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side トール
side トール 4
しおりを挟むフェリコット=ルルーシェ・フォルケインと、トラヴィス・リオブライド・ランフォールドが2人きりで四阿にて話をしてる一方、フォルケイン公爵夫妻と国王夫妻、それからトラヴィスの兄王子2人と、フェリコットの兄2人はこの機会にと茶会を楽しんでいた。
楽しんでいた、と言っても「あとは若い二人で」と言って微笑ましく談笑していたのは大人たちだけで、兄達は少しだけ思いつめた顔をしてため息をついていた。
フェリコットの兄2人は、言わずもがな。
可愛い妹の、可愛くない頭を抱える性格がトラヴィスに露見して、このめでたい婚約がご破算となるのではないかという胃痛からだ。
2人にとって、フェリコットは我儘だが可愛い妹である。
だがしかし、高慢で傲慢で我儘な妹の性格が、王子妃に向いてるかと言われたら「無理です」と声を揃えて答える、常識をわきまえている。
いくら初恋に覚醒したからと言って、フェリコットの性根は高慢で傲慢で我儘で、真っすぐで素直で、負けず嫌いの、健気で一途で全力で前向きな……めんどくさい性格のままであった。
単純にこの縁談を「長年の想いが叶った」と喜んでいる両親には悪いが、フェリコットの性根と内面を知っている、常識を持ち合わせていた兄2人は、フェリコットは王子妃に向いていないと思っていたし、この顔合わせで何かしら起こるのではないかと不安に苛まれていた。
「フェリ、浮かれておかしなことをするなよ」
「もちろんですわ! 私がトラヴィス様をどれだけお慕いしているか、きちんと伝えて参りますわ!」
「やめなさい。ぐいぐい行き過ぎると引かれるから、大人しくしなさい」
これが今回の顔合わせ直前、馬車の中での会話である。
心配するなという方が無茶であった。
その一方で、兄王子たちは弟であるトラヴィスを心配していた。
2人の王子からして、年の離れた第三王子であるトラヴィスは、とてつもなく可愛い弟だが、トラヴィスは若干の女性不信と人間不信を患っているためだ。
幼い頃から精霊の御使いのようだと褒め讃えられた美貌を持ち、国王夫妻と兄王子たちに可愛がられていたが、その美貌と第三王子という立場故に、気がついた頃には侍女に悪戯され、貴族令嬢に追い回され、トチ狂った未亡人に誘拐されそうになったりと散々な目に遭わされた結果、性格悪く人を遠ざける、我儘な高慢王子に成長してしまった。
身の回りの世話は殆ど侍従任せ、信頼できる女性は王妃と乳母くらいで、公的には王子として最低限の礼儀を演じるものの、裏……殊更兄王子たちの前では不満を漏らしてばかりだった。
「女なんてクソだから。あいつら、俺の顔と身分に恋してるだけで、俺のことなんて何もわかっちゃいない。そんなのと一生一緒にいるだとか吐き気がする」
その綺麗な顔を歪めて、そんな暴言を吐く弟を諫めたいが、今までのことを思えば否定もできない。
可愛がることだけしかしてこなかった父と母も悪かったのだが、彼らは己の罪に気がついていないから論外だ。
そんな風に育った、性格が壊滅的にやばい弟が、政略的な婚約者を得ることとなって、何かが起こらないわけがないと兄王子2人もまた、フェリコットの兄達同様胃痛と戦っていた。
しかも相手は、長くトラヴィスを想ってくれていると有名なフェリコット=ルルーシェ・フォルケインである。
10歳でトラヴィスに恋をして以来、その隣に立つために努力した公女は先日のデビュタントで大輪の花を咲かせた。
高慢で傲慢で、我儘だった性格は見る影もなく、トラヴィスの御前に立った時の恋しい相手に会えたという隠しきれない喜びがにじみ出る、健気で一途な少女が、トラヴィスの暴言に傷つけられませんようにと祈りながら飲む茶は、まるで味がしなかった。
うふうふおほほ、いやいや、はははと互いの両親が婚約を喜んで談笑してるのを尻目に、四人は味のしないお茶にドバドバと砂糖を入れて無言で戦っているのだった。
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