俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

金策の模索

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「そう言えばコルト」
「はい?」
「ここに来る人の防具とかも作ってたんだよな」
「あ……ごめんなさい。受け取ったアイテムをどう組み合わせても、コウジさんのお店で売っても差し障りがない物が作れなかったので……」

 謝られてもこっちは別に気にすることでもないが。
 店の収入を優先してほしいという気持ちは強いが、店の利益にならないものの製造は禁止してはいなかったはずだ。

 にしても、金属の加工とかよくできるもんだ。今更だけど。

「その防具とか完成したら、誰かに譲る前に俺にも見せてほしいんだけど」

 万が一にも商品にできる物があるかもしれん。
 こっちの方で防具って言ったら、すぐに思い浮かぶのは剣道だよな。
 似たような物があったら売ってみようか。
 でも品質保証とか、あるいは武道具店とか購入者からのクレームがあったら対応しきれないか。
 ま、売り物にするかどうかは見てから考えるか。

「嬢ちゃんが作った装備品なら俺もつけてるぜ。別にこれを目当てにして助けたわけじゃなかったけどな」
「分かってますよ。私だって、作った物をあんなに褒められるなんて思いもしませんでしたから」

 コルトを助けた男戦士が、両腕の小手と上腕の防具を見せに来た。

 ここにいる者達全員の装備は、口が悪い言い方をすればボロボロだ。
 二人の話によれば、ついさっき完成した物らしい。
 つまり新品って訳だ。
 だがそのボロボロの装備と見比べても、何の違和感もない。
 コルトが作った装備品の素材も悪くはない物だったらしいが、有り合わせの物を寄せ集めたという感じ。
 けれどもそれはそれで、味がある。
 だがしかし。

「……その趣向を好む奴らへの受けはいいかもなー」
「趣向?」

 男戦士のこの装備で、ここに来る羽目にさせられた魔物と対峙したら間違いなく一たまりもないんじゃなかろうか?
 そういう意味でも実用的とは思えない。
 けれども、そのテの物を集める蒐集家には高く売れそうな気が……しないでもない。

 それにしてもコルトはつくづく器用なもんだ。
 布製の物は編み物か?
 金属製の物には魔法でも使ってるんだろうか。

「私の世界での武器屋とか防具屋で安く売られている品に似た物なら……作ってみます?」
「店の商品になる物を優先してくれな」
「分かりました」

 基本的には小物よりも、でかい物を売った方が儲けが大きくなる。
 ちょいとばかり大掛かりな事業っていうか、そんなことを思いついた。
 俺の仕事の生産性を高められそうだからやっておきたい。
 祖母ちゃんが残してくれた財産を使えば出来なくはないが、生産性が高まっても収入につながるかどうかはまた別問題。
 それはキープしたまま計画を進行させたいから、実行に移すにはまだ時期尚早だな。

 それにしても、握り飯の具で目新しいのを思いつけない。
 コンビニの握り飯には、シーチキンマヨとかネギトロワサビとかいろいろある。
 だが具を作る手間を考えると、握り飯を作る数が前提だから、時間的に足を引っ張るような具材は却下。
 それだと『畑中商店』の売上同様、握り飯作りの成果が芳しくない。
 握り飯の具ばかりじゃなく、ガーディニンググローブとスライムドライバー以外の『畑中商店』の目玉商品のアイデアも浮かばない。
 しかも相変わらず、一日に完成させられる数量は三つが限度。
 コルトが来てくれたことで『畑中商店』に余裕が生まれたのは、せいぜい俺の気持ちくらいだ。
 店の収入額は上がったものの、余裕が出るにはまだほど遠い。

「まぁ無理してレパートリー増やす必要もないか」

 ※※※※※ ※※※※※

 それから三日目。
 ノートを一冊ずつ持ってくるのが面倒なほど、何かを書き記したがる奴が増え、一人当たりの書く量もどんどん増えていく。
 目新しい変化ってばそれくらいだった。
 ちなみにノートの中身は、俺には理解できないことだらけ。
 象形文字か何かか?
 ミミズの貼ったような物があったり、数学の図形や記号の羅列みたいなのがあったり。

「人の書いた物を無断で読むというのはどうなんだ?」

 そんな声もあったが

「じゃあお前ら、この中身全部読み取れるのか?」

 の俺の一言で撃沈。
 それでも会話ができるってのも不思議な話だ。
 それ以上に不思議な現象が起きてるから、そんなのは俺にとっちゃ些細なことだ。

 で、この日はさらに特別なことが。

「コウジさん、こんなのしか出来ませんでした……」

 一見革製品の胸当て、腰当て……とでもいうのだろうか、剣道のたれのような物が腰を一周して覆うような防具。
 剣道の小手よりも長い防具に脛当て。
 それなりに上等そうだ。

「鎧をって言われたのは分かってるんですけど」

 あ、確かにな。
 これじゃ防具だが、鎧も防具だし装備品だし。
 けど見た目、なかなか整ってる感じがする。
 それに、男戦士が付けてたつぎはぎっぽい防具よりはかなり品質が良さそうだ。

「いや、ちょっと見惚れるくらいの物だ。これ、ネットオークションにかけてみる。今まで作った物よりも儲けが大きくなるかもな」
「私のスキルが役に立てられるならうれしいんですけど……」

 まぁ売れるかどうかは、買い手の意思次第だからな。
 売れなくても、ここにいる誰かは欲しがるだろ。
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