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side フェリコット
side フェリコット6
しおりを挟むぐらりと体が揺れて、フェリコットは頭を抑えた。
「おい、大丈夫か?」と声をかけられた気がして目を開けると、目の前にいたのは記憶に残るトラヴィスよりも随分と若い ……婚約したばかりの頃の姿をしたトラヴィスだった。
「トラヴィス殿下……」
「名前を呼ぶなって言ってるだろ、具合が悪いならこんなとこ来るんじゃねーよ。さっさと帰れ」
「……はい」
フェリコットには何が起こったのか分からなかった。
ぐらぐらと頭が揺れるフェリコットは、「申し訳ありません」と頭を下げてその場をあとにすると、慌てて王都の公爵邸に帰り、そのまま倒れ込んで7日ほど寝込むことになった。
寝込んでいる間に、フェリコットの中でぐちゃぐちゃとめぐる記憶が整理される。
7日経ち、フェリコットが回復した頃。
フェリコットは自分が17歳になって、トラヴィスに最後通告を受けて、ショックのあまり逃げ出した悪夢を見たのだと思った。
ひどく生々しい、記憶に残る悪夢だ。
うまく思い出すことはできないが、あの酷い悪夢の中でフェリコットは最期、あの野盗に殺されたのだろう。
女性として、人間としての尊厳を奪われて、辛くて苦しかったような気がしたけれど、酷い悪夢だったというだけで、現実感はまるでなかった。
ひどい暴力の記憶が無かっただけ救いだったかもしれない。
「……嫌な夢を見たわ。トラヴィス様の婚約者になれたって言うのに、酷い夢」
フェリコットは、正夢になりませんようにと祈りながら、夢と同じ人生をなぞった。
夢と同じことが起こる度に不安にはなったが、持ち前の前向きさで不安を見ないようにしていた。
そのなぞった先で、やっぱりトラヴィスはフェリコットの事を嫌っていたけれど、フェリコットは気にしないようにしながら夢と同じように振舞っていた。
そんなまさか、そんなことがあるはずない。
そう、何度も何度も自分に語り掛ける。
けれども、入学して1年通った頃。
学院に、リエラヴィアが入学してきて、フェリコットは悪夢が正夢になっていることに気がつかざる得なくなった。
フェリコットはリエラヴィアをそのままにしておくことはできなかった。
トラヴィスを盗られてしまうという想いから、嫉妬と恐怖のあまりリエラヴィアに苛めをはじめた。
すれ違いざまに嫌味を言い、人を使っては貴重品を盗ませ、ある時は怪我迄させた。
あの夢さえなければ、夢と同じように耐えられただろうが、悪夢に怯えるフェリコットには耐えられなかった。
「あなたさえ、あなたさえいなければ」
やがて、癇癪を起こして暴力を振るいだした頃にはとめられなくなっていた。フェリコットは嫉妬のあまり、ならず者を雇ってリエラヴィアの命を狙った。
リエラヴィアさえいなければ、自分はあんな哀れな最期を迎えずに済むのだと信じて疑わなかったのだ。
だからならず者を雇い、リエラヴィアを襲わせた際。
リエラヴィアを守ろうとトラヴィスが巻き込まれて怪我をするだなんて、まさかそんなことが起こるとは思わなかった。
「フェリコット=ルルーシェ・フォルケイン。お前を断罪する」
あの日と同じ卒院式の日に、トラヴィスはフェリコットをそう言って断罪した。
悪夢の中と違って、今回のフェリコットは第三王子に危害を加えたほか、罪をいくつも侵していて、極刑を免れなかった。
それでもフェリコットは絶望しなかった。
「私は悪くない。きっとトラヴィス様が助けてくれる」
そう祈りながら、王宮の貴族牢に軟禁され、そうして迎えた処刑の日。
フェリコットの見つめる先で、トラヴィスが汚物を見るような目でフェリコットを見つめ、首切り処刑人に刑の執行を求めたのを見て、フェリコットが絶望したと同時に、その首が綺麗に宙を舞った。
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