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たぬきに化かされた話

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 まだ8歳だった頃。

 両親共働きの俺の家は、夏休みにクソ田舎のばあちゃんの家に預けられるのが保育園の時からの恒例行事だったもんで、8歳の時の夏休みもクソ田舎のばあちゃんの家に預けられていた。

 周りには、俺以外は子供なんていない様な本当に田舎で当時既に『過疎化』という言葉がぴったりの場所だった。

 ある日、俺は1人で竹藪で遊んでいた。虫取りに飽きて、竹藪の中を探検したくなったんだ。
 竹藪の中は夏だけどかなり涼しい。
 
 汗だくだったんで、俺は一本の竹を背もたれにして座って休むことにした。
ばぁちゃんが持たせてくれた水筒のお茶を飲んで一息ついた。5分くらいしたらサクッサクッと葉っぱを踏む足音がしてきた。音のする方を見るとばあちゃんが手招きしていた。

 ばぁちゃんが迎えに来てくれたんだ。

 俺は、もう帰る時間なんだと思って立ち上がり、急いでばあちゃんの方へと向かった。

 ばぁちゃんは、俺を待つ事なく歩き去っていく。

 あっという間に見えなくなった。
 と思ったけど、やがてばぁちゃんが見えてきた。


 俺は、そのばぁちゃんに着いて行った。


 しかし、行けども行けども辺りは竹林。

 「ばぁちゃん、まだー?つかないのー?」
  俺は、大声で尋ねるた。
「まだまだだよ。」
 ばぁちゃんはそう答えた。
 
 この会話を何度も繰り返した。

 そのうち、俺は疲れて眠くなってそこら辺に座り込んで駄々をこねた。そしたら、ばあちゃんがおんぶしてくれた。

 そのうち俺は、眠くなってぐっすり眠ってしまった。



 そしてその頃、俺は家族に大捜索されていたらしい。
 何でも、ばあちゃんの家を飛び出していなくなったんだと。

 俺は、結局丸2日もばぁちゃんちに帰っていなかったらしい。
 捜索願とか出されて、ばあちゃんちの村中の人が俺を探し回ったとか。


 結局、俺はばあちゃんちの家から5キロほど離れた街中に倒れていたところをほごされた。

 その後1週間、俺は高熱で寝込むことになる。その間に、竹林での出来事を話した。

 俺は、ばぁちゃんが水筒を持たせてくれたことやばぁちゃんが迎えに来て竹林の中を2人で歩いたこと、そのうち疲れて座り込むとばぁちゃんがおんぶしてくれたこと。そして、寝てしまったことを話した。


 結果、ばぁちゃんは水筒なんか持たせてないし、竹林に迎えに行ったりしていない。何なら、竹林は俺が飛び出して行ってすぐに探したが俺の姿はなかったとのこと。

 そもそも、水筒も持たせてないなんて。じゃあ、アレは誰だったんだって話。
 

 それに、2日も行方不明だったのもよくわからない。ちなみに俺の体感では1日も経っていない。

 それなのに、2日も帰らなかったなんて。


 ばぁちゃんは言ってた。

「たぬきに化かされたんだろうって」

 この地域には、たぬきが多い。
 そして、よくたぬきに化かされる人がいるとのこと。

 俺はたぬきに化かされたその1人になったのだ。


 もう40年くらい昔の話。
 


















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