ekleipsis

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一章

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「おい、何処へ……!」

「ちょっと小屋の中で待ってて!水浴びてくっから!」

後ろで戸惑った声を上げるヴァンには悪いが、少し待っていてもらおう。
目指すは小屋からちょっと降った所にある綺麗な川。
水はうまいし魚もいるし景色もいいしで、俺のお気に入りの場所でもある。

五分程まっすぐ走ると、キラキラと輝く水面が木々の間から見えた。
すぐさま川のほとりに服……というか泥の塊を脱ぎ捨て水面へダイブ。
まだ季節的に水がちょっと冷たいが、とても気持ちいい。

「ふう……。」

思わずため息が出てしまった。
が、あまりゆっくり水浴びを楽しんでいる時間はない。
ザブザブと泳いで対岸へ渡り、たくさん生えている木の中から
お目当のものを探す。
すっぱだかでうろつく姿はなんとも滑稽だろうが、俺しかいないから大丈夫だ。

「お、あったあった。」

赤白黄色ピンク……いろんな色の実を実らせる木々の中から
紫色の実を一個いただく。

この実は名前はわからないが石鹸代わりによく使っているやつだ。
実を潰して手でこすり合わせると泡が出て、全身キレイサッパリ
ピッカピカになれる。
ちなみに匂いは甘いような煙っぽいような辛いような、まるで異国のものみたいな
なんとも言えない匂いなんだが、これで体を洗ってから村に降りると
女の子達からのウケが抜群によくて毛皮もいつもより売れたりする、という
もはや商売道具として欠かせないモノだ。

ささっと洗って全身泡だらけになったらまた川へダイブ。
よく洗い流したらいつもは全裸で走って、小屋へ行くまでの間に
自然乾燥させるんだが、今日は流石にヴァンが居るのでタオルで体を拭く。

さっき小屋から持ってきたのはシンプルな黒のYシャツと
同じくシンプルな黒のズボン。それから裾が脛くらいまである長めの黒いコート。
いらないかと思ったけど、水浴びしてやっぱり少し体が冷えたのでコートも
持ってきて正解だったな。

ただ中に着る服は上下ともちょっとピッタリめの服なので
半乾きの肌に張り付いて気持ち悪い。こっちは持ってくる服間違った……と
少し後悔。
まあ走れば乾くだろう。ってことで小屋に向かって走りだす。
また五分ほど走り、見えてきたのは小屋の前で棒立ちのヴァン。

「なんだ、中入っててよかったのに。」

「……こんな不気味な小屋に入れ、る……か……。」

不気味とは失礼な。
草をかき分けヴァンの方へ歩み寄る。
嫌そうな顔をしていたヴァンがこちらを向いた瞬間
ヴァンの目と口がみるみるうちに大きく拡がり、何やら口をぱくぱくさせている。

「おま……おま、ニュ……」

「うん?」

「……お前、ニュクスなのか?」

「そうだけど。」

なにやら驚いた顔のヴァンに、また本人確認された。
不思議に思っていると、ヴァンは驚いた顔から何とも言えない……
何かまずいものでも食った時みたいな顔になった。
なんなんだよ?

「……まあいい。とにかく行くぞ。時間が無い。」

そう言ってスーツの胸ポケットから出したのは
緑色の小さな石。

「今から学園に飛ぶ。俺の肩に掴まれ。」

ほお。ってことはあの緑の石がてんいまほうぐってやつか。
一体どんな風に瞬間移動するんだろう。
ちょっとワクワクしつつヴァンの肩に掴まると、なぜかまたなんとも言えない顔をした。

「ん?……ああ、ごめん。力強かった?」

「……黙ってろ。」

ワクワクのあまり、手に余計な力が入ってしまったのかと思って
聞いたんだけど……まさかまだ臭うのか?
不安になってくんくん臭いを嗅ぐ俺をスルーして
ヴァンはなにやら呪文を唱えていたらしい。
俺たちの周りを真っ白な光が包みこみ、一瞬内臓がせり上がるような浮遊感。

「うっぷ」

初めての感覚プラス空腹のせいで余計にきついぞこれ。
何も腹に入ってないけど戻しそう……。

下を向いて顔をしかめていると、突然光が消えて足元に地面の感触。

「着いたぞ。」

ヴァンの声に顔を上げるとそこにあったのは。


「……城?」


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