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体調不良で…2【有希】
「すみません、山田 有希くん、いますか?同じ高校の、生徒会の者です。」
呼び鈴が鳴って、しばらくして、蓮也先輩の声がした。
なんで、うちに…。
気持ち悪いまま、這ってでも玄関に行こうとする。
「突然申し訳ございません。川中と申しますが。山田様のお宅で間違い無いでしょうか?」
丁寧に呼びかける声に、胸が高鳴る。
体がうまく動かない。
ゆっくり玄関まで向かう。
鍵を開ける。
すると、僕がドアノブを回す前に、先にドアノブを回されてドアが開いた。
「有希くん!?」
「せんぱい…。」
玄関で横たわる僕を見て、蓮也先輩がすかさず抱き起こす。
「どうした?なんかされた??救急車呼ぼうか。」
僕は首を横に振る。
蓮也先輩は、僕が虐待されたのでは無いかと心配しているのだ。
僕を抱き上げて背中を撫でる。
今更ながら、この部屋臭いのに、と思って恥ずかしくなった。それに、僕もかなり汚い。何度も嘔吐と下痢を繰り返してるから。
「食あたりで。」
「え、大丈夫?具合悪いの?」
「きもちわるい。お腹痛い。」
頭を撫でられながら、「どうしたらいい?今も吐きそう?」と尋ねられたので頷く。
「トイレ」
なんとか一言、発すると、蓮也先輩はドアが開いたままのトイレに連れて行ってくれた。
そして、背中をさすってくれる。
また、胃がギュッと収縮して、おぇっとさっき食べたプリンを吐き出した。
「大丈夫だよ、俺がいるから。」
よかった、本当によかった。
力が抜けて、後ろにいた蓮也先輩の方に倒れ込む。
しっかりと受け止められて、抱きしめられた。
「ごめんね、もっと早くくれば…。」
そんな優しい言葉を掛けてくれたのは嬉しいものの…。
「父親が帰ってくるかもしれないから。もう、僕大丈夫だから。」
実際に、蓮也先輩の顔を見て安心したのと、蓮也先輩に触れられて、心なしか体が楽になった。
「じゃあ、うちにおいで。こんな状態でほっとけないから。ね?」
僕の返事を待たずに、蓮也先輩はスマホを取り出してどこかに電話する。
すぐに、「タクシー来るから。」と、僕に靴を履かせて、おんぶして、道路に出た。
タクシーは、すぐに到着した。
タクシーなんて初めて乗った。
そもそも田舎暮らしなのに、まともに車に乗ったこともない。
「〇〇町〇〇番地、〇〇アパートでよかったですか?」
「はい、お願いします。」
蓮也先輩は、慣れているらしい。
僕は、蓮也先輩の膝に頭を乗せて体と力を抜いた。
「妹さん?それとも彼女さん?具合悪いの?」
タクシー運転手さんと蓮也先輩は、会話している。
「彼女です。急に体調悪くしちゃって。」
背が低くて、髪が長くて、顔が幼いからか、よく女の子に間違えられることはある。でも、高校生になってからは初めてだ。
「彼氏さんは、〇〇高校?」
「そうですよ。」
「へー、何科なの?」
「一応、これでも特進にいるんです。」
大人と上手に会話する蓮也先輩。
僕と2個しか変わらないのに。
「へー、じゃあ東大にでも入るのかな?」
「そんなそんな。地元に残るつもりですよ。」
「えー、イケメンで頭いいのに。もったいないね~。」
蓮也先輩、地元に残るんだ。
初めて聞いた。
そんな会話を聞いていたら、蓮也先輩の家の前についた。
支払いをして、ドアを開けてもらう。
またおんぶされて、蓮也先輩の部屋に連れて行ってもらった。
「タクシー代…。」
「気にしないで。俺のエゴだから。」
この一言が、蓮也先輩の優しさだと思う。
安心する。蓮也先輩の匂いに満ちた部屋。
ベッドに座らされて、コップに冷たいスポーツドリンクを入れてもらった。
一口飲むだけで、体に染み渡る気がした。
「美味しいです。」
「よかった。学校に来ないから心配だったよ。」
そう言って蓮也先輩が僕を抱きしめた。
「苦しかったね。ごめんね、遅くなって。」
抱きしめながら頭を撫でてくれる。
「来てくれて、よかったです。嬉しいです。」
うまく感情を伝えられない。
「病院、行く?」
「病院は、嫌いだから。」
「じゃあ、元気になるまでうちにいて。ね?」
「はい。そうします…。」
いいのだろうか、迷惑にならないのか。
でも、力がまだ抜けてまた、眠くなってきた。
それを察して、蓮也先輩が布団をかけてくれた。
「布団、汚れる…。」
「いいの、洗えばいいから。」
せめて、拭かなきゃ汚いです、と訴えると、ちょっと待ってて、と蓮也先輩は、お風呂場に向かって歩き出してしまった。
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