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最終回
しおりを挟む「どーこー?」
軽い口調。
呑気な声で、俺を呼んでいる。
(こいつ、サイコパスか…?)
俺は息を潜めた。
田中絢音は、ぐるりと周りを見回すと「わかってるよ!」と一言言った。
「みっけ」
そう声が聞こえた。
血走った、何度も見たことがある、田中絢音と目があった。
「全部わかるよ?」
俺は黙っていた。
背筋を冷たい汗が伝う。
吐きそうだ…。
息がうまく吸えなくて、苦しくてたまらない。
「なんでここがわかったか知りたいよね?」
聞いてもいないことを、田中絢音は説明し始めた。
「広告のチラシをドアに挟んでたのも、私。あと、私からの愛のメッセージが書かれた紙、SNSに乗せてくれて嬉しかった!!あの投稿を見つけて、確実に家を特定できたの。」
「わかった?運命なんだよ。」
とてもじゃ無いが、声を出せる様な状況じゃ無い。
完全に腰が抜けて、体に力が入らなかった。
「じゃあ、私のものになろうね。」
そう言って、俺は田中絢音の持っていたナイフで刺された。
刺した当人は、俺から溢れる血を、「勿体無い…。」
と呟きながら試験間の様な小さい筒を取り出して集めていた。
逃げ出したいが、もう無理だ。
ただでさえ苦しい呼吸がもっと苦しくなって、やがて息が吸えなくなった。
意識を失った。
************
俺は、異変を感じていた同僚のおかげで、一命は取り留めた。
田中絢音は、もちろん殺人未遂で逮捕された。
でも、今年、出所する。
たぶん、また、狙われる。
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