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山田くんの幸せ【有希】
しおりを挟む「僕、母親はいないんです。小さい頃はいた気がするけど、いつの間にかいなくなったんです。だから今は父と2人暮らしです。」
「なんとなく、その事は知ってるよ。」
「ちっさい頃から、父親は結構荒れてて。でも、酷くなったのは僕が中学に上がってからです。そんな感じです…。」
重い空気が流れる。
「そうなんだ。話してくれてありがとう。」
結局、あんまりちゃんと話せなかった。ほんとは、もっと話したかった。
僕がいつもどんなに辛い事に耐えているか、先輩に聞いて欲しかった。先輩と、痛みを分け合いたかった。
(誰かにわかって欲しいって初めて思ったかも。)
先輩が僕の心を開いてくれたから、先輩の事が好きだから、僕のことを知って欲しいと思うのかもしれない。
「じゃあ、寝ようか。」
「おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
僕たちは、お互いに向き合う。僕は、先輩の長い手足にホールドされてしまう。
2人で静かに眠りについた。
**********
俺は、目を瞑ってあまりにも残酷な山田君の運命を今後は良い方向に変えてあげたいなって思った。
そのためには、山田くんと山田くんの父親を引き離すしか方法はない様に思う。
山田くんを見てればわかる。
殴られたり蹴られたりの身体的な暴力だけではない。
多分、性的な虐待も受けてる。
だって、下半身にもたくさん引っ掻き傷があった。特にお尻の周り。
そんなところ、裸じゃないとつけられないよね?服の上からでもできるもんかな?
俺は、離島の田舎で生まれたけど、両親は医療関係の仕事をしていて忙しいけれど大事に育てられた。
その分、誰かを、山田くんを幸せにできたら、と思う。
近くの大学に進学して、アルバイト頑張って、もっと広い部屋に移り住んで、山田くんと同棲しよう。
そんなことを考えながら、僕は明日に備えて眠りについた。
応援ありがとうございます!
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