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第一章
第一話「今年こそ平穏に」
しおりを挟む「っ…!」
目が覚めると思いっきり起き上がる。息が苦しい、心臓がドクドク鳴って五月蝿い、汗が溢れて暑い、頭が痛い
あれは……あの時見えたのは、私だった。幼い頃の私。でも…変だ、あんなの…私の記憶に無い。っていうか魔法陣って何だ?
「………いや、深く考えるのは辞めておこう」
寝具から出ると、壁にかけられている制服を手に取り寝具に置く
黒が基調とした制服、灰色の襟に赤いリボンが目立っている。私が今年から通う事学校、真熊学園の制服だ
パジャマを脱ぎ、たたんで寝具にボンッと乱雑に置くと、制服をハンガーから外し腕を袖を通していく
私の名前は藤乃 凛檎。面倒事を嫌う女子学生である
「うーん、少し大きいけど……まぁ良いかな」
制服を着ると、クシを取って大きい鏡の前に立ち、ボサボサの髪をとかしていく。桃色の長い髪がクシに引っ掛かって痛い
髪をとかし終えると今度はゴムを取り髪をしばっていく、このしばるのも慣れたものだ。最初はやりづらくて変な方向にしばっていた、懐かしいな……
にしても、今日で高校生かぁ。友達作るの楽しみだな、と思いクスッと笑う
「…っと、もうこんな時間か。こりゃゆっくりしてる場合じゃないな、早く朝ご飯食べないと」
と言いながら私は白い靴下を履いて、階段をおりていく
階段をおりると途端に良い匂いが私の嗅覚を奪った、この匂いは……
「卵焼き!?」
「えぇ、正解よふーちゃん」
そう言って叔母さんは振り返りふふっと笑う、この人の名前は藤乃 宮古。私の叔母でお母さんみたいな人。ちなみにふーちゃんというのは私のあだ名だ
「わーい卵焼き! 」
「相変わらず元気ねぇ。ちょっと待っててね、もうすぐ出来上がるから」
「分かりました!」
私は昔から卵焼きが好きだ、何処のお店の卵焼きも美味しいのだがやっぱり一番はお母さんが作った………お母さんが、作った……作った…
っ……慌てて暗い気持ちを振り払う。駄目だ、思い出すな、思い出せば辛くなる。そうだ、学校の事を考えよう。友達、友達を作ろう。部活にも入りたいな。あとはー学園! 学園だから多分寮があるんだよね、楽しみだなぁ
「はい、卵焼きと味噌汁とご飯」
「あ、ありがとうございます叔母さん」
目の前には美味しそうな卵焼き、味噌汁、ご飯。ご飯にはふりかけがかかっている、なんの振りかけだろう
ご飯を食べながら私はテレビをつける、この時間帯はニュース番組ばっかりだ。ポチポチと私は数字が書かれたボタンを押して番組を変えていく、しかし面白そうな番組は何処も無い
はぁ…と溜息をつきテレビの電源を落とす、時間が来るまで私達は一言も喋らなかった
「本当に大丈夫なのかい?」
「大丈夫だよ叔母さん」
相変わらず叔母さんは心配性だなぁと思いながらローファーを履く、でも私も少し不安だ、またあの時のような事が起こらないか心配だ
靴を履くと、私は鞄を背負って立ち上がり叔母さんの方を向く
「それじゃあ、行ってきます」
「変な人に着いて行っちゃ駄目だからね?」
「大丈夫だって、もう子供じゃないんだから」
「そう……」
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、ふーちゃん」
扉を開けて私は出て行く
大丈夫と私は心の中で呟く、私は変わったんだ、大丈夫だ、あの時みたいな事件は今の所起きていないし……大丈夫。うん、大丈夫だ
目的地に向かう為、足を動かす
今年こそ、私は平穏に過ごすんだ!
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