殆どの聖女が魔力が溜まり切る前に恋人が出来てそのままこっちで暮らしたそうだ。ほら王族は全員光属性だが稀に闇属性が生まれるだろ?ありゃ聖女の遺伝だと言われてる」

「黒髪黒目で闇属性っぽいから?」

「それもだし、残った聖女はもれなく王族と結婚してるんだ。で、闇属性は王族からしか生まれない。闇属性の魔力量が多いのは聖女に魔力が無いからで、魔力暴走を起こしやすいのは異なる世界の遺伝子が安定できないからと言われてるんだ」

「へぇー。あ、それで聖女さんがレイヴァン様の魔力暴走を止めれるって言ってたのか」

「あくまで可能性だけどな」

ほへー。

本当に暴走しないように出来るんならしてもらいたい。

レイヴァン様はおれが吸うから大丈夫って言ってたけど一時的なものだし、暴走しないにこした事無いもんね。

でもみんなは警戒してるって言うか、聖女さんの事あんまり良く思ってないみたいだった。

確かにあの時の教会の人達は様子がおかしかったし、それもおれに対してかなり怒ってた。

流れで考えれば聖女さんが教会の人達に何かして、おれを攻撃した。って事になるのかもしれないけど、…引っかかってる事があるんだよね。

だってあの時、はじめは“普通”だったんだよ。むしろ変人に絡まれてるおれを同情的に見てた。
…助けてはくれなかったけど。

それってさ、はじめは敵意無いじゃん。
それっておかしくない?

あの人達がおかしくなり出したのって多分“聖女さんが侮辱された”と思ったからだと思うんだ。

別に偽物おれだから、じゃなかったと思う。曖昧だけど。

確かに聖女さんがおれの事“偽物”って言ったのは兄貴が聞いてるし、噂だって本当かもしれないけど…いくら気に入らないからって他人操って殺す!なんて考えるかな?物騒過ぎない?

「兄貴はさ、聖女さんの事どう思った?やっぱり怖い人なの?」

「うーん…、それがそうでもないんだよな…。いや、俺も教会の奴らが暴走する場に居たし、召喚されてすぐの様子は面食らった、噂話も聞いた。…けどよ、普通の子だったぜ。容姿は飛び抜けて綺麗だけど、別に色目使われたわけじゃないし。押しが強いだけで、我儘っつてもあれくらいの歳の女の子はあんなもんかなって。…悪りぃな、坊主は怖い目にあってるってのに」

「ううん、おれもそんな気がする」

おれも含めて、勝手に聖女さんの事“怖くて危ない人”にしてるだけなんじゃ無いのかなって。

「まあそこを確かめる為に王宮側も直接会うって準備してるんだ。とりあえず待とうぜ。俺もあんまり自分の意見に自信がない。司教の嫌がりようはだいぶ私情が入ってると思うけど、アイリーン様の仮説も言われて確かにってなったしな」

「…うん」

会った事無い人の事をあれこれ考えても答えなんて出ない。

おれが聖女さんを悪い人だって思いたく無いのも、多分会った事も無い人に恨まれてるかもしれないって考えるのが嫌だからだ。

だから出来れば違って欲しい。

「そう言えば変人の嫌がりが私情ってどういう事?」

凄く嫌いなんだなって事はおれもわかったけど。

「召喚した時に聖女が俺達目掛けて突っ込んで来たって言ってたろ。あの時主に司教が話し掛けられててさ、流石のアイツも気が動転してたんだろうな、暫くなすがまま異世界の言葉で畳み掛けられて固まってたよ。あれが相当嫌だったんじゃねぇかな。聖女の事避けまくってたし、アイツ」

「うわぁ…大人気無い…」

変人ヤバい奴だなって改めて思った。

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