俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

モンスターの和訳は魔物なら、俺も魔物退治しなきゃだよな

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「なぁ、兄ちゃん。ちと差別が過ぎねぇか?」

 夜の握り飯タイムで、長い行列ができて四人目か五人目に並んでた奴が、握り飯を受け取るとそんなことを言い出した。

「差別? 差別なんかしてるつもりはないが?」
「さっき、二人の戦士っぽい兄ちゃんらと親しげに話ししてたじゃねぇか」
「あ、話長くなるなら列から外れてくれ。……で、話しをしてたから差別になると?」

 並びながら話をされると、後ろに並んでる連中の待ち時間がさらに長くなる。
 並ぶ連中の握り飯を持っていく行為に、何か違反があるわけじゃない。
 目を離しても問題ないが、傍から見ると不正行為を見逃さないための監視をしているように見えるんだろうな。
 こうして話しかけられても何の抵抗感もないんだがな。

「俺だけじゃねぇぞ? ここに来る奴で無傷の奴なんか誰一人いやしねぇ。意識不明な奴まで、誰かに支えられてくるほどだ。もう少し看護とか介護に力入れたらどうなんだ?」

 何と言うか。
 ムリだろ、それ。

「ここは病院……治療院でも何でもないんだが?」
「何言ってんだ。どんな重症な奴でも、みんな元気に回復してくるって言ってるぞ? 治療院なら治療院らしく、みんなに看護の目を行き渡らせるべきだろうが。それを何で特定の奴らとしか会話しねぇんだ?」

 あれ?
 こんなクレーム、俺、初めて受けたような気がする。
 コルトは何か怯えた顔して固まってるし。

「……ここは死者を蘇生させる教会でもねぇし、そっちに病院って施設があるかどうか分からんがそんな場所でもないんだが? 極端に言えば、ただの休憩所だぞ?」
「何を言ってやがる。どんな怪我でも病気でも毒でも、立ちどころとは言わねぇが治してくれる場所って聞いたぞ? 別にそれ目当てに来たわけじゃねぇし、どこにあるかなんて明確な話は聞かねぇけど、その話の元は間違いなくここだろう?」

 どうしよう、こいつ。
 話通じねぇのか?

「ったく……。誰だよ、救世主なんて呼び始めたのは。……あんたもどうせその噂を聞いたんだろ。鵜呑みにしない限りそんなこと言いやしないだろうしよ」
「あぁ。救世主の話も聞いた。ここに来る奴らみんなに分け隔てなく恵みを与えてくれるってな。なのにあの二人……どこ行った? 長々と話してたじゃねぇか」
「あいつらなら列の後ろの方……こっからは見えねぇな。そっちの部屋の後ろの方に並んでるよ。ここに居る連中の中で、この部屋に遅くやってきた二人だからな。で、あんたは何にどんな文句があるんだ?」

 あの二人にあるのか俺にあるのか。
 俺はあまり関心を持つ気はないが、向こうから持たれりゃ話しかけられもする。
 話しかけられたら無視するわけにもいかない。
 ごく当たり前の言葉は交わすだろうよ。
 それが癇に障るって気持ちも分らなくはない。
 ここに来る前にいた場所では思いっきりままならなかったろうしな。
 だがこっちにクレーム付けられてもな。

「だから、もっと手厚く扱えってんだ! 救世主なんだろ? お前は!」

 頭痛い。

 にしても、祖母ちゃんも……いや、祖母ちゃんだけじゃない。祖父ちゃんだってこんなことをしたはずだ。
 その前の代からも続いてたらしい。こんなクレーム、受けたことあったんかな?

「何とか言え! 何とかしろよこの状況をよ!」
「言うことないな」
「……何だと?」

 当たり前だろ。
 この状況って、この部屋の状況なのか、自分の置かれた立場の状況なのか、何を言いたいのか分からんし。

 こいつも俺を救世主呼ばわりしたってことは、自分の能力を超越した存在と思ってるんだろうな。
 もしそうなら、我がままを聞き届けてくれる存在と思っているに違いない。

 ってことは何か?
 自分がしたいことや欲しい物を与えてくれる神様みたいに思われてんのか?

 そう言えば……たまに読む漫画や小説で、そんな展開なかったか?
 自分の世界じゃない場所に突然移動させられて、正体不明の存在から能力を与えられて、自分の望む世界に転移させるとか。
 その異世界転移はあり得ないみたいだが、なんかそんな風に見られてたのか? 俺は。

 ……もし本当に異世界転移の神様がいるんだとしたら、好きでそんなことをしているわけじゃないなら俺はそいつに同情する。

「あのー……コウジさん、お取込み中すいませんけど……」

 こんな時にコルトが首突っ込んできた。
 ややこしくなるようなことを言うんじゃねぇぞ、おい。

「おにぎりの数は間に合いそうなんですが、明日の朝の分のお米、ストックが足りないみたいで」
「あ? あぁ……了解。持ってくるわ」

「オイこら! 逃げんのか!」
「逃げたら明日の朝のお前らはみんなで腹の虫の大合唱だろ? 俺はお前の相手だけをしてればいいわけじゃない。おまえは俺だけを相手にしてりゃいいんだろうけどな」

 ほんの一刻だが、モンスタークレーマーから解放されて助かった。
 コルト、グッジョブ!
 って、本当に米のストックがなかったけどな。

 でも魔物退治する奴がモンスターになってどうすんだっつーの。
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