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泣いてもいいよ【有希】
約束の日がまた近づいた。
今日も通り起きて学校に行って、蓮也先輩と帰宅して、一緒にご飯を食べたしお風呂にも入った。
このまま何も変わらない様な気がする。
もう、すっかり住み慣れてきた、蓮也先輩の家。2人の匂いが染みついた布団。一緒にご飯を食べるテーブル。そして、今もまさに蓮也先輩が受験勉強に励む勉強机。
先に眠りについた僕のために、蓮也先輩は薄暗い中で必死に勉強している。
ベッドの中から、眠くてぼんやりする目をうっすら開きながら、蓮也先輩の後ろ姿を見つめる。
布団の中がこんなに暖かいなんて知らなかった。他人の匂いに安心する事があるなんて知らなかった。抱きしめられた時の安心感も、蓮也先輩が教えてくれた。
蓮也先輩は、すごい。優しい、たくましい、かっこいい。
このまま、ずっと一緒に居られるならどんなに幸せだろう。
この先どうなるのかわからない不安と、蓮也先輩と離れ離れになるかもしれない不安で自然と涙が溢れた。
声を押し殺して泣いた。
息が少し荒くなるのを堪えた。先輩に心配かけたくないから。
胸がギュッと痛くなった。
涙が止まらなくなり、鼻を啜った。
「どうした?」
音に反応して蓮也先輩が振り向く。
「なんでもない…。」
声が掠れる。泣いてたのバレたな。
「なんでもないわけないじゃん。」
「本当になんでもない。」
勉強の手を止めた蓮也先輩がこちらに近づいてくる。
布団に顔を隠そうとすると、先に布団を思いっきり捲られてしまった。
「おいで。」
強引な行動とは裏腹に、蓮也先輩が優しく囁く。
(甘えていいの…?)
「辛いよね。怖いよね。寂しいよね。大丈夫だからね。」
迷う僕の体に覆い被さってきた先輩が抱きしめる。
僕も先輩の腰に手を回して抱きしめ返した。
蓮也先輩の体温に安心感を覚えて、スッと体から力が抜ける。
「好き。」
蓮也先輩に伝える。
今のうちに。
「俺も。大好き。」
そう言いながら触れるだけのキスをされる。
僕に対してあまりにも優しすぎる。
自分の中の感情がごちゃ混ぜになって、もっと涙が溢れた。
「すき…。せんぱい…。」
腕に力を込めると、蓮也先輩が頭を撫でてくれた。
子供みたいな僕を大事にしてくれる人がいる。こんな幸せ、もう金輪際味わうことはないだろう。
涙が止まらない僕に、蓮也先輩は、何度も何度も繰り返し「好き」と触れるだけのキスをくれた…。
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