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耳掃除【有希】
翌朝。
いつの間にか寝ていた僕は朝を迎えた。
瞼が物理的に重たい。
瞼が開かなくて何も見えない。
隣に蓮也先輩はいない。
「蓮也先輩」
名前を呼ぶと、「起きたね!おはよー!」と元気な蓮也先輩の声がした。
勉強机の方向に気配がする。
「目、腫れちゃったね…。一杯泣いたもんね。」
そうか、泣いたから目が腫れてるのか。
泣いたら目が腫れるのか。初めて知った。
思考がぼんやりしている上に、体が怠い。
蓮也先輩が部屋をウロウロしている気配を感じる。
それから蛇口から水が出る音。
起き上がる気力がなくて、ベッドの上で目覚めた格好のまま待つ。
「はい、冷たいタオル。」
目の上に冷たい何かを置かれる。
濡れタオルだと思う。
ヒンヤリした感覚に、ちょっとびっくりしたが気持ちがいい。
「腫れが引くまでしばらくこうしててね。」
そう言って蓮也先輩は、僕の頭を撫でる。
「有希くん、辛い時は我慢しなくていいからね。俺の前で泣いて良いし。強がらなくて良いからね。」
子供の頃、父親の彼女が家に犬を連れてきたことがあった。小さい犬で、頭を撫でてやると目を細めて、もっともっと、と要求してくる様な可愛い犬だった。あの頃の僕は、頭を撫でられる事なんて無かったから、何度も要求される理由が分からなかった。
でも、今なら分かる。頭を撫でられると気持ちがいい。心地よい。
数分経って、目の上の濡れタオルを外される。
「目やにとるから、目、瞑っててね。」
蓮也先輩が、僕の目の周りを拭いてくれた。
何から何までお世話される。
「有希くんさ、耳痒くない?」
「痒いかも…?」
耳のことなんて普段考えてない。でも言われてみたら痒いかもしれない。
「ちょっと汚れてるから耳掃除しても良い?」
「あ、えっと…。お願いします。」
耳掃除か。したことないかもしれない。
綿棒を持ってきた蓮也先輩に膝枕してもらう。
ガッシリしている太ももから優しい体温を感じる。
「痛かったら言ってね。」
「はい」
他人に耳を触られるなんて初めてで。
くすぐったくて仕方がない。
「早く気づいてあげれば良かった。痒かったよね?」
「そう言われると、そうかもです。汚かったですか??ごめんなさい…。」
「いいよ。綺麗にしてあげる。」
人は人をこんな風に大事にするのか。
知らなかったよ。
耳の中でゴソゴソ音がする。
ただ、掃除をされてるだけなのに、なぜか安心する。
「気持ちいいです。」
「なら良かった。」
「よし、反対向いて。」
くるっとひっくり返って反対の耳に触れられる。
先輩の手は、大きくて僕よりゴツゴツしてる。
運動部だったし、体が大きいから手も大きいんだな。
ゴツゴツ感とは裏腹に、繊細に僕に触れてくれる。
「こっちも気持ちいいです。ありがとう、ございます。」
「うん、綺麗になったよ。」
そう言って、蓮也先輩は、僕の頭を撫でた。
僕は、心臓がホクホクするのが気持ちよくって、腫れの引いた目を瞑った。
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